『出没! 私立らりほう学園!!』

ゲームマスター:田中ざくれろ

【シナリオ参加募集案内】(第1回/全5回)

★★★
 『オトギイズム王国』。
 ポーツオーク沖の深海にある『竜宮城』。
 魔術デザイナーである海蜘蛛の魔女『アルケルナ』は、竜宮城の『時の結界』を相手にして今夜も研究を続けていた。
 今夜といっても深海に星はない。
 時折行き過ぎる発光性のクラゲや深海魚。そのイルミネーションが幻想的に闇を彩る。
 アルケルナは今夜も、助手の河童『ヒョース』に手伝わせ、ドワーフ製の防水時計を使って結界の内外の時差を詳細に計ってみたり、結界を通る光の歪率を記録したりしていた。ディープブルーの長髪を後ろでまとめた彼女の活動には昼夜の区別はなかった。
 研究にこれまで目立った成果はない。
 問題は時の結界の実態は、それを全面的に利用している竜宮城の主である『乙姫』にも解っていないという事だ。
 かつて奸計を以て敵に回っていたアルケルナを、乙姫は受け入れてくれていた。
 彼女もアルケルナの研究成果を待っている様だった。
 内外の時間が『ズレ』るという時の結界の性質はほとんど解らない。
 解っているのは巨大なこれが自然発生的な魔法エネルギーの中空的な塊だという事ぐらいだ。
 時の結界内。観測を続けているアルケルナの向こうの景色で、海底の岩の上に立っていた用心棒『ギガポルポ』の眼が何かを感じて鋭く光った。
 六つの腕を組んだ帯剣の士ギガポルポは何も見過ごさない様に眼を見開く。
「何かが来るタコ」
 赤い肌の剣士は呟いた。
 その途端、時の結界が唸りを発した。
 全体に広がるそれは空気よりも音伝導性の高い海水に音響として大きく速く広がっていく。
「!?」
 アルケルナが、ヒョースが、そして竜宮城の中の乙姫が緊張した。
 光の結界全体が眩い光に包まれた。
 深海を陸上の昼の様に照らすとても明るい光だ。
 その光は結界を底辺にした太い円柱の如く、眩しく上方へ伸びた。
 太い光円柱。
 海中を貫く。
 唸りをあげて。
 恐らくそれは深海の竜宮城からまっすぐ海面まで海を貫いていた。
 唸りは大きくなっていく。

★★★
 夜の海面に突然、巨大な満月が映った様だった。
 最大直径五百m以上あるそれは波間から唸りを最高潮にしながら、海面から喚起された。
 スカイホエール。
 特に波を蹴立てているわけではない。唸る以上の音を立てず、夜の海面から星空に向けて、巨大な飛行船の船首が屹立した。
 まるで満月の様な光を出口の如く、船体が光り輝く超巨大な飛行船が海から生える様に出現し、天へと昇っていく。やがて三千m級の全体が見えてくる。一部が傷ついた硬式飛行船だ、背には青銀色の鱗が無数に並んでいる、
 それが海の『中』から現われたのではない印に海の波はほとんど荒れていなかった。
 あくまでも穏やかな波は飛行船の影に隠れながら、静かに風のみの騒ぎを伝えている。
 やがて傷ついた船尾までもが光から抜け出で、スカイホエールの船体は完全に海面より離れた。
 船体の発光と、海面の満月の如き光が同時に消える。
 空気を震わせていた大きな唸りもだ。
 オトギイズム王国の夜の暗さ。
 スカイホエールは高度二百メートルほどで水平になり、何事もなかった様に空中に停止した。
 それ以上、何処へ行くという事もない。
 空を飛ぶクジラはまるで全ての生命活動を停止した様に静かに、夜明けまでそのままであった。

★★★
 夜が明けて昼となりかける頃には、港町『ポーツオーク』は浜に出て沖を見つめる人人で大賑わいとなった。
 遥か沖合の海に青っぽい銀色をした紡錘形の飛行物体が海で静止しているのが見えるのである。
「あれは異世界から来たもんから聞くに『飛行船』とかゆう奴らしいですぜ。でも、あんなでっけえサイズの奴は知らねえとか」
「ここから距離三Kmほどの沖合。高度は二百m。長さは三Km、幅は一番高い所で五百mってところだな。確かに大きいな。……宙に浮いているのが問題だな」
 ポーツオークの冒険者ギルドのギルドマスターとそのつきそいが見物人に混じって、ドワーフ製の望遠鏡でずっと観察していた。マスターの望遠鏡にはレンズ周りに精密な測距が出来る複雑な機構がついている。非常に高価な品だ。
「ともかくオトギイズムの奴ではなさそうだな。国王が慎重になるわけだ」
 ギルドマスターは言うが、オトギイズムは月へ往復出来るUFOさえある世界である。
 しかし飛行船というものが現れたのは確かに初めてだ。その規模も大きい。
 そして王国軍は兵隊をまとめて空へ飛ばせるシステムを持っていなかった。
「いきなり現れたみてえですからね」
「で、困った時の冒険者頼みか」
 ギルドマスターは何処か嬉しそうに言う。
 勿論、突然の巨大飛行船出現の報告は国王に届いていた。
 国王から、各街の冒険者ギルドに報酬五十万イズムの依頼が来ていた。
 とにかく、あれに接触して正体を掴めというのだ。
 出来る限り穏便に。
「今んところ、あれに接触してるのなんてカモメぐれえですぜ」
「尾っぽが傷ついているみたいだな……待てよ。確か、あそこは深海に竜宮城がある辺りではなかったか。また、あいつらの企みでなければいいんだが……」
★★★

【アクション案内】

z1.王からの依頼に参加。巨大飛行船にアプローチする。
z2.竜宮城の時の結界を調べに行く。
z3.その他。

【マスターより】

 まあ、出たとこ勝負で!
 では、次回にもよき冒険があります様に。