『赤い流星』

ゲームマスター:田中ざくれろ

【シナリオ参加募集案内】(第2回/全2回)

 パスツール地方近辺にある冒険者ギルドではある噂、情報が駆け巡っていた。
 赤い花。
 チューリップ。
 そこから帰ってきた冒険者達によれば、怪奇な植物が地方全体にはびこっているという。
 メインストリートから一つ外れた通りにある大きな建物、この町の冒険者ギルドもその話で持ちきりだった。
 冒険者ギルドの一階、受付前の広間では今日も様様な種族の者達が雑然と行き違う
 人間。
 エルフ。
 ドワーフ。
 それらに類しない様様な亜人種。生きたぬいぐるみや機械人等の奇矯なる者達。また時にはアンデッドと呼ばれる不死者も彼らが故郷とする世界からこの『オトギイズム王国』を訪れ、人の混み合う冒険者ギルドに混じっている。
 「十日ほど前、パスツール地方には赤い流星が落ちたんだってよ」
 「その日からその地方がおかしくなったっていうじゃないか」
 一階広間では吟遊詩人めいた男と黒いローブの男の間でそんな立ち話が交わされる。
 「おかしくなった村人は頭に赤いチューリップを生やしてるんだって噂よ」
 「嘘だい。俺は白い水仙だって聞いたぞ」
 二階にある宿屋ではドロウエルフの男女の雑談として話に花が咲き、
 「赤い花が空を飛ぶんだってよ。それらのせいでパスツール地方の村村は全滅だって話だ」
 「実際に調査してきた奴が明らかにしたそうだ」
 地下の不健全な酒場ではサキュバス達をはべらせた中華風の機械人と眼鏡をかけた美形が情報交換する。
 様様な情報と憶測がギルド内外を行き交う。
 「これを知った王国軍がとうとう動くって話だぜ」
 「軍なんかに任せたら人死にが出るだろ。悪霊にとりつかれた人間だって生きてるんだろ」
 「殺せる奴を生かすなんて、甘ちょっろい考えで戦争が出来るかよ」
 「女王をやっつければいいんじゃないのか」
 「何だよ、女王って」
 「女王蟻とか女王蜂とかいうじゃん」
 「花だったら親株か」
 「王国軍が出立するのにある四日くらいかかりそうだ」
 「現地では赤頭巾が行方不明になってるっていうわ」
 「誰だよ、赤頭巾って」
 「何日か前、ここで有名になったじゃないか」
 「ああ、ハイレグTバックの」

★★★
 「サンドラは……私の愛娘はどうなったんだ!」
 冒険者ギルドの受付では身なりのいい紳士が受付嬢にくってかかっていた。
 それはこの冒険者ギルドに出入りする者なら誰もが知っている。数日前、赤いレザーボンテージの少女『赤頭巾』サンドラ・コーラルの捜索依頼を出したサンドラの父だった。
 依頼は冒険者ギルドに受領された。
 だが依頼を受けた冒険者はいなかった。
 しかも彼女に出会った冒険者達はいたものの救出には失敗していた。
 状況を聞くに仕方がないという感じの失敗ではあったのだが、父はそれを許す気はない。
 「報酬は払わないぞ!」サンドラの父親は叫びを挙げる。「だが、もう一度、救出は依頼する! 今度の成功報酬は一人につき、三十万イズムだ! 王国軍が介入する前に今度こそ助けてもらうぞ! サンドラが……サンドラが帰ってこなければ、私はもう! もう……!」
 絹のハンカチを手によよ、と崩れ落ちる男がいた。

★★★
 ドワーフのダンブルの仲間達地からも依頼が来ていた。
 「十万イズムだ」
 ドワーフの相互組合で偉い地位についているというドワーフの男が冒険者ギルドの受付に依頼を提出した。
 「隕鉄を探して行方不明になっている我が同胞達を王国軍が戦闘を始める前に救出してほしい。……赤い花にとりつかれているらしいという情報は知っている。その困難を排して、無事に救出してくれる冒険者を我等は求めている。報酬は現金の他に我らが技術を助力として提供しよう」
 ドワーフ背が低くたくましい外見に似合わず、精緻で素晴らしい宝飾品や工芸品をデザインし作りあげる指先に長けた種族だ。『ドワーフの工芸品』というのは一つの高級ブランドなのだ。
 「同胞を救出してくれた者にはその者が持っている品物を強化してやろう。気泡のないガラスも丹念にレンズとして磨こう。宝飾品をもっと高価に装飾するのでもいいぞ。惜しみなく我等が腕を振るおう」

★★★
 冒険者達によって安否を確認された者もいる。
 『丘の魔女』バレッタ・オリクエフが、赤い流星が直撃したとされるパスツール地方の丘に住みながら無事だったとの報を受けた彼女の母は、心から安堵した風だった。
 実は彼女が赤いチューリップの親株にとりつかれているという話は、冒険者ギルドの意向によって伝えられていなかった。彼女の母がそれを知り、どういう心境になるかは予想出来ていた。だから伝えていないのだ。たとえ、それが哀しみの先のばしになるだけだと解っていても。
 ただやはり母は最近、流布しているパスツール地方での赤い花について情報について新たな不安を抱く。
 「バレッタにパスツールから離れる様に説得して連れてきてもらえないでしょうか」
 母親が受付嬢に訴えた。杖をついているが足は前よりも格段によくなっている風だ。
 「娘は下着姿のまま家ですごしているとも聞きましたが、あの娘はそういう娘じゃないんです。きっと一人きりで暮らしているのが心に悪影響を与えているんだわ。……王国が娘の所に軍を派遣するって皆が言ってるけど、戦争が始まったら、あの娘は……! ぜひ、バレッタを連れて帰って下さい……報酬は……!」
 報酬は一人頭、三千イズム。
 前回の依頼より下がっている。
 これが母親の精一杯なのだろう。
 受付嬢トレーシ・ホワイトは依頼を受理して書類を作るが……。

【アクション案内】

z1.冒険の依頼を受ける「バレッタを母親の元まで送り解ける」
z2.冒険の依頼を受ける「サンドラを父親の元まで送り解ける」
z3.冒険の依頼を受ける「ドワーフを救出する」
z4.その他