「マギ・ジスタン文化鑑定士試験」第1回(筆記試験編)

ゲームマスター:夜神鉱刃

もくじ


●試験準備

●試験当日

●試験後日

◆解答


●試験準備

 聖アスラ学院の大学図書館はいつも以上に賑わっている。
 今月開催される文化鑑定士試験の準備に向けて皆、勉学に励んでいるからだ。
 アンナ・ラクシミリア(PC0046)とマニフィカ・ストラサローネ(PC0034)はグループ学習室で同席しながら試験勉強の対策に取り組んでいた。

「マニフィカ、このオーブの問題ですが、ゲイシャのエル・オーブは実在したかどうか怪しいのですけれど……。『ゲイシャのエル・オーブは販売停止になった』という記述について見解を聞かせて頂けないでしょうか?」
 怪訝な表情のアンナは問題集の問題となる箇所についてマニフィカに質問した。
「エル・オーブの問題ですか? その問題でしたら、仰る通り、実在しないオーブという正解で合っていますわ。『販売停止』という情報はひっかけですので、お気をつけくださいね。わたくしは以前、オーブについての講義を受講した事もありました。例えば、こちらの教科書によれば……」
 マニフィカから詳しい解説を受けたアンナは納得した顔で礼を述べた。
「ところでアンナさん? 記述式の問題についてあなたの解釈をお聞きしてもよろしいでしょうか? 参考書によりますと、魔術と科学の対立図式が出題される傾向にあるらしいですわね。わたくしは魔術寄りの思考ですが、アンナさんでしたら、この問題は如何にして解答されますか?」
 マニフィカが図式チャートを提示するとアンナは首を傾げて考えた後、解釈を述べた。
 入念に準備を整えて勉強している二人が文化鑑定士試験で良い結果を出せる事を祈ろう。

 とある日の教職員研修の説明会……。
 ジュディ・バーガー(PC0032)は文化鑑定士試験の研修説明会に参加していた。
「……と、いう訳で、マギ・ジスタン世界の文化を改めて学ぶ事は良い知的刺激になります。今回の文化鑑定士試験は教職員にとって最良の研修になる事でしょう。なお、試験に受かると資格手当で給与UPもありますよ!」
「フムフム……。ノート・テイク・デース。(メモを取ります)……ワ、ワッツ?(な、何と?) 給与UPデスカ!?」
 研修説明会を経て、ウォルター(NPC)の導入講義に参加した後、ジュディは早速試験勉強に取り組む事にした。ジュディは、警備員の仕事も兼任しているが、当直室まで勉強道具を持ち込んで寸暇を惜しまず試験対策をする。
「オー・イエス! テキストブックによれば、ジュディの愛読書である『世界大戦時代の英雄たち』も出題されるデスカ? 著者は……聖アスラ学院戦争文学研究会でした。デハ、ゴーストシェル遺跡で遭遇したガイスト将軍(NPC)のバトルスタイルも復習するデース」
「シャー! シャー!(がんばれ! がんばれー!)」
 ジュディは教員ではあるが、実は昔から勉強があまり得意ではないらしい。久しぶりの試験勉強に悪戦苦闘しながらも、知的な雰囲気を楽しんでいる。
 愛蛇のラッキーセブンもくねくねとダンスしながら応援してくれている。
 ヘイ、ラッキー、まったくキュートな可愛い奴め〜♪

 マギ・ジス大学の大学街にある洒落たレストランで呉 金虫(PC0101)とヴァイス(NPC)が科学的な話題について雑談していた。
「ほう? 文化鑑定士試験か? 呉も物好きだな?」
 ヴァイスがビールジョッキを掲げながら呉に問い返す。
「ああ。現代科学研究所の方から研修案内があったんだ。研究員として研究能力を向上させる為にウォルター先生の授業に出て、マギ・ジスタン文化鑑定士試験を受けるって話だ。ま、鑑定士になれれば、箔がつくし、これからもプラスになるだろう?」
 呉が赤ワインを飲み干しながら老人の問いに答える。
「だがよ、呉? 科学者は資格が全てじゃねえぞ?」
 ヴァイスは文化鑑定士の資格を持っていない。
 資格否定派のマッドサイエンティストなのだろうか。
「わかっているさ。だが、今回の文化鑑定士試験をきっかけに科学と魔術の関係性について色々と考えてみたいと思ってさ」
 呉は資格マニアという程ではないが、今回の試験に強い意気込みを感じているようだ。
 翌日、研究所の個室に勉強道具一式を持ち込んで試験勉強に取り掛かる。
「ふう、暗記する事や考察する事の量がかなりある試験だな? いっそカンニングマシンでも発明した方がいいんじゃないか……。いや、ダメだ! 科学の良心に従ってそんな事をしてはダメだ! 科学的思考から考えて真面目に勉強しよう!」
 呉は教科書を読み込みながら、これまでマギ・ジスタン世界において事件に立ち会ってきた日々を思い起こす。
 切りの良い所まで教科書を読み終えた後、この世界で過ごしてきた時間の短さに改めて気づくのであった。

 現代魔術研究所の方でも研修案内の説明があるらしい……。
「皆でマギ・ジスタン文化鑑定士試験を受けに行くよ! 研修参加したい人はウォルター先生の授業に出ようね?」
 研究所の調査部隊では、シルフィー隊長(NPC)が隊員達に呼び掛けていた。
(研修という建前もあるんやけれど、シルフィー隊長が受験するならボクも……)
 ビリー・クェンデス(PC0096)は、最初は軽い気持ちで研修参加を志願したのかもしれない。
 子供っぽいメンタリティから勉強に集中するのは苦手意識が強いらしい。
 だが、講義を経て、研究所での勉強会の日々が経過する度に熱心な態度に変化していった。
「ビリー? 問題集の復習でもしようか? ハイランダーズ国家に生息しているドラゴンの名前を3つ程度挙げてみて?」
「せやな? 例えば、ウマウマドラゴン、ウマウマベビードラゴン、木竜……あたりかいな?」
 シルフィー隊長が元気よく問題を出し、隊員達が生き生きと答える。
 研究所の方針としては結果を出す事を第一として頑張るが、皆で楽しく勉強する事も忘れない様子だ。

 試験対策を主に図書館や研究所等で取り組む者もいれば自宅で自習する者達もいるようだ。
 現代魔術研究所の研究員である萬智禽・サンチェック(PC0097)も研究能力を向上させる為にマギ・ジスタン文化鑑定士試験を受験する予定である。
 昼の時間帯はシルフィー隊長達と共に勉強会に真剣に取り組む。
 帰宅した後は、自分自身を厳しく律して猛勉強に励む。
「ふっふっふっ。……これだけ冒険をしてきたのにマギ・ジスタンについて解らない事だらけである! いかんなー。自分が関係していなかった事件はともかく、解決してきた事件関連さえ結構、記憶が曖昧である……」
 マギ・ジスタン世界の六大国家の文化全般に加えて考察問題まで出題される。
 その膨大な量を勉強するのはなかなか骨の折れる行為だ。
 徹夜勉強になると鉢巻きを締めた萬智禽の眼球が血走った。
 徹夜で疲れた身体には『マギ・ジスの天然水』で気力回復だ。
「しかし、いかんなー。『Moendows7』で勉強をしていると、ついつい『さえずり』系のSNSを開いて観覧してしまうのである。可愛い動物系の投稿動画は癒されるのだ。適度に休憩を入れた方が効率良いと聞いた事があるから、いいのかもしれないのであるが……」
 試験対策が功を奏でる事を祈って萬智禽は黙々と勉強を続けた。

 文化鑑定士試験を受験するにあたりカップルで勉強する人達もいるようだ。
 姫柳 未来(PC0023)は彼氏のトムロウ・モエギガオカ(NPC)と一緒に試験勉強中だ。
 未来は高校生でトムロウは大学生なので年齢差や学年差がある。
 しかもトムロウはイースタのネイティブであり、イースタの文化にも詳しい。
 だったらトムロウに教えて貰おう!
「ねえ、トムロウ? イースタの産業構造の特徴だけれど、まずマークしておくべきは萌え産業かな?」
「おうよ、未来ちゃん! 『イースタの産業構造は萌え産業に始まり萌え産業に終わる』という見識もあるぐらいだ。萌え産業を中心に押さえておくとイースタの文化は理解が進むぜ?」
 いつもはおバカでHENTAIな彼氏だが、文化系の勉強対策の時はとても頼りになる男である。
 しかしイースタは、萌え産業だけでなく電気街のコンピューター産業やゲイシャ喫茶といった飲食業の分野も強い事は補足しておこう。
 さて、何時間も必死に勉強していると疲れて来る頃だろう……。
「ふぅん、トムロウってこういうのが好きなんだね?」
「うおおお! 未来ちゃん、そ、それはダメだああああああああ!!」
 あろう事か、休憩中にトムロウが紅茶を淹れている隙に未来が彼氏の私物を物色していた。「萌え」な感じのいけないゲームや同人誌が山程出て来たとは!?
 トムロウのHENTAI趣味の勉強が試験勉強に役立ったかどうかはまた別の話。

●試験当日

 マギ・ジスタン文化鑑定士試験の当日の朝……。
 緊張感が次第に高まる試験会場において未来とトムロウが着席していた。
「未来ちゃん? どうだい? 緊張してない? 試験はやれそう?」
 心配性の彼氏が未来に優しく問いかける。もっとも彼氏の方は開始前からズタボロだが。
「うん。何とかやれそうかな? トムロウも開始前からボロボロだけれど大丈夫?」
 流石に彼女の前でカッコ悪い姿を見せられないという事だろう。
 ズタボロの彼氏に微笑して答える未来の方も試験勉強を頑張り過ぎてお疲れか。
 やがて試験開始時刻になり厳しそうな試験官が開始の合図をする。
「これより試験を開始します!」

 試験が始まるや否や、大学でも優等生のマニフィカは即座に問題を解き始める。
 問題用紙を捲りながら全体をざっとチェックする。
(マギ・ジス。ハイランダーズ。フレイマーズ。ノーザンランド。サウザンランド。イースタ……。六大国家の選択肢ですが、過去問と問題集で予測を立てた通りですわ。選択肢の問題はどれも面白いぐらいに予想通りか過去問の焼き直しみたいな問題が多いですわ)
 絶好調で問題を順次解いていくマニフィカ。
 まさか選択肢は満点合格か!?

 試験も佳境に差し掛かる。
 アンナは黙々と試験問題を解き進めていくが57問目で立ち止まった。
「あらっ!?」
 思わず小声で軽く悲鳴を出してしまった。
 それもそのはずだ。問57にはイースタ大学での懐かしい演習写真が写っていたからだ。
「どうかされましたか?」
「何でもありません、ごめんなさい」
 頬を赤く染めたアンナが試験官に平謝りした。
(え、えっと!? 問58は……!?)
 頭が真っ白になったとまでは言わないが、ちょっと平常心を失ってしまったようだ。
 だけれどアンナは最後の最後まで試験を戦い抜いたのであった。

 試験の午前の部がやっと終わった後、待ちに待った昼休みの時刻に入る。
 シルフィー調査部隊の仲間達が集まり学院の庭でランチタイムだ。
 ビリーは十八番の『打ち出の小槌F&D専用』を駆使してぽんぽんと召喚を始める。
 サンドイッチ、おにぎり、ジュース、お茶、デザート……多種多様なランチの登場だ。
「ほな、食ってな? ボクのおごりやで」
「ビリーありがとう。早速頂くね?」
 ビリーが林檎ジャムのサンドイッチをシルフィーに手渡しした。
 同僚の萬智禽にもおにぎりを放ると念力で受け取った。
 萬智禽も巨大な牙を剥き出しておにぎりを噛み砕きお茶を一気に飲み込む。
「ありがとうなのだビリー殿。腹(目玉)が満たされたのだ」
 現代魔術研究所のメンツは楽しいランチタイムを過ごす事ができた。
 気力と体力を回復したので、午後の試験もばっちりだろう。

 試験の午後の部は難関の記述式だ。
 呉は第1科目の世界観理論編の問題の問1を選択して解答記述する。
「ううむ……。やはり出たな。魔術と科学の対立図式を考察する問題か……。ええと、通説である『魔術の中に科学がある』に対して少数説は『科学の中に魔術がある』という説である、と。俺は科学者だから少数説を取るとして、科学の立場から論証すれば……」
 方程式チョークはこの場で使わないものの、愛用のペンですらすらと筆記した。
 これは……勝てる!?

 一方、ジュディの方は第2科目の戦略理論編の記述に取り掛かる。
「オウ!? バトル行為のベストなメソッド(方法)デスカ? フウム……。先制攻撃……・が、ベストアンサー、デショウカ? 奇襲やゲリラ戦法も考察するデース!」
 怪力のせいだろうか、緊張感のせいだろうか、筆圧が強い。
 だが、力強い書き方であると同時に繊細に論証を進めていく。

●試験後日

 マギ・ジスタン文化鑑定士試験の一次試験である筆記試験が無事に終了した。
 厳しい一次試験が終わった後日……。

 一次試験後、マニフィカは人魚姿で学院の室内プールで遊泳していた。
 試験勉強に励み過ぎて、ついついプールから足が遠のいてしまった分、存分に泳ぐ。
「キュイキュイ?」
「ごめんなさいね。試験勉強ばかりでコミュニケーションが疎かになっていましたわ。今日は時間の許す限り遊びましょう」
 寂しく鳴いていたイルカのフィリポス6世も元気を取り戻して泳ぎ回っている。
 次回の二次試験に向けて今日は英気を養うマニフィカとフィルであった。
 後日、試験結果が届くと、その通知には……。

 試験終了後、呉はヴァイスと共にワスプで呑んでいた。
「で、どうだった呉? 試験の手ごたえは?」
 ヴァイスは鋭いがどこか温かな眼光で呉を睨んで質問する。
「ま、やるとこまでやった感じかな? あとは結果待ちって事で、今日は派手に呑もうか?」
 呉はビールジョッキでキンと冷えた一杯を煽って上機嫌で答え返す。
 今日は一次試験の終了日で心行くまで二人で呑んだ。
 後日、「一次試験合格」の通知が届くと……。

 一次試験で猛勉強した疲れを癒す為、ビリーは宴会を企てた。
 しかし、一次試験に受かった場合、二次試験もあるだろうが今は一時の休戦だ。
「まあまあ、まだ試験は続くかもしれんが、そない細かいこと気にせんでもエエやないか。ドーンと派手に行かなアカンで、いやホンマに」
 ビリーが宴会御用達の打ち出の小槌F&D専用を景気良く振舞う。
 今日は大判振る舞いのお好み焼き大会だ。
 ソフトドリンクもアルコール(ただし未成年には禁止)も各種準備済み。
「さあ、お好み焼きをじゃんじゃん焼くからね? 好きなだけ食べて?」
 シルフィーもエプロン姿をしてビリーの隣でお好み焼をじゃんじゃかと焼いている。

 ビリー&シルフィーが焼いたお好み焼きが大皿の上で山積みになる。
 ジュディは山脈のようなお好み焼き各種を大食いしてご満悦だ。
「WAHAHA! テスト後のオコノミヤキはデリシャス、デース!」
 今宵のフードファイトの技は一際輝きそうだ。

 ベジタリアンの萬智禽は野菜のお好み焼きを中心に勢いよく食す。
 ぐしゃり、ぐしゃり、ぐしゃ、がつがつがつ!!
 巨大目玉の大口に浮遊したお好み焼きを放り込んで牙で噛み砕く。
 これぞ萬智禽流のお好み焼きの食べ方と言えよう。
「ビリー殿。ごちそうさまなのだ」

 アンナも令嬢らしく上品にお好み焼きをナイフとフォークで切り分けて食べる。
 シルフィーが焼くチーズ系のお好み焼きを頬張りながら試験疲れを癒す。
「あら? こういったチーズお好み焼きもみんなで食べると美味しいですわ」

「未来ちゃん、何のお好み焼きを取った? 俺は牛魔物味だぜ? 分けねえか?」
「いいね、トムロウ。私の方は焼き明太子味だよ。じゃあ、分けようか?」
 未来とトムロウは互いのお好み焼きを交換しながら仲良く食べた。
 皆で楽しく食事した後は、試験疲れからも回復する。
 ビリーの宴会にカップル参加して良かった!

 さて、一次試験が終わり、結果が待ち遠しい所だ。
 二次試験には何人が進む事が出来るのだろうか。
 次回は研修試験になる予定だが、より一層、厳しい試験になる事だろう。

(続く)



◆解答

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午前試験
【第一部 選択肢編】(各問に正しい記号を1つ入力)
 * 第一部(選択肢編)
 第4科目 ノーザンランド編
 問33に設問のミスがあり、問題が存在していませんでした。
 その個所は試験の採点が無効となります。
 この度は試験問題に不備があり申し訳ありませんでした。

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●第1科目 マギ・ジス編

問1A  問2C  問3B  問4B  問5D  
問6D  問7C  問8B  問9B  問10D  
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●第2科目 ハイランダーズ編

問11A  問12A  問13B  問14D  問15C  
問16A  問17C  問18B  問19D  問20D  
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●第3科目 フレイマーズ編

問21A  問22A  問23A  問24B  問25B  
問26B  問27A  問28B  問29A  問30D  
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●第4科目 ノーザンランド編

問31B  問32A  問33?  問34A  問35D  
問36C  問37A  問38D  問39D  問40D  
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●第5科目 サウザンランド編

問41B  問42A  問43C  問44A  問45D  
問46B  問47A  問48D  問49D  問50A  
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●第6科目 イースタ編

問51C  問52D  問53A  問54D  問55B  
問56D  問57A  問58A  問59A  問60C  
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午後試験
【第二部 記述編】
 *第二部の全ての問題に模範解答例はありません。
 考察して記述した解答に「唯一の正解」が存在しないからです。

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(解答終わり)