ゲームマスター:夜神鉱刃
もくじ ●採取班 ●護衛班 ●支援班 ●採取班 本日は、初夏のサウザンランドのドロール沼現地でのゼミ日和である。 錬金粘土の採取班ではジュディ・バーガー(PC0032)が先頭に立ち泥沼に入る。 汗を流して頑張る素晴らしさを学生達にも示すべく教職員として率先垂範する為だ。 服装も胴付長靴にエアコン・ステッカーという気合の入った作業着である。 「イーハー!! 錬金粘土、ビバ・ゲット、デース!」 「ですね……ジュディさん。頑張りましょう……」 ジュディに続きコーテス・ローゼンベルク副委員長(NPC)も同じ服装で泥沼入りをした。 ジュディは自慢の怪力で愛用スコップを利用して沼から粘土を次々と掘っていく。 コーテスもジュディ程ではないが白魔術で怪力強化して粘土堀りに勤しむ。 二人が元気良く掘るごとにプラスチック製ドラム缶へ粘土が投入されていく。 ドラム缶へ黄金に輝く粘土が溜まっていく様は勇ましいの一言。 ジュディの傍らでアンナ・ラクシミリア(PC0046)も採取作業に精を出している。 アンナはジュディのようにフル装備ではないので浅瀬を主な作業場とする。 避暑対策も大事なのでエアコン・ステッカーも一枚貰って背中に貼っておいた。 ジュディのプラスチック製ドラム缶を借りて、ここへ粘土をほいほいと投入していく。 「ふう、暑いですわね。まあ、ひとまず手前で取れるのはこれぐらいの量でしょうか」 「OK。浅瀬ではだいだいゲットしたデース。奥にも潜って行くデース」 ジュディは迷彩柄の特殊水着を着込んでいるので潜水も難なく出来る。 動きづらい泥沼を泳ぎながら、ジュディはコツコツと錬金粘土を貯蓄していく。 わずかな黄金を探し当てる為に広大な泥沼に潜って行くのはなかなかのハードワークだ。 沼地での錬金術の素材採取は典型的な3Kとも言える。 ジュディのような怪力で逞しいタイプは採取班が適任であるだろう。 区切りの良い所まで作業が片付くと、ジュディとコーテスは適度な休憩を入れる。 アンナもジュディ達の頃合いを窺い見て、一緒に休憩を取る。 三人は木陰に腰かけてマギボトルで軽く乾杯すると雑談を始めた。 「ヘイ、アンナ、コーテス。ユー達は、ナゼ、今回のゼミ合宿に参加したデース?」 ジュディからの何気ない質問に対してアンナがにこやかに淡々と答える。 「錬金術には以前から興味がありましたので、特別課題授業としての参加ですわ。護衛班と採取班で迷ったのですが、目的が錬金粘土の採取なので、採取班を選びましたわ。わたくし、機動性重視のタイプですので、沼地での戦闘は不向きという判断ですので」 コーテスもアンナに続いてのろのろとだが真面目に答える。 「錬金術と白魔術って……以外と近い関係にあるんですね……。例えば、臨床錬金術の箱庭療法のセラピーから……白魔術のヒーリング理論を……見つめ直そうと思いまして……。ところで、ジュディさんの方は……なぜですか?」 ジュディもWAHAHAと笑いながら明るく答えてくれる。 「教職員研修の一環トシテ臨床錬金術ゼミ合宿へ参加したデース。実ハ、前回のマギ・ジスタン文化鑑定士試験に合格した結果、ホンノ少し給与がUPして味シメタ、デスネ。モトモト、ジュディは、出身世界デハ、スポーツ特待生待遇で大学卒業したデース。デスガ、アメフトだらけの学生ライフ、デシタ。実ハ勉強ハ苦手デスケド、文化鑑定士受験が起爆剤トナリ、学ぶ喜びに目覚めた次第デース」 木陰の涼しい所で三人は軽く雑談した後、作業現場に復帰する。 その前にジュディが水分タブレットを取り出してアンナとコーテスにも分ける。 初夏の密林の暑い場面なので、タブレットによる水分塩分の補給は欠かせない。 清々しい汗を流しながら、三人で協力して錬金粘土採集に力を尽くすのであった。 *** 「沼地で魔物と戦う冒険もいいが、沼地でアメンボやミズカマキリを観察する日常もいいのであるな」 萬智禽・サンチェック(PC0097)は沼地に浮かぶアイボリーの浮標となっていた。 そして潜息珠を大口に含み、水面に浮かぶ錬金粘土を念動力で拾って採取していた。 時に水面で遭遇する愉快な小虫達に挨拶しながら作業を楽しんでいた。 「ふう、暑い中での仕事は大変なのだなあ……」 泥沼に潜伏するのは流石に暑苦しい。 水分タブレットなんかもたまに浮かせて、口に含み、水分塩分を補給する。 巨大目玉の魔物と雖も熱中症対策は欠かせない。 「流石に密林の沼地なだけあって、虫が多いのであるな。全身が眼球だと、やぶ蚊やブヨに刺されるのが怖いのである。後で痒み止め薬を付けても、粘膜に染みそうでそれはそれなりに恐怖である」 時に毒虫の類が巨大目玉に止まりそうになるが、どういう訳かつるりと滑っていく。 目玉に虫除けを塗っただけあり、ちと痛いが、効果は抜群らしい。 「仕事がだいぶ捗るのである。護衛班は本当に良い仕事をしているようだな」 沼地環境での採取活動は厳しいが、萬智禽が問題なく作業出来るのは護衛があるからだ。 ドロール沼地は手強い水辺の魔物が多いが、護衛班がいる限り萬智禽に危害が及ぶ事はない。 彼は沼地の真っ只中で活動していたが、錬金粘土もある程度の量を集められたようだ。 量的に問題ない事を判断すると、陸地に上がって切り上げるのであった。 ベースキャンプではシャワー付きで五右衛門風呂が用意されていた。 巨大目玉のサービスシーンを描写しても仕方がないかもしれないが、一風呂浴びて綺麗になる。 風呂上りには、ひんやりとした特製のクリゴ ジャイアントガブリゴ パンダを取り出して、大口に放り込む。 ぐっしゃりぐっしゃりと、牙を動かしながら噛み砕き、味わい、ご満悦だ。 「ぷはー、暑かったであるなー」 *** 「ここで水着を着替えるんだよね?」 姫柳 未来(PC0023)はベースキャンプの女子更衣室でスクール水着(聖アスラ学院版)に着替え出す。 カーテンで仕切られているだけの簡素な更衣室なので外部からの侵入など簡単だ。 ゼミに参加する仲間達は紳士ばかりなのできっと覗かないだろう。 しかし、このHENTAI(トムロウ・モエギガオカ(NPC))と来たら……。 「うおお! 未来ちゃんが水着に……!?」 トムロウは本日、護衛の役である。 彼は護衛の名目で未来がいる更衣室を守っているものの……。 職権を乱用して覗き魔と化す場合も、もしかしてあるのかもしれない。 「あれ? トムロウ?」 「ん? 未来ちゃん?」 未来が水着になろうとしたその瞬間、更衣室の隙間から目が合った。 きっと、トムロウは覗いている訳ではなく、護衛役をちょっと熱心にやり過ぎたのだろう。 「きゃああああああ! HENTAAAAAAAAAAI!!」 「うおおおおおおお! ごめんなさあああああい!!」 未来の電気ショックによってトムロウには早速戦闘不能判定が出てしまった。 未来が沼地に潜り錬金粘土を採取し、トムロウが採取中の未来を護衛する。 マンパワーがやや足りないので、未来がドッペルゲンガー発生小型装置を使役する。 つまり、この沼地の一角では二人の未来がいてトムロウが後衛で護衛している。 未来が沼地に浮かぶ黄金の粘土をぷかぷか浮かせて集めていると……。 「未来ちゃん、危ねえぜ!」 迫りくるキラー・ドロール・ホーネットが採取中の未来を強襲しようとするが……。 後方から守るトムロウが電磁砲の一撃でホーネットを撃退してくれた。 「あ、ありがとう、トムロウ!」 採取中の未来が顔を上げて、彼氏に守られた事を実感して赤くなる。 一方、沼地には空中の外敵以外にも沼内にいる外敵もいる。 キラー・ドロール・フィッシュとキラー・ドロール・ザリガニが採取中の未来を挟み撃ちで襲撃して来たら……。 その時も勿論、回転シューズで上空にいるトムロウが二丁拳銃で威嚇射撃を繰り広げる。上空から怒涛の連射を受けると魔物達は恐れて撤退してしまった。 「大丈夫かい、未来ちゃん?」 「うん、助かったよ、トムロウ!」 お陰様で未来は採取中に魔物から傷つけられる事が一度もなかった。 未来はトムロウのカッコイイ所を再発見して乙女心がときめくのであった。 「トムロウ、いつもありがとう♪」 未来がスクール水着で萌えポーズをして彼氏に礼を述べる。 ちょっと男心を刺激してしまったらしくトムロウは鼻血を噴いてしまったのであった。 とまあ、トムロウが貧血気味になりそうな所で休憩に入る。 休憩中は木陰で仲良くマギボトルをシェアして飲んだそうだ。 錬金粘土を十分に集め終えた未来達はベースキャンプへ切り上げた。 未来は泥だらけになった水着や素肌を洗う為にシャワーを浴びて五右衛門風呂に入る。 「トムロウ? 今度は着替えとか見ないでよ?」 「おう! 任せとけ、護衛はばっちりだぜ!」 トムロウが護衛してくれたお陰で未来は安全に着替えも入浴も出来た。 (大丈夫、覗き見るHENTAIは他にいません!!) 採取班の錬金粘土の採取活動は量的に十分に確保出来たのでばっちりだ。 明日はゼミ合宿で箱庭練成の授業がどうなるか楽しみだ。 ●護衛班 「さすがにサウザンランドの密林なだけあり絶景ですわね。護衛班も大変になりそうですが、本日は頑張りましょう」 本日はマニフィカ・ストラサローネ(PC0034)にとって絶好のフィールドワーク日和だ。 魔術博物学を専攻する彼女は、色んな学術分野を学ぶ事に勉強熱心だ。 錬金術系統の知識をアガサ・マープル先生(NPC)のゼミや講義から教わる事も多い。 『臨床錬金術』に興味を覚え、また先生からも誘われた為、喜んで夏のゼミ合宿に参加した。 「さて、マニフィカさん、どうしましょう? 採取班の皆さんの護衛をするにしても、沼地の視界が悪過ぎるのです」 マニフィカの学生研究者仲間であるリリアン・ピンクドルフィン(NPC)も今回は一緒にゼミ合宿に参加している。共に護衛班なのであるが、まずは採取前に護衛足場の下地を作った方が良いだろうと相談している所だ。 「そうですわねえ……。採取場であるドロール沼は、大きく分けて二つの点で厄介な環境と言えましょう。まず、濁った水質の為に視界が効きません。次に、泥の粘性で身動きが制約を受けてしまいますわ。この二点を改善する為に、わたくしの水術で対応致しましょう」 マニフィカがトライデントを空高く振り翳して水術呪文を詠唱する。 すると沼地の水質に神秘的な力が働き、泥水の粘性と濁りがやや改良された。 さらに水上が四方八方に綺麗に割れて水壁の区分が生成されると魔物の群を押し除けた。 「おおっ!? 沼地が改良されたのです? さっすが、マニフィカさん!」 リリアンも目を丸くして驚く程、泥沼での足場が改善されたのであった。 採取班の採取が開始されると同時に護衛班も護衛の仕事を開始する。 マニフィカは魔竜翼を羽ばたかせると空中から警戒をして先制攻撃に備える。 リリアンもプチドラゴンに跨ってマニフィカの空中戦に援護射撃をする。 「リリアンさん、気を付けてくださいませ。そこ、来ますわよ!」 キラー・ドロール・ホーネットの大群をマニフィカがファルコンの奥義で駆逐する。 正に今、ホーネットが採取班やリリアンを襲う所を間一髪で封じたのだ。 「マニフィカさん、上、上なのです!」 別のホーネット群と対決中であるマニフィカの遥か頭上に巨大な蜘蛛の巣がある。 巨体のキラー・ドロール・スパイダーが糸を吐きマニフィカを捕らえようとするが……。 竜の紅く燃え盛る息吹が吹き荒れて頭上の蜘蛛魔物を巣ごと焼き払った。 無論、マニフィカが蜘蛛に捕縛されて食される事はない。 「リリアンさん、ありがとうございます。お陰で助かりました」 ともかくして、採取班を守りながらその周辺で戦闘するマニフィカとリリアン。 二人の警護によって採取班が攻撃される事はないが、護衛活動はとにかく目立つ。 気が付いた時には、ホーネットのボスが他種の魔物達も率いて囲んでいた。 敵陣の飽和攻撃が炸裂して、護衛班が窮地に落とされるその時……。 「オンキリキリ……バッサーラ……センジュカンノン様……」 マニフィカが仏界にいるセンジュカンノンに祈祷を捧げるとMAP兵器が発動する。 御仏の巨大な腕のパンチ攻撃が天上から落下して魔物の群れを制圧した。 しかし、ボスと近衛らはまだ落ちていない。 「マニフィカさん、援護するのです!」 リリアンのプチドラゴンが蒼く凍える息吹で魔物共に追撃をくらわせる。 氷撃でボスが怯んだ一瞬を突いてマニフィカがファルコンの猛撃を連打する。 「この勝負、頂きましたわ」 この日、マニフィカとリリアンの護衛で採取班の被害は最小限まで抑えられた。 護衛仕事が終わった後、ベースキャンプでは出来立ての五右衛門風呂が用意されていた。 二人は仲良く入浴して休息を取るのであった。 *** 「いやあ、いいなあ、密林の澄んだ空気。沼地ではマニフィカさん達が守っているから、俺はここが担当か」 科学兵器のパワースーツをまとった呉 金虫(PC0101)が採取班の護衛として密林に立つ。 水分タブレットで熱中症対策をして、虫取り線香を腰に巻いて虫対策もする。 両腕のパワーアームの拳を合わせ、金属音を立てて、やる気満々である。 「まずは、採取班が活動し易いように道中の整備から始めるか……」 呉は、採取班が通行する獣道で邪魔な人食い植物や人面草花を除草する。 近距離では腕力で叩き伏せて、やや距離がある時はレーザー光線で焼き払う。 ひとまず、採取中に問題となりうるような草木の魔物は排除しておいた。 「うっかり沼地に近寄って、パワースーツが沼地に沈まない様に気いつけるか。しかし、粘土遊びなんて小学校以来、久しぶりだぜ」 沼地に入って行く採取班の周辺で呉が護衛活動を始める。 例えば、昆虫魔物の類が採取班を襲いそうな時は沼地近辺まで駆けつけて叩きのめす。 時には、巨大ザリガリの魔物が陸へ上がって来た時には呉が勇敢にも相手取るのだ。 「今度からロボットアニメの新しいデザインコンセプトはアレだな。自在に変形する流体金属を外形に用いる。節足動物めいた鎧みたいな関節はない。一体成型のクレイモデルの様なゴーレムみたいな外見がロボットの新主流になっていくに違いない。俺はそういうスーパーとリアルともつかないロボットの開発を目指すぜ!」 呉は一人でぶつぶつと語りながら、向かって来る魔物達と熱く殴り合っている。 彼が目指すロボットの理想は高く、今回の錬金術ゼミがヒントになるかと思い参加している次第だ。 「流体金属が外装なら……。衝撃や高熱なんかも、波紋を発生させて受け流す様に吸収するだろう。ううむ、分散する流体ならではの防御方法が使えそうだな。そうか、水の様にダメージを受け流すんだ。これは究めがいがありそうだぜ」 もはや護衛の事など上の空で頭の中で研究に熱中しながら魔物達を叩く。 ちょっと研究熱が強過ぎる所もあるかもしれないが、護衛の仕事は一応、忘れていない。 研究の理論を詠唱しながらも、Sフィールドで採取班の援護防御なんかもしたりする。 呉達、護衛班のお陰で採取班は特に大きな怪我もする事なく各仕事を終える事が出来た。 護衛終了後、呉も一風呂浴びた後、冷えた地ビールをラッパ飲みしながら休むのであった。 ●支援班 ビリー・クェンデス(PC0096)は、夏のゼミ合宿を主催するアガサ・マープル先生と過去の学院イベントから縁がある。今回はお手伝いをするべく研究所の職員研修という名目で参加を申し込んだ。 どうやら彼は、臨床錬金術の「箱庭療法」というセラピーに強い興味を惹かれたらしい。セラピーの「癒し」は、心の救済にも通じるという話もよく聞く。 「よっしゃ! 善は急げや、錬金粘土、運びまっせ〜」 「そうだね、運ぼうか、ビリー?」 「シャー、シャー!」 「コケ、コケー!」 「皆さん、いってらっしゃい。何かあったら私に言って下さいね」 ビリー、シルフィー・ラビットフード(NPC)、鶏や蛇のお供達は支援班の主力としてベースキャンプの運営を任されている。なお、この班の管理人のトップがマープル先生だ。 特にビリー達は、採取地とベース区間で小型飛空艇(空荷の宝船)を利用して錬金粘土の運搬を手伝う。 採取班が自前の運搬手段を有していたとしても、採取した錬金粘土は相応に嵩張る事だろう。 そこで小さな飛空艇でもあれば、他班の負担を軽減出来て、地味ながら波及効果も大きい。 「お疲れやで〜! 暑さに負けへんで頑張りまっせ〜!」 「氷の精よ……」 「萌えー!」 ビリーは小型飛空艇を運転しながら、スポーツドリンクやおにぎりも適時配給している。 『腹が減っては戦はできぬ』と言うし、疲労や熱中症対策にも適度な休息が不可欠だ。 一方で、飛空艇からはシルフィーの精霊やキチョウがクーラーの如くひんやりとした冷気を送り届ける。 夏場の重労働であるし、適度なクールダウンも長時間働く為には必要だろう。 時にはビリー達がかき氷スタンドを開いて採取班や護衛班をもてなす。 「かき氷、ありまっせ〜!」 「はい、苺味ね!」 「ベロベロー!」 「ぷごー!」 シルフィーが注文を受け、ビリーが小槌でかき氷を作成し、茸や猪のお供らが注文を渡す。 かき氷スタンドは繁盛していたが、ビリー達自身もしばしの休憩は必要だ。 人がはけたら、自分達用のかき氷を作成し、虫除けを焚きながら木陰で涼む。 「ふう、暑くて大変やけれど、充実してまっせ。くぅ、き〜んと、くるねん!」 「そうだね、ビリー。メロン味、美味しいね」 「ミュー、ミュー」 頑張って働いた後に仲間達で食べるかき氷の味は格別である。 たまにお供のカモメらがビリーやシルフィーのかき氷を突っついていた。 「おやおや? 休憩中ですか? 冷製クッキーも作ってきましたよ」 「ほんまかいな? おおきに!」 マープル先生からひんやりとしたクッキーの差し入れがあり、ビリー達は喜んで頬張るのであった。 ビリー達支援班の働きがあり、採取班も護衛班も作業の効率化に成功したようだ。 痒い所に手が届く、そんなサービス精神が実現された一日であった。 *** 支援班の最初の仕事はベースキャンプ作りであり。 サウザンランド密林の初夏の自然に囲まれて気分が浮かれているのだろうか。 リュリュミア(PC0015)が珍しくも張り切って仕事をしていた。 本日は、テント張りの作業から一日の流れが始まる。 「リュリュミアさん? 手伝って下さいますか?」 「はぁい、マープル先生のお手伝いしますぅ。どんなことですかぁ?」 マープルがリュリュミアにテントの帆を張る作業について説明すると……。 「リュリュミアはこう見えて、テントを張ったりするのが得意なんですよぉ」 それもそのはず、リュリュミアは植物系統の知識やキャンプに詳しい。 テントが張り上がると、ブルーローズの蔦を張り巡らせて日除けも作った。 リュリュミアは支援班の中でも調理部に回る事になった。 ベースキャンプ内で簡素な調理場が出来た後、本日は厨房でずっと調理に取り掛かる。 「いもにぃ、いもにぃ、うふふぅ〜」 まずはタロイモの煮っころがしから調理しよう。 丁度良く、マープル先生が南国の食材を用意してくれていたようだ。 タロイモの皮を剥いて、竈で煮詰めて、美味しそうに盛り付ける。 「パーンけぇき、食べたいなぁ〜」 キャッサバを素材としたパンケーキも作ってみようか。 パンケーキ生地を練り上げた後、フライパンでこんがりときつね色に焼いてみる。 「デザートはふるうつですぅ〜」 流石にサウザンランドだけあって素敵な南国果実が勢ぞろいだ。 マンゴー、パパイヤ、パイナップル、バナナ、オレンジ……ここは楽園。 南国フルーツミックスで彩る盛り合わせも完成。 マープル先生も完成具合を確認すると微笑を浮かべて軽くコメントする。 「リュリュミアさん、お料理ありがとう。どれもとても良く出来ているわね」 調理部の支度が早めに終了したのでリュリュミアはお手製ハンモックに寝転がる。 「みんなが帰ってくるまでお昼寝しますぅ」 やがて昼休みの時間になり各班のメンバー達がベースキャンプに続々と戻って来た。 リュリュミア達が心を込めて取り組んだ料理の数々がいよいよ振る舞われる。 採取班……。 「あら? これリュリュミアが作ったのかしら? 芋煮の味が良い具合ですわね」 アンナは満足した表情でタロイモを上品に口付ける。 「おお? ベジタリアン向けのフルーツミックスもあるのだな。では私はこれを頂こう」 萬智禽は念力でフルーツをぷかぷかと浮かせてぐしゃりと噛み砕く。 「未来ちゃん? パンケーキ一緒に食わね?」 「そうだね、トムロウ。せっかくだから、分け合って食べようか?」 未来とトムロウでキャッサバのパンケーキを互いに食べさせ合いながら食事した。 「ヘイ、リュリュミア、サンクス。コーテス、レッツ・フード・ファイトッ!!」 「イエス、マダム! フードファイト……リュリュミアさんに……感謝です」 ジュディとコーテスは調理主に感謝の意を述べた上、料理各種を爆食いした。 護衛班……。 「リリアンさん? 南国フルーツは何がお好きですか? わたくしは、海の物も良いですが、山の物も好きですわね」 「そうなのですねえ。無難にパイナップルといくのです」 マニフィカとリリアンは午後の戦闘に備えて食事を軽めに済ます。 特に今日みたいな暑い重労働の日は冷たくて美味しいフルーツが食欲を促す。 「よっしゃあ、やっと昼食だぜ! んじゃ、遠慮なく頂くな」 パワースーツを脱いだ呉も猛烈な勢いでタロイモやらパンケーキやらを食べ尽くす。 彼の場合はパワータイプで戦闘するのでここでエネルギーのチャージだ。 支援班……。 「ほな、皆さ〜ん? リュリュミアさんの料理も美味いが、お茶もありまっせ〜」 ビリーも支援班の一員としてお茶のペットボトルを配り歩く。 「ビリー? あたしも手伝うよ。終わったら、タロイモでも食べようか?」 シルフィーもお茶配りを手伝うが、後に二人とお供達もご相伴に預かった。 「うふふぅ〜。みんな、嬉しそうにわたしの料理食べてくれて幸せだなぁ〜」 リュリュミアも自ら調理したフルーツでも摘まみながら皆の食事風景を窺っている。 「そうですね。皆さん、リュリュミアさんの料理に舌鼓を打っていますね。午後も引き続き、支援班でよろしくお願いしますよ」 マープル先生も美味しく頂きながら、支援班調理部の活動を激励してくれたのであった。 採取班と護衛班の胃袋を支える支援班調理部のこの日の活動は充実していた。 お腹が空いて倒れる人が一人も出なかった事が調理部の何よりもの誇りと言えよう。 *** ゼミ初日の錬金粘土採集活動は無事に成功で終わる。 明日はいよいよマープル先生のアトリエ別荘で箱庭練成のゼミが開かれる予定だ。 ぜひ明日もゼミに参加して錬金術セラピーのいろはを学ぼう。 (続く) |