『赤い流星』

ゲームマスター:田中ざくれろ

オトギィズム世界紹介

【シナリオ参加募集案内】(第1回/全2回)

★★★
 つい一週間ほど前の朝だ。
 オトギイズム王国のパスツール地方のある場所に『赤い流星』が落ちたという。
 それは地上へと向かう速い流れで、雲を裂き、たまたま空を見ていた人達は一閃の赤い筋が青い空にくっきりと描き出されるのを確かに見たらしい。
 流星とは空から落ちてくる小さな星だと知識のある者は知っている。オトギイズム王国もそれなりの科学や魔法の発達があり、教養のある、或いは耳ざとい冒険者達の一部はそれが宇宙からもたらされた何かしらかの事象だと見当をつけていた。これが何かしらかの前兆ではないかと騒ぐ宗教結社や迷信深い者達もいたが、ほとんどの王国民はしばらくはこの噂を話題として楽しむ事以外をしなかった。
 ただ、この赤い流星について一つ、奇妙な事実がある。
 『地上へ落ちた』のだ。
 空力加熱。流星という物は大概、地上へ落ちてくる前に空気の流れと触れ合って、そのあまりのスピードの擦過に猛烈な炎を上げ、溶けて消えてしまうのだと知識ある者のほとんどは知っていた。地上まで到達するのは極めて希(まれ)なのだ。
 それはパスツール地方の丘陵地帯に落ちたらしい。
 ただし流星が地上に激突した時の轟音や光を見た者は王国の何処にもいなかった。それは凄まじいはずのものだというのに。
 流星がどうなったのかを知る者はいない様だった。
 それと時を同じくして別の奇妙な噂が人人の口にのぼり始めた。
 赤い流星はある丘に落ちたらしい。
 その丘には一人の魔女が住む家があるという。魔女とはつまり造形が意象を支配するオトギイズム王国ならではの『デザイナー』の事。
 その丘は以前は草質の緑がかった地形の色をしていたが、一日にして口紅の様な真っ赤な色に染まったというのだ。魔女の家と彼女は無事という話だが、それを実際に確かめた者はいないらしい。
 そして、その丘を中心とした幾つかの村落で奇妙な流行が広まっている。
 村人全員が高さ五十センチ程のとんがり帽子をかぶって暮らし始めたのだ。パーティ等でかぶる様なとんがり帽子。老若男女、赤ん坊までもだ。犬も猫も山羊も羊も皆がかぶっていると噂で、かぶってないのは鶏や鴨、ネズミ等の小動物だけらしい。
 その村人達が何処かよそよそしく、閉鎖的になっている。
 何故、その奇妙な習慣になったのか確かめようとした他村の人やたまたまその村を訪れた旅人までも、その村村に深く足を踏み入れた者は皆、とんがり帽子をかぶってその村からは離れなくなった。
 機能美を尊ぶデザイナーである鍛冶ギルドのドワーフ一行も、流れ星、つまり隕石が落ちたなら隕鉄という質のいい鉱物が採取出来るはずだとその丘にのりこんでいった。だが、やはり彼らも帰らなかった。全員、ほどなくして、とんがり帽子の一員として村に住み着いてしまったというが、本当にそうかは解らず行方不明だ。
 町には噂のみが流れているという風の赤い流星ととんがり帽子騒ぎだが、まだ王国自体が事件の収拾に動き出すという話はなかった。

★★★
「……どうか、娘の『バレッタ』が無事かどうかを見てきてくれませんか?」
 パスツール地方から徒歩で一日程かかる町の冒険者ギルド。
 足が悪い一人の女性が訪れ、そう依頼を申し込んできた。
 受付嬢が話を聞くと彼女の娘はバレッタというデザイナーで、件(くだん)の赤い流星騒ぎの中心である丘の上の魔女、その人だという。
「流星が落ちてきたというその場所にいる一人暮らしの娘が心配なんです……。無事だという噂もありますが確かめてもらえるまで安心出来なくて……周りで怪しいとがり帽子の人達がいるという噂もありますし……娘の今の状況を確認出来るだけでいいんです」
 彼女の依頼金はたいした額ではなかった。
 だが依頼は受理された。
 かくして冒険者ギルドでは、新旧の依頼が掲示されている依頼広告ボードの一角に彼女の依頼が貼り出された。
「赤い流星の丘だってよ……どうする?」
「あそこに近寄ったヤツはとんがり帽子の悪霊にとりつかれるって話だぜ」
「何にせよ、あんなに安い依頼金じゃわざわざ行く奴はいないよ」
 人間以外の様様な種族がたむろする冒険者ギルドの兼業酒場で、冒険者と自称する輩はそんな会話をしている。
 成功報酬、一人頭、一万イズム。
 よほどの物好きでなければ、あんな依頼は受けない。
 それが冒険者ギルドでの一貫した意見だった。

★★★
 その男が冒険者ギルドを訪れたのは奇しくもバレッタの依頼が登録されたのと同じ日だった。
「私の娘を助け出してほしい」
 身なりのいい中年男が受付嬢に語ったのは次の依頼だ。
「私の愛娘サンドラがパスツール地方に住んでいる私の母……つまりサンドラの祖母に会いに行ったのは三日前の事だ。祖母の誕生日祝いに高級ワインと高級焼き菓子を届け行ったのだ。思えば一人きりでも大丈夫と言ったサンドラを無理させず護衛でもつけてやるべきだった……」
 そう語った中年紳士はハンカチを手によよ、と泣いた。
「祖母のいる村がとんがり帽子騒動の渦中にあるらしい、というのは既に聞いていた話なのだ。しかしサンドラはまたもや私の言う事を聞かずに『平気平気』と一人で旅立ってしまった。一日で行ける村だ。……しかし、それから三日。サンドラは帰らず音沙汰もない。……どうかサンドラを助け出して連れ帰ってほしい!」
 中年紳士はそう言って、自分の語った事を依頼登録の書類に記した。
 彼はサンドラをスケッチした肖像画を革の鞄(かばん)から取り出した。出版ギルドで複製したらしく簡単なカラーイラスト化されているそれには、眉がきりっとして気の強そうな美少女の胸像画がある。白い肌にライトブラウンの髪。十六歳程だ。
「他には特徴はありませんか?」と受付嬢。
「サンドラは赤い頭巾をかぶっている」とサンドラの父は言ったが、それはこの地方なら年頃の娘の民族衣装として普通だ。「それから服装はいつも真っ赤な革のボンテージコスチュームだ。去年、サンドラにせがまれて新調してやったのだ。ああ、サンドラ……お前ほどハイレグTバックが似合う娘はいないというのに……」
 中年紳士はまたそう言いながら、絹のハンカチを眼頭(めがしら)に当てる。
 受付嬢は表情を変えず、依頼書に『赤いレザーボンテージ。露出過多』と書き加える。
 依頼登録を終えた中年紳士は冒険者達の好奇な視線に送られながら冒険者ギルドを出て行き、待たせていた馬車に乗って帰っていった。
 かくしてこの依頼も冒険者ギルドの依頼広告ボードに貼り出された。
 この依頼の成功報酬、一人頭、十万イズム。
 冒険者ギルドではトラブルを避ける為、複数の依頼に同時に参加する事を許可していない。
 果たして赤頭巾は無事に帰る事が出来るだろうか。
>*一部通貨単位に表記間違いがございました。大変申し訳ありません。

【アクション案内】

z1.冒険の依頼を受ける「丘の魔女の無事を確かめに行く」
z2.冒険の依頼を受ける「赤頭巾を救出しに行く」
z3.とんがり帽子をかぶった村人達を調べる。
z4.行方不明になったドワーフ達を探しに行く。
z5.その他


【マスターより】

どうも、初めまして。田中ざくれろです。
剣と魔法のファンタジー世界『オトギイズム王国』を引き連れてバウムサイトへやってきたわけですが、いきなりイロモノというか反則というか、の処女航海ですね(笑)。
恐らく自分はパロディ等のギャグが多くなると思いますから、そこら辺のコメディチックを許容出来る方の参戦お待ちしています。
またR-15程度のエロパロが入る余地があるので、そういうのが平気な方もどうぞ(むむ、自ら門戸を狭めてしまったか?)。でもBLは勘弁してね(苦笑)。
なるべく大勢のPCに呆れずにつきあっていただけると幸いです。呆れたままつきあっていただけても可。
カオス大好き♪ シリアスもギャグもアクション次第♪
では興味を持たれた方はオトギイズム王国でざくれろと握手♪(鎌状の手を振りながら)