東トーバ神殿広間

 これからの戦いを考える者たちが、この広間に集まっていた。
「とにかく、ムーアを魔物だらけにしようとしている元凶は亜由香よ。もはや全面対決しかないわ!」
 入れたてのお茶の入ったカップを手にして気勢を上げるのは、紫がかった黒髪の乙女リューナであった。それに同感であったのは、腰まで届く髪をポニーテールにしたフレアである。
「そうだね。この世界の混乱の元凶である亜由華さえ何とかしてしまえば、ムーア世界を覆った魔物の厄災はやがて沈静化する筈だよ」
「うん。亜由香を倒すとか、元の世界に送り返すとか、ムーアの外に放り出すなりして魔物の召喚を止めさせなくっちゃ」
 そのリューナが西ゴーテから持ち帰ったのは、音波発生装置だった。効力をリリエルと鷲塚をも加えて検討するリューナは言う。
「この装置は夢魔に対して効果あるだけでなく、世界軸の揺らぎに対しても効果があるとは思わなかったわ……これを使って、亜由香を妨害できない?」
 機械操作が得意だろうと思うリリエルの上司をリューナが見上げる。
「少なくとも相手の夢魔であるなら効果があるが、新たに召還されたらしい修羅族については調べてみない事にはな」
 拓哉が可能性を考察すると、フレアが考え込む。
「そうだね……このままその修羅族というのを放置していれば亜由香との闘いに支障を来すよね。僕、その修羅族というのをどうにかしたいな」
 そうして語られる計画に、乗ったのはリューナと拓哉。
「じゃ、わたしは、戦闘時にはフレアの火炎剣術の魔法を強化したりで援護できるかもしれないわね」
「ならば、俺は探査戦闘機を使うかな」
「心強いな」
 そんな彼らに、ディックが新しく入れたハーブティを差し出す。
「先に偵察に出てったリクや、一人で戦いに出たトリスティアにも言った事だが……無闇に戦うなよ。命は一つしかないんだからな」

 新たな戦いの足音が近付く。
 すでにトリスティアによってその火蓋が切られていたのだが、彼らがそれを知るのは今少し先であった。



続ける