『バウム』からの便り
×××聞こえますかぁ……?××× この声はアクアとリリエル、そしてこのムーアを訪れた異世界の者たちに届けられる。 ×××比較的安定した今しか情報を伝えられませぇん……申し訳ありませぇん××× そして声の主が彼らに伝えた事とは、『バウム』からムーアへ扉が開く事はなくなる事。代わりに精神体だけをドッペルゲンガーとして各世界として送る事ができる事。そして、異世界での体験は、睡眠学習で共有する事ができる事などであった。 『……今までのサポートと変わらない気がしますがぁ〜』 アクアの疑問に、声が続ける。 ×××これからはぁ、『バウム』は中立の立場となりましてぇ、こちらから積極的なサポートはなくなるのですぅ。万が一……皆さんがそちらの世界で亡くなる事があってもサポートはできませんしぃ、そちらの世界からのご依頼は引き受けられなくなるのですぅ××× それは、『バウム』自体が案内役を失ったことによる自衛策でもあったらしい。 ×××今、この通信によって、皆さんの精神体は確保しましたぁ。皆さんの分身は、ご自分の世界に帰る事もできますぅ……これが最後の通信となりますぅ……お元気で××× そして、これまで彼らの味方であったはずの『バウム』から、最後の通信が消えていた。 「……記憶の共有……私の意思を持つ体が……自分の世界に帰れるって事ですね〜」 「そのようね。もし、ムーアを出るとしたら自力で出るしかなさそうね」 顔を見合わせるアクアとリリエル。 ムーアという異世界に自ら残った者たちは、その未来を自ら切り開くしかないものとなっていた。 |
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