『紅の扉』   −第二章− 第四回

ゲームマスター:秋芳美希

合流へ

 荒涼とした灰色の大地の続く旅路。
 かつて平和の地であった東トーバより脱出した者たちは、北方の山岳地帯にあるというアマラカンを目指していた。

 東トーバを脱出した一団。その後発隊最後尾にあって、脱出した民たちの足跡を消しつつ進むのは、長身の猫耳青年アルフランツ・カプラートであった。風術魔法で灰色の砂を舞わせ、足跡を消すアルフランツ。アルフランツの髪は、砂によって銀色から灰色に変わっていた。
「先発隊の足跡が乾いてる……先発隊の方が進行が早いのかな。合流にはしばらく時間がかかりそうだね……」
 先発隊は、動ける者を中心に出立した一団である。一方、後発隊は恐怖から逃れる事を一番に考えた者が多かったのだ。そのアルフランツが一団通過の痕跡を見失う場所がある。草木も少なく大小の岩が転がっていた荒野が、砂漠状になったのである。
「……ここは、ずいぶん大きな戦闘があったみたいだね。先発隊の足跡も吹き飛んでるよ」
 とりあえずは余力のできたアルフランツ。そんなアルフランツに東トーバの子供たちがまとわりつく。
「お兄ちゃん! 肩に乗せて!」
 歩き疲れた子供たちが、少しでも休もうとアルフランツの肩に乗りたがるのだ。そんな子らに、アルフランツは笑顔で応じながら思う。
『脱出した民には、幼い子供も女性もいる……急ぎたくてもこれ以上早く進むのは無理だよね……』
 子らを肩に乗せてペースを維持するアルフランツとは対照的に、
「遅れてるよ。子供たちも頑張ってるんだから、大人がしっかりしなくちゃね!」
 ともすれば弱気になり進行の遅くなる大人たち。彼らを叱咤激励しつつ進むのは、後発隊を警護してきた乙女ラティール・アクセレートである。長くのびる白金の髪を腰の後ろあたりで小さなリボンで結ぶ乙女ラティール。ハーフヴァルキリーの翼で空を飛ぶラティールは、常に追撃を警戒しつつ、進行状況を見守っていたのだ。
「うーん。この辺り一体、確かに敵の姿は見当たらないね」
 上空から見ても、巨大な爆発でもあったかのように広がる砂漠。広範囲に渡って、人影もない。そんなラテイールの視界に、砂漠の中で野営する一団が見えた。
「! あそこにいる金色の髪の人がアクアって人かな? 先発隊を待たせていてくれたみたいだよ。まずは、合流成功だね!」
 後発隊到着を歓迎する人々。その中央には、馬に乗った乙女アクア・マナの姿があったのである。

「まずは合流できてよかったですね〜。お疲れでしょう〜」
「アクア・マナ殿のご尽力のあらばこそよ」
 後発隊の労をねぎらうドレス姿の乙女アクアに、まずは後発隊一行の神官長補佐役ルニエが握手し、続いて再会と出会いとを喜ぶ冒険者たちが続いていた。


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