『オークが多くいるなぁ』

ゲームマスター:田中ざくれろ

【シナリオ参加募集案内】(第1回/全1回)

★★★
 『オーク』というのは数多のファンタジーの小説や漫画や映画、ゲームでもよく知られた生き物だ。
 豚と人間を混ぜた様な感じで、顔は豚に似、身体つきは人間に似る。
 背丈は人間ほどだが、小柄なものがいるのと同様に巨漢もいる。腹が出ているのはいずれもだが。
 大抵は採取、狩猟民族だ。
 農業はしない。
 狩りや漁も不得手だ。
 では、何が得意かというと戦闘である。
 狩猟というよりは戦闘の様に鹿や猪を集団で狩る。
 そして旅人も。
 オークの集団は時折、街道の人気の少ない場所ならば安全に獲物を狩れる、といった程度の知能で旅人を襲うのだ。
 オークは秩序よりも混沌、闇、殺害を信奉する。
 非文明とは相性がいい生き物だ。
 ここらのオークは昔、群で流れてきてゴブリンが巣くっていた洞窟を見つけ、そのまま住居として居ついたらしい。
 洞窟は枯れた茨に囲まれた荒れた丘の中にある。
 街道に近い洞窟にいたその元住人のゴブリンは冒険者に退治されたが、そのまま、空になった住処は放っておかれた。何の動物も住みつかなかったが、そこにオークの数家族が住みついたのだ。
 オークは多産だ。
 あっという間に住み着いた世帯が増えた。
 数頼みでオークは慢心した。
 ある旅人の集団を襲った時、馬車を二つ、手に入れた。
 馬は生で食べた。
 そしてまた、他の機に武器商人を襲って、数多の新品の武器を手に入れた。
 その中には数基のクロスボウと大量の専用の矢(クォーラル)があった。
 オークは更なる戦いをする為に考えた。
 馬車に獣の血や脂を塗りたくった。
 飼っていた大型の狼をそれぞれ四匹ずつ、馬の代わりに繋いだ。
 屋根と車体の後方と御者席の横にクロスボウをセットした。
 異様な悪臭と不気味で凶悪なムードを漂わせる『ブラッディ・ワゴン』がここに二台完成した。
 殺戮馬車を駆るオークはこうしてその街道の全てのイニシアチブを奪い、街道を制圧した。
 ブラッディ・ワゴンは周辺の住民の確かな脅威となっていた。
 旅人達は困った。
 この街道を通らずに他の道を迂回して旅をすると、一週間も余計にかかるのだ。
 しかもオークは通る旅人もまばらになった、この街道から更に足をのばす事も考えているらしい。
 他の場所まで襲う様になったら大変だ、という事は確実に皆の了解となっていた。

★★★
「オークを『三百匹』退治するんだって?」
「おい、一応『三百人』って言えよ。俺らと同じ二足歩行生物なんだぜ」
「足の数で知性的かどうかを論ぜられるかよ。セントールだって四本足なんだぜ。人魚はゼロ本だ。オークは『匹』! 匹匹匹ヒキ、ひき肉だぁ!」
 冒険者ギルドの大掲示板には、街道付近の住民、行商人達による『オーク退治』の依頼書が貼り出されていた。
 そこに様様な冒険者が群がっている。
 ざっと数えたところ、オークは三百人以上いるらしい。
 それを掃討してくれ、という依頼だ。
 成功報酬は一人、三万イズム。
 遭遇可能性が高いのは街道の『サマギニ峠』の様だ。
 そこからそんなに離れていない洞窟に住み着いているらしい。
 普通ならオーク退治とはそんなに難しくないはずだった。「可愛い冒険初心者にはゴブリンやオーク退治をさせろ」という冒険者の諺もある。
 しかし、今の奴らにはブラッディ・ワゴンという厄介な代物がある。一台につきオーク十人が取りついているという。
 家族全てで三百人以上という見積もりも膨大だ。それなりに考えて戦う必要がある。
 オーク三百人と殺戮馬車。
 この依頼を誰が受けるだろうか。
「私が受けるわ」
 そう言ったのはライトブラウンの髪にきりっとした眉。
 赤いTバックのハイレグボンテージコスチュームに身を包んだ(包んだというよりは剥き出しにした)美少女だった。
 『サンドラ・コーラル』。この界隈では名の知れた冒険者だ。この冒険者ギルドでも『赤いチューリップ事件』『狼男とヌイグルミ山羊事件』の事が特によく知られていた。
 尤も名の知られているのはその力量よりも、露出狂めいたその奇矯なコスチュームの故だったりするが。
「……とりあえず、二台のブラッディワゴンとかいうのをどうにかしないといけないわね……」
 呟きながらサンドラは受付に向かい、この依頼に参加する契約を受付嬢と交わした。
 サンドラが参加した事で、自らも参加しようかな?と考える冒険者が増えた。そんな彼らのお目当ては彼女の剥き出しの白い尻を間近で見る事に違いない。
 しかし今更オーク退治も、初心者じゃあるまいし、と嘲る様に参加を見合わせる者もいる。
 逆に、たとえオークでも三百人はきついっしょ、としり込みする者もいる。
 そんな時だ!
「おい! 例のオークらが近所の村の娘達をさらって逃げたぞ!」
 冒険者ギルドにとびこんできたのは街道近くの村人達だった。
「オークは住処の洞窟へと逃げた! 娘達に危害を加える前に急いで、皆、どうにかしてくれ!」
 事態はいきなり緊迫した。
 冒険者達で心ある者は今すぐ、この依頼を受けるか受けないかを決めなければならないのだ。
 今から追えば、間に合うかもしれない。
 そんな一縷の望みを村人達は冒険者に託したのだ。

★★★

【アクション案内】

z1.オークを倒して倒して倒しまくるのが本道。
z2.サンドラに絡もう。
z3.一応オークでも話し合いとかするべきじゃないか。
z4.その他。

【マスターより】


「オークが多くいるなぁ」
この言葉を何処かで聞いた方がいらっしゃるかもしれませんね。
オーク相手の無双シナリオです。冒険者の基本ですね。
ただ敵の数は多いです。
オークはそれなりに馬鹿ではありませんが、数にまかせて一斉に攻めてくる傾向が強いです。
ブラッディワゴンはいわゆる中ボスでしょうか。
時間がかかりすぎるとさらわれた娘さんやサンドラがどうにかなってしまいいますので、お気をつけ下さい。
一回きりのシナリオですから頑張って、洞窟の敵まで掃討しましょう、
ではよき冒険があります様に。