『都市伝説をぶっちぎれ』

第1回

ゲームマスター:田中ざくれろ

★★★
 晴れた夏の空。
 山の高みにある涼しい空気は透明度を増している。
 『エイトゥズィ』。
 二十六のカーブが連続する山の頂上付近にあるこの村は、この夏、深夜の怪異におびやかされていた。
 その怪異を撃退すべく、村長からの冒険者ギルドへの依頼を受けた者達が、この日に村を訪れた。
 霧の中からアンティーク調の高速電動アシスト自転車。
 上りの山道も電動アシストで楽楽と登ってきた、如何にも『名探偵登場』といった風なBGMが似合いそうな彼女は、ネプチュニア連邦王国の脚ある人魚姫、マニフィカ・ストラサローネ(PC0034)だった。

★★★
 ここでちょっと時間を前日まで遡ろう。
 ある街角の喫茶店で、マニフィカは優雅なアフタヌーンティーを嗜んでいた。
 オトギイズム王国を訪れている時にすっかりマイブームになっている読書。
 無作為に『故事ことわざ辞典』を紐解くと、開いたページに『怪力乱神を語らず』という短い言葉が記されていた。
「怪力? 彼女のことかしら?」
 知己である怪力の女性を即座に思い浮かべたが、説明文を読み進めて、彼女とは関係のない言葉だと知る。
 どうやら「道理に背いた事や理性で説明困難な事に触れない」もしくは「怪しげな事や不確かな事は口にしない」いう意味らしい。
「ちょっと難解ですわね。きちんと物事を理解してから語れ、というアドバイスでしょうか」
 独り言を呟きながらティーカップを片手に、卓上の辞典を再びめくってみた。
 新たに眼にとまる一文。
『幽霊の正体見たり枯れ尾花』
 説明文によれば「疑心暗鬼で悪い想像が膨らむと、些細な事も恐れるようになる」
「あえて共通点を求めれば『真実を見極めよ』と解釈出来ますわね。なるほど、そういう事ですか……」
 その様にのどかな午後を紅茶とマカロンを供にしてすごすと、本のページにしおり紐を挟む。
 そしてマニフィカはその足でこの町の冒険者ギルドへと向かった。
 どうやら他の町から回覧された依頼状が届いたばかりらしい。ついさっき飛脚が到着した、とギルドの前の道で通行人が噂話をしていたのをこぼれ聞く。
 ギルドに入るとその依頼を一目見んと雑多な様相の冒険者達が受付ホールにごった返していた。
 自分も掲示板に張り出されたエイトゥズィ村が依頼したそのクエストを読みながら、好奇心旺盛な人魚姫は呟く。
「怪異とは……」マニフィカはさきほど故事ことわざ辞典で見知ったばかりの言葉を思い出し、因縁を感じた。「これもまた『最も深遠に坐す母なる海神』のお導きでしょうね」
 依頼を受けるマニフィカ。即決だった。
 彼女はエイトゥズィ村を訪れる為に、異世界の品物を扱う商店へ寄り『高速電動アシスト自転車』を購入する事にする。
 するとちょうど、その店を訪れている知人に出会った。
「未来さん」
「マニフィカも自転車、買いに来たの?」
 ミニスカ制服姿の姫柳未来(PC0023)は、眼鏡の店員にスポーティかつお洒落なデザインの自転車を商品の列から出してもらいながら、マニフィカに挨拶する。
 実はオカルトやホラーが大好きなJKである未来は、そんなオカルトめいた怪異が何体も現れるというエイトゥズィの街道レースに、女子高生らしい好奇心を抱いていた。全くもって興味津津だ。
「あなたもエイトゥズィの依頼を受けるのね」
 マニフィカはアンティーク調の自転車を出してもらいながら未来に答えた。商品説明を店員から聞くと、二つの自転車はデザインこそ大きく違えど、性能に差はないという。
 サドルに腰掛け、足をつけた態勢で自転車にまたがってみせる未来。アシスト・スイッチをオンにする。「ペダルが軽いわあ☆」店の前の通りを軽快に走り抜ける。走りにくそうな石畳も苦にならないほどの性能の良さだ。バランスもいい。
 即金購入した二人は冒険者ギルドへ帰る道を自転車で辿る。
 すると通りの向こうからやってくる、二人の知人と会った。
 褐色のキューピーさん、ビリー・クェンデス(PC0096)と怪力の女傑ジュディ・バーガー(PC0032)だ。
「まいど! もうかりまっか」ビリーが手を挙げて挨拶する。
 ぼちぼちでんな、と慣れた調子でマニフィカと未来はお約束の挨拶を返す。
「マニフィカさん、ちょうどええ所で会ったわ。ちょっと相談があるんやけど。……ま、こんな所で立ち話もなんやから、冒険者ギルドの二階酒場で茶でもしばきながらお話しようや。おごったるわ」
 ビリーは踵を返すと、三人を先導する様に歩き出した。
 特に何の不審もなく、自転車を押しながら福の神見習いについていくマニフィカと未来だったが、そんな彼女達の裾をジュディがらしくもなく申し訳なさげに引く。
「ちょっとアテンション、気をつけてクダサイネ。ビリー、最近、変なDVDを観てビー・インスパイアド、感化されてるみたいデ」
「デイブイデイ?」
「あ、マニフィカのホームタウン、故郷にはソレはないのネ。そういうシステム、劇や歌を再現視聴出来るマシンがあって……」
 ジュディから話を聞くに、ビリーは最近、異世界でヒットした映画にハマッて、夢中になっているらしい。
 実はジュディ自身もその映画を観て、熱狂的なファンになった一人だが、ちょっとビリーの年齢がその映画を観るのに十分かどうか怪しいらしい。
「え! 年齢制限のある映画!? まさか、とてもエッチな……!?」
「ゥロング!」ジュディは未来の言葉に即座に反応する。「違うワ。でも、小さな子供が観るのにはチョット……」
「皆、何やってるんや。早く行こうや!」
 立ち止まってしまった三人は、遥かに先に行ってしまったビリーに大声で急かされる。
 三人はビリーを追って、速足で歩きだした。
 冒険者ギルドに着くまでに交わした会話で、この全員がエイトゥズィの怪異レースに関する依頼を受けた仲間同士だという事実を知った。
「もう、ジュディなんて酒場で『よう、でっかい姐ちゃん。あんた、ちゃんと首はあるみたいだな? ……ひゃっはー! もちろん冗談さ』なんて、ユーこそ何処のモヒカンザコ?みたいな見知らぬアドベンチャラー、冒険者に話しかけラレテ……それでナニゴトかと思ったら、こんなクエストがアルって知って……」
 ジュディの周りでは特に『首なしライダー』の噂が大勢の耳目を集めていたらしい。
 勿論、モンスターバイク愛好者であるジュディはそんな依頼を逃すはずがない。依頼書を最後まで読みきるか否かの瞬速でこの依頼に申し込んだ。
「モウ、この依頼がイッツ・プレジャー、楽しみで楽しみで」
 ジュディは本当に楽しそうにこの依頼を語った。
 皆は冒険者ギルドの酒場に着く。
「そこでな、マニフィカさんの魔法『水術』で大放流をドバーッ!と」
 テーブルについて酒やジュースや紅茶を飲みながらくつろぐ皆へ、独特のハンドサインを決めながら自分のアイデアを語るビリーの頭頂に、予想が当たったジュディは軽めの拳骨を落とす。
「ビリー! その映画はレーティング・フィフティーン・プラス、R15+指定デショ! 子供が観ちゃダメデス!」
「なんでや! ボクが外見通りの年齢やと限らんやないか!」
 外見が九歳ほどの子供に見える福の神見習いは、涙眼でとんがりヘアをかばいながら口を尖らせた。
「そういえば……ビリーって、実際は何歳なの……?」
 グレープフルーツジュースを飲みながらの未来の疑問に、ビリーとより親しい友であるはずのジュディとマニフィカは「……えーと」と言葉をよどませた。
「ねえ、ビリーって何歳?」
 未来からの直接質問に、ビリーは即答した。
「それはナイショや」

★★★
 さて時間はエイトゥズィ村にマニフィカが自転車で到着した辺りまで戻る。
 皆はめいめいに集まる事になっている。
 確かに村にはマニフィカよりも早く着いていた者がいる。
「あらぁ、マニフィカさん。お久しぶりぃ」
「マニフィカさんもこの依頼を受けたのですか」
 緑色系淑女リュリュミア(PC0015)とハイパーお掃除メイドのアンナ・ラクシミリア(PC0046)は、タイミングよくマニフィカを村の入口で迎えてくれた。
「お久しぶりですわ、二人とも。これも『最も深遠に坐す母なる海神』のお導きなのでしょうね」
 マニフィカは挨拶を返し、三人はとりあえず村長の家へ到着の報告をする事にする。その後、リュリュミアととアンナの考えで、最初の怪我人であるセナの所へ行く予定だ。
 三人は村にいる村人達の注目を集めながら、村の入口から広間へ、広間から村長の家につながる道に入る。
 特に他の家とはあまり変わらない村長の家。
 しかし、そこには先客がいた。

★★★
「わたくし、聞いた事がありますわ。異世界に転生、または転移して、圧倒的な強さを誇示する事でウケを狙う世界やその物語がありますの。この村を脅かす怪異達は、その世界の伝説のモンスターによく似ていますわ」
 転生物のライトノベルの事だろうか?
 アンジェ・ルミエール(PC0100)は村に到着すると、魔導書『魔物これくしょん』で召喚したサキュバスと共に、依頼を出したエイトゥズィ村村長の家に赴いた。
 『生命と慈愛を司る神』のシスターであるアンジェ。彼女は村長を疑っている。
 怪異達のレースの依頼を受けたアンジェは、エイトゥズィの一連の怪異達については『異世界から召還されたモンスター』と推測していた。
 召還者は表沙汰に出来ない目的を遂げる為に、異世界のモンスターをオトギイズムに召還したのではないかと考えたのだ。
 つまりは村長が。
 それを知りたくて、挨拶もそこそこに彼と打ち解けようとした。
 情報収集。
 犯人探しが目的だと気づかれない様に村長から情報を引き出すのだ。
 あくまで「怪異達が、呼ばれてもいないのに勝手にオトギイズムに転生、または転移してきたと思われる」という前提で話を始める。
 アンジェは油断させるべくテーブルの上に酒を出し、艶やかなサキュバスに村長を接待させる。
「……わたくしは怪異達が故郷に帰る為の手助けをしたいのです。ですが、わたくしは誰かと競うのが苦手です。魔物の召還でしたら少しは出来るのですが、その逆は……」
 アンジェは性的魅力にあふれたサキュバスに酒をすすめさせながら、タヌキの印象がある村長の警戒心を緩めていく。レース以外の方法、召還術関連の方法で協力する意思があると何気なく伝えた。
 ピンクのきわどいレザーレオタードのサキュバスが注ぐ酒には、すでに『自白剤』が混入されている。
 後は村長の自白を待つだけだ。
 村長はただ単に村の責任者として近隣の治安を守る為に依頼を出しただけなのか?
 それとも召還者とその目的を知った上で、悪事のもみ消しに冒険者を利用しようとしているのか?
 また犯人のターゲットは誰なのか、犯人はターゲットにどうなってほしいのか?
 もしも第一被害者セナがターゲットだったなら、村長の「怪異を消してほしい」という依頼の真意は「犯行に利用したモンスターが元の世界に帰らないから困っている。消してくれ」という意味なのではないか?
 アンジェはその辺りをはっきり突き止めようとしていた。
 彼女はそんな思惑を抱きつつ、色っぽいサキュバスに酌をさせていく。
「まああ、いい飲みっぷりで☆」
 サキュバスが村長にどんどん酒をすすめる。
 自白剤入りの酒は、水の様に村長の胃の中に滔滔と流れ込んでいく。
「……俺もあの怪異には困っているんだ……」アルコール臭い息を吐いた村長の顔は赤く、眼は座っていた。「そりゃ、俺も若い頃には、深夜に馬で全速力であの坂を駆け下り、馬順を競ったもんさ。でも無茶はしたが、無理はしなかった。今の若いもんはその辺りが解っちゃいねえ。そこに来て、怪異とやらの出現だ。口裂け女だぁ、首なしライダーだぁ、そんなもんは今までこのエイトゥズィに現れた事はなかった。全く迷惑な事、この上ねぇ!」
 自白剤が効いた村長は、滑らかになった舌でペラペラと自分の思いの丈を話し始めた。
 怪異のせいで村の若い衆に怪我人続出な事。
 この村を守る為に、怪物の村として評判を落とす事になっても冒険者ギルドへ怪物退治の依頼を出さざるを得なかった事。
 もし、これらの事件に黒幕がいるとしても、自分にはさっぱり見当がつかない事。
 怪異を呼び出す様な特殊な知識やスキルを持った人間は、ここの村人の中にはいるはずがないはずだという事。
 第一の被害者セナは、この村での深夜のスピードレースで最も盛んだった若者で、ほぼ常に首位でいた事。
 眼を醒まさないセナの看病をつきっきりでしているアーシャは、彼の恋人で幼馴染。この村のマドンナ的存在だった事。
 更に村長は、村で一番美人の後家さんを口説き落とそうとしている自分の秘密までを一気に話し切った(さすがに最後の話は事件には関係ないだろう)。
「そういえば」村長がいつの間にか手酌になっていた酒を止めて呟いた。「かなり前にたまたま流れの本屋がこの村に来た時、セナは異界の都市伝説の話を集めた本を気に入って買って、夢中で読んでたらしいな」異界のネタを集めた本。いかにも異世界の交差点であるバウムらしい代物だろう。「……待てよ。その時、その本から仕入れた知識を周りにもふれ回っていた気がする。……上手く思い出せねえな。その話の事になると奴は夢中で、周囲が引いてるのにも構わず、一方的に話し続けていたからな。あまりにも鬱陶しくて、俺らは努めてその記憶は忘れる様にしてたから……」
 その時だ。
「こんにちはぁ。 村長さんはいらっしゃいませんかぁ」
 玄関口で女性の声がした。
「この度ぃ、依頼を受けさせてもらった冒険者ですけどぉ、ご挨拶にうかがいましたぁ。すみませんがぁ、上がらせてもらいますよぉ」
 アンジェは少し慌てた。
 自分と同じ、村長の依頼を受けた冒険者らしい。ハニートラップで情報収集をしている場面を見られたら、どう思われるだろう。
 でも、と気を鎮める。
 証拠はない。自分はサキュバスと一緒に村長に美味しい酒をご馳走していただけなのだ。
 何より、自分のやる事は宗教的に正しいはず。常にそう。常に。
 平静を努めながらアンジェはテーブルの上を出来るだけ片付けていると、声をかけた冒険者達が入ってきた。
「あら。あなたはこの間、レッサーキマイラの決闘で囚人達を引き連れてきたシスターでございますね。名前は確かアンジェさんと……」
 村長と一緒にいるアンジェとサキュバスを見つけたアンナは挨拶する。
「お久しぶりでございますね。アンジェさん」
「今度は最初から私達のぉ、お仲間なのねぇ」
 続いて、マニフィカとリュリュミアも入ってきて彼女と村長に挨拶をする。
 酔ってぐでんぐでんの村長が挨拶に答えた。
「あれぇ。この調子じゃぁ、村長さんに話を聞くのは無理そうねぇ。走る裸の女の人の話とか聞きたかったのにぃ」
「裸の女ぁ? 裸の女は好きだ」
リュリュミアの言葉に正体をすっかりなくした村長が答える。それを最後に寝息を立て始めた。
 三人はテーブルの上に広げられている酒宴の後を見回した。
 てへ、とサキュバスが桃色の舌を出す。
「では、村長さんへの挨拶も一応すみましたし、第一被害者のセナさんの所へ伺いましょうか。……アンジェさんも一緒に来ませんか」
 アンナはそう言い、マニフィカとリュリュミアと連れだって玄関へと戻っていく
 断る理由はない。アンジェは彼女達の後を追う事にした。
 後に残るのは座ったまま、いびきをかいている村長だけ。
 アンジェはそっとタオルケットをかけ、皆を追った。

★★★
 村内の一軒の家。
 玄関でピンクのレオタードのサキュバスを見た瞬間のアーシャはとても驚いたが、すぐに平静に戻った。冒険者という雑多な人人の中にはどんな格好の者がいてもおかしくない、と思い出したのだろう。
 意識不明のセナが眠り続けるこの家には、彼の婚約者のアーシャが看病に努める姿があった。
「あのぉー。これぇ、どうぞぉー。この度はご愁傷様ですぅ」
 リュリュミアが、アーシャに見舞いのフルーツバスケットを渡す。
 ご愁傷様とは死者を悼む挨拶のはずだが、リュリュミアはそんな言葉をわざわざ選ぶにはあまりにもピースフルで悪意のない雰囲気を醸し出している。
 多分、自分の聞き間違いだと思っただろうアーシャが礼を言ってバスケットを受け取り、冒険者達はセナの眠るベッドの部屋へ通された。
 木のベッド。包帯の隙間から麦わら色の髪がはみでているセナ。仰向けで規則正しい静かな寝息を立てている。
「最初に怪異に襲われたあの夜から眼が醒めませんの」アーシャが婚約者の顔を撫でながら話す。美しい娘だ。「怪我もほぼ治ってますが、お医者様は何故、眼が醒めないのか、原因不明だと」
「そぉいえば、この人は最初のカーブで事故を起こしたそうですねぇ」ぽやぽや〜とリュリュミア。「怪異さんもずいぶん早く出たのですねぇ。あ、一人で走っていたから、本当の事故の原因は解らないんでしたっけぇ。あれぇ、じゃぁ、怪異が出たから事故が起こったのか、事故が起きてから怪異が出る様になったのかぁ、解りませんねぇ」顎に指を当て、小首を傾げる。「うーん、あなたはどう思いますかぁ」
「セナが怪異を呼んだっていうんですか」清純なアーシャの表情に、さすがに怒りの色が表れた。
「わたくし達は必ずしも彼が原因だと決めつけているわけではありませんわ」なだめる様にマニフィカは優しげな声をかける。「ただ、わたくし達は最初のセナさんの事故から全てが始まったので、もしかしたら怪異の出現がその事故に直接関わっているのではないかと思っているのですわ。彼がそれらのトリガーになってしまった、と」
 その時、玄関の呼び鈴が鳴り、アーシャがそちらに応対しに行った。
「まいど! もうかりまっか!」
 ビリーの声。
 戸口を見ると彼の他にジュディと未来が、アーシャに挨拶をしていた。
 新しく到着した冒険者。子供サイズのビリーと細身の未来の後、長身のジュディは屈み気味に戸口をくぐって家に入ってくる。ジュディは首に愛蛇『ラッキーセブン』を巻きつけていた。
「あー、マニフィカさん、ちょうどええわ。治療の準備は出来とるさかい」ビリーは背負った荷物から『鍼灸セット』を取り出した。「こいつで放水イベントの件と貸し借りチャラとゆう事で」
「放水イベント?」
「まあ、それは後のお楽しみ」
 アンナの疑問をはぐらかして、ビリーは鍼灸セットを手にセナのベッドへ向かう。
「あ、ちょっと物騒に見えるけど、大したもんもんやないさかい。道具でこのお人の治癒能力を活性化したりするんや。じゃ、ちょっと布団めくってや」
 アーシャにそう説明しながら、ビリーはセナへの治療を始めた。
 包帯だらけのセナに東洋風に鍼や灸を施す。
 指圧でツボを丹念に押していく。
 普通の人なら極楽気分を味わえるだろう施術を、ビリーは大怪我をしているはずのセナに行っていく。
「けったいやなぁ」ビリーは一通りの作業を終えて首をひねった。「怪我はあらかた治ってるやないか。これで意識が戻らんちゅーのは……」
「もしかしたら単なる昏睡ではなく幽体離脱というものかもしれませんわ」一冊の書物を手にマニフィカがベッドの傍らに立った。「この書の力を借りれば……」
 マニフィカはその『錬金術と心霊科学』をセナの胸元に置くと、彼の手を表紙の上に置いた。そして、その手を使って表紙を開く。
 その姿勢のまま、数秒待ったが何も起こらなかった。
「何も起こりませんわね」マニフィカは書を閉じ、自分の胸へ引き寄せる。「この書の使い方が間違っていなければ、彼の霊魂が実体化するはずなのですが」
「魂が抜けた状態みたいね」未来がふむふむと唸る。「何処かへ遊びに行ってるのかしら」
「魂があらへんなら『催眠療法』も効かんか」ビリーはお手上げや、という風に両手を上げた。
 皆のやり取りに(こちらもそれなりに情報が濃ゆかったかも)とアンジェは口に出さずに思った。と、ふと、村長の言葉を思い出す。「そういえば、異世界の都市伝説の怪異について書いてある本があると聞きましたが」
「あ、あの本ですか」アーシャが部屋の片隅を見た。本棚のない部屋に本が幾つか重ねて置かれていた。「そういえば、セナはそんな本を夢中で読んでましたね。……、あ、これですわ」一冊を持ち上げる。
 それは異世界の都市伝説を集めた本だった。
 アーシャから手渡されたアンジェはその本をパラパラとめくる。高度な印刷、製本技術だ。
 覗き込む冒険者達は挿絵に驚いた。
 人面犬。
 口裂け女。
 ターボ婆ちゃん。
 首なしライダー。
 エイトゥズィの怪異が大きなイラストとして載っていた。
「裸の女の人がいないわねぇ……。あとクネクネとかもいないのかなぁ……まよいみちクネクネぇ」
 リュリュミアは寂しそうに呟いた。

★★★
 空が暗くなった。
 村の一日が終わり、寝る前の夜のくつろぎの時間が来た。
 普段なら村人は自宅や酒場で過ごすのだが、今夜は広場で宴の火が踊っている。
「前祝いや!」
 レース本番前の大宴会。
 ビリーの十八番の『打ち出の小槌F&D専用』が活躍し、酒や食べ物が大盤振る舞いで飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ。村中が陽気に香ばしい料理の匂いと酒の香を放っている。
「今日のボクはイモータン・ビリーや。V8を讃えよ! お約束なハイドサインの準備エエか? ……ほな、V8! V8! V8!」
 村人達が教えてもらった通り、手指を組み合わさてV型8気筒のエンジンを形作る。
 凄まじい水飛沫。マニフィカに頼んで出してもらった空中からの水流大放出を背景に、ビリーは『空荷の宝船』に大太鼓と大型スピーカーを積み込んでドンドコドンドコ打ち鳴らす。狸みたいに眼から上を黒くメイクし、髑髏の造形が入った車のハンドルやスプレー缶を掲げる。
 村人が叫ぶ。「V8! V8! V8!」
 村人の一人が何処から手に入れたのか、火を噴くエレキギターを掻き鳴らす。
「おう! 洒落の解る奴がおるやないか!」
 嬉しそうにビリーは叫ぶ。
 やっぱりこれだったか、とジュディは自分の顔を手で覆う。
「いやあ、全く『最大狂気の怒りの死の道』や!」
 ビリーの楽しそうな声と共に、祭で夜は更けていく。ところでこれら祭の演出費用は、ビリーの所持金から減らしておくので覚悟しておく様に。
「あのう」アンナはドンドコ空飛ぶ宝船のビリーを見上げながら右手を向ける。「ハンドサインって言ったら、これではないんでしょうか」
 アンナは片手の指を組み合わせて、Wサインを作っていた。小指と人差し指を反らす様に伸ばし、中指と薬指を伸ばしながら重ねている。
 『マ〇ロスΔ』のワ〇キューレ・サインだ。
 なお、マク〇スには小指と親指を反らして伸ばし、残り三本の指をそろえて突き出すハンドサインもあるのでお間違えなき様(必殺、竜鳥飛びだぜ!)。
「ちゃうわ。V8や、V8! このまま、余勢を駆って出るでー!」
 一層高まる大太鼓のリズム。ビリーの声に急き立てられる様に、三人の冒険者達は駆けだし、村の入口に停めてあったそれぞれのマシンに乗り込んだ。
 まあ、マシンといってもローラースケートの者がいるが。
 山道グランプリ。ライトが光る。ヘッドライトと共に猛ダッシュでスタートするそれらは、あっという間に宴の風景を遠くに置き去っていく。

★★★
 アドレナリンがたぎる。
 三人が夜気を裂く。
 やや荒れた下り路面が滑らかに思えるほど、速く流れていく。
 ライトに照らされた風景は高速で迫り、次の瞬間、後方へと消える。
 風の音。エイトゥズィの二十六のカーブ。
 ヘアピン状のAカーブを先頭で走り抜けたのは『レッドクロス』を装着したアンナだった。
 ツッコミ速度はモンスターバイク、モンスターバイクダビッドソンに乗ったジュディの方が速い。だが首に巻いたラッキーセブンが重かったかコーナーで大きく膨らんだ彼女のインを突いて、ローラースケート少女は最初のカーブでトップを取った。
 三位、未来の高速電動アシスト自転車が前列を追う。
 まだ加速しているよ♪ イっちゃうかもね♪とワ〇キューレの『いけない〇ーダーライン』を口ずさみつつ高速滑走するアンナ。
 しかし、マフラーから轟音を立て、直線でジュディのバイクは猛加速。アンナを抜き去る。
「ヘイ、アンナ! アイ・ゴット・ザ・トップ、トップはいただいたヨ!」
 パ〇ーある! タイ〇も太い! 最高! 俺は高速〇路の星ダ!と歌うジュディ。アルコール度数九十八度の『バハムート殺し』を奮発したエンジンを吹かせて、Bカーブに突っ込む。二位のアンナ、未来はほぼ横並びだ。
 Bカーブ。今度はジュディはほぼスピードを落とさず、運転テクでバイクの挙動を押さえ込む。
 Cカーブ。このキツめのカーブで未来は勝負に出た。『ブリンク・ファルコン』。加速する電動自転車。残念だが、最高速度は思ったより上昇しない。しかし、マシンの敏捷性が急激に増した。鋭いコーナリング。更にテレキネシスで自転車の後ろ半分に強いダウンフォースを発生させる。道路に密着する後輪。フルスピードを出しながらノーブレーキでカーブを回る。前輪は常にカーブの出口を向いている。
 抜いた。
 未来はジュディのバイクを制して、カーブを回りきった。トップだ。
「やったわ!」
 少女は立ちこぎ状態で直線を走り抜ける。
 後ろに並んだ二人は夜風で盛大にめくれるJKのミニスカの中を覗き込む事になる。
 あけっぴろげなティーンの純白のショーツが、ヒップの形を従順になぞっている。レースに参加しているのだから当然、純白レースのスケスケの勝負下着だ。
「頑張ってや、みんなー! アメちゃん……じゃない、浄めの塩を撒いたるさかいなー」
 上空を空飛ぶ宝船で追走しているビリーは叫ぶ。彼はこのレースのサポートだ。
 ビリーはバケツから大量の塩をこぼして夜の道路にばら撒く。果たしてそれは効き目があるのか。
 一位、未来。
 二位、ジュディ。
 三位、アンナ。
 三人が走る直線の終わりにDカーブが迫る。
 と、ここで前方の道路に異変が現れた。
 怪異。
 まず一番小さい物。それは犬だった。振り返るのを見ると中年じみた人間の頭を持つ、中型犬なのが解る。
 次は真っ赤なコートを来た長い黒髪の女性。右手に鎌を持つ。振り返る様を見ると口元を白い風邪用マスクで覆っている。
 そして、白い着物を着た、四つんばいの老女。白い背中には『ターボ』と書かれた大きな貼り紙がある。
 最後に並んだのは全身を黒いライダースーツに包んだ、しかし、頭部が何処にも見当たらない人間の男。その首なし男がまたがっているバイクの轟音がジュディのそれに負けじと、他の一切の音を打ち消していた。
 首なしライダー。
 口裂け女。
 ターボ婆ちゃん。
 人面犬。
 四つの怪異がエイトゥズィの夜道を高速で疾走している。足元が霞むほどの猛速の疾駆だ。
「現れましたわね」
 呟くアンナはローラースケートに加速を与えた。
 四つの怪異と三人の冒険者。
 都合七体が高速でDカーブに突入する。
 カーブでのラインの取り合いが複雑な軌跡を交錯させる。
 人面犬がアウトに膨らんだ。
 それと入れ替わる様にアンナの疾走が前に出る。
 残る三つの怪異がコーナーを回りながら、追撃者をブロックする。
 一位、首なしライダー。
 二位、ターボ婆ちゃん。
 三位、口裂け女。
 四位、ジュディ。
 五位、未来。
 六位、アンナ。
 七位、人面犬。
 悔しそうな中年男の表情ごと、冒険者達に追い抜かれた人面犬は夜の闇に溶け消えた。
「ハイ! 一体消えた!」
 未来が嬉しさを押さえきれずに叫ぶ。
 Fカーブが高速で迫る。
 全員がコーナーに突入。
 ハングオンの首なしライダーが先頭でコーナーを回る。
 ターボ婆ちゃんの背後でスリップストリームに入っていたジュディが、バハムート殺しのエネルギーで猛駆動させてその前に出る。ターボ婆ちゃんがブロックするもそれすらもかわした。
 路面を流線とし、全員がFカーブを抜けた。
 一位、首なしライダー。
 二位、口裂け女。
 三位、アンナ。
 四位、ジュディ。
 五位、ターボ婆ちゃん。
 六位、未来。
 ジュディに追い抜かれたターボ婆ちゃんが無念の表情で闇に溶ける。
「残り二体や!」と上空でレースを追うビリーが叫ぶ。
 Fカーブ後の直線でジュディのバイクは、アンナのローラースケートを追い抜く。
 そして急角度のGカーブへと五体は突入。
 格段の急こう配でもあるこのカーブを首なしライダーはいち早く突破。
 急カーブをコーナリング中の口裂け女を左右、インとアウトそれぞれからジュディとアンナが追い抜こうとする。
 その瞬間、口裂け女が赤いコートの内側に隠し持っていた鎌をひるがえした。ジュディのそのアメフトプロテクターごと上半身を切り裂こうとする。
 と、ジュディは『ハイランダーズ・バリア』を発動させた。強固な障壁がジュディの半身を守り、鎌をはね返す。
「ルール無用のバッド・ウーマンにはパニッシュメント、お仕置きネ!」
 ジュディはバイクの横に装着していたスコップを取り、離れ際の一撃を食らわせた。
 しかし、それは口裂け女のマスクを吹き飛ばすだけでかわされる。
 耳まで届く裂けた口でにやりと笑う口裂け女。
 だが、その笑みは次の瞬間、悲鳴に変わった。
 空からビリーのこぼしたバケツの残りの塩が顔にかかったのだ。眼に入った浄めの塩で苦痛の叫びを挙げる。
 体勢を崩した口裂け女の脚に、アンナの振り下ろしたモップと未来の『サイコセーバー』が激突する。
 口裂け女が超高速の走行姿勢から路面に転倒した。全身の骨がバラバラになる勢いで路面を滑り転がり、後方へ置き去られる。未来の電動自転車に追い抜かれたところで口裂け女は闇に溶け消えた。
 未来はその立ちこぎの勢いのままにジュディとアンナを追い抜いた。スカートの中身を惜しげもなく晒しっぱなしの未来はサイコキネシス・ダウンフォースでインを攻め、首なしライダーに続き、二位になる。
 一位、首なしライダー。
 二位、未来。
 三位、ジュディ。
 四位、アンナ。
 残る首なしライダーを追撃し、冒険者達は次次と迫る急カーブを切り返し続ける。
 Gカーブ。
 Hカーブ。
 Iカーブ。
 Jカーブ。
 順位は変わらぬまま、四つのカーブを猛スピードで走り抜ける。
 冒険者達はふと思った。
 怪異が一位のまま、このエイトゥズィの山道を最後まで走り切ったら何が起こるのだろう。
 何か悪い事が起きるだろうと、走者は誰も言わずながら感想を同じくした。
 高速コーナーのKカーブが迫る。
「リミッター解除ネッ!」
 ジュディは首に巻いていた愛蛇ラッキーセブンを上空へ投げ捨てる。空中のビリーは一メートルのニシキヘビをかろうじて回収する。ウェイトが減ってジュディのバイクはこれまでにないトップスピードを獲得した。
 高速コーナリングの最中、先頭の首なしライダーに三人の冒険者は果敢に襲いかかった。
 道幅いっぱいに四つの高速走行体が頭を並べる。
 最も内側に未来。
 そのすぐ外に首なしライダー。
 その外にアンナ。
 最もアウトサイドにジュディ。
 コーナーの出口でそれらのラインが交差する事は明らかだった。
 誰が先にビビッてブレーキを踏むか、レースはチキンランの様相を呈する。
 息を呑む。
 ライトの光がカーブの出口で複雑に交差する。
「イピカイエー!」
「やったぁ!」
「で、ございますわ!」
 ブレーキランプを点灯させた首なしライダーを追い抜き、スピードをテクで制してジュディ、未来、アンナはKカーブを喜びの声一杯に走り抜けた。
 首なしライダーのバイクは急制動をかけた直後、コントロール不可能になった。ヘッドライトのビームが夜を振り回す。前輪がたわむ様な歪んだ回転を始めた直後、車体が泳ぐ様に左右に揺れ倒れつつ、ついに路面へダイブした。
 火花を上げて滑る路面。バイクは火を噴き、ライダーを振り落とす。ライダーとバイクが生き別れになったまま、遠心力で山道からこぼれ落ちる。
 と、その姿は空中にある内に闇に溶けた。ライダーも、バイクも。エンジンの騒音が消える。
 冒険者達は四つの怪異を抜き去り、消滅させた。
 今、夜に轟く音響はジュディのモンスターバイクしかない。
「カーブの半分もいかない内に勝負がつきましたでございますね」
 レッドクロスのヘルムからこぼれ流れるピンクの髪を夜風になびかせ、アンナは一息つく。ローラースケートを慣性で滑走させる。
「やった。これでもう怪異は出ない……はずだよね」
 すっかり熱がこもった電動アシスト高速自転車の車輪を風で冷ましながら、未来はサドルに座って軽快にこいでいる。まだショーツ全開状態には気づいてない様だ。
「これでエイトゥズィ村もバック・ピース、平穏になるといいのデスがネ」
 安全運転になったジュディはフェルタンク内のバハムート殺しに気をしていた。半分以上は消費したのか。今ならばまだこの極上の火酒を完全に失う事はないだろう。
 夜気が涼しい。
 だが、この夜はまだクライマックスを迎えていなかった事を、次の瞬間に彼女達は知る事になる。
「なんや、あれは!?」
 上空の宝船に乗るビリーが夜道の前方を指さし、大声を挙げた。
 未来、アンナ、ジュディは自分達の前方に奇怪な大物が出現をしたのをその眼で見た。

★★★
 エイトゥズィ村に女性の悲鳴が響き渡った。
 セナの家からだ。
 宴の名残を楽しんでいた村の皆が駆けつけると、家の戸口で壮年の女がひきつった表情で家の中を指さしていた。セナの母親だ。
「アーシャが……アーシャが……!」
 アンジェやリュリュミア、マニフィカがセナの部屋にとびこむと、セナのベッドの横にアーシャが倒れていた。上半身を寝ているセナに預ける様にして、覆いかぶさって、だ。
「今まで世間話をしてたのに、突然、セナが……ここに寝てるのと同じセナが、半透明のセナが現れて、アーシャを……!」
 アンジェやリュリュミアはアーシャを抱き起し、呼吸や脈を確かめた。生きている。しかし、身体は寝息さえか細く、眼を醒まさない。
「セナがアーシャの身体に触ると、アーシャの身体から半透明のアーシャが抜け出して、セナと一緒に……消え……!」
 マニフィカは玄関のセナの母親に深呼吸を促し、落ち着かそうとしながら、セナの部屋まで連れてきた。
 だが、母親の視線は部屋の天井を見た途端、引きつった恐怖の表情で釘づけになる。
 マニフィカ達は天井を見上げた。
 天井には一面に真新しい傷が幾十も走り、それが文字として文章を築いていた。
『ボクは誰よりも速い! 誰にも追い抜かれない! ボクは怪異だ! ボクはアーシャと共にエイトゥズィの坂道を誰よりも速く、最後まで駆け抜けるんだ! その時、ボクとアーシャは結ばれるのだ! 永遠に!』

★★★
 ジュディ、アンナ、未来の前方に現れたもの。
 それは幾つもの鬼火を率いて出現した。
 青い馬車。
 スピードワゴン。
 青白い炎が全体の輪郭を縁どる、半透明の二頭立て馬車だ。
 車体も馬体も蒼白。蒼白の火。
 山道の道幅をその巨体で占有し、追い抜こうとしても追い抜けないだろう。
 青い炎の馬は猛烈な勢いで蹄で地面を掻き立て、全身を駆動している。首なしライダーの速度に劣らない。
 ビリーのいる上空からは馬車の前面を見下ろせる。
 運転席には青く半透明のセナが乗り、馬に鞭を振るっている。その表情は狂った様な笑顔を浮かべている。楽しいのだ。速く走る事が。
 その隣にはアーシャが座っている。セナと同じ様に青く半透明で、伏せた眼を開けず、彼によりかかる様に。
 ビリーはそれを三人の追撃者に伝えた。
 皆はその馬車を先頭にLカーブに突入した。
★★★