『紅の扉』   −第二章− 第五回

ゲームマスター:秋芳美希

アマラカンへの道程

 荒涼とした灰色の大地の続く旅路。
 北方の山岳地帯にあるというアマラカンを目指すのは、東トーバを脱出した者たちだった。この800名に近い一行を、一人の異世界人が追いかけていた。高度な物質文明界出身の青年、鷲塚拓哉(わしづかたくや)である。東トーバから進行の遅い一団に追いつく事は、高度な飛行アイテムを有する拓哉には、さほど多難なことではなかった。しかし、一行の近くへと着陸したとたん状況は変わる。機体は巨大な落とし穴にはまり、脇の岩が崩れてそのまま埋まってしまったのだ。
「っ、このトラップ……! アクアだろう!?」
 拓哉の声に、トラップを仕掛けて回っていた乙女アクア・マナがおっとりと応える。
「正解です〜」
 文句の一つも言いたい拓哉であったが、今は一刻も惜しかった。拓哉は、『怪盗ナイトエンジェル』の署名の入ったメモを見せて言う。
「村人たちの進行は急いだ方がいい。亜由香は東トーバを脱出した者たちの行方を、ラハから聞き出すつもりだ。ラハは、東トーバに残った民の命がかかっている以上、否は言えないだろう。……そして亜由香は、この追撃部隊の指揮を……ラハにやらせるつもりらしい」
 そして、亜由香と上級魔族の関係なども記されたメモを手に、これからの行動を考える一行。この時、いち早く北へ向かう事を提言したのはラティール・アクセレートだった。
「今はアマラカンへ向かうのが最優先だよ」
 白金に輝く髪を腰の後ろあたりで束ねたラティールは言う。
「ラハが来たとしても、ラハ自身の奪還チャンスは、生きてさえいれば必ずあると思うよ。そしてその時は、あたしも奪還に向かうつもりだよ。だから今は先に進もうよ」
 ラティールの言葉に、疲労の癒えぬ神官長補佐役であるルニエが頷く。
「……その通りよ。亜由香側の思惑がどうあれ、神官長のラハもそう簡単には動きはすまいな……」
 東トーバにおいて、神官長ラハと長の座を争った事のあるルニエは言う。そのルニエは敵地である街で、村人の防寒服の入手もしたいといったのだった。
 ルニエの依頼を受けて、街に向かう事を決めたのは三人の異世界人だった。


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