東トーバ神殿大広間
異形の者に変化した君主マハ。腐臭さえ放つ異形の者にアクアとリリエルは精神を集中させていた。
意思を伝える実と、同じ実を使えるリリエルの援助を受けて、アクアはその深層心理まで自分の意識を沈めて語りかける。
『……東トーバの人々、ひいてはムーア世界の人々がマハの帰還を待っています〜……』
切々と訴え続けるアクア。このアクアの声に、微かに異形の者から人の記憶が呼び覚まされるのを感じる。
『少しだけ人としての意識が浮上したようです〜。あとは……東トーバの皆さんの願いさえあればきっと〜』
そしてアクアは、意識の実を媒体にして周囲を囲む神官たちのマハに対する願い、想いをそのまま中継してゆく。
君主マハを崇拝し、その未来を期待していた神官たちの想い。憧れ、畏怖、そして導いてくれる者としての信頼。平和への希望を叶える者として、元に戻ってほしいという願い……。
しかし、それら神官たちの想いが届くのと同時に、今度は神官たちへ向かって、マハの抱いて来た罪の記憶が流れ込んでしまったのだ。あってはならない弱さの記憶、深い罪の意識、逃避、そして異形への変化……それらの記憶が、超自然の力と共にあった神官たちを混乱させてゆく。
「いけない〜!」「これ以上はダメ!!」
アクアとリリエルとが神官と君主マハとの意識の交信を止める瞬間、彼らの意識に懐かしいその声は届いたのだった。
→続ける