「呪われた魔剣と剣聖十一段」第1回(調査編)

ゲームマスター:夜神鉱刃

【シナリオ参加募集案内】(第1回/全3回)


★プロローグ 聖アスラ学院、ばらばら死体が出る密室殺人事件の始まり

●盗賊兄弟

 青年は夢を見ていた。
 将来は大物の盗賊になって世界を制覇するという、いかにも壮大で稚拙な夢を。
 彼は鬱屈(うっくつ)した願望を抱えたまま、ある日、予知夢すら見る。
 夢の中で邪神が青年に語りかけた。
『剣聖ハボレムノ墓ヘ行ケ……。近日中ニ剣聖ノ式典ガアル……。ソノタメ、今ナラ、準備ノ都合上、警備ガ手薄ダ……。魔剣ノ解除キーヲ盗メ……。キーハ、墓ノ下ニアル魔術書ダ……』

 とある日の夕刻……。
 マギ・ジスの町外れにある剣聖の墓では式典の準備中のため色々な業者が出入りしている。
 その中には墓地を綺麗にするべく清掃業者なんかもいる。
 墓場の守衛は、清掃に来た二人の兄弟に話しかけた。
「おや? 清掃の人達だよね、君ら? ご苦労様。通っていいよ」
「ありがとうございます、清掃、がんばります!」
「おじさんもお疲れ様です。守衛がんばってください!」
 掃除屋の格好をした二人の青年は難なく守衛を通過すると、剣聖の墓前に来た。
 周囲に人は多いが、皆、式典に向けてそれぞれ自分の仕事をしている。
 当然、この二人の清掃業者の兄弟なんかに気を配る者はいない。
 弟は仕事道具を取り出してせっせと墓石を綺麗にする。
 兄は……。墓石のとある所をぱかっと開ける。
 墓石を開ける鍵は清掃の名目で事前に清掃依頼元から借りていた。
 そして……。
 誰にも気が付かれないように、ささっと墓下の古めかしい魔術書を回収して裾に隠す。
(よし……。ここまでは上出来だ……。適当に掃除するふりをしたらずらかろう……)

 既にお気づきかもしれないがこの清掃業者の兄弟は実は盗賊だ。
 名はストロング兄弟(NPC)というが、強い訳でもなく、名前負けしている格下の盗賊達である。
 二人はワスプに通って、依頼を受けて、生計を立てている。
 また、ワスプは二人にとって憩いの場だ。
 仕事が終わると二人はここで食事をしたりする。
「で、兄さん……。その例の解除キーってのは……」
「ああ、こいつさ。一見して何の変哲もない古い魔術書だが……。この本が聖アスラ学院魔導剣術学部の研究棟にある魔剣保管室や保管ケースに対して解除キーとして作用するらしいな……」
「でも、兄さん……。よくそんな大それたことを思いついたね? あの天下の剣聖ハボレムが所持していた伝説の魔剣を盗むだなんて……」
「うむ。俺も今の状況が怖いぐらいだ。なぜか夢に邪神が出て来て、そいつの言う通りに動いただけで今の状況になっている。俺達の盗賊としての手並みも活かして、きっと今回の盗みも上手く行く手筈だ!」
 ガタリ。
 盗賊兄弟が会議をしていた個室の扉が開いた。
 扉を開いたのはワスプの下っ端少年ティム・バトン(NPC)だ。
「おい、てめえ、ティム! 話を聞いていたのか?」
 兄のブラックは焦った。もしかしたら知人のティムが他の奴らにばらすかもしれないからだ。
「ごめん! 注文のカレーランチとミルクを持って来ただけだけど……。扉越しに話が少し聞こえちゃったんだ……。大丈夫、誰にも言わないから! で、聖アスラ学院へ魔剣を盗みに行くって正気? おススメはしないよ?」
 今度は弟のブラウンが問いかける。
「そういやさ、ティムって聖アスラ学院ともつるんでいるんだって? 何なら一緒に行かないか? 君もシーフの端くれだろう? きっと大儲けできるよ?」
 ティムは、ははは、と愉快に笑った。
「いや、止めておくよ。あっちには友人知人が多いから迷惑をかけたくないんだ。それに僕は、無暗な盗みをする悪行からは手を引いたからね……」
 この時、ティムは盗賊兄弟を止めることがばかばかしいとすら思った。
 なぜなら、学院に侵入して魔剣を盗むだなんて、出来る訳がないからだ。
 きっと、盗賊兄弟は、明日の朝には警備員にでもお灸をすえられているだろう……。
 そんなふうに気軽に考えていた。

●魔剣は盗めるか?

 午後9時を回る前のこと……。
 盗賊兄弟は聖アスラ学院に侵入した。
 しかし、様子がおかしい。
 こんなにも簡単に侵入ができるものだろうか?
 警備員が全然いない上に監視カメラが所々壊れているのだ。
「兄さん……。もしかして仲間でも呼んだ?」
「いいや。俺達だけさ。たぶん、悪運がいいんだな、俺ら?」
 二人は当初の手筈通り、魔導剣術学部の研究棟にささっと移動する。
 魔剣が保管されている部屋は厳重だ。
 部屋の前まで来ると魔術仕掛けの錠前があった。
「兄さん、これどうやって突破するの?」
「たぶん、例の魔術書をかざせば……」
 ガチャン!!
 部屋を覆っている魔術の結界が壊れたようだ。
「さて、結界が壊れたらこれはただの錠前だ。いつも通り、錠前を破るぞ!」
 カチャ、カチャ。
 物の数秒で錠前は開いてしまった。
 部屋に侵入した兄弟は唖然とした。
 真っ暗い部屋の中心に、透明に輝くケースの中で、伝説の魔剣が危うく存在感を放っていた。
「兄さん、あれが剣聖の魔剣!」
「ああ、間違いねえ! さっさと盗んでずらかるぞ!」
 兄が魔術書をかざすと、解除キーが作用して、ガチャン、という音と共にケースが壊れた。
 兄はそっと、壊れ物にでも接するように、魔剣を掴み、持ち上げる。
「すげえ!! これが伝説の魔剣、剣聖の愛刀、天下の宝刀か!!」
「やったね、兄さん! これで僕達、大盗賊で大金持ちだ!」
 悪いことは続かないものだ。喜んでいたのも束の間、ブザーの警報音が鳴り、警備員達がぞろぞろとすぐに入って来た。
 5人いた警備員は部屋に侵入すると同時に厳重に部屋を密閉する。
 そして、それぞれが武器を抜刀して盗賊兄弟に詰め寄る。
「魔剣を盗みに来たのか? その魔剣を返せ! 今すぐ返せば命は保証するし、明日のニュースにも一面トップを飾らせないように穏便に済ましてやろう!」
「ま、ちと事情聴取した上に、お説教はするがな……」
 だが盗賊兄弟は魔剣を手放さなかった。
 それどころか、部屋内をちょこまかと逃げ回り、逃亡のチャンスを図る。
「てめえら、ガキ共!! もうおじさん怒ったぞ!」
「やむを得ません! 彼らを戦闘不能にした上で警察に渡しましょう!」
 時間にして十分も争っていなかっただろう。
 盗賊兄弟と警備員達の戦力差は圧倒的だった。
 警備員達は皆、魔導剣術の力量が確かだ。
 そう、ここは魔導剣術学部の研究棟なのだ。
 魔法剣士が警備員をやっていても何もおかしくはない。
「ぐはっ……。兄さん……ごめん!」
 弟が警備員からの猛攻撃を受け、倒れ、そこに別の警備員が乗りかかる。
 3人がかりでぼこぼこにされた弟は完全に戦闘不能だ。
「おい、おまえら! よくも俺の弟を……」
 そう言う兄も警備員2人にぼこられて既に床を這っている。
 それでも魔剣だけは今でも大事に握って、じりじりと反撃の機会を伺っている。
(くそ、くそ、くそうぅぅ……!! 俺に、俺に、俺にぃぃぃ……。力さえ、……あれば!! 俺が最強の盗賊だったらぁぁぁ……きっとぉ、こんな奴ら、ぐらいぃぃ……。うわあああああああああああああああああああああ!!)

●盗賊が侵入する少し前のこと

 午後9時を回る少し前のことだった。
 今、魔導剣術学部1年生のレオン・ハボレム(NPC)と黒魔術学部2年生のブラスト・ゴールドブレイズ(NPC)の二人は、体育館の裏で激しいにらみ合いをしている。
 レオンは魔剣を上段に構え、ブラストは拳のファイティングポーズを取る。
 両者共に魔術師なので、剣や拳には禍々しい魔力がみなぎっていた。
「先輩……。降参するなら今のうちっすよ? 俺さ、今、すんげえ頭にきてるんっすよ?」
 レオンの投げかけにブラストは、はん、と笑う。
「おまえの方こそ土下座して謝れよ? この天才黒魔術師のブラスト様を怒らせたんだからよ、死体になっても知らねえぞ?」
 ははは、とレオンは高笑いする。
「いかにも、自分が優位にいるつもりっすね? だいたいさあ、この前の魔導剣術大会で先輩は俺に負けて2位だったじゃないっすか? 勝てるつもりっすか?」
 ブラストも、けっと笑い飛ばす。
「ま、おまえは魔剣が専門だわな? 俺は黒魔術と拳が専門さ。魔剣対魔剣で戦えば、当然おまえが有利な訳だし? しかも学院というルールの中であれば、殺すまでできないわな? だがよ……。ルール無用で黒魔術を使っていいなら俺の方が圧倒的に上だぞ? 今日は特別にレッスンしてそれをわからしてやるよ!」
 ふう、とレオンはもはやため息を吐く。
「先輩はどうしょうもないアホっすね? いいっすよ、どっちがつええか決着を着けましょう? ところで、今さらっすが、ここには誰も来ませんよね? ちゃちゃ入れられたくないんっすよ、今夜の決闘に!」
 ブラストはニヤリと笑い返す。
「ああ、抜かりねえ。警備員達は俺の姿を視認する前にぶっ倒した。監視カメラも破壊して来た。おまえの方は?」
 レオンも楽しそうに答え返す。
「もちろんっすよ。視認される前に警備員は倒した上に監視カメラもほとんど破壊済みっすよ。んじゃ、遠慮なく……行きまっす!!」
「おう、どこからでも来やがれ! 誰が学院最強か教えてやる!!」
 レオンVSブラストの決闘が始まった……。
 勝敗は、いかに?

 体育館裏で二人が決闘している頃、魔導剣術学部の研究棟地下では魔剣の指導が行われていた。
「はい、皆さん! 『疾風剣』は風の魔力を的確に読む所から始まります。風を呼び、風を起こし、風を断つ。これぞ極意です。はい、やってみましょう!」
 夜間の学部生達をそう指導するのは、魔導剣術学部教授であり学部長のウルフ・ファングマン(NPC)だ。
 ちなみに夜間にも「魔剣演習」のコースがありそちらでも教員をしているのである。
「ふう、ふう、それ! 風よ!」
「うん、その調子ですよ!! がんばれ、がんばれ!!」
 夜間の学生達は、事情があって学校に通いづらい子達がほとんどだ。
 しかもその中でも特に出来の悪い子達をファングマンは授業後も個別に指導していた。
 いわゆる居残り勉強とか、のこべんとかいう奴である。
「はい、では、一度、休憩を入れましょう! 5分したら、また再開しましょう!」
 手をぱんぱん、と叩くとファングマンは座席に腰を下ろしてスポーツドリンクを飲む。
 魔剣を振るのは大変だが、指導はもっと大変だ。
 それでもファングマンは、この仕事にやりがいと生きがいを見い出していたようである。
(あ、そういえば……。管理室の方は大丈夫でしょうかね? いつもなら警備員達が夜間学部の方にも見回りに来るはずですが……。まあ、出来の良い子達ですからね、きっと上手くやっているでしょう……)
 ファングマンは同じ研究棟の建物にある魔剣保管室の管理人もやっている。
 部屋に入る魔術と物理の両方の解除キーをいつも携帯している。
 警備はかつての夜間学部や魔導剣術学部の教え子であった警備員達に任せている。
 今夜は彼らの姿を全然見ていないが、何か事情があるのだろう、とその時は深く考えていなかった。
 やがて休憩の5分が終わり、ファングマンは再び立ち上がり竹刀を握る。
「では、今度は基本の素振りに立ち返りましょうか? 魔力を身体にみなぎらせ、太刀を振るう時に魔力を発します! はい、やってみましょう!」
 夜間学部の練習に精が入り、夜が更ける……。
 保管室で何かが起きていることも知らずに……。

●密室殺人事件?

 翌朝の8時のことだった。
 ファングマンは保管室の朝の見回りに行くことにした。
 普通ならば警備員にでも任していることである。
 今日はなぜか、胸騒ぎがするようだ……。
(結局、昨夜からここを担当の警備員を一人も見ていませんね。何かあったのでしょうか? まあ、部屋の扉を開けてみればわかることでしょう……)
 魔術と物理の両方の解除キーを使って、ファングマンは部屋に入ろうとするが……。
(あれ? 魔術も物理も錠前が一度、壊された上に再密封されていますね!?)
 すると……。
「な、な、な……なんですか、これはああああああああああ!!」
 開いた口が塞がらなかった。
 部屋にはものすごい量のばらばらになった人間の残骸が飛び散っていた。
 しかも干からびているミイラまでいる。
 その傍らには、あの魔剣が嘲笑うかのように輝いていた。

「で、ガイシャが魔導剣術学部の警備員の5人……。と、夜間に侵入したらしい盗賊らしき兄弟か……。しかし、変な事件だな? 警備員5人と盗賊の1人がばらばら死体になって、もう1人の盗賊がミイラ死体か……。凶器は……。そこに落ちている魔剣と警備員達の武器か……? しかも部屋は第一発見者のファングマンが来るまで、完全な密室だったと? さて、どうやったら、こんなふうに人を殺せるもんかねえ……」
 現場検証をしながらぼやいているのはクラウド・ブロッサム警部(NPC)だ。
 彼はマギ・ジス警視庁殺人課の刑事である。
 今回は今までの事件と違い、列記としたばらばら死体が出てしまった事件だ。
 風紀だけの手に負える訳がなく、ファングマンはすぐに警察に通報したのだ。

 そこに、KEEP OUT(立入禁止)と区切られている保管室前のテープを超えて、風紀委員長のスノウ・ブロッサム(NPC)と副委員長のコーテス・ローゼンベルク(NPC)が急いでやって来た。
「お父さん! 来ていたのね! でもねえ……。私達の仕事は取らないでよね! 学院内で起こる事件は私達風紀委員会の管轄のはずよ!」
 クラウドはおてんばな娘の登場に、わはは、と豪快に笑う。
「おう、スノウじゃねえか? なーに、大丈夫、おまえらの仕事は取らんよ。だがな、見ての通り、ばらばら死体が出た密室の殺人事件だな、こりゃ? このレベルになるとさすがに殺人課の出番だが……。学則にある通り、学院は『学生の自主性の尊重』と『将来の職業訓練』の場でもあるので……。今回のヤマは俺ら殺人課と風紀の合同捜査ってことだ! いいな?」
 コーテスが間に入って取り持つ。
「はい……もちろん、です! 僕達、風紀としましても……。合同捜査で、助かります……。スノウ委員長のお父さん、いや、警部さん……。ぜひ、一緒に、事件解決を、よろしくお願いします!」
 副委員長がそう挨拶して、話がまとまると、警部は鑑識と話をする。
「で、どうだい? 死体を調べて、何かわかったか?」
 年配の鑑識は、ううむ、と声をもらす。
「はい……。とんでもないことがわかりました……。この凶器に使われたと思われる魔剣ですが……。剣聖ハボレムが所持した『呪われた魔剣』という代物で間違いなく……。とても攻撃力も魔力も高いので、これに斬られたら、ひとたまりもないでしょう。しかし、妙なことにこの魔剣には血痕や肉の断片が付いていません。もしかしたら、凶器はこの魔剣ではないかもしれません。
 そして、決定的なのが……。魔術痕跡をたどって判明した『スキル』ですね。これだけのスプラッター殺人をやり遂げたからには、かなりの達人によるスキルが使われたものと思われます。スキル名は、『邪神滅殺冥府斬』(じゃしんめっさつめいふざん)という……。『伝説クラスのスキル』ですね……」
 おやおや、と警部は頭をくしゃくしゃとかく。
「ほう? どんな『スキル』だ?」
 鑑識は鑑定結果の続きを話す。
「見ての通り、即死判定を出すスキルです。いわゆる『キャラクターロスト』というのでしょうか、このスキルで殺されるともう復活できません。で、私が何を恐れているのかと言いますと、このスキルは剣聖十一段である上に特殊な才能までないと扱えないスキルなんです……。そう、まるで、伝説の剣聖、ハボレムの亡霊がスキルを放って殺害したかのようで……寒気を覚えますよ」
 警部は、それでも眼光鋭くひるまない。
「なるほどな。ってことは、ホシはそのスキルを放てる奴か? なあ、ファングマン先生だったか? いや、風紀や野次馬に来た学院関係者でもかまわんが、教えてくれ。この学院にはこのスキルを放てる奴はどれだけいる? 学院で起きた密室事件なので、その意味でも学院関係者は怪しいが……」
 警部がその場で聞き込むと、とんでもない答えが返って来た。
 そのスキルを使える人物は学院関係者では2人のみ。
 一人が既に亡くなっている剣聖ハボレム。
 もう一人が剣聖であり学院長でもあるアスラ(NPC)だった。
 しかもアスラ学院長は現在、イースタ大学へ出張中であるという。
 事件当夜もイースタにいたので、完璧なアリバイがあるはずだ……。
「よし。決まりだ。俺はアスラを追う。スノウ、学院内での現場の指揮は任せた! ここに残る警察のメンバーも風紀の指揮下に入ること! 各自、いいな?」
 警部の判断と指示に全員が素直に従い、さっそくそれぞれの事件調査が始まる。
 スノウは、風紀や協力者の仲間達に向かってはきはきと語りかける。
「では、決まりね。今から私達風紀もこの事件の調査を開始するわよ!」

 さて、あなたはどの調査をどこで誰と、あるいは単独で行うことになるだろうか?
 ぜひ事件解決に導くための情報を調査して頂きたい……。
 健闘を祈る。

【解説】


<概略>

 このシナリオは、聖アスラ学院風紀委員会のミステリシナリオシリーズの3本目となります。今回はミステリの中でもジャンル的には、「ばらばら死体が出た密室殺人事件」です。

 振り返りますと、
 1本目が『聖アスラ学院のお化け退治作戦』=「聖アスラ像首切り事件」です。
 参考URL:https://main-baumsite.ssl-lolipop.jp/etc/y_yagami/y1_top.html
 2本目は『3番目の魔術師事件』=「TM事件」です。
 参考URL:
 https://main-baumsite.ssl-lolipop.jp/etc/y_yagami/y_2017/y_g3/y_g3_top.html

 過去シナリオは読んでおくと参考になるかもしれませんが、今回の参加の際には必読ではありません。今回は全く違う新しい事件のお話となります。また、今回のシナリオに参加する際には、過去シナリオの参加経験は必須ではありません。当時、参加されていなかった方も今回から参加して頂くことができます。

 今回の物語は三部構成となります。
 第1回(今回の「募集案内」)では「調査編」となり、皆さんに事件の調査をして頂きます。詳しくは後ほど【アクション案内】で詳解致します。
 第2回では「推理編」となり、皆さんに第1回での調査のデータを元に推理バトルをして頂きます。仮に第2回の「推理編」でPCさん達が真相にたどり着けなかった場合、コーテスとスノウが推理して真相を明かします。(やり直しやゲームオーバーという意味でのペナルティは課さない予定です)
 第3回では「決戦編」となり、皆さんに今回の事件に関係するとある人物と決戦して頂きます。第3回は推理というよりは戦闘シナリオになる予定です。

 それからシナリオの難易度ですが、今回は段々と上昇して行く形になります。第1回が「普通」。第2回が「難しい」。第3回が「とても難しい」の難易度になる予定です。

 なお、全3回通しでのご参加はもちろん歓迎致しますが、任意の回のみの参加をすることもできます。第2回以降、途中からの参加も受け付けています。

<成功条件>

・事件の調査に取り組むこと。
(下記の【アクション案内】からいずれかの調査項目を選択して【アクション】します。情報が空振りであっても、重要な情報を得ることができなくても、何かしら調査する努力をすれば今回のシナリオは成功判定が出ます)

<失敗条件>

・特になし
(今回、よほどのことをやらかさない限り失敗することはほとんどありません。ぜひ気を楽にして、気になることや知りたいことを何かしら調査してみましょう)

<登場NPC>

 まずは、今回の事件の「被害者」グループから。

●被害者1 ストロング兄弟

「呪われた魔剣」を盗み出そうとした盗賊の兄弟です。兄がブラック、弟がブラウンです。ストロングは名字ですが、皮肉にも弱い盗賊達です。盗賊としての実力は低く、いつも大物の盗賊になりたいと夢を見ていました。ある日、兄が謎の予知夢を見て、その魔剣を盗み出す計画を立てました。まず剣聖ハボレムの墓から解除キーを盗むことに成功しました。次に学院の魔導剣術学部の保管室から魔剣を盗み出そうとしましたが、警備員に見つかって、あえなくご用でした。その後、謎の死に方をしました。

【アクション】で彼らの調査を選ぶとワスプに行くこともできます。ワスプで盗賊兄弟について聞き込みができます。ワスプでは、NPCのナイトやティムといった人物とも会って話すことができます。犯行現場にも行けます。

●被害者2 ばらばら死体になった警備員5人

 事件の日の保管室での警備員は5人いました。それぞれ魔導剣術三段以上の実力を持つ猛者達です。この実力派5人がばらばら死体になって殺された、という事実が学院にはそれなりに重くのしかかります。犯人は相当腕が立つということでしょうか?

【アクション】で彼らの調査を選ぶと警備員達の名前、性格、仕事ぶり、交流関係など詳しい情報を得ることもできます。犯行現場にも行けます。

 次に「容疑者」グループについて。

●容疑者1 レオン・ハボレム

 聖アスラ学院魔導剣術学部所属の1年生です。風紀委員会の過去2回の大きな事件(「聖アスラ像首切り事件」と「TM事件」)での活躍を知り、風紀に入りたい、と門を叩きます。名字がハボレムなだけあり、剣聖ハボレムの子孫です。レオン自身も魔導剣術の腕前は天才的であり、わずか1年生の時点で魔導剣術七段の実力です。学院の魔導剣術大会で優勝したりもしました。当然、ブラストなどの優等生から目を付けられて、けんかが絶えない問題児であったりします。
 今回、レオンも捜査に加わるのですが、スノウは「彼が犯人では?」と疑い、レオンのことも調査対象に入れます。密室事件の犯行に使われたスキルはレオンには使えませんが、「もしかしたら何かの手違い(剣聖の力を覚醒させるなど)でレオンにも使えたのでは?」とスノウは推理していました。
 密室殺人が起こった当時、彼はブラストと学院でタイマンをしていました。そのことがより一層、スノウの心証を悪くしているようです。

【アクション】で彼の調査を選ぶとレオンと直接接触することや一緒に事件を調べることもできます。(ただし「ダブルアクション」の許可ではなく、飽くまでレオンを調べるための調査になります)逆に彼に一切接触しないで、彼を尾行したり風説や素性を調べたりもできます。

●容疑者2 ウルフ・ファングマン

 魔導剣術学部の教授であり現学部長です。年配の魔導剣術家ですが、位は十段で、剣聖にはなれませんでした。剣聖が使う奥義的なスキルである「邪神滅殺冥府斬」は使えません。ハボレムの昔の仲間でもある一方で、どうしても超えられない一線を見せつけられていたので、心の奥底ではハボレムを妬んだり恨んだりしていました。事件当日は夜間の学部生達を教えていたようです。魔導剣術学部の保管室の管理人でもあります。また、今回の密室事件の第一発見者でもあります。スノウは、「動機の観点から彼が怪しい」と疑いました。

【アクション】で彼の調査を選ぶと直接接触することもできます。逆に彼に一切接触しないで、彼を尾行したり風説や素性を調べたりもできます。

●容疑者3 アスラ学院長

「学院長も怪しいのでは?」とスノウが疑います。当日、事件が起きた時、学院長は学院にいないどころか、イースタ大学にいました。イースタ大学との学術交流でしばらく出張していたのです。つまり、学院長にはアリバイがあります。なぜ、学院長が怪しいのか。それは、学院長も魔導剣術の位が十一段だからです。ハボレムほどまでの超天才的な実力はありませんが、数少ない剣聖の一人です。そして、「邪神滅殺冥府斬」を駆使できる一人です。
 現状、聖アスラ学院関係者の中では、「邪神滅殺冥府斬」を放てる人物は2人しかいません。ひとりが既に亡くなっているハボレムで、もうひとりが学院長です。なので、スノウの父のブロッサム警部は、「学院長がスキルを放って殺し、何らかのアリバイトリックを使ったものだ」とにらんでいるようです。

【アクション】で彼の調査を選ぶとイースタ大学へ行けます。(現在もまだ学院長はイースタ大学で職務を果たしています)直接学院長と会って話すこともできます。逆に彼に一切接触しないで、彼を尾行したり風説や素性を調べたりもできます。ちなみにブロッサム警部は学院長を重点的に調べる予定です。

≪ヒント 容疑者について≫
 容疑者リストに登場した上記3名は飽くまでスノウが現段階で推理した「容疑者」に過ぎません。もしかしたら彼らは犯行に無関係かもしれませんし、別の容疑者が浮上するかもしれません。「募集案内」に出ていたはずなのに、ここに載っていない奴とかも怪しいかもしれませんね。

 そして「その他の事件関係者」グループについて。

●ブラスト・ゴールドブレイズ

 聖アスラ学院黒魔術学部所属の2年生です。黒魔術の実力もあり、ペーパーでは全校トップの優等生ですが、性格が残念な問題児です。『3番目の魔術師事件』からの再登場となります。魔導剣術大会でレオンに負けて2位になったことから、レオンに目を付けます。レオンとタイマンするという話になり、夜の校舎にて魔術で殺し合いをします。その当時、夜の校舎で盗難未遂事件や密室事件などが起こり、レオンと一緒にいた彼も疑われます。(スノウはブラストが「容疑者」であるかないかぎりぎりの所で判断を踏みとどまっています)

【アクション】で「y7.その他」を選択するとブラストと会って話すことや一緒に事件の調査をすることもできます。

●クラウド・ブロッサム警部

 スノウの父でマギ・ジス警視庁殺人課の鬼警部です。国家公務員上級試験にはパスしたものの、階級は警部補から始められたはずがあえて巡査から始めた苦労人です。本人曰はく、「事件は現場にて足で追うもの」という信条があるからだそうです。性格は良くも悪くも生真面目です。学院の教育方針には賛成していて、風紀委員会にもスノウがいることから悪い印象は持っていません。やや話しづらい鬼警部ではあるものの、捜査に非協力的な訳でもありません。

【アクション】で「y5.容疑者アスラ学院長について調べる」を選ぶとブロッサム警部と会って話すことや一緒に事件の捜査ができます。ちなみに学内の調査はスノウ達に一任しているほど警部は風紀委員会を信頼しています。

●剣聖ラファエル・ハボレム

「呪われた魔剣」の元所持者である伝説の剣聖です。魔導剣術の実力は超天才的であり、戦争時代に将軍を務めた後は、聖アスラ学院の魔導剣術学部の学部長と教授を務めました。剣術家としての位は、魔導剣術十一段という、この世界最高の位にありました。最強のスキルである「邪神滅殺冥府斬」という殺人剣のスキルを操ることから特に戦争当時は世界中から恐れられていました。このスキルは魔導剣術十一段である上に特殊な才能がないと扱えないスキルです。

【アクション】で「y6.剣聖と魔剣について調べる」を選ぶとマギ・ジスの町外れにある「剣聖の墓」へ行くことができます。(盗賊兄弟が解除キーを盗んだ墓地です)あるいは、学院の図書館へ行くことで剣聖や魔剣に関する古い情報を調べることもできます。なお、剣聖ハボレム本人はかなり前に亡くなっていますので、この選択肢を選んでも会うことができません。

 最後に「風紀委員会」の皆さん。

●スノウ・ブロッサム
 聖アスラ学院風紀委員長。大学3年生。
 マギ・ジス文学を専攻する文学少女。黒魔術師。
 性格は生真面目でややきつい所もありますが、仲間思いの努力家です。

【アクション】では、「y2.被害者ばらばら死体になった警備員5人について調べる」を選ぶと彼女と会って話すことができます。一緒に調査することもできます。スノウは、「現場百遍」(げんばひゃっぺん)という父の言葉もあり、犯行現場を徹底的に調べようと思い至ったそうです。

●コーテス・ローゼンベルク
 聖アスラ学院風紀副委員長。大学2年生。
 歴史学を専攻する歴史少年。白魔術師。
 性格はのほほんとしていますがいざという時はやる男です。

【アクション】で「y6.剣聖と魔剣について調べる」を選ぶと彼と会って話すことができます。一緒に調査することもできます。コーテスは、「剣聖」というキーワードを聞いて、「今回の事件は歴史的考察が必要なのではないか?」と考えています。

●ハインリヒ・ウォルター
 聖アスラ学院魔導動物学部教授。風紀委員会顧問。
 魔導動物を偏愛する怪しい中年男性。召喚魔術師。(魔導動物を召喚)
 性格はちょっとおバカですが、実は学生思いの天才熱血教師……でもないかもしれませんね。

【アクション】で「y4.容疑者ファングマンについて調べる」を選ぶと彼と会って話すことができます。一緒に調査することもできます。実は魔導動物学部と魔導剣術学部は戦闘実験などで何かしら交流があったりします。ウォルターはファングマンとも知り合いだったりします。「自分の立場的に一番調査がやりやすいだろう」という理由でウォルターはファングマンを調査することにしました。

<犯行現場の状況>

・死体は7体ありました。1体が盗賊兄で「ミイラ」のように干からびています。もう6体が盗賊弟と警備員5人です。ミイラ以外は、体が見事なまでに「ばらばら」にされて死んでいました。

・現場に落ちていた物は、「魔剣」と「警備員達の武器」です。そして、盗賊達が持っていた保管室と魔剣ケースの解除に使う「解除キー」と警備員達が持っていた「保管室の鍵」も落ちていました。

・魔剣を保管する保管室は厳重です。警備員達は盗賊を締め上げるため、部屋を「完全な密室」にしました。一度、この部屋が密閉されると並み以上の魔術でも干渉できませんし、破壊できません。音も遮断されます。

・魔剣の保管室は魔導剣術学部の研究棟の1Fにあります。部屋の構造自体、変わったことはありませんが、割と広いです。部屋の中心部に魔剣とそれを封印したケースのみがあり、他はがらんとした殺風景な部屋です。

・当時、レオンとブラストが勝手に決闘をしていた関係で警備が手薄になってしまっていました。保管室周辺の監視カメラと警備員は役に立ちませんでした。(保管室内に監視カメラはありましたが、故障していたようです)

<このシナリオのテーマ>

 今回の事件のテーマは「××への△△」です。
 ××には、ある言葉が入ります。
 △△には、別のある言葉が入ります。

≪ヒント テーマから推理≫
 事件のテーマから事件の全体像を推理してみるのも良いかもしれません。

 ちなみに、前々回の『聖アスラ学院のお化け退治作戦』では、「権威の過ち」や「管理者責任」がテーマでした。
 前回の『3番目の魔術師事件』では、「実力主義」「能力主義」「優等生と劣等生」などがテーマでした。

<開催人数>

 最低6PC、最高は制限人数なし、にしたいと思います。
 少なくとも6PCいないと十分に調査ができないものと予想しています。6PCに満たない場合は、残念ですがこのシナリオは運営中止となります。

<ショップ>

 今回のシナリオでは特定の商品は出しません。
 聖アスラ学院に関するシナリオですので、学院の購買部が使えます。
 調査などで使いたいアイテムがありましたら、【アクション】で「アイテム名」と「マギンの料金」を書いてご申請ください。
「アイテム名」の方は、明らかに購買部にないような物、高価過ぎな物、便利過ぎな物はNGです。
「マギンの料金」の方は、申請された金額も参考にしますが、「アイテム名」の形状、効果、個数などを考慮してマギンを徴収させて頂きます。
「理由」は書いても書かなくてもかまいません。(あるとマスターがわかりやすくて助かるかもしれません)

例1:あんぱん 100マギン(調査の張り込みでお腹がすいた時に食べるため)
例2:ロープ 500マギン(調査中に怪しい奴がいたら捕まえるため)
例3:ビニール手袋と透明な小さなビニール袋 1,000マギン(小さな証拠を保存するため)

 なお、ショップでの購入シーン描写は「リアクション」の尺の関係上、カットします。

【参考イメージ】注意:写真は飽くまでイメージです。実物の商品・実際のサービスとは異なることもございますので、あらかじめご了承ください。


【風紀委員会】


解説:今回もついにやって参りました、皆さんお待ちかねの風紀委員会ミステリシナリオシリーズです! 今回も皆さんの名探偵ぶりに期待していますよ! 上記の活動写真は、過去に学院で起きた『3番目の魔術師事件』の時に風紀委員会で行った推理シーンのお写真でした。お写真は、さのやILに感謝! (ご紹介しますと、時計回り12時から始めて、未来さん(PC0023)、萬智禽さん(PC0097)、マニフィカさん(PC0034)、ビリーさん(PC0096)、ヴィオレッタさん(PC0098)、ジュディさん(PC0032)、アンナさん(PC0046)です)


【ミステリシナリオ】

解説:ミステリはまるでジグソーパズル……とは、誰が言ったかは覚えていませんが、パズルのピースがひとつひとつ埋まることで全体像が見えてくる所は似ていますね。「調査編」はまさにパズルのピースを集める段階とも言えましょう。ぜひ、パズルの絵を完成させるピースをたくさん集めてみてくださいね!

【アクション案内】

y1.被害者ストロング兄弟について調べる。
y2.被害者ばらばら死体になった警備員5人について調べる。(スノウが同行)
y3.容疑者レオンについて調べる。(レオンが同行)
y4.容疑者ファングマンについて調べる。(ウォルターが同行)
y5.容疑者アスラ学院長について調べる。(ブロッサム警部が同行)
y6.剣聖と魔剣について調べる。(コーテスが同行)
y7.その他

補足1:味方NPCの同行者が存在する選択肢も上記にありますが、必ずしも同行に付けないといけない訳ではありません。単独で調査することもできます。PCさん同士でGAもできます。

補足2:「y7.その他」は上記の【アクション案内】以外のルートで調査することもできます。例えば、上記の選択肢の中に正解がないと判断した場合、調査は「y7.その他」になります。

補足3:「y7.その他」を選ぶと「特定の人間関係にあるNPC」(例えば、「同盟」、「親友」、「恋人」など)を呼ぶことができます。その場合、「y7.その他」でその味方NPCと合流した上で選択肢「y1.からy6.」のどれかを改めて選んで行動します。つまり、味方NPCが一人増えた状態で調査を始められますが、「ダブルアクションが許可された訳ではありません」。


【マスターより】


  今回は、古き良き密室殺人事件&ばらばら死体という舞台装置で勝負に出ます。もっとも、マギ・ジスタン世界のことですから、毎度お馴染み、魔術が絡んだミステリになります。通常の密室殺人事件の限界を超えた殺人事件になることはもはや必然です。しかも、なぜ死体はばらばらになっていたのでしょうか。これも常軌を超えた解答が用意されているはずです。壮絶な事件の真実に向かって、調査編の第一歩が始まります。(と、タ●リが出てくるホラー番組の解説者あるいは、た●しが出てくる科学番組の解説者みたいに言ってみました)