ゲームマスター:夜神鉱刃
もくじ ●パートA ライゼンステージ ●パートB トムロウステージ B-1 演習開始 B-2 敵の反撃 B-3 最後の決戦 ●パートC サクラステージ C-1 忍者屋敷1Fでの戦闘 C-2 忍者屋敷2Fでの戦闘 C-3 忍者屋敷3Fでの戦闘 ●パートA ライゼンステージ 本日は、異文化交流第二日目の日程、東洋魔術演習である。 厳粛な雰囲気を漂わせる東洋武術の道場にて、四人が二対二の構図で向き合っていた。 「それでは、ただいまより、東洋魔術の演習を開始しよう。皆の者、礼! よろしくお願いします!」 本日の演習の先生であるライゼン・ムドウ(NPC)は、一同に一礼を促した。そして、自らも対面する相手に礼を尽くした後、トンファーを逆手で厳かに構え出した。 「礼……ですわね! ライゼン先生! 本日は、よろしくお願い致しますわ!!」 ライゼンと対面して礼をしたのは、武人の人魚姫・マニフィカ・ストラサローネ(PC0034)である。お馴染みの貫頭衣姿に三又槍を構え、いよいよ本日の戦闘に臨むところだ。 「礼っす! よろしくお願いしやっす!」 ライゼンの門下生であるリク・ソラノ(NPC)も対面の相手に向かい、一礼をした。 「礼! よろしくね!」 リクと対面しているのは、飛び入りの調査部隊隊長・シルフィー・ラビットフード(NPC)である。大柄なリクに比べて、小学生並みに小さい妖精の姿は、対照的である。ちなみにシルフィーの足元には、お供(精霊)である真っ白いウサミミキャットが、みゃあ、と礼をするかのように鳴いていた。 *** 「それー!! いっくわよー!!」 戦闘が開始されると同時に、シルフィーはウサミミキャットにまたがり、道場の後方へ大幅ジャンプ。魔術の詠唱を開始した。 「そうはさせないっす!!」 リクが追いかけ出すが、ウサミミキャットの跳躍力にはなかなか追いつけない。 「萌え、萌え、萌え、うきゅきゅ☆ よっしゃー!! 詠唱完了☆」 シルフィーは怪しい萌えの魔術を唱え終えると、ウサミミキャットが、キャピーンと輝き出した。そして、ぴょこぴょことダンスし、ボールのように跳ね回る。 すると……。 どっかーーーーーーーーん☆ 敵全体の命中率、急降下!! 一方、ライゼンとマニフィカは、お互いに一歩譲らずと、にらみあっていたが……。 突然のシルフィーの奇襲にライゼンとあろう者でもびっくりしてしまう。 「なぬっ!?」 萌え魔術であっけに取られたライゼンは、マニフィカへ攻撃をしかける瞬間、思わずスカの一撃を放ってしまう。 それをチャンスと見たマニフィカは、ミスしたライゼンの胴をとっさに槍で突き出した! 攻撃は見事に決まり、ライゼンは転倒し、ころころと転がり、体勢を立て直すが……。 人魚姫は、その瞬間をも見逃さず、水術を唱え、続いて氷の魔術も連射! じわじわと水浸しになった道場が……瞬時に氷結して、まるでスケートリンクの完成だ。 (ふふふ……。ちょっと卑怯かもしれませんが、道場が凍ってしまえば、いくらライゼン先生と言えども身動きが取れないでしょう! 武術は足さばきが重視される故に、肝心の足場がスリップしてしまえば、お得意のトンファー術も繰り出しにくいことでしょうね!) 一方、マニフィカは、足を魚モードに変化(へんげ)。 魚のヒレで、スケートリンクをツツツー、ツルツルと、流れるように移動する! 「もらいましわたね!!」 マニフィカはトライデントを振りかざし、ライゼンに向かって振い落す! だが、ライゼンは……。 「ほっ、そこかね!? ……ま、こんなもんだのう……」 ライゼンは二つのトンファーでトライデントの攻撃を軽々と防いでしまった。 (えっ!? まさか、先生は氷の上でも自由に動けるのかしら!?) 「ほっほっほ、マニフィカさん……。着眼点はとても良し。しかし、私はかつて、真冬の雪原にて裸足で修行をしたことがあるのだよ……。ちょうど、今みたいな戦闘パターンを想定してな……」 (くっ、なんて相手ですの!! ここは、一度、引きましょう!!) 次にマニフィカは、背中にセットしていた「魔竜翼」を羽ばたかせ、空中へ舞い上がった。また、上昇中に、「リリのクッキー」をパクリとかじり、パワーアップ! さて、道場の天井ぎりぎりまで上昇したマニフィカ。 翼をはためかせ、足は魚、両手にはトライデントを構え……。 といった姿は、まるでワイバーンなどの竜族のようだ。 「次こそ、行きますわよ、ライゼン先生!! 覚悟なさってくださいまし!!」 人魚姫、ここでファルコン先生の奥義を発動!! 槍を先端に構え、空中から「ブリンク・ファルコン」3連続攻撃で突貫!! 「むむっ、これはいかん!!」 ライゼンは、マニフィカの空中奇襲攻撃をトンファーで弾いて防御するが……。 さすがに、敵対者の奥義は、対空攻撃であり連続打撃であり先制攻撃でもあるので……。 「ぐはっ、やるのう……!!」 連続打撃に耐えかねて、トンファー師範は後方へ弾き飛んだ。 攻撃を終えた槍使いの方は、後退し、再び上昇し、次の攻撃に備える。 (これは、もしかして行けますわね!!) だが、次の「ブリンク・ファルコン」のとき、異変が起きた……。 ライゼンの背後には、妖気を漂わす情欲の仏が降臨し……。 「とりゃああああああ!! 『アイゼンミョウオウ』の一撃を受けてみなされ!!」 ライゼンは、マニフィカの三連続攻撃を次々と弾き飛ばし、猛烈な一撃をマニフィカの腹にクリーンヒット! 「きゃっ!!」 熾烈な一撃だった。 マニフィカは、加算された痛撃と、付加効果まで受けてしまい……。 (あ、あれっ!? 上手く、飛べませんわね……?) 飛行中の人魚姫は、もう一度、同じ攻撃を繰り返そうと後退し、飛行するが……。 どうもまっすぐに飛ぶことはできない。 (しまったですわ!! おそらく、「混乱」が付加されたのでしょう……) 気がついたときには遅く、マニフィカは、次の仏の魔手に呑まれてしまう。 ライゼンが合掌し、妖気を漂わせると……。 道場一体に、幾千もの仏の手がにょきにょきと出現! 「きゃあ、なによー!?」 ウサミミキャットに乗り、リクと交戦中だったシルフィーも異常に気が付く。 ライゼンの奥義「センジュカンノン」はMAP兵器なので、MAP中にいる全ての敵に向かって打撃攻撃が繰り広げられる。 もちろん、隠れても逃げても、どうしようもなく、無常に打撃を浴びてしまう! 「きゃっ!!」 「センジュカンノン」のパンチ攻撃を空中で受け、交わしきれなかったマニフィカは、遂に墜落してしまった。 「さあ、マニフィカさん! 立ちなされ! あなたはまだまだ戦えるはずだろう!」 鬼のような形相で、ライゼンはトンファーを逆手に構えながら、マニフィカを待つ。 「もちろん……。ここで負けるわけにはいきませんわ!!」 マニフィカは、立ち直り、再びトライデントを構え、諸手突きの一撃を放つ。 しかし、ライゼンには、やすやすと打撃を封じられてしまった。 「まだまだ! 突きの反応速度が遅いと攻撃を止められる! 力の込め方が浅いので打撃が弱い! もっと腰を入れて打たないと敵は捕らえられん!!」 まるで本当の門下生を教えるかのように、ライゼンは熱くなりながら、マニフィカを指導し始めた。 「はい、先生!! がんばりますわ!!」 マニフィカも実力のある武人から指導を受けるのが嬉しいらしい。演習中なので、彼女も厳しい表情になるが、心を弾ませながら、一歩一歩、格闘技の手ほどきを学んでいく。 「マニフィカさん、本気の突きで来なさい! 私も本気で突きを打つ!」 「はい、先生!!」 ライゼンは、「アイゼンミョウオウ」を降臨させて、マニフィカを正面から、背面から、後方から、滅多打ちにする。 マニフィカは、全ての打撃を弾き切れず、除けきれず、混乱攻撃を受けてふらふらしながらも、必死に打撃の反撃を試みた。 「それ、終わりだのう!!」 「きゃあ!!」 ライゼンの裏廻し打ちの一撃が、マニフィカの顔面にクリティカルヒット! 人魚姫は後方に弾け飛んで、動かなくなってしまった。 「そこまで! マニフィカさん、ここまでよくやりました……」 ライゼンが、倒れている相手に礼をしようとしたとき……。 突然、道場に異変が起こる!! 今までスケートリンクだったはずの道場が……。 地面から水流が上昇し、しかも液体は金属も混じり黄金に輝いていた。 そして、道場の方々から、黄金の水流が噴水のように吹き出す始末だ……。 「きゃああ! 今度はなんなのよー!!」 リクと交戦中のシルフィーもさすがにパニックだ。 「むむっ、これは……。錬金術か!? さては、マニフィカさんか……」 ライゼンは、冷静に状況を分析し、再び、トンファーを逆手持ちで構え直す。 何を隠そう、マニフィカはやられていなかった。 昨日、入手した「ミガワリボサツ」で復活していたのだ。 しかもマープル先生直伝の『錬金術と格闘術』の魔術も、思考にパスを通して援用していたので……。 水術に錬金術が加わった金属水が道場のあらゆる場所で暴れ回っているのだ!! そもそも、道場には障害物がない。 障害物がないということは、「ない」状態で戦うしかない。 しかし、別の解答として、障害物を「作る」こともできるのだ! 黄金の水は槍状の形になり、いくつもの噴水はライゼンを目がけて追撃! さらに、さきほどの「センジュカンノン」を10%ほど覚えたマニフィカは、仏の手動打撃まで真似て、複数の拳でライゼンを襲う! 「とうっ! はっ、そこか!! むむ、やりおる……」 錬金術を援用した攻撃パターンは慣れていないライゼンだが……。 百戦錬磨の経験があるので、方々からかかってくる金属の水槍や仏の打撃を弾き返してしまう! やがて、金属の噴水は、まるで立方体の箱を造るようにライゼンを囲んでしまった。 だが、ライゼンは目を閉じ、冷静な表情で、静かにトンファーを逆手で構える。 「やああああああああああああああ!! そこですわああああああああ!!」 人魚姿で翼をはためかせ、「ファルコン」を構えたマニフィカは、トライデントで正面から突っ込んで来た! しかも、胸元の「聖アスラバッジ」がキラリと輝き、『魔導動物概論』(魔牛編)が思考とパスを繋いでいるので……。 先制三連続打撃が二倍の威力になり、さらに物理攻撃特大ダメージも追加! 「やっ!! そこかあああああああああああああああ!!」 眼球をカッと見開いたライゼンは、方角を見定め、正面から突きを繰り出すが……。 魔力と攻撃力に付加があるマニフィカの連続打撃には耐えきれず……。 師範は、勢いよく後方へ弾き飛ばされ、道場の壁で背中をおもいっきり打ってしまった……。 マニフィカは、ライゼンを仕留めたことを確認するため、おずおずと近づいて行く。 「ライゼン先生、降参なさいますか?」 マニフィカの余裕の一言に、ライゼンは、ほっほっほと笑い出す。 「ご冗談を。それよりも、私を倒したと思って油断していませんか?」 ライゼンは、壁に叩き付けられながらも、何かを企んでいたらしい。 マニフィカがおずおずと近づいてくるタイムラグで、再び仏を呼び出していたのだ。 「我が心となり、魂となる、七星剣(しちせいけん)よ! 魔を断ち切るのだ!!」 ライゼンの背後からは、魔剣を上段に構えた「ウマヤドノオウジ」がゆらゆらと現れた。 東洋の魔剣士「ウマヤドノオウジ」は、必殺剣を振り落とし、マニフィカを狙う。 「きゃっ、なんですの、これ!?」 とっさの事だったが、反応力を鍛えている人魚姫は、トライデントで剣を受け止めた。 (あれ? 受け止めたはずですのに……) 剣は、槍をすり抜け、マニフィカの心にざくり、と一撃を浴びせる。 「きゃあああああああ!!」 精神的な斬撃を受けたマニフィカは、思わず後方へよろめいて尻餅をついてしまう。 「今のは、MPを攻撃する魔剣だよ。剣は必ずしも、物理的な攻撃とは限らないので、以後、注意すること……」 ここでマニフィカのMPはついに底を尽きた。 先ほどから何度にも渡る「ブリンク・ファルコン」の使用。 水術、氷術、錬金術の多用。 各種魔導アイテムによる魔力の消費。 「センジュカンノン」の模倣。 とどめに、「ウマヤドノオウジ」の七星剣の一撃。 いくらマニフィカが魔術師タイプを兼ねる槍使いだとしても、魔力が尽きては、もはや立つことすらままならない。 ふらふらしながらも、槍を杖にして立とうとするマニフィカに、ライゼンは手を差し伸べる。 「マニフィカさん。私相手にここまで出来るのは、かなりのものだ。これにて、演習を終わりにしよう……」 「残念ながら……今回は降参せざるを得ませんわね……。ですが、『センジュカンノン』を学べましたし、格上の方と戦闘をする訓練も……できましたので……悔いはありませんわ……」 敗退を認めたマニフィカは、ライゼンに肩を借りて、道場に正座で座り込んだ。 ライゼンもその場に正座で座り出した。 「礼! ありがとうございました! また機会があったら一緒に稽古をしよう!」 ライゼンは号令をかけ、頭を下げ、礼をする。 「ありがとうございましたわ! ぜひまた、よろしくお願い致しますわ!」 マニフィカも相手に習って、頭を下げ、礼をした。 今回は負けてしまったものの、良い経験をした人魚姫の表情は満足気に笑っていた。 一方、シルフィーとリクは相打ちになり、引き分けたそうだ。 ●パートB トムロウステージ B-1 演習開始 ライゼンステージの演習が開始されていた頃、同時期にトムロウステージでも演習が始まろうとしていた。演習参加者全員が電脳亜空間の部屋へ集まったのだが……。 「うおおおおおおおおおおおおおお! 女子全員、なぜ水着!?」 演習担当者のトムロウ・モエギガオカ(NPC)は激しく興奮していた。 なぜなら……。 「ええとぉ、とりあえずぅ、こういう水着を着て来たけれどぉ、これでいいのねぇ、トムロウ?」 受講生のひとり、ロハスなリュリュミア(PC0015)お姉さんは、伸縮自在の衣服の一部を改造し、パレオ風の姿で現れた。清楚な色気がある姿だ。 「オウ! それ言うなら、ジュディは、『特殊水着』デース!! ヘイ、トムロウ、ホントに水着で何するデース?」 別の受講生、ジュディ・バーガー(PC0032)は迷彩柄のビキニを着て登場。ビキニに包まれた巨体のダイナマイトボディは、まさにグラビア級。 「あのお~。わたしはとりあえず、スクール水着で来たよ! 電脳亜空間で水泳の授業でもあるの?」 さらに別の受講生、姫柳 未来(PC0023)は、ジュディと同じく「特殊水着」を着て来ているが、スクール水着ヴァージョンである。未来はジュディと対照的に、ロリ的な水着姿というか、萌えな姿である。 「そのお……。フンドシで……いいんだよね? ところで、トムロウ君が……普通のガンナー衣装なのは……なぜ?」 愚直にも、フンドシ一丁で現れたのは、副委員長コーテス・ローゼンベルク(NPC)である。背は高いが、魔術師タイプなので、あまりマッチョな姿ではないだろう。 トムロウ含む、トムロウ側の演習参加者たちも、普通にガンナー衣装である。 聖アスラ学院側、さっそくピンチ! 「あはは……。すまん、水着やフンドシ着て来いっての、ジョークなんだよ!! 頼むから真に受けないでくれ!!」 真っ青になったトムロウは、その場でへこへこと謝っていた。 だが、頭に来た聖アスラ学院側は……。 「ウッフ~ン☆ ジュディのボディで悩殺して先制攻撃してやりマース!!」 ジュディは、巨大な胸を寄せて、うふんなポーズで迫る。 「わたしもやっちゃおぉ~☆ パレオをちらりぃ~!」 リュリュミアは、パレオをちらりとめくって、美脚を見せる。 「萌え萌え攻撃だよ~♪」 未来は、スクール水着で魔法少女ポーズを取って、ウィンクした。 「ぐおおおおおおおおおおおお、ぶはあああああああああああああああ!!」 変態魔導師、先制攻撃のダメージを受けて大ヒット! トムロウは大量の鼻血を吹いて、ぶっ倒れた。 「はあ……はあ……。なかなかやるな、おまえら!! だが、しかし……」 トムロウは今の鼻血でHPは減ったはずであるが……。 「ああ、しまった! 皆さん……いけない! トムロウ君が変態だということを……忘れないでください! 今ので……逆にパワーアップしてしまいます!!」 コーテスが焦っている間もなかった。 鼻血が垂れているトムロウは、ヘラヘラしながら、不吉で萌えな妖気が、ゴゴゴ、と燃える。 「がはは! HP(Hit Point = 体力)という意味で、俺は今、ダメージを受けた。しかーし!! Hentai Pointは上昇して、ステータスアップ!!」 ぴんぽん♪ トムロウ・モエギガオカの各ステータスが上昇してしまいました! 聖アスラ学院側は、トムロウの変態プレーの前に、さっそく窮地に陥ってしまった。 「ヘイ、皆さーん! ドンマイ、ネ!! まだまだ巻き返せるヨ!!」 ジュディは、暗くなった一同のムードを明るくするため、元気よく声をかける。 一同は、オー!! と、円になって気合の声を上げるのであった。 さてさて、宇宙空間に電気玉がぷかぷかと浮いているここ亜空間……。 ただいまより、演習開始! 聖アスラ学院の四人とイースタ大学側の四人は、互いに向かい合い、軽くお辞儀をする。 ときにイースタ大学側は、ボスのトムロウ率いる、ヨウスケ・サイト、タケシ・コウダ、ジョウ・カザミの三人(のNPC)だ。三人ともトムロウと同じ専攻でオタクマスターである。 *** 「魔法少女にへんし~ん☆」 試合開始と同時に、未来は、風のオーブを亜空間に放り投げた。 萌葱色の風がくるくると吹きまわり、未来は魔法少女姿へ華麗に変身して行く! 緑色の光る風に導かれ、未来の頭上には萌葱色のカチューシャが装着! 衣服は、同じく萌葱色なオーバーオールの超ミニスカートに変化! 脚部は白いハイソに魔馬皮のシューズで登場! 「魔法少女未来、参上だよ~♪」 しかし、トムロウ一味は変態の巣窟! 魔法少女へ変身する未来をじっくりと鑑賞していた! (それっ!! かかった!!) 未来は、ニヤリと笑う。 「ストームブースト」で三倍速に加速し、スケベ連中のところに突撃! 「ファルコ~ン!!」 迅速の三連続攻撃が炸裂。 「魔石のナイフ」二刀流の連続斬撃と、超ミニスカ回し蹴りの追加打撃が、逃げ遅れたタケシにクリティカルヒット!! 「ぐはあああ!!」 奇襲を受けたタケシは、思わず手元から、電気銃を離してしまった。 「それぇ~!! 回収ぅ~!!」 「ブルーローズ」を召喚したリュリュミアは、蔦でくるくると銃をキャッチ! 手に入れた銃をそのまま蔦から未来へ渡す。 「ありがと~、リュリュミア!!」 ぺこりと礼を言う未来。 「ヘイ、ユーはそのまま蜂の巣デース!!」 ジュディは称号「ガンファイター・ジュディ」が発動し、二丁拳銃でタケシを狙撃。 風の弾丸が弾き飛び、既に伸びていたタケシは、一気にHPがゼロになった。 「ひとまず……ひとり倒したね……。あれ? トムロウ君たちは!?」 コーテスは後方から一連の攻撃を見守っていたが……。 タケシがやられている最中、残りの敵三人はいずこかへ身を隠してしまっていた。 電気玉がぷかぷかと浮かぶ暗い亜空間のどこかで、トムロウたちは狙撃の準備でもしているのだろうか? B-2 敵の反撃 「それ、そこだ!! 全員、襲撃!!」 亜空間のいずこかから、トムロウの大きな声が響いて来た。 ぷかぷかと浮かぶ大きな電気玉の複数から、三人のガンナーたちが飛び出て来て銃撃を開始! 「なんのぉー!! バリケードォ!!」 リュリュミアは、「ブルーローズ」のバリケードを張り巡らせ、銃撃を防御。 「負けるものか!!」 コーテスも、「ペルセウスミラー」で銃撃を弾き返した。 「ヘイ、ジュディたちも行くネ!!」 「了解!!」 二丁拳銃を連射しながら、バリケードから飛び出すジュディ。 ジュディに続き、先ほど奪った電気銃を撃ちながら、攻撃に加わる未来。 しかし、さすがに敵全員は銃撃戦に慣れているだけあり、ジュディや未来の弾丸を交わしつつ、次から次へ別の電気玉に隠れながら、遊撃! ジュディは、一歩前に出て、「マギ・ジス産の魔石」(研磨版)を盾にして、前身する。 「それ、もらった!!」 ジョウは、ここで、必殺技「とあるイースタンの激・電磁砲」を繰り出した! 最大出力の電気銃攻撃が前線のジュディと未来を襲う! 「セイヤ!! イレース(消えなさい!!)」 ジュディは、拳銃をしまい、両手を突き出して「激・電磁砲」を受け止める。 「スキル・ブレイカー」が発動し、最大出力の電気攻撃は、ぴりぴりと青い電撃の火花を散らせながら、消えて行った。 (シマッタ、ネ! もう切り札使ってしまったヨ!! 意外と強いネ!!) 「ははは!! まだまだ行くぜ!!」 ジョウが撃ち終えると、今度はヨウスケが二丁拳銃の連射でかかってきた! 「このぉ~!!」 未来は迎撃するべく、電気銃で撃ち返すが、避けられてしまう。 一方、未来もオーブの五倍速で嵐の銃撃を回避。 前線でこのような銃撃戦がある中……。 後方のバリケードの背後から……。 「よっ、コーテス! 元気か?」 トムロウがコーテスの背後にいた! 「ぎゃっ!! トムロウ君、なぜここに!!」 コーテスは驚いた反動で、後方へバックジャンプ。 「がはは! 前線はおとりだよ! おまえらを倒しにきたぜ!!」 トムロウは、コーテスに電気銃を向けて、トリガーを引こうとする……。 「それぇ~! させいないわぁ~!!」 リュリュミアは、青バラの蔦を複数繰り出して、トムロウをぐるぐる巻きにまいた。 「トムロウ君……悪いけれど、君の負けだ!!」 コーテスは勝ち誇った顔で、えっへんと威張る。 「それぇ~!! ムチ打ち攻撃ぃ~!!」 リュリュミアは、ムチの連続打撃を繰り出して、ぐるぐる巻きのトムロウを打つに打った。 が、しかし……。 「はあ……はあ……。女王様……もっと……!! なんて、な! これぞ萌え魔術、『萌交流変換』!!」 トムロウは、ムチに打たれながらも、ダメージを回復に変えていたのだ! ちなみにこの萌え魔術は、Hentai Powerが続く限り、あらゆる攻撃をHPやMPの回復値へと変換してしまうのである! 「リュリュミアさん! その変態を……それ以上、打ってはダメです!!」 コーテスは焦って止めたが、時、既に遅し! やむを得ずリュリュミアは、蔦を解除したが、変態リーダーは既に全快していた。 「がはは!! んじゃ、全快したところで、反撃行くぜ!!」 蔦から解放されたトムロウは、全力で、ハイジャンプ! 電脳の亜空間は、重力的に楽なので、トムロウは空高く上昇して行った。 「くらええええええええ!! 激・電磁・砲!! うおおおおおおおおおおおお!!」 トムロウは、空中で360度回転しながら、必殺技「激・電磁砲」を炸裂射撃! あらゆる角度から、下方を目がけて、電気銃の最大出力は、大雨のように降って来る! 「きゃあああああああ!!」 リュリュミアのバリケードが破られる……。 彼女は、ビリビリの電気銃攻撃をくらってしまった! (びりびりびりぃ~! う~ん……さっきのトムロウの真似してみようかなぁ~。はぁ、はぁ……いやん、うふん……びりびりぃ……気持ちいいわぁ……まるで光合成みた~いねぇ!!) 植物系お姉さん、「萌交流変換」を模倣し、怪しい表情をしながらHPとMPがちょっと回復!? 「それ、ブレイク!!」 間一髪のところで、コーテスは「スキル・ブレイカー」で電磁砲を消去。 一方、前方にいる未来たちのところへも電磁砲が飛んで行った。 「いやああああああああん!!」 ヨウスケと交戦していた未来は、足を滑らせて、電磁砲の狙撃を部分的に受けてしまう! 足をくじいて、よろめいて、倒れてしまった。 「ソレ、ブレイク、ネ!」 ジュディは、「スキル・ブレイカー」30%を発動させ、トムロウの電磁砲を反射させる。 反射させる先は、対戦中のジョウだ! しかし、ジョウは……。 「イエーイ!! ビリビリだぜー!!」 なんと、「萌交流変換」で電磁砲を吸収! さて、未来が起き上がったとき、そこにヨウスケの姿はなかった。 なぜなら、ヨウスケは……。 「はあ、はあ……イケメン……うほうほ……」 いずこかから、「色男天国」を詠唱! 空中の電気玉から、イケメンたちの幻が現れ、ジュディをロックオン! 術中にはまってしまったジュディは……。 「ワ~オ!! イケメン、バラダイス、ネ~!! ウハウハ、ネ~!!」 ジュディは、イケメンたちの幻を追い駆けて、お花畑へ暴走!! 「まずい、ジュディさん!!」 コーテスは、トムロウの銃撃を振り切り、ジュディを追いかける。 「間に合え……『ネオ・クリアランス』の聖水よ……!!」 追手のトムロウをリュリュミアが相手にしている最中、コーテスは最速で詠唱する。 すると、頭上から聖水がざっぱああああん、とジュディに降りかかり……。 「オウ!? どうしたネ? ん? コーテス、とりあえずサンクスね!!」 ジュディは正気に戻った。 (ふう、危なかった……。ジュディさんまで……僕たちに向かって暴れてきたら、ゲームオーバーだったよ……) 回復を終えたコーテスは、ほっとしていたのであった。 一方、この騒動の後、トムロウ、ヨウスケ、ジョウは、再び、どこかへ消えて行ってしまった。 B-3 最後の決戦 ひとまず、敵が姿を見せないので、リュリュミアの造ったバリケードの内側に四人は避難した。 「……これで、少し楽になるかな?」 コーテスは、「スターライトヒール」を唱え、キラキラと輝く星が仲間たちを癒す。 未来、ジュディ、リュリュミアはHPがやや回復。 「で、どうしましょうか? ……このままだと、こっちが不利ですね?」 コーテスは、手当が終わると、一同に質問をぶつける。 「ン~。ヒトマズ……ジュディはさっきのバトルで、『激・電磁砲』の撃ち方がなんとなくわかったネ! 後半戦は、『激・電磁砲』を活用しマース!!」 ジュディは、心強いことに、敵の必殺技を軽く理解した、と言うが。 「うん! わたしも実は、『激・電磁砲』をわざとくらってみた、というのもあって……。同じく、なんとなくだけれど、撃ち方、わかったかな?」 未来もジュディと同じ感想を述べる。しかし、敵に必殺技を二発撃ちこんだところで、素早い遊撃戦を得意とするトムロウたちには勝てるのだろうか? 「あのおぉ~? 実はわたし、『ブルーローズ』の新しい活用法を思いついたわぁ~!! 無数の蔦で、ぴゅぴゅーっと、敵を捕まえる切り札よぉ~!!」 リュリュミアは、青バラの技能を何度も使っているうちに効果的な技能を会得したのだろうか? 彼女の表情はいつもとなく自信満々だ。 「ううん……。じゃあ、こういう作戦はどうかな? あのね……」 未来は、思いついた作戦を一同に向かって、ひそひそと話す。 さて、そろそろタイムアップ。 トムロウたちの方も作戦が決まり、交戦が再開された! *** 「オラオラオラ~!! トムロウ様のお通りで~い!!」 トムロウと部下二人は、猛烈な勢いで電気銃を連射して来た。 時に、『激・電磁砲』の一撃も容赦なく撃ち込まれる。 その猛撃を受け止めるのは、青いバラのバリケードだ。 しかし、リュリュミアのバリケードは、もはやボロボロだ。 バリケードの強度を補てんするべく、コーテスが「ペルセウスミラー」を、ジュディが「スキル・ブレイカー」(10%と30%)を、残り分全て、張り巡らせた。 「それ☆ ここだよー!!」 バリケードから、未来がぴょこんと、飛んで登場! 「ストームブースト」で加速し、魔法少女がびゅんびゅん、とトムロウたちのもとへ飛んで来た! 「それ、未来ちゃんを捕まえろ!」 トムロウが指揮を出しながらも、未来を追いかけ回す。 部下二人も、わけがわからないが、飛び出て来た未来を追って倒すことにした。 「うふふ~!! かかったわねぇ~!!」 リュリュミア、「ブルーローズ」を限界技能値超えで、召喚!! 地中からは、様々な太さと長さを持つ無数の蔦が続々と出現した。 無数の蔦の大群は、未来を追いかけるのに夢中なジョウとヨウスケの足元を捕らえて……。 「うお!? なんだ、これ!?」 「ぎゃあああ!」 ジョウとヨウスケは、そのまま無数の蔦に呑まれ、ぐるぐるに巻きつかれて、取り込まれてしまった。しかも花粉の追加攻撃も加わり、くしゃん、くしゃんとやりながら、顔中がかゆくなり大惨事! しかし、二人は電気銃を取り出して、蔦を焼き払おうとするが……。 「ウマウマウマウマウマウマウマ、ウマウマ、ビビビビビィィィィィム!!」 コーテスは、「ウマウマビーム」(コーテス式)を唱え出し、口元からビーム光線を放つ! キラキラと光る光線攻撃は、ジョウとヨウスケにクリーンヒット!! 「ぐわあああ! なんだこれ? 腹が……!!」 「お腹がへって、力が出ない!?」 もはや腹ペコで、じたばたと動く気もなくしたジョウとヨウスケは、そのままぐるぐる巻きにされてしまった。 「ヘイ、スロー・ア・ウェイ!!(ぶん投げてやるわ!!)」 怪力のジュディは、ぐるぐる巻きになったジョウとヨウスケをひょい、ひょい、と軽々と持ち上げた。そして、ひとりずつ、遠方へ向かって放り投げてしまった。 「あーれー!!」 「うぎゃあああ!!」 ジョウとヨウスケ、これにて退場! 一方、リュリュミア、ジュディ、コーテスがこのように戦っていた最中、未来は、トムロウと交戦していた。 「や、それ、やあ!!」 未来は、ナイフ二刀流や、蹴りで攻撃するが、トムロウは……。 「そら、それ、とお!!」 トムロウは、二丁拳銃で二刀流を軽く受け止める。蹴りの方は、柔軟な身体の動きのおかげで当たることがなかった。 「ははは、未来ちゃん、白兵戦、上手だね? だが、しかし!! 俺はライゼンのジジイに鍛えられているんで、これぐらいの攻撃なら、わけもないぜ!」 トムロウはそう言いつつ、反撃に出る。 拳銃のグリップの部分で、未来のナイフを一刀、弾き飛ばしてしまった。 (くっ……。トムロウ、意外と強い!?) 未来は、トムロウが「萌え魔導師」なので、魔術しかできないと思っていたものの……。 さすがは東洋魔術仕込みのガンナーとでも言おうか、いわゆるひ弱な魔術師タイプとは意味が違うらしい……。 (だけど……。ここであきらめない!!) 「それえ!!」 未来はハイキックを、トムロウの顔面目がけて打ち込んだ! 「へへん!!」 トムロウはしゃがんで、紙一重で回避してしまったものの……。 (こ、これは、もしや……。おぱんちゅ、きらり☆ ってやつか!?) トムロウは、未来の超ミニスカートがひらひらと動き、もう少しで「おぱんちゅ」がきらり☆と光る瞬間に目を奪われ……。 「すきあり!!」 未来は、回し蹴りをトムロウの顔面にくらわせた! 「へぶし!!」 トムロウの首が変な後方に折れ曲がり、後退して体ごと吹っ飛ぶ! 「は~い! トムロウは、こっちにもらうわねぇ~!!」 そこに、敵を倒してきたばかりのリュリュミアが参戦! グレードアップした無数の蔦が、トムロウをぐるぐる巻きに巻き上げる。 やがて、トムロウを巻き上げた蔦は、はりつけ処刑の柱のような形に変形。 「トムロウ、覚悟するネ! 集中攻撃で、ジ・エンド、ネ! ソレトモ……。降参しマースか!?」 ジュディは、トムロウの前方から、「マギジック・レボルバー」を突きつけた。 「トムロウ君! 勝負はあったよ! 負けを認めてよ!」 コーテスは、トムロウの右側から、ビームを撃つ姿勢を構える。 ちなみに、左側からはリュリュミアがいて、「ブルーローズ」を操っている。 「トムロウ! それ以上やるなら……撃つ!!」 未来は、「テレポート」でトムロウの背後に回り込み、電気の銃口を構える。 「がはは!! わりいが、俺の勝ちだな! なんなら、全員で撃ってみろよ? 俺は、Hentai Powerが続くかぎり、何でもエネルギーに変換できるのをお忘れかな? 限界超えで回復した俺が、『激・電磁砲』を至近距離で連発したら、おまえらこそジ・エンドだぜ?」 トムロウは、大ピンチであるのに、余裕でへらへらと笑っている! 「ヘンタイ死すべし! 慈悲はないネ!!」 あきれたジュディは、「マギジック・レボルバー」に周辺の電気玉から電気を集め……チャージ!! 最大出力の電磁砲を、拳銃から砲撃!! 「激・電磁砲」が完成! ばちばちと青く光る電撃攻撃が、前方にいるトムロウを襲う! 「トムロウ、ばいば~い!!」 未来も、やるならやるということで、先ほど奪った電気銃から電気をチャージ!! 同じく、最大出力の電磁砲が、トムロウの後方から狙撃!! こちらも「激・電磁砲」が完成!! 猛烈な勢いで電気の火花を吹く光線がトムロウを襲う! 「トムロウ君……。今まで、ありがとう……。君のことは、忘れない!!」 残念そうにコーテスは、トムロウの右側から、ウマウマビーム(コーテス式)の最後の一発を撃ち込んだ。ウマウマウマと怪しい呪文を唱え、口元から怪光線を放ち、トムロウを狙う! 「うふふぅ……。逃がさないわよぉ……!!」 三人が猛烈な銃撃をトムロウに撃ち込んでいるので、蔦が破壊されないように、トムロウが逃げないようにと……リュリュミアは、次々と「ブルーローズ」を召喚し、標的を固くロック!! トムロウを捕らえているリュリュミアはどこか楽しそうだ……。 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!! がっははははあああああああああ!! ぬるいぜ、ぬるいよ、これ、ぬりぃぜええええええええええ!!!! マギ・ジスタンのオタクのみんな、オラに萌えを分けてくれえええええええええええええ!! 俺は、萌え魔王、トムロウ・モエギガオカだあああああああああああああああ!!!」 トムロウ、決死の覚悟で、猛烈な集中連続攻撃を一身に受ける!! 「萌交流変換」を最大出力にして、「激・電磁砲」を、「ウマウマビーム」を、「ブルーローズ」を、吸収して行く……。 勝利の行方は……。 どっかああああああああああああああああああああああん!! ちゅどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!! どかどか、どっかあああん、どかどかどおおおおおおおおおおおおおん!!!!!! 熾烈な爆撃、恐るべし!! トムロウはついに、限界を超えて、大爆発してしまうのであった。 もくもくと煙が立ち上がり……。 「ブルーローズ」のはりつけは壊れ果て、その中から、真っ黒なトムロウが出て来た……。 「がはは……。萌え……尽きたぜ!!」 トムロウはそれだけ言うと、ばたり、と倒れて動かなくなってしまった。 「やったあ! トムロウ君を倒した!! 僕たちの勝ちだ!!」 コーテスは、ぼろぼろに萌え尽きた親友の亡骸を前に、大はしゃぎで喜び出す。 「イエーイ!! ヘンタイマン、デッド・エンド、ネ!!」 ジュディも大喜びで、コーテスを担ぎ出した。 「ふう……。とりあえず……わたしたちの勝ち、みたいだね?」 未来も勝利にほっとして、リュリュミアと手を合わせて、ぱちんと叩く。 「ううん……。すごい戦いだったわねぇ……。ヘンタイさんにふさわしい最期かしらぁ~?」 リュリュミアも、未来と手を合わせた後、勝利の余韻にしみじみとしていた。 これにて、聖アスラ学院側の勝利で演習終了! しかし、トムロウは不死身キャラでもある。本日の異文化交流の後、彼が魔法少女同人即売会へ一般参加していたとか、していなかったとかは、また別の話……。 ●パートC サクラステージ C-1 忍者屋敷1Fでの戦闘 鬱蒼とする森の中に、一際(ひときわ)そびえ立つ忍者屋敷がある。 そう、この屋敷はイースタ大学の忍術研究キャンパスが所有する忍術の演習場だ。 本日、スノウ・ブロッサム(NPC)たち聖アスラ学院の諸君は、ニンジャマスター・サクラ・ブロッサム(NPC)率いる忍者軍団と演習試合をするのである。 「さあ、みんな、準備はいいかしら? サクラからの伝言では、この門をくぐって、屋敷に入った瞬間から演習開始よ!」 スノウは、この演習のコーディネーターでもあるので、仲間たちに最後の確認を取る。 「スノウ殿。忍者軍団はなかなかの強敵ぞろいと聞く。戦闘開始前にパワーアップするのだ! ほら、これをやろう!」 スノウへ魔力上昇の「ノーザンランド・チョコクレープ」を差し出したのは、目玉魔物の萬智禽・サンチェック(PC0097)である。差し出しをした本人も、「お菓子詰め合わせパック」を取り出し、ぐしゃり、ぐしゃり、とステータスアップ菓子を食べている。パワーラムネ、防御力チップス、スピードキャンディ、知能ガム、ラッキーチョコを一気食いして、攻撃力、防御力、敏捷性、知能、運がそれぞれ1ランク上昇! 「あら、萬智禽さん、ありがとう! う~ん、もぐもぐ……ノーザンランドのチョコクレープ、美味しいわね! しかも懐かしい味で感激だわ! 魔力もみるみると上昇中でいい感じね!」 スノウはチョコクレープを受け取ると、ありがたそうに、もぐもぐと一瞬で完食してしまった。スノウも女子なので、きっとチョコとかクレープとか甘い物が好きなのだろう。 「それはそうと、スノウ。ここイースタでは、靴は脱ぐのかしら? わたくし、今回は『レッドクロス』で演習に参加したいのですが……」 フランス令嬢のアンナ・ラクシミリア(PC0046)は既に変身済みだ。ヘルメットからは、ふわりとピンク色になった髪が流れ、白い手袋にブーツ、ふわふわしたピンクのスカート姿だ。手元にはもちろん、愛用のモップを装備している。 「大丈夫よ。誰かの家へ上がるのではなくて、演習場へ入るだけだから、靴は脱がなくていいわ。忍者屋敷はいわゆる『野外』ステージに当たるので、ブーツはそのままでいいわよ」 「スノウ、教えてくれてメルシーですわ! ジュ・ヴォワ(わかりました!)」 アンナがスノウとそうやり取りしている最中、盾の魔術師・リシェル・アーキス(PC0093)は、「大地のエル・オーブ」で土の光に包まれながら、変身していた。 「おう、こっちは準備完了だ。忍者ってのはなかなかの強敵と聞くぞ。俺もさすがに手を抜くわけにはいかねえんで、『オーブ』姿で、マジで行かせてもらう!」 リシェルは、土属性の紋章が描かれている黄色い中華拳法着へ変身。そして、彼は準備体操として、シュシュ、と手拳の動作を確認した。 「おお、そうであった! 『オーブ』を忘れてはならないだろう!」 萬智禽も慌てて「風のエル・オーブ」であるモスグリーンのマントをまとうのであった。ついでに称号「魔術書運送係」も発動し、魔力を上昇! 「いやー、いよいよ忍者屋敷の門をくぐるんかいな! ホンマ、はらはらどきどきするねん! で、今回、罠だらけの屋敷内で長期戦になるやろな? 入る前にお供の召喚もきちんとやっておいた方がええんちゃう?」 キューピー姿の妖精であるビリー・クェンデス(PC0096)はそう言いながら、ぽん、ぽん、ぽんと煙を出しながら、お供を呼んでいた。 煙の中からは、ペットの金の鶏であるランマル、カプセルモンスターのサンドスネーク・ボーマル、同じくお化けハイランダケ・リキマル、が続いて登場! 「おお、それもそうであるな! 私も手下たちを呼ぼう!」 ビリーの行動を見習い、萬智禽も、ぽん、ぽんと煙ながらお供を呼び出す。 煙の中からは、サンドスネーク(名前はまだない)と人造黒猫の小闇(しょうあん)が続々と出て来た。 「各自、用意はできたわね? さっそく進むわよ!」 スノウが仲間全員に確認を取ると、特に異論反論もなく、いざ出陣、となった。 *** ギギギ……。 門をくぐり、一同は、忍者屋敷に侵入。 しかし、刺客も罠も出現せず、ただただひっそりと、薄暗い空間に静寂のみがあった。 「まあ、薄暗いが、ライトが必要なレベルじゃねえな? それはそうと、罠を解除しながら進んだ方がいいんじゃね? どこに何の罠があるか先に把握しておけば、あとで戦闘になったとき逆に利用できるな?」 リシェルは、先頭で門をくぐり、中の安全を確認した後、仲間たちに呼びかける。 「リシェルさん、隊列変わるねん。お供たちを先頭に出すと、ええと思いますわ。例えば、サンドスネークはピット機能があるんで、熱を感知し、その手の罠を見抜けるねん。お化けハイランダケはいざとなったら胞子や毒で小細工できるやろし、鶏のランマルは感覚が鋭いねん」 ビリーに続き、萬智禽もお供たちを前に出す。 「そうだな。では、ビリー殿の三匹に続き、私の二匹も先頭に提供するとしよう。ところで、リシェル殿、罠であるが……。私の『過去視の水晶球』を覗いてみるのだ。この水晶さえあれば、敵の移動や罠が稼働した場所がおそらく発見できると思われるのだが……」 萬智禽は、水晶球を取り出すと、「念力」でぷかぷかと前方に浮かすのであった。 そして、魔力を流し込むと……敵の移動や罠が仕掛けら得た場所が……みるみると認知可能となった。 「うむ。いい具合なのだ。結果を報告しよう。今、この階には、忍者は一人もいないのだ。おそらく二階以降で待ち受けていることだろう。それと、罠だが……そこにうぐいす床があって、そのへんに落とし穴があって……あちらのレバーを引くと手裏剣が飛び出して、このへんの扉を押すと回転して……」 萬智禽が、水晶球で認知した結果を皆に教えると、一同は、ほっとした。 「おう、萬智禽、ありがとよ! だが、それは『過去』だよな? 時間は刻刻と変化している。なので、この先、何が起きるかわからんから、慎重に進むには、こしたことねえな!」 リシェルは、教えてもらった罠の箇所を後に利用するため、ひとつひとつ確認しながら進むことにした。 現在の隊列……。 ボーマル、リキマル、ランマルが先頭。 その後ろに萬智禽のサンドスネーク(ひとまずマン・スネークと呼ぼう)と小闇。 さらに後ろに使い手であるビリーと萬智禽。 最後尾がリシェルで、アンナとスノウは真ん中を歩くかたちになった。 前半で罠の箇所が既にわかったので、一同は、解除したり、発動を回避したりして、一歩ずつ慎重に進むのであった。 独特な緊張感があり、何が起こるかわからない忍者屋敷だが……。 本当に何も起こらない、誰も襲ってこないという……かえって不気味な展開になったのであった。 *** だが、二階の階段を上るとき……。 猛烈な手裏剣攻撃の奇襲に遭った! 「シャー!!」 「ベロー!!」 「コケー!!」 「シャー!!」 「ニャー!!」 先頭を歩いていたお供の五匹は急襲に耐えきれず、奇声をあげて逃げ回る。 「わわ、みんな、落ち着くねん!」 ビリーはお供たちを急いでなだめた。 「このお! やるのだな!?」 萬智禽は、「念力」で「マギジック・リボルバー」を取り出して、風の弾丸で威嚇射撃! だが、忍者たちの動きは驚くほど迅速であり、風の弾丸を軽々と回避し、隊列の中央に流れ込んで行った。 忍者1(便宜上のナンバリング)が小刀を振りかざしながら、アンナめがけて飛び降りてくる! カキィィィン!! 「なんの、これしき!! やってやりますわよ!」 アンナはモップを薙刀のように扱い、敵の一撃を弾いた。 だが、弾かれた忍者1は再度向かって来て、階段を上る最中に白兵戦となった。 忍者2は、スノウを目がけて、小刀で斬り込んで来る! 「それ! 危ないやん!」 ビリーは、スノウの手をとって、「神足通」で、テレポートする。 忍者の背後に回り込んだスノウは……。 「ほら、お返しよ!」 タクトから、土球を作りだして、反撃! 忍者もさすがに素早く、回避し、消えた。 忍者3は、最後尾にいるリシェルを追い駆けて行った。 忍者3の方が足は速いが、リシェルは先ほどから発見した罠をフル活用し、逃げ回る。二人は、隠し扉や隠し部屋を使い、ぐるぐると忍者屋敷内で鬼ごっこをしていた。 すると……。 ぱかぱかぱか……。 ホーホケキョ、ホーホケキョ♪ リシェルが罠にかかり、うぐいす床を踏んでしまった……!? 「はっ、そこか!! 運がなかったな!!」 忍者は、小刀を二刀流に構え、上空から突きの構えで、標的に落下!! しかし、斬撃で倒したのは……。 「ヒヒーン!!」 リシェルではなく、リシェルが召喚した「神馬」だった! 「ははは! 残念だったな、忍者野郎!」 標的を捕らえ違えた忍者3が驚いているところ……。 盾の魔術師は、超絶パンチ力を誇るゴーレムの腕を召喚し、おもいっきり、殴り飛ばした。 「ぐはあああ!!」 忍者3はそのまま殴り飛ばされ、壁に叩き付けられ、動かなくなってしまった。 「よっしゃ! まずはひとり倒したぜ!」 リシェルの作戦勝ちだ。忍者たちは罠をしかけたが、逆に罠にかかってやられたのだ! *** 忍者1とアンナの勝負はなかなか着かなかった。 (くぅ……。なんて、速度かしら? 斬撃を防御するだけで精一杯ですわ!!) アンナはあらゆる角度から斬撃を繰り出してくる忍者1に苦戦していた。 一方、忍者2は、お供たちと戦闘中。 「シャー!! シャー!!」 「ベロ、ベロー!!」 ボーマルとマン・スネークは、忍者2に食らいつこうとするが、なかなか捕まらない。 リキマルは、毒や胞子を飛ばすが、忍者2は回避してしまう。 ランマルと小闇はタイミングを見計らっていた。 もちろん、ビリーと萬智禽も何もしていないわけではない。 前方で戦うお供たちに向かって、戦闘指揮をしていた。 ときどき、スノウが後方から、魔球で忍者2を撃つが、なかなか当たらない。 決着がつかず困っていたところにリシェルが帰って来た。 「おらあああ! くらいやがれえええ!」 リシェルは帰ってくるや否や、罠の手裏剣を発動させ、忍者2を威嚇。 すると、忍者2は、敵が多過ぎて分が悪くなったのか、周辺に仕掛けられていた煙玉を使い撤退。 しかし、さすがは忍者と言おうか。 撤退して視界が悪くなった中、ボーマルと小闇を刺して逃げて行った。 「シャー!?」 「ニャー!?」 ボーマルと小闇はHPが尽きて、ここで撤退。 『がしゃん!!』 同時期に、忍者1はアンナとの戦闘を離脱し、萬智禽の水晶球を小刀で破壊! 「な、なんと!! これがないと罠が……!!」 焦っている萬智禽の横で、忍者1は逃げようとするが……。 階段を急いで上り詰めたアンナが、敵の逃亡を遮る。 「逃がしませんわよ!!」 アンナがモップをくるくると回し、打撃の一撃を狙う。 一方で、忍者1の背後からは、スノウを抱えたビリーがテレポートしてきた。 「もらったわ!!」 「ボーマルの仇や!!」 スノウは突然現れるや否や、「フレアキャノン」を繰り出して、その場で忍者を爆撃。 爆風の一撃に呑まれ、忍者1は、壁を突き抜けて、場外へぶっ飛んでしまった。 「ふう……。助かりましたわ。メルシーですわ、スノウにビリー!! しかし、スノウ……お掃除という観点から考えると、あなたの爆撃はあまり感心しませんわね……」 アンナはモップを振り下し、二人に向き直る。 「ああ、なんてことや……。ボーマルが退場やなんて……」 ビリーはがっくりしていた。 「どんまい、ビリー君!! きっと勝ちましょう! それとアンナさん、ごめんね、でも非常時だから!!」 スノウは、元気のないビリーを笑顔で励まそうとする。 一方で、アンナへ軽く謝った。 「そっちは無事か!? こっちは小闇と水晶球がやられたところなのだ。ああ、チクショー!!」 目玉でぷんぷんと怒りながら、萬智禽はぷかぷかと階段を上がって来た。 「ま、逆に考えれば、被害がその程度でよかったんじゃね? 代わりと言ってはなんだが、五人いる忍者を既に二人倒したわけだろう? 敵の戦力もだいぶ削ったし、まずまずじゃね?」 リシェルは状況を冷静に分析しつつも、仲間たちの士気を落とさないように気配った。 ひとまず、一階はクリア……。 二階以降、一同は無事にサクラのもとへたどり着けるのだろうか? C-2 忍者屋敷2Fでの戦闘 現在の隊列。 先頭がマン・スネーク、リキマル、ランマル。 続いて、使い手のビリーと萬智禽。 最後尾がリシェルで、真ん中がアンナとスノウ。 *** さて、水晶球がなくなり、罠の位置がわからなくなり……。 慎重に進むものの、二階へ着くなり、散々だった……。 「うおおおおお!! 天井があああああ!!」 天井が萬智禽たち目がけて、どすんと落ちてくる! 「おらあああ!!」 リシェルが、「ゴーレムパンチ」で押し返した……。 *** 「きゃああああ! なにこれえええええ!?」 スノウが間違えて、ぽちり、と床のボタンを足で押してしまい……。 シュ、シュ、シュ!! 手裏剣がオンパレードでお出迎え! カキィン、カキィン、カキィン……!! 「この程度なら!!」 アンナがモップを器用に振りかざして防御。 向かって来た手裏剣を全て弾き返した。 *** 「シャー!?」 マン・スネークが何かを発見したらしい。 「ベロ?」 「コケ?」 リキマルとランマルも何か不振に思ったらしい。 「ん? どうしたん?」 ビリーがきょろきょろとその部屋を覗くや否や……。 ゴロゴロゴロゴロゴロ……!! 巨大な玉が出現!! 方々から、数メートルに渡るカラフルボールがビリーたち目がけて、突進!! 「ぬおおおおお!! なんでやねん!?」 ビリーとお供たちは、玉の上にテレポートして、玉乗りをしながら逃げ回った。 *** 仲間たちは互いの安全を確認すると、まだ調べていない最後の部屋で集まった。 「ふう……。色々とひでえ目にあったな、この二階って奴は!! で、だ。みんな、三階への階段は見つかったか?」 リシェルは仲間たちに確認を取るが、皆、首を横に振っていた。 「おかしいわね……。三階への階段がないどころか……敵の奇襲すらも一回もなかったわね?」 スノウも首を傾げながら、うーん、と考え込む。 「考えられる可能性として……。最後のこの部屋のどこかに隠し階段があるのではないだろうか?」 萬智禽は、頭上に電球がピカリと閃き、みんなに提案する。 「そやな。んじゃ、今から、みんなでこの部屋の中をじっくり探すねん! きっと階段か何かがあるはずやろ!」 ビリーも意が決まり、立ち上がる。 そして、一同が、じっくりとゆっくりと部屋から隠し階段を探していた、そのとき……。 ピュ、ピュ!! ピュ、ピュ、ピュ!! 謎の矢が降って来て……。 「うぎゃあああ!! なんやねん、これ!? 体が……!!」 ビリーは影に矢が刺さるや否や、体の動きが全く取れなくなった。 「ぬぬぬ!? 体が動かないのだな……!?」 萬智禽も同じく、影に矢を刺され、身体の自由が奪われた。 「影縫いの術」が、見事に決まってしまった! 「忍者ですわ!! みんな、アテンシオンですわ!(気をつけて!)」 アンナは矢が吹かれた方向に向かって、モップを構える。 すると、攻撃が放たれた場所からは、天井が既にずれていて……。 突然、忍者が二人も飛び出して来た! 先ほど逃げた忍者2、そして新手の忍者4は、びゅんびゅんと飛び回り、部屋内の罠を発動させる! 「きゃあああ!」 アンナの足元が、ぱかり、と開いてしまった。 「何よ!?」 同じく、スノウの足元も、ぱかり、と開く。 二人は一階へ落ちることはなかったが、真下にあった「謎のジェル」にハマり、身動きが取れなくなる。 (ちっ、ほぼ全員、動きを封じられたか!? 動けるのは、俺とお供たちのみ……どうする!?) リシェルは神経を張り巡らせ、びゅんびゅんと跳ね回る忍者たち相手に距離を取る。 一方、リキマル、ランマル、マン・スネークは主の周りに集まり、なんとか動き封じを解除できないかと、影を突っつくが……。 どうやら……リシェルが敵の動き方を見るところ、敵はビリーと萬智禽を亡き者にしようと狙っているらしいことがわかった。 (そうか……。ならば……!!) リシェルは、ビリーと萬智禽の方に向かって走り出す。 「ははは、もらった!!」 「南無……!!」 忍者2と4は、怪しい詠唱を高速で唱えると、雪と桜となって消えてしまった。 代わりに、キレイな桜吹雪と雪結晶が、部屋内をぐるぐると包み込む……。 (そう来たか!! こいつは、『もらった』!) リシェルは、体内中にシールドを張り巡らせ……。 防御に備える! 次の瞬間、あらぬ方角から斬撃の嵐がお見舞いされる! 「うりゃあああ!!」 リシェルは、忍者2のランダム斬撃を複数個所から受けて、めためたに切られた。 しかし、防御体勢が完成しているので、恐ろしいほどのダメージではない。 「ふう……。今の技、『もらった』ぜ!」 リシェルは、何とか、敵の必殺の一撃を防げて、ほっとした。 「おお……。リシェル殿! ありがたや、ありがたや!!」 「シャー!!」 萬智禽とマン・スネークは何とか救われたが……。 きらん! ぎらり、ざしゅ、びしゅ、ぐさぐさぐさ!! 忍者4の「乱れ雪桜花」は、リシェルを飛び越し、ビリーを狙い撃ち! しかし……。 「コケー!!」 「ベロー!!」 ランマルとリキマルが盾になり、斬撃の全てを代わりに受けてくれた。 「ああ……あんさんら……なんてことを!!」 必殺技をなんとか受けずに済み、影縫いも解除されたが……。 ビリーは今の戦いで、大事なお供の二匹を失ってしまった。 HPがゼロになった二匹はそれぞれ帰還。 忍者2と4は、敵にダメージを与えたことを確認すると、早々と逃げてしまった。 ビリーは二匹がいなくなった場所で、へなへなと座り込む。 「ううう……なんてことや……お供三匹、全員やられてもうたねん……ボクがあかんかったんや……ボクが……!!」 悔し泣きをするビリーのところに、リシェルが隣にやって来た。 「ビリー……。気持ちは察するぜ。だがな、ここでこうして泣いていても、お供は帰ってこねえよ! 三階への行き方もわかったことだし、サクラのもとまであと一歩だ。……進めるな?」 やがて、罠を解除したスノウとアンナもやってきた。 「ビリー君……。残念なことになったけれど……わたしたちはあなたの力がまだ必要よ! 一緒にがんばりましょう!」 「そうですわ! 厳しいことを言うようですが、ここで引き返したら、お供の仇は取れないどころか、技能習得もできなくなりますわよ!」 スノウもアンナも、なんとかしてビリーを励まそうと激を送る。 「気持ちはわかるぞ、ビリー殿。私なんて、小闇も水晶球もおじゃんである。こうなったからには、演習でカンペキ勝利するのだな! わはは!」 萬智禽は目玉をひんむき、豪勢に笑い出した。 「おおきに……。すんまへん、泣いてもうたか……。もちろん、リタイアはしないねん。ほな、今後もよろしくな!」 ビリーは仲間たちのおかげで、何とか立ち直れそうだ。 C-3 忍者屋敷3Fでの戦闘 現在の隊列……。 先頭がマン・スネーク。 続いて、使い手の萬智禽。 最後尾がリシェル。 真ん中がビリー、アンナ、スノウ。 *** 三階に着くや否や、そこにいたのはサクラであった。 部下の忍者2と4も彼女の両サイドで待機中である。 また、三階は今までの階とは違い、一面を見渡せる狭さであった。 そして、三角屋根の位置の真下であり、天井を見上げると、天井は大きな三角になっていた。 「ドーモ。サクラ・ブロッサム殿。萬智禽・サンチェックである」 萬智禽は、先頭に立ち、聖アスラ学院サイドの代表としてあいさつをする。 「これはどうも、萬智禽・サンチェックさん。忍者屋敷ステージのラスボス、サクラ・ブロッサムです……とでも言えば良いのでしょうか? しかし……部下たちの報告は聞きましたが……私、もしかしてすっかり悪役でしょうか? あのお……これ、一応、演習なんで、本気で潰すつもりでやっているわけじゃないから……そこのところはご了承くださいませんか?」 二階で泣いていたビリーを気の毒に思ったのだろうか、サクラは意外にも謝って来た。 「サクラ、そんなことわかっているわよ! それより、演習の続き! 手を抜いたら、それこそ許さないわよ! 今日は私たち、完全勝利するつもりでいるので、そこのところはどうぞよろしく!」 萬智禽の後方から、スノウが出て来て、そう加勢し言い放つ。 「さて……。いよいよボスが出て来たところで……。サクラはわたくしがお相手しましょう! 覚悟はいいですわね!」 アンナは、モップを構え直し、一歩前に出て、サクラへ矛先を向ける。 アンナがサクラへ飛び掛かると、サクラは小刀を抜き出し、モップの一撃を受け止めた。 そして、器用に二刀流を操り、アンナのモップ裁きに猛攻を加える。 カキィン、カキカキカキ、カキィィィン!! (くぅ……。さすがに強いですわね、サクラは!! 斬撃が……肉眼でほぼ見えませんわ! 反撃もままならない……) アンナが苦戦しているところ、忍者2と4は、方々に散った。 2と4はサクラには加勢せず、一度、どこかへ潜んでしまった。 (スノウ……行け、今だ!!) リシェルはスノウの前に立ち、シールドを張る。 (はい!) スノウは、「チャージ」を唱え、魔力を貯め始めるが……。 その瞬間、敵の連続手裏剣攻撃が降って来た! 「おらあ!! その程度か、コノヤロウ!」 リシェルは、シールド魔術を手元に出して、手裏剣を弾き返す。 一方で、スノウの後方から忍者4が切り掛かってくると……。 「させへんで!!」 ビュン!! ビリーがスノウをテレポートさせた。 スノウは三歩、移動した位置で、「チャージ」を続ける。 「やるな……!! ならば、これでどうだ!!」 忍者2は「乱れ雪桜花」を繰り出す。 桜吹雪と雪結晶の中から、集中連続斬撃が降りかかる! 「おらあああああああああ!!」 リシェルは、「スキル・ブレイカー」を発動し、敵の攻撃全てを「反射」させた。 忍者2は、反射した斬撃を自ら受けて、吹っ飛んでしまった。 「すきあり!!」 忍者4は、忍者2に入れ替わって、リシェルに向かって来る。 リシェルを仕留めようと「乱れ雪桜花」の連撃! しかし……。 「ぐおらああああああああ!!」 「グランドクロス」を発動させ、鉄壁の土壁で、斬撃の全てを防いだ。 攻撃を全て受けと止められた忍者4は、一度、後方へ撤退する。 さて、スノウの「チャージ」中、リシェルたちが彼女の護衛に回ってくれていたので……。 ついに「チャージ」は無事、完了! 「行くわよ……!! ……レヴィゼルの裁きである無数の聖人たちの貴き剣よ……。邪悪な者どもに、鉄槌を……!!」 スノウは、「チャージ3倍」の「エクスカリバーズ」を無事に詠唱! 無数に生み出された聖剣たちは、空中に出現し、忍者2と4を目がけて、嵐の斬撃をお見舞いする!! さすがの必殺奥義とでも言おうか、三階のフィールドをことごとく破壊! 足の踏み場をなくした忍者たちは、天井へと逃げるのであった。 *** ところで、サクラと戦闘中のアンナもなかなか決着がつかない。 すると、サクラの手元から、無数の桜吹雪が現れるたかと思ったら……。 雪の結晶がちらちらと速度を増して吹雪いて来て……。 「きゃあああ!!」 アンナは撹乱されつつも、防御体勢を取っていると……。 ざく、ざく、ざく!! サクラのランダム斬撃が、あらぬ方向からアンナを襲う! アンナはモップでガードしたものの、すべてを防ぎきれなかった。 (くっ……。くらってしまいましたわ! ですが……) アンナは、反撃として、同じ技を使おうと思った。 そして、モップをぶんぶん振り回し、天井のほこりを落とすが……。 もく、もく、もく……。 げほん、げほん、げほん……。 「きゃあ! 何この攻撃!!」 サクラは思わず、腕で前方をガード。 しかし、ほこりが目に入り……。 「そこ!!」 アンナの突きの一撃がサクラの腹に入り、彼女を後方へ弾いた。 「ちょっと、アンナさん!! それ、何よ!」 怪しい攻撃だったので、サクラは確認を取った。 「『乱れ雪桜花』ですわ!」 自信満々で答えるアンナ。 「違うわよ、それ!! いいかしら? 『乱れ雪桜花』と言うのはね……」 サクラは、まず、武器の持ち方から、そして魔術の繰り出し方まで、アンナに丁寧に教えてあげた。 (なるほど……。「乱れ雪桜花」って、そういうことですの!! あっ、でも『コピーイング』すれば早かったかも!?) *** 聖剣はまるで神の怒りかのように降り注がれた。 剣が次々と落ちてくるので、三階にいる全ての者たちの戦闘が一度、中断される。 異変を察知したアンナとサクラも、一目散に撤退した。 (ふう……。さすがは一撃必殺の黒魔術師スノウだぜ! 威力ありすぎじゃね? だが、未だに忍者どもは始末できてねえ……。しゃあねえ、俺がやってやるか!?) リシェルは、猛撃の煙が収まる頃、三階の真ん中でシールドを張って出現した。 (一応、どこから狙われてもいいように、防御体勢である) すると、リシェルの前に、サクラが、ぽつりと出現。 「次のお相手はリシェルさんかしら?」 サクラは笑顔ではあるが、小刀を抜き、決死の構えだ。 「おう、俺のシールドで防げねえもんはねえ! どこからでもかかってこい!」 リシェルは、ガッツポーズで挑発! ピュ、ピュ!! リシェルの影に矢さが刺さった。 「うおっ……!! しまった……!!」 なんと盾の魔術師は、簡単にも「影縫いの術」にハマってしまったのだ。 忍者2が、サクラの背後から出て来る。 「かかったな、リシェル殿! 忍者2と4がまだ健在だったのは考慮していなかったのかな?」 「くうう……。動けねえ……!!」 がちがちと、体を振るわせ、何とかして移動しようとしているリシェルの付近に、サクラが突撃! 「ごめんなさい! 一本、頂きます!!」 サクラがかかってきたところ……。 「おらああああ、おまえの技で返すぜ!!」 リシェルは、手元から、桜吹雪や雪結晶の嵐を繰り出した。 彼自身も幻影となり、残像しながら、吹雪の嵐と共に舞う! 「もらったあああああ!!」 リシェルは、シールド魔術を手元に集中させ、右ストレートのランダム打撃をサクラに浴びせる!! 実は、リシェル、「レヴィゼルのお守り」で状態異常を既に無効化しつつも、「影縫い」にかかったふりをしていただけなのだ! 「うぎゃああああああああああ!」 (よっしゃあ! サクラを仕留めたぜ!!) だが、リシェルが仕留めたのは……。 なんと、忍者2だった! 「ははは……。リシェル殿、なかなかいい腕だな? では、私はここで撤退か……」 忍者2は、HPを使い切り、ぴくりとも動かなくなった。 (は? なんだよ、これ!?) 意表を突かれたリシェルの背後に、サクラが立っていた。 「リシェルさん……今度こそ、一本、もらいますね!」 カチャリ! 罠が発動。 リシェルが立っていた床がぱかりと開いて……。 「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 なんとリシェル、二階へ、一階へ、隠し地下へ……墜落! まさかのリタイアだ!! 「身代わりの術」、意外と恐るべし……。 ところで、三階での戦闘、萬智禽がずっといなかったが……。 実は彼とマン・スネークは、天井裏に隠れていて……。 (ぴぴぴ……。『コピーイング』完了なのだ!!) 萬智禽は、隠れ場所から、敵の技能をコピーする機会をずっと、見計らっていたのである。 (さてと、用は済んだであるな。ついでだから、サクラ殿と忍者4殿も倒しておこう!) 巨大目玉は、マントを翻し、くるり、と三階床に着地。 首(あるの?)には、マン・スネークをマフラーのようにぐるぐると巻いていた。 「必殺……『注目のナンバーワン』なのだ!!」 キラリ、目玉が怪しく金ぴかに光り出す! サクラと忍者4は……もはや、萬智禽を追い駆けずにはいられない! 「きゃああああ! なにこれええええ! 萬智禽さんを追いかけたくなるうううう!!」 うずうずするサクラ。 「うう……目玉……目玉……目玉焼きを食べたーーーーーーーーーい!!!!」 食欲まで動かされる忍者4。 サクラと忍者4は戦闘を中断し、萬智禽へかかって行った。 「ほら、こっちであるよ!!」 萬智禽は、「ストームブースト」最大加速で、窓から外へ逃げ出した。 「待て、待てええええええええ!!」 無心で追いかけるサクラ。 「待ってえええええええええええ、目玉あああああああああ!!」 目玉を追うこと以外、思考停止した忍者4。 「ははは、さらばなのだあああ!!」 目玉魔物は、さっそうと窓を飛び出し、相棒のヘビと共に、明後日の方向へ行ってしまった。 「ぎゃあああああああああ!!!!」 忍者4は、足場を踏み外し、そのまま下方へ落下し、リタイア! *** ラスボス戦、まさかの急展開の連続で、なかなか展開に追いつくのが大変だ。 状況を整理しよう。 現在、残るのは、聖アスラ学院サイドは、アンナ、ビリー、スノウだ。 イースタ大学サイドは、サクラが……残っているのだろうか? 「みんな、油断しないで! サクラがこんなにあっさり負けるはずはないわ! そう……きっと、この上の瓦屋根で私たちを待ち構えているはずよ!」 スノウは、昔からサクラの性格を知っているので、従姉妹が簡単にあきらめることがないと知っていた。 だから、考えられる可能性は……待ち伏せだ! 「少なくとも、こっちは三人いますわ。三対一ならば、十分に勝機がありますわね! さて、どうやって瓦屋根へ向かいましょうか?」 アンナは、状況が確認できると、仲間たちに率直な疑問をぶつけてみた。 「ボクがテレポで送りまっせ! まず、アンナさんを送って、サクラさんを引きつけていてもらうねん。で、次にスノウさんとボクが一緒にテレポして、アンナさんに加勢しまっせ! それでいいんやん?」 確かに、ビリーが言うように、それが一番合理的な移動手段だろう。 一同は、座敷童子のテレポートスキルに甘え、瓦屋根へ移動することになった。 *** ビリーと共に瓦屋根へテレポした、アンナ。 スノウの予測通り、サクラは瓦屋根の上で待ち構えていた。 「サクラ!! 今度こそ、決着をつけましょう!!」 アンナは、モップを構え、標的に向かって、じりじりと歩み寄る。 「行きますよ!!」 さすがに瓦屋根の移動には慣れているのだろうか? サクラは、三階にいたときと同等の速度で、アンナに忍び寄る。 カキィィィン!! 本日、何度目の白兵戦であろうか。 小刀とモップの激しい小競り合いが再び、始まった。 アンナがサクラを引きつけている最中、ビリーはスノウと共に屋根上へテレポ完了! サクラの背後に再びテレポし、スノウがタクトを振り、ビリーが「影縫い」を構えると……。 突然、桜と雪の重ね吹雪が一面に舞い散り……。 猛烈な斬撃が無数に弾け……。 「しもうた!!」 ビリーは覚悟した。 「無念!!」 スノウも負けを予感した。 (ふふふ……。そうくると思っていました! スノウの性格はよく知っているし、この状況ですと、アンナさんをおとりにして、私の背後から攻撃するのが一番合理的ですからね!) しかし、勝ち誇っているサクラの真下で仕留められていたのは……。 「ははは……。サクラ殿、さすがに必殺の一撃は堪えるのだな……。では、今度こそ本当に撤退である!」 「シャー!!」 まさかのまさか! 「身代わりの術」を使った萬智禽とマン・スネークが代わりにやられていた。 「ああ、なんてことでしょう!! ここで『身代わり』を使うなんて!!」 攻撃ミスで真っ青になるサクラ……。 サクラが戸惑っている間、背後にいるスノウとビリーは詠唱を完成させていた。 「……顕現せよ、大宇宙における破滅の大王、ブラックホール……。魔力の限りを喰らい尽くし給え!……」 スノウの頭上には、巨大なブラックホールが出現し、サクラの魔力を吸い尽くす……。 「それえ!! 今度こそ、敵討ち&演習終了や!!」 ビリーは、ピュピュッと、矢を吹いて、サクラの影を仕留めた。 「きゃああああああああああ!!!!」 サクラは、スノウの攻撃により残りの魔力を全て消耗し、ビリーの足止めにより少なくとも3ターン、移動不可能になった。 「勝負ありましたわね!!」 最終決戦を予感したアンナは、モップの魔術攻撃に全力を傾けた。 桜吹雪は、まるで桜花の如く散って行く忍者を暗示していて……。 吹き乱れる粉雪は、物語の冷たい結末を表現するかのように……。 アンナの幻影たちは、あらゆる角度からモップ打撃を連続で舞い、サクラのHPを限りなくゼロへと削(そ)いで行った……。 「きゃああああああああ!!」 サクラは、アンナの「乱れ雪桜花」をクリーンヒットで受けて、瓦屋根の上で転倒してしまった。 「ふう……。降参します! 本当に……アンナさんも、ビリーさんも、スノウも、他の皆さんも、強い方……ばかりですね……。でも、ありがとう……。戦えて楽しかったです……」 サクラは、力尽きて倒れながらも、笑顔で、聖アスラ学院サイドの諸君へ礼を言った。 そんなサクラの横にスノウ、アンナ、ビリーが座り込んだ。 「サクラ、こちらこそありがとう! 本気で戦えてすっきりしたわ!」 スノウは、笑顔で、サクラとグーを合わす。 「サクラ……。まともに戦っていたら、わたくしの方が負けていたかもしれませんわね……。でも、本当に良い戦闘経験になりましたわ。それと、『雪桜花』も丁寧に教えてくださり、ありがとうですわ!」 アンナもぺこりとお辞儀をする。 「ま、ボクの手下を全員やってくれたときは、どないしようかと思うたけど、これでちゃらやな! ほな、おおきに! またやろな!」 ビリーも過去のことは水に流し、二カッと笑顔で礼を言う。 サクラステージでは、多大な犠牲が出たものの……。 聖アスラ学院サイドの勝利にて、演習がさわやかに終わったのであった。 *** さて、これにて、全ステージの演習が終了した。 聖アスラ学院の諸君は、価値ある何かを学び取れたのであろうか? 今回の厳しい演習を経て、新しい技能を得たPC諸君の今後に乞うご期待!! <終わり> |