「赤い沙漠と緑の植林」(清掃編)

第1回

ゲームマスター:夜神鉱刃

もくじ

1.赤い沙漠へ

2.岩場付近での清掃

2−1 最初の一手
2−2 岩場にて白兵戦

3.オアシス付近での清掃

3−1 未来の偵察
3−2 仲間たちの増援1 ラサと鈴
3−3 仲間たちの増援2 ジニアスとマニフィカ
3−4 仲間たちの増援3 アンナとジュディ

4.オアシスで休憩

5.人面岩付近での清掃

5−1 敵を集めよう
5−2 石化光線の強襲
5−3 トドメの白兵戦

6.リザルト



1.赤い沙漠へ


 どこまでも広がる真っ赤な砂の海……。
 厳しい太陽光がギラギラと輝き、赤々とした灼熱の砂場は時に火炎を噴いている……。
 ここは通称、フレイマーズ国家の「赤い沙漠」という危険地帯だ。

 そんな過酷な環境の中、魔導ラクダを走らせ、「赤い沙漠」の「岩場」へ向かっている者たちがいた。

「ふうー! あちーな! そろそろ目的地へ着くのかな、ラサ?」
「暑いの? ボクは暑くないけれど……。うん、あの岩場がそうかな、ジニアス?」

 ラクダの先頭を走っているのは、冒険者青年ジニアス・ギルツ(PC0025)だ。今日の彼は、沙漠国家を冒険する者らしく、ターバンをかぶり、通気性に富んだグールビズ製の薄くて白い戦闘服を着込んでいる。もちろん、愛刀「サンダーソード」は腰に帯刀している。

 ジニアスの戦闘服に付いているフードの中から、ひょっこりと顔を出したのは、薄らと輪郭(りんかく)がぼやけている美幼女のラサ・ハイラル(PC0060)だ。彼女は精神体であり、生身の肉体を持っていないので、暑さは感じないらしい。ラサも同じく、いつでも戦闘ができるように「魔銃」を腰に携えている。

「イーハー!! アイ・ラブ・キャメルねー!!(ラクダ大好き!!)」

「きゃっ、きゃっ! きゃは、きゃは!! ラクダやねん! 快適やでー!!」

「もうお二人とも! そろそろ戦闘に入ってもおかしくない頃ですから、落ち着いて頂けませんか? まあ……ラクダは、いるかと違って、陸の上で快適なのはわかりますが……」

 テンガロンハットを振り回しながら、カウボーイみたいに叫びつつ、魔導ラクダを走らせているのは、ジュディ・バーガー(PC0032)だ。バーガー牧場の娘なだけあって、乗馬経験は豊富にあるのだが、ラクダにはめったに乗ったことがないらしい。関所から借りた魔導ラクダの乗り心地に思わず感動して、はしゃいでしまっていたのだ。今日の彼女は、暑い場所での戦闘ということで、はち切れそうなボディに真夏のカウボーイ服を着込んでいる。

 一方、ジュディと同じく、ラクダに乗って大喜びなのは、キューピー姿の妖精ビリー・クェンデス(PC0096)だ。座敷童子と言えども、まだまだ幼い子どもである。生まれて初めて乗った魔導ラクダの乗り心地を楽しんでいるようだ。ビリーは愛車の飛空艇で飛んでくることもできたが、そこは初めてのラクダを経験したいと思ったのだろうか、迷わずに魔導ラクダを選んで乗ったらしい。

 前のはしゃいでいる2人を後方から注意しているのは、人魚姫マニフィカ・ストラサローネ(PC0034)だ。陸での移動は、もちろん、人魚ではなく人間の姿で、いるかではなく、ラクダに乗っている。さすがに暑さに弱い魚の身としては、沙漠の日差しは堪えるのだろうか。パーティの中でも、やや息が荒く汗ばんでいる。今日は、いつもの古代衣装の他、麦わら帽子を被り、長い銀髪もポニーテールで束ねている。

「ノンノン!! さすがに暑いですわね! 砂場のお掃除、大変そうですけれど……今日はがんばらなくちゃですわ!」

 はしゃぎ気味な前の3人の後に続いているのは、フランス出身の令嬢アンナ・ラクシミリア(PC0046)だ。令嬢なのでお嬢様ファッションではあるが、今日は戦闘が激しくなりそうなので、なるべく動きやすいレディース服のアンナである。愛車のローラースケートも魔導ラクダにぶら下げて持って来たようだ。アンナは、額から流れる汗をハンカチで拭いる。もはや南フランスの避暑地にでも出かけたい気分なようだ。

『ジジジ……。こちら、武神鈴(PC0019)! みんな、待ってくれ! 俺だけ魔導ラクダじゃなくて、ロボなんだよ!!』

 ラクダに乗っているアンナたちのやや後方から、1機のロボがホバリングして、砂場の砂を弾き飛ばしながら、走ってきた。

 全長4メートルの「全環境対応型人型機動兵器」に乗り、操縦しているのは鈴である。いわゆるロボットアニメに登場しそうなメカだ。主な特徴を挙げれば、耐熱性に優れ、ミサイル、チェーンソード、パイルバンカーを装備している人型兵器なのである。

 ちなみにこのロボ、鈴が発明したものである。本日の清掃作戦で役立てようと、鈴が張り切って用意したものの、はたしてどこまで戦えるメカなのであろうか、乞うご期待。

「ふう……。そろそろかしらね? 岩場付近って……ああ、あれね?」

 最後尾から魔導ラクダの速度を上げて、最前線まで走っているのは、調査隊隊長の妖精シルフィー・ラビットフード(NPC)である。一応、現代魔術研究所の人間なので、今回の作戦では立場上、指揮官を任されている。もっとも、幼い外見に羽が生えているロリータ服の小学生みたいな彼女を見ると、誰もが「隊長」とは思わないだろうが……。

 ちなみに今まで、隊長の役目を果たすべく、最後尾をラクダで走っていたのだ。目的地はわかっているので、先頭を任せるのは冒険慣れしているジニアスとラサでも十分だった。だが、最後尾というポジションは、一番後ろの位置から仲間全体を見渡せる場所なので、隊長が担当をした。万が一、何かあったときのため、彼女は最後尾にいたのだ。

 たった今、「岩場」の目的地が見えて来たので、シルフィーは、ジニアスとラサの位置まで追いついて行ったのである。

「ジニアスとラサ! あの50メートル先の岩場がもう目的地よ! 敵もごろごろいるでしょう? 一度、この辺の岩場に隠れてから、作戦を遂行する方がよさそうね?」

 背後から追いついたシルフィーに話しかけられ、ジニアスとラサは振り返る。

「おっす、シルフィー隊長! そうだな。一度、この辺で、ラクダを止めようか?」

 代表して、ジニアスが返答する。

「全員いるわね?」
 ぞろぞろとラクダを止めだす仲間たちを見ながら、シルフィーが問いかける。

「あれ? 関所で、もう1人、女の子がいたよね? 超ミニスカートの制服を着た女子高生ぐらいの子?」
 ジニアスのフードの中で、気がついたラサが、シルフィーに質問する。

「未来(姫柳 未来PC0023)のことね? 未来は先にオアシス方面の偵察に行っているの。オアシスで合流することになっているから大丈夫!!」

 と、回答しつつも、みんながちゃんといるかどうか、指をさしながら、仲間の数を数えだすシルフィー。

「…………うん、あたし含めて8人、ちゃんといるわね! では、今から岩場付近清掃の作戦に移るよ! 各員、岩陰で待機&用意!!」

 隊長が号令をかけ、隊員のみんなは戦闘の準備に取り掛かるのであった。


2.岩場付近での清掃


2−1 最初の一手


 調査隊は、目の前にあった大きな岩影に隠れることにした。

 敵を迎え撃つ先発隊として、飛び道具を持つジニアス、ラサ、鈴、ジュディ、シルフィーがそれぞれ定位置についた。

「今から奇襲をかけるものの……。もう少しばかり火力が欲しいところだな……。なあ、シルフィー、召喚魔術で攻撃力を上げたりできないか?」

 目の前の数いる敵数を見ながら、ジニアスは隣にいるシルフィーに話しかける。

「ふむ。では、火の精霊サラマンダーを呼ぼう! 火力を上げるのは、ジニアスだけでいい?」

 シルフィーが確認を取ると、鈴のメカが手を挙げ、スピーカー越しに答える。

『今からミサイルを撃ちこむので、火力が上がるとありがたい。ぜひ頼む!』

「了解!」

 シルフィーは、空に真っ赤な魔法陣を描く。
 すると、魔法陣は真紅色に発火して、火炎を放射し……中から炎に包まれた巨大なトカゲが出て来た……。

『ご主人さま……。いかが致しましょうか?』

 慇懃(いんぎん)な態度で巨大トカゲが、会釈をして、問いかける。

「ジニアスと鈴……。この2人に火力アップを!!」

『かしこまりました!!』

 トカゲが2匹に分身し、それぞれが真っ赤なマグマに変わり、ジニアスと鈴の方へ、赤い光となって飛んで行った。

 ジニアスの「サンダーソード」と鈴の「20連LRM(長距離ミサイル)ポッド」が灼熱の炎に包まれて、熱く燃え上がる……。

「お、すげえぞ、これ、力がみなぎるようだ!!」
「むむ!? これでミサイルの威力がさらに上がったのかな?」

 ジニアスと鈴は、武器の威力変化を直に感じ取れたようである。

「これでよし。攻撃力が2、3倍は軽くアップしているから、戦いやすくなっていると思うよ!」

 シルフィーが補助効果のある魔術をかけ終えると、皆、改めて戦場の様子を岩陰から眺め出す。

***

「ウギャー♪ ウギャー♪」

 シルフィーたちが隠れている岩場付近から20メートル先で、バシリスク5匹が歌を歌いながら踊っていた。

「シュー♪ シュー♪」

 バシリスクにつられて、サンドスネーク5匹もにょろにょろとダンスしていた。

「キー、キー♪」

 サンドスネークたちに負けまいと、アリ地獄モグラ5匹も地中から飛出し、奇声をあげてふらふらと踊っている。

(あんにゃろう……。植林スポットを制圧したつもりなのか? いい気になりやがって……!!)

 鈴はロボの両肩に装備されている「20連LRM(長距離ミサイル)ポッド2機」を、カチャリ、と先方の踊っているバシリスクたちに傾けた。

(バシリスクが最も危険なので、最初に奴らから片づけようか!?)

 ジニアスは、「サンダーソード」を上段に振り上げ、雷のエネルギーを蓄え始めた。
 鈴がミサイルを撃つと同時に、爆撃開始だ。

(ジニアス……。おそらくこの中で、ヘビが一番すばしこいよね? ボクが「精密射撃」で死角となったヘビたちを潰していくよ!)

(ありがとう、ラサ。サポート、いつも通りよろしく!)

 ラサはジニアスのフードから出て、「魔銃」をカチャリと構える。
 標的をダンス中のヘビたちに定める。

(モグラどもは……ジュディがビートアップ(やっつける)シマス! この辺に転がっているロックでアタックしてやりマース!!)

 ジュディは岩陰に集めた半径30センチメートルほどの岩石3発を持ち上げる準備をした。

(では、みんなが外した残党をあたしがやるね! 風の精霊シルフの「カマイタチ」で切り殺しておこう!)

 シルフィーは、風の精霊を召喚する。
 緑色に輝く魔法陣から、パタパタと羽で飛びながら小さな精霊が5匹も出て来た。
 精霊たちは、いつでも撃てる用意をしている。

『全軍、発射!! 攻撃開始!!』

 シルフィー隊長の号令と共に、奇襲作戦開始!!

(へっ……。ミサイルでも喰らって地に果てろ!)

 鈴は、ミサイルのボタンを押し、メカの両肩に装備されているミサイルポッドが発動!
 5、6発のミサイルが連続して爆撃音と共に発射し、踊っているバシリスクたちに直撃!

(続いて行くぜ! これでどうだ、バシリスク!!)

 ジニアスは、「サンダーソード」を4、5回振り被り、溜めていた雷撃を次々と放つ。
 電気をまとった巨大な黄金の弾丸が、ミサイルで爆撃されているバシリスクたちへさらなる追い討ちをかける!

(む、そこか!! 逃がさないよ!!)

 ミサイルと雷撃で荒れる戦場の中、バシリスク付近にいたヘビたちも巻き添えをくらい、爆撃されては、飛び散って行く。

 ラサは、爆撃時と同時に回避して逃げたヘビたちを見逃さず、狙撃。

 1匹、2匹……。
 と、「精密射撃」の連続を繰り返し、サンドスネークの頭上を打ち砕く。

(ロック・シュート、ノー・エスケープ!!)

 ジュディは手元に用意した岩のボールを担ぎ出し、爆撃されている敵陣に投げ込む。
 怪力の腕力から繰り出された投てき攻撃が、逃げ回っているモグラたちを襲う!
 岩石が、1発、2発、3発、と放り投げられ、モグラたちが次々とぺちゃんこになって行く……。

(精霊よ……。あの逃げたヘビとモグラを!!)

 シルフィーは、風の精霊に命令を出して、爆撃から逃げ惑うヘビ1匹とモグラ2匹へ向かって、風圧の刃を高速度でかっ飛ばす!
 強靭(きょうじん)な風の刃は、ヘビやモグラを真っ二つに割って行く……。

***

 こうして、圧倒的な火力による奇襲戦法で、岩場付近の戦場は修羅場と化した。
 爆撃、狙撃、投てき、斬撃の後の岩場付近は、もくもくと煙を上げ、モンスターたちの屍の山ができた。

 しかし、敵の増援が来るだろうことは簡単に予測がつくので、パーティは、岩場に潜みながら、状況把握に努める。

(とりあえず……。バシリスク5匹、サンドスネーク5匹、アリ地獄モグラ5匹を、今の奇襲で倒したみたいね?)

 シルフィーが数を数えながら、敵情を把握する。
 と、様子を見ていたら、またまた同じ種類の敵が同じ数でぞろぞろとやって来た。

 しかしさすがに今度の敵陣は踊って油断はしていない。
 戦場で何があったのかを確認するため、バシリスクたちはきょろきょろと探っている。サンドスネークとアリ地獄モグラは、地中に潜り、戦闘の用意をしている。

(来たわね……。でも、ここに8人はいらないかも?)

「あのさ……。オアシスに偵察へ行った未来が気になるから、ここは任せてもいいかな?」
 シルフィーが隊員たちに呼び掛けると、特に反対する者はいなかった。
 メンバーたちは互いの顔を見ながら、やれるだろう、とそれぞれが頷く。

「隊長! ボクもご一緒しまっせ!」
 隊員の中から、ビリーが同行を名乗り出たので、シルフィーは彼を連れて行くことにした。

 こうして、岩場付近の部隊からシルフィーとビリーが離脱し、残り6人で残党を制圧することになった。

 バシリスクのうち2匹が岩場付近の気配に気が付き、早くも「石化光線」を撃ってくる。
 そして、サンドスネークとアリ地獄モグラも地中からぞろぞろと集まり出し、岩影付近に「アリ地獄」が巻き起こる……。

 敵に位置が気づかれた隊員たちは、岩場から逃げて散り、迎撃の態勢に入るのであった……。


2−2 岩場にて白兵戦


 岩陰付近がモンスターたちの総攻撃にあい……。
 崩れ落ちる頃には、隊員たちは全員、反撃に出ていた。

「や、それ、ジャンプですわ!!」
「レッドクロス」でピンクカラーのヒロイン衣装に武装したアンナは、得意のローラースケートで岩場から岩場へとぴょんぴょん、と飛んでいた。

(この世界、「レッドクロス」が正常通りに作動しないみたいですけれど……ローラースケートの実力は健在ですわ!)

 アンナは「スケーティング技能120パーセント」のスキルを抜群に発揮し、八艘跳び(はっそうとび)を繰り出しながら、モグラたちを翻弄するのであった。

 ちなみに「八艘跳び」とは、かつて「壇ノ浦の戦い」で源義経が船から船へぴょんぴょんと飛び移りながら戦ったときの戦法の名称である。

 アンナも義経に負けない動きで、岩場を自在に飛び跳ね、そして上空からトドメの一撃を、真下でアリ地獄を作っているモグラにお見舞いする。

「ギャフン!!」

 ローラースケートに踏んづけられたモグラは、悲鳴をあげながら、ぴよぴよとヒヨコが頭上で踊り、スタン状態になる。「アリ地獄」のスキルを発動している最中だが、動作を急停止!

「シュート!!」

 アンナのジャンプキックで弱体化したモグラに対して、ジュディが岩石を持ち上げ、ターゲットへ向かって全力で投げつける。

「グエ!?」

 スタン状態中に、巨大な岩が頭上から振って来て、モグラは息絶えた。

「ミス・アンナ、ナイス・ジャンプ!!」 この調子でヘイヘイ・レッツゴー!!」

「メルシー、マダモワゼル・ジュディ!! レッセ・フェール(成すがままに)ですわ!」

 米仏の美女たちは、連携攻撃に息を合わせ、モグラたちを続々と沈めて行くのであった。

***

 ジニアスとマニフィカは空中戦をしていた。

 岩陰が破壊されるや否や、2人は「翼」を広げて、空へ舞った。
 ジニアスは「魔黄翼」で、マニフィカは「魔竜翼」で。

 5メートル上空に舞い上がった2人は空中から襲撃を狙う。
 魔剣士は、「サンダーソード」を突きの構えで。
 槍術の姫は、「トライデント」を突きの態勢で。

 さて、彼らは上空からグライディングして、真下にいるバシリスクたちを串刺しにしようと狙うのだが……。

 一方で、地上にいるバシリスク5匹は、空中にいる2人を「石化光線」で撃ち落とそうと躍起になっていた。

 下手に光線に当たるわけにも行かず、空中を旋回しているところだ。

「ラサ……。歌であいつらの動きを止めてくれないか?」
「了解!」

 空中で飛翔しつつ、ジニアスのフードの中にいるラサは、「時の歌」を厳かに歌い出す。
 心の中の時間が停止するかのような重くて切ない歌詞……。
 そんな歌詞をより引き立てる激しいクラシック音楽のようなメロディ……。
 ラサの歌から召喚された、音符たちが、辺り一面にゆらゆらと流れ出る。

 歌を聴いてしまったバシリスクたち3匹、そして周囲にいたサンドスネーク2匹は、動きが鈍り、のろのろとした歩みに変わる。
 魔物であろうとも、心が切なく重くなると、体の動きもぎこちなくなるのであろうか。
 敵のスピードは、1/10に削られている。

***

『もらった!!』

 岩陰から出て来た鈴のメカは、「パイルバンカー」でバシリスクたちを狙撃!
 次々と撃たれる弾丸で、速度が停滞しているバシリスクの1匹が弾き飛ばされた。

 だが、鈴の真下から、地中に潜っていたサンドスネークたちが一斉に飛び出す。
 スネーク3匹に巻きつかれた鈴のメカは、動作が停止……。

(しまった! 巻きつかれて麻痺したか!?)

 止まっている鈴に向かって、歌から逃れたバシリスクの1匹が向かって来た。
 ビビビ、と「石化光線」を流し、光線にクリーンヒットした鈴が石化してしまう!
 しかも運悪く、砂場が炎を吐き、追加の火炎ダメージも!

(やべえ! 鈴がやられちまった!)

「魔黄翼」の高度を変えて、ジニアスが鈴のもとへ空中から駆けつけた。
 上空から、「マンドラゴラの浄化水」を流し、石化を解除。

「とう! 離れなさい、あなたたち!!」

 マニフィカは、細長い「トライデント」を振り回し、足払いをヘビたちにくらわせる。
 払われた3匹のヘビたちは、鈴の機体から逃げて行った。

 と、人魚姫が払っている最中に……。
 歌から逃れたバシリスクの1匹が背後から「石化光線」!

(しまったですわ!!)

 マニフィカが石化したと同時に、鈴が「パイルバンカー」でバシリスクを蜂の巣へ変えて行く。

 一方、空中を旋回しているジニアスが、「マンドラゴラの浄化水」でマニフィカを解凍する。

「ジニアス、歌の効果が解けないうちに、バシリスクたちを!」
「ああ、わかっているって!!」

 ラサに急かされて、ジニアスはさらに高度を上げる。
 上空5メートル地点から、「サンダーソード」に雷をまとわせ、「突き」に出る。
 ラサは、「魔銃」を構え、同時に狙撃。

 地面をのろのろと這っているバシリスク2匹とサンドスネーク2匹に向かって、次々とトドメを指す。
 雷電の突き、追加の狙撃、がバシリスクやヘビの身体を破り、モンスターたちは死体へと変わって行った。

***

 ジニアスとラサがバシリスクを退治している最中……。

 逃げた最後のバシリスク1匹とサンドスネーク2匹が、マニフィカと対峙していた。

「ナメてもらっては困りますわね! 流派ネプチュニアの秘儀を受けてみなさい!」

 マニフィカは、地上で敵たちとにらみ合いながらも、槍を空中で回転させていた。
 そして回転している槍を水術と組み合わせ、風車を作り出す……。

「そりゃあああああああああああああ!」

 マニフィカの掛け声と共に、回転している槍から飛び出した水圧の刃が、交戦中の敵たち全てを襲う!

 水圧に切り刻まれたヘビたち2匹は、スライスされて果てて行った。
 一方、バシリスクの方も、「石化光線」で反撃する間もなく、心臓に刃が突き刺さり、動かなくなった。


 そのとき、マニフィカの背後で鈴は……。

(よし、あとはこいつだけか……!!)

 最後の残党、サンドスネークの1匹に向かって、鈴は銃撃戦をしていた。
 なかなか当たらなくて困っていたところ、上空からラサが「精密射撃」で狙撃して、倒してくれた。

『ラサ……すまない、ありがとう!!』
 鈴がスピーカー越しで礼を言う。

***

 このエリアの敵が殲滅(せんめつ)されるのを確認すると、パーティは一度、集合することにした。

『よし……。全員いるな? みんな無事みたいだな?』
 隊長に代わり、鈴が確認を取ると、自分含めて6人がちゃんといたので皆、安心した。

「みんな、疲れているところ悪いが、オアシスへ行った3人が気にかかるので早めに移動しようか?」

 ジニアスが呼びかけると、全員、暑さで疲れが出ている表情ではあったものの……。
 オアシスへ向かった仲間たちのことを思い、早めの移動に異論はなかった。

「ちょっと待って、ジニアス! おもしろいことを考えたんだけれど。最後に倒したこのヘビを使ってさ……」


☆岩場付近 クリア!
☆植林スポット:2カ所確保!



3.オアシス付近での清掃


3−1 未来の偵察


 岩場付近で戦闘が行われている頃……。
 未来は、「魔白翼」で飛行しながら、オアシス付近を偵察していた。
 もっとも、「飛行している」とは言え、今日は水着を下に着ているので、超ミニのスカートからパンチラしてしまう恐れがないので安心だ。

(よし! これで全部ね! 全部で3カ所にモンスターの集団がいて……1カ所ごとに敵の数は、バシリスク4匹、サンドスネーク4匹、アリ地獄モグラ4匹……だね! 地形としても巨大なオアシス付近の水辺で戦闘することになるかな?)

 未来は、一通りの偵察が終わると、仲間が来るまで木の上で休むことにした。
 だが、木の上に着地したとき、反動で木の実が下へ落下してしまい……。

 わずかな落下音だったが、周囲をうろついていたバシリスクたちは気がついてしまった!
 上空を見上げると、未来が木の枝にとまっているところを発見し、すかさず「石化光線」を撃ってくる!

「きゃっ!!」

 間一髪のところで、未来は「テレポート」して避けたものの……。
 地上では、1部隊ごと集まっていた。
 バシリスク、サンドスネーク、アリ地獄モグラ……4匹ずつのお出ましだ。

(まずい……!! 囲まれた!!)

 4匹同時に石化光線を撃ってくるモンスターたちの強襲を空中で交わしながら、なんとか逃げ惑う未来。

 モグラたちは地中で「アリ地獄」を起こし、ヘビたちは地中へ戻って行った。
 今、地上に降りたら、間違いなくやられてしまう。

 それでも何とか4匹の石化攻撃を回避していた未来だったが……。
 突然、地中にいたサンドスネークの1匹が、「高速移動」で飛び出し、空中へジャンプ!

 未来が思わず、バランスを崩して、よろめいたところ……。
「石化光線」に当たってしまった!

 石像となった未来は、ぼとり、と地に落ちた。

 と、そのとき……。

「呼ばれて、飛び出て、じゃじゃじゃ〜ん、やで〜!!」
「む!? 一足遅かったわね!」

 魔導ラクダでダッシュして来たビリーとシルフィーがやっと到着した頃……。
 地上で未来の石像を発見!

「ビリー! こいつらの相手はあたしがやる! あなたは未来の石化解除を!」
「あいあいさ、やでー!!」

 シルフィーは、風の精霊を召喚し、急いで「カマイタチ」を四方八方に連射して繰り出す。
 ランダムに飛び散った真空の刃が、バシリスクとヘビへ向かって毒牙のように襲い掛かる。

***

 シルフィーが敵の相手をしている頃、ビリーは未来の石像を担ぎ、「神足通」のテレポートで安全な木陰付近まで運んで行った。

「マニフィカに作ってもろうた浄化水やで! これで元通りになるかいな?」
 ビリーは、マニフィカ特製の複製浄化水の瓶を取り出し、未来の頭上にかけてみた。

 しかし……。
 何の変化も起こらない。

(しもうた! せや、仕方ないねん!)

 ビリーは、関所でファイアバーンの研究所から配布されていた「マンドラゴラの浄化水」を取り出し、改めて未来の石像にふりかけてみた。

 すると、石化がみるみると解除され、未来が元へ戻って行く……。

「あ、あれ? わたしどうしてたの? ん? ビリー!?」
「よかったやん! 戻ったで!!」

 ともかく、ビリーは、元に戻った未来に素早く5秒ほどで事態を説明した。

「さ、はよ隊長を助けにいくさかい!」
「うん、急ごう!!」


3−2 仲間たちの増援1 鈴とラサ


(くう……。なかなか強いし数がいるわね……。しかし、調査部隊隊長として、ここで負けるわけには……)

 シルフィーは、風の精霊や土の精霊を繰り出して、何とか善戦していたものの……。

 もともと各モンスターが4匹ずついたこの部隊、シルフィーとの攻防戦で数が約半分に減っていた。
 バシリスク残り3匹、サンドスネーク残り2匹、アリ地獄モグラ残り2匹。

 だが……。
 突然、火炎噴射した足場で足を滑らせたシルフィーは……。
 地中にいたモグラの「アリ地獄」に足場を奪われて……。

「きゃあああああああああ!」

「アリ地獄」へ落とされていく最中、バシリスクの光線がヒットし、石化してしまう!

 と、いうシーンに、木陰から出て来たビリーと未来は遭遇してしまった。

「せんぱーい! 今、助けまっせー!」
「シルフィー!! 死なないで!!」

 お人好しのビリーと未来は、シルフィーがやられてしまったとばかりに、後先考えずに、飛び出して行ってしまう……!!

 しかし……。

 2人が飛び出て行こうとしたその瞬間、凄まじい勢いでミサイルが何発も飛んで来た。
 ミサイルは、シルフィーを囲んで潰していた敵たちを爆撃。
 モンスターたちは、突然の襲撃で弾け飛んで行く……!!

『悪い、待たせたな!! 武神鈴、ただいま増援に参上!!』

 ミサイルを放ったのは鈴のロボだったようだ。
 ホバー機能全開で突っ走ってきた鈴は、到着するや否や、ピンチの仲間たちを救うべく、爆撃してくれたのだ。

「鈴さん、おおきにー!」
「ふう、助かった、ありがとう……って、まだシルフィーを助けてないよ!」

 テレポーターの2人は、礼を言うや否や、爆撃で混乱している敵陣のど真ん中で埋まっているシルフィーを助けに行った。

 すると……。
 敵陣は奇襲で混乱している中、仲間割れをしていたではないか!

 とあるサンドスネークが、バシリスクとアリ地獄モグラに噛みついたらしい……。
 すると、サンドスネークが裏切った、と思ったバシリスクとアリ地獄モグラが、別のサンドスネークを攻撃。
 その後、攻撃を受けたそのサンドスネークは、バシリスクとアリ地獄モグラが裏切ったと勘違いして、反撃して……。

 と、いった具合に、モンスター同士でつぶし合いをしていた。

(え? 何これ? そうだ、「透視」してみよう……。ん? あのヘビの1匹はラサ!?)

 未来が「透視」すると、面白いことがわかった。
 どうやら、先ほどの岩場の戦闘で倒したサンドスネークに「憑依」したラサが、サンドスネークのフリをして、敵陣に地中から攻撃を仕掛けていたのだ。

「未来さん! ようわからんやけれど、今のうちに運ぶんや!!」
「ビリー、あのヘビのうちの1匹はラサよ! 今は彼女に任せよう!!」

 ともかくして、暴れ狂って内紛状態になっている敵陣を潜り抜け、未来とビリーは、シルフィーの石像を無事に回収することができた。

 木陰まで「テレポート」すると、さっそく未来の「マンドラゴラの浄化水」で石化を解除。
 元に戻ったシルフィーを確認できた頃……。
 オアシス付近はさらに乱戦になっていた……。


3−3 仲間たちの増援2 ジニアスとマニフィカ


 オアシス付近で敵の1部隊が壊滅している頃……。

 敵の別部隊が増援にやって来るのだが……。

「ここから先は行かせないぜ!」
 ラクダから降りたジニアスが「サンダーソード」を中段に構えて、敵になだれ込む。

「うおおおおおおおおおおおおおお!」

「ウギャアアアアアアアアアアアア!」

 ジニアスは帯電した剣で白兵戦に挑む。
 対するは、バシリスク4匹、サンドスネーク4匹、アリ地獄モグラ4匹。

 魔剣士は、バシリスクの「石化光線」を「サンバリー」で防ぎつつ、敵陣へ走って行く。
 挑発された敵たちは、地中へ潜ったモグラ4匹を除いて、すべてジニアスにかかってきた。

「グギャ!?」

 バシリスクの1匹が突然、背中から心臓を刺され、悲鳴をあげて絶命した。

「シャー!?」

 仲間の異変に気が付きつつも、今度はサンドスネークの1匹が血まみれで絶命する。

 と、いった具合に、1匹ずつ、次々と槍状のもので上空から刺され、果てて行った。

「マニフィカ、サンキュー!!」

 一方で、混乱に乗じて、ジニアスがトドメの雷撃や魔剣の一撃で仕留めて行く。

 そう、マニフィカは今、透明化しているのだ。
「魔導動物概論」(ネズミ編)で姿を隠し、「魔竜翼」で飛行しながら、ジニアスに気を取られているモンスターたちを片っ端から刺殺しているのである。

 もっとも、敵はそんな作戦を知っているよしもなく、混乱して暴れ回っている。
 だいぶ数が減ったものの……。

 バシリスクあと1匹。
 サンドスネーク全滅。
 アリ地獄モグラあと2匹。

 しかし、善戦はしているものの、やはりネックはバシリスクの「石化光線」だ。
 混乱したトカゲは、四方八方、片っ端に向けて、怪光線を放つ!

「きゃっ!!」
 光線の一発にヒットしたマニフィカが空中から落とされた。
 透明化の効果も、石化ではがされ、石像となったマニフィカが落下して来た。

(くっ……。マニフィカが!!)

 マニフィカのもとへ走って行こうとしたジニアスだったが……。
 砂場が炎を噴いたり、「アリ地獄」が発生したりで、なかなか移動ができない……。

 と、そのとき……。

「お助けしまっせ!!」

「テレポート」で現れたビリーが、マニフィカに「マンドラゴラの浄化水」をふりかけて、去って行った。

 石化が解除されたマニフィカは……。

「ん? あら、いけない、石化していましたの!?」
 マニフィカは、「トライデント」を再び構え直し、態勢を整える。

 一方で、バシリスクがマニフィカめがけて走っていたが……。

 砂場が炎を噴いて、トカゲはくるりとひっくり返ってしまった。

「スキありですわ!!」

 マニフィカは「諸手突き」(近距離向きの突き)を繰り出し、バシリスクの腹を槍で直撃。
 槍の一撃で果てたバシリスクは動かなくなった。

 その他方で、ジニアスは「アリ地獄」に囚われている最中で……。

(やべえ……。引き込まれる!!)

 モグラ3匹が最後の力を振り絞り、半径10メートルの「アリ地獄」を半径30メートルに拡大してジニアスを吸っていた。
 ジニアスを生き埋めにしてしまうのだろうか!?

 すると……。
 上空で小型飛空艇がぱたぱたと飛んでいた。

「行っけえええ、コボルトオオオオオオ!!」
 飛空艇に乗っているシルフィーが犬型精霊コボルトを繰り出す。コボルトは、巨大なハンマーを振りかざしながら、地中にいるモグラの1匹をモグラ叩きしていた。

「お助けに来たでー!!」
 ちなみに飛空艇の運転手はビリーである。

「それ、そこね!!」
 同時に、突然「テレポート」で現れた未来は、翼で飛行しながら急降下し、「ごついウォーハンマー」の一撃をモグラ2匹に浴びせた。

 まるでモグラ叩きの要領で、アリ地獄モグラ3匹は無事に討伐されたのであった。

「ふうー、あぶねーとこだった。みんなありがとう!」
 ジニアスは、攻撃を終えて消えていった仲間たちに手を振った直後、暑さと疲れで砂場に座り込んでしまった。


3−4 仲間たちの増援3 アンナとジュディ


 オアシスの砂場で乱闘が始まっていた頃……。

 ジュディは戦場から少し離れた木陰のオアシスを魔術で凍らせていた。
 カチコチに凍ったオアシスに拳を叩きつけ、穴を作り、氷をしゃくり出す。
 そして、かき集めて氷をさらに凍らせて巨大な塊を作っていた。

 この作業を彼女が3回ほど繰り返していた頃……。
 戦場から外れていた別の敵部隊が接近!

 この部隊も、バシリスク4匹、サンドスネーク4匹、アリ地獄モグラ4匹の構成だ。
 いつも通りの戦術であろうか、地上にバシリスクだけ残すと、他の敵は地中へ潜り出す。

「ジュディさん……。氷をこちらに転がしてもらえませんか?」
 隣にいたアンナの提案で、ジュディは巨大な氷玉(半径40センチメートル)を1球、コロコロと転がせてみた。
 きっとアンナがまた何かおもしろいことをやってくれるのだろう、と期待しつつ。

 すると、アンナが氷玉の上に飛び乗り、まるで玉乗りでもするかのように、ローラースケートでぴょんぴょんと飛び跳ねて移動した。

 氷玉の玉乗りにひかれて、バシリスクたちが弾き飛ばされ、ぺちゃんこになって行く……。

「ワンダホー! ナイス・ファイト!!」
 ジュディも続いて、氷塊(半径30センチメートル)を持ち上げて、ぶん投げる。
 投てきされた氷の塊は、アンナの玉乗りにひかれたバシリスクたちにクリーンヒット!!

 さて、善戦していたものの……。
 巨大な「アリ地獄」が発生し、アンナは氷玉ごと砂場へ呑まれてしまう……。

「ノー! アンナ!!」

 ジュディは手元の氷塊(半径20センチメートル)をモグラめがけて投げつけ、うち1匹を仕留めた。
 だが……手元に氷塊が残っていなかったことに気が付き焦る!!

 バシリスクたちは、これはチャンスとでも言わんばかりに……。
「石化光線」をアンナとジュディに向けて連射!!

 と、2人がピンチなとき……。
 地中で「アリ地獄」を作っていたはずのモグラたちが次々と停止。
 さらに地上に上がってきたサンドスネークたちがバシリスク3匹に向かって毒牙攻撃や巻きつき攻撃を繰り出した。
 怒ったバシリスクは、石化光線で返して……。

 石化した2人には知る由もなかったが、ラサの登場である。

 そして、荒れた戦場にはバシリスク1匹だけが残った。
 最後のトカゲがきょろきょろと周囲を警戒していると……。

「パイルバンカー」の銃撃が響き渡り、バシリスクは蜂の巣に変えられていく……。

『ふう、危なかった……。早く石化を解かないと!!』

 敵が全滅したことを確認すると、鈴はロボから降りて、石化した2人のもとへ駆けつける。
 急いで「マンドラゴラの浄化水」2瓶を使って、アンナとジュディの石化を解除した。


☆オアシス付近 クリア!
☆植林スポット:3カ所確保!



.オアシスで休憩


 ともかく、調査隊隊員たちは、岩場付近とオアシス付近の敵を見事に清掃し、本日のノルマである植林スポット半数の確保に成功した。

 しかし、40℃近くもある真夏の沙漠の中、パーティの体力・魔力の消耗具合は半端なかった。

 というわけで、せっかくオアシス付近にいることでもあるし、一度ここで休憩を入れよう、という話になったのだ。

「オーライ! オーライ!! こっちでっせ!!」

 ビリーが巨大な飛空艇を召喚し、飛空艇の帆で日陰を作ろうという案になった。
 力のあるジュディとジニアスが、ビリーの誘導のもと、地上に停車している飛空艇の角度をずらしながら、日陰を作っているところだ。

「ふう……。こんなもんでいいんじゃない? これでやっと休める!」

「ジニアス、グッジョブ! ビリーもサンクスね!!」

 日陰の用意ができると、ジニアスは鞄からとある「タブレット」を取り出した。
 ラムネのお菓子のようなタブレットを、ジュディとビリーにも差し出した。

「なんやねん、これ?」
「ワッツ?(何?)」

 不思議がっている仲間たちに対して、ジニアスは簡単な説明を続ける。

「水分タブレットだよ。このタブレットを一口、口に含むと、一日分の消費した水分と塩分が補給できるんだ。さっき関所の売店で買っておいたんだ。あとでみんなに分けようと思ってさ!」

 なるほど〜!
 な顔をして、ビリーとジュディは、パクリ、とタブレットを口に放り込む。
 配った本人のジニアスも、タブレットを1個取り出して、自身の口へ放った。

「ワオ! ボディもマインドもリフレッシュね!!」
「う〜ん! ちびっとしょっぱいやん! でも身も心も満たされる気になるんは、なんでやねん?」

 仲間たちの反応ににこにこしながら、ジニアス自身もタブレットを味わい出す。

「そや、お礼やねん! ジニアスさん、アイスクリームはいかがでっか!」
 ビリーは、「打ち出の小槌F&D専用」を振り被り、アイスクリームを、ぽん、ぽん、と召喚して行った。

 出て来たのは、マギ・ジスで食べられている「100マギン・アイス」だ。
 それぞれ、バニラ、チョコ、イチゴ、グレープ、ソーダの味がある。

「おっ!? これはすごい!! うーん……。じゃあ、ソーダをもらおうか?」
 ジニアスはビリーが出してくれたソーダ味のアイスを受け取った。

「ワオ!? グレイト!! 全部もらいマース!!」
 ジュディは残り4つの味のアイスすべてをもらってしまった。

「ジュディさん!! もっとありまっせ!!」

「グッド・ボーイ(良い子ね)!!」

 ジュディに頭をなでられて、急かされながら、ビリーはアイスを次々と召喚して行くのであった……。

***

 ビリーたちが飛空艇の帆で日陰を作っていたとき……。

 ジュディを除く他の女性たちは、木陰で着替えようかと話し合っていた。

「みんな、水着は持っているよね?」
 未来は、制服を脱ぎ、身に付けている赤いビキニ(「特殊水着」)を露出し、皆に見せた。

「あ、忘れましたわね! 持ってくれば良かったですわ!」
 アンナは、しまった! と、いう顔をしながら、ちょっと後悔していた。

「そういえば……。関所でファイアバーンのじいちゃんからということで、あたし、何か預かっていたのよね……」
 アンナが「忘れ物」の話をしたついでに、何かを思い出したシルフィーが、アイテム袋をがさがさと漁り出した。

 すると……。
 手渡されたアイテム袋からは……。
 スクール水着が出て来たのだ!!

「おわっ!? 何よ、これ!!」
 目を見開いて、驚くシルフィー。

 彼女が水着を取り出すや否や、1枚の紙が、ひらり、と落下。
 シルフィーは、紙を拾い、読み上げる……。

『シルフィーちゃんへ

 沙漠の戦闘は暑くなるだろうから、オアシスに着いたら水浴びをするといいぞ。女の子たちの分のスクール水着、人数分入れておくわい! シルフィーちゃんには特別に小学生用の水着を用意したので、ぜひそれを着てひと泳ぎすると良いぞ!

 ファイアバーンより』

 紙をぐしゃり、と丸めて、叩き捨てるシルフィー。

「くぅ……。あ・ん・の……スケベオヤジめえええええええええええええ!!!」

「まあ、待って、落ち着こうよ、シルフィー!!」
「そうですわ、きっと悪気はないと思いますわ!!」
 未来とアンナが、怒りで何かを召喚しそうなシルフィーをなだめにかかった。

「あの……ところで、ボクはどうすればいいの? ボク、このとおり、精神体なので、水に入っても、水着を着ても意味がないけれど……」
 困っているラサが取り込み中のシルフィーたちに問いかけた。

「ううん……ラサ、それは気分の問題だよ! わたしたちと一緒に水遊びしよう!」
 未来が説得すると、うん、わかった、ととりあえずラサは肯いておいた。

「で、どうしま……しょうか? わたくしも……みんなで水浴びしようと……思っていましたが……」

 先ほどから暑さで少しふらふらしている熱っぽいマニフィカがか細く声をあげる。
 そろそろ人魚姫には限界な暑さのようだ。

「まあ、水着がない人はとりあえずそのスクール水着を着ておこうよ!」

 と、未来がそれとなくまとめると、女性陣は水浴びをすることになった。

***

 飛空艇の帆できつい日光を遮り、青々と広がるオアシスの中で、水着に着替えた女性たちが水浴びをしていた。

 マニフィカは既に人魚の姿(上半身だけスクール水着)になり、「トライデント」を頭上に掲げている。
 槍からは、「水術」で発動した冷水シャワーが、真下にいる女の子たちに向かって降り注がれていた。

「シルフィー、それ、それー!!」
 赤いビキニを着ている未来は、シルフィーとアンナに水をかけていた。

「きゃっ! 冷たいですわ!!」
 スクール水着姿のアンナは、未来から振りかけられた冷水を浴び、やり返していた。もちろん、シルフィーにもかけている。

「あっ、いやん!!」
 足をすべらせ、シルフィーが勢いよく水面下に落ちた。
 水面下でもがく小学生用水着を着ている幼女相手に、未来とアンナは追撃していた。

「ふふふ……生きているっていいねえ……」
 ラサはマニフィカの横で女の子たちの水浴びを眺めながら、嬉しそうに笑っていた。
 彼女は「気分だけでも」ということで一応、楽しんでいる最中だ。

 一方で、「特殊水着」の迷彩ビキニに包まれたナイスボディが目立つ女性……ジュディは、お昼寝中。
 彼女は、木陰の中、ビリーが出してくれたレジャーシートの上でごろごろしていた。

 そこに、ビリーがアイスをたくさん持ってやってくる。

「女子のみなさーん! アイスがありまっせー!! マギ・ジス産の100マギン・アイス、お好きなものをお取り下さってけっこうでっせ!!」

 ビリーは女の子たちを集め、アイスを配り出した。

「わたし、イチゴ!!」
 未来はイチゴ味をつかむ。

「わたくしは、バニラですわ!!」
 アンナはバニラをもらった。

「チョコがいいですわね!」
 マニフィカはチョコ味を頂く。

「じゃあ、あたしはグレープをもらおう!」
 水面下から出て来たシルフィーがグレープ味を受け取った。

「ボクは食べられないからパスで!」
 唯一、ラサだけ残念そうに申し出を断った。

 さらにビリーの後、上半身が裸になっているジニアスがやってくる。

「みんな、水分と塩分の補給はちゃんとやっているか!? ほら、このタブレット、受け取って!!」
 ジニアスはタブレットを取り出し、1個ずつ、女の子たちに向かって投げた。

 女子たちは水浴びを一時中断して、アイスを舐め、タブレットをしゃぶり、水分と塩分の補給を行うのであった。

***

 とまあ、女性たちが楽しく水浴びをしている最中……。
 鈴だけは独りさみしく、メカの整備をしていた。

「ふう……。消耗の激しい戦闘だったな……。ミサイルもあと数発、弾丸もそろそろ切れる頃だ……。後半戦は戦術を変えなくては……」

 人型ロボのメンテナンス中の鈴のところに、ビリーとジニアスがやって来た。

「鈴さん! 突然、失礼しまっせ! アイス、いりまっか?」

 ビリーが鈴にアイスを差し出す。
 鈴が「塩アイス」と一言いうと、ビリーが「100マギン・アイス」のバニラに、取りだした塩を一振りかけてくれた。

「おい、鈴! 白衣なんか着て暑くないのか!? 水分・塩分の補給はちゃんとやっておけよ!」

 ジニアスは、水分タブレットを取り出して、鈴に1個分けてあげた。
 鈴は、手渡されたタブレットをすぐに口へ放り込んだ。

「まあ……暑いことは暑いが、あまり暑さばかり気にしてもいられなくてね。さて、俺は整備で忙しい。遊んでいる奴らと違って、水遊びなどしている場合ではないのだよ……」

 と、スパナを取り出して、点検に戻ろうとする鈴に対して……。

「おい、鈴! 水遊びに混ざりたくはないか!? おまえはどの子の水着がいいと思う?」
 ジニアスがにやにやしながら質問をすると、鈴がアイスを噴きだした。

「お、おい!! バカ言うな! 俺は水遊びなんかしたくねえよ! スクール水着もビキニも全く興味がない!! 邪魔しないでくれ!!」
 真っ赤になって反論した鈴は、ジニアスとビリーの背を押して、追っ払ってしまうのであった。


5.人面岩付近での清掃


5−1 敵を集めよう

 さて、休憩も終わったところで、各員は再び戦闘の準備に取り掛かった。
 人面岩付近をざっと偵察した未来とビリーによれば、どうやら敵の数が最も多い場所らしい。
 敵は5部隊いて、1部隊につき、3種類の敵が3匹のセットで行動しているようだ。

「ふむ……。最初の岩場付近を奇襲したときみたいに、敵を1ケ所に集められれば良いのだが……」
 腕を組んで悩んでいる鈴。

 未来は突然、良いアイデアが思い浮かんだ。

「わたしに任せて!! ねえ、アンナ、あのね……」
「は、はい!?」

 未来はアンナと一緒に行動する面白い作戦を思いついたようだ。

***

「魔法少女1番、未来、がんばりま〜す!!」
 突然、未来が「テレポート」で人面岩の上に赤いビキニで現れた。

「魔法少女2番、アンナ、がんばりますわ!!」
 未来に連れられて、アンナも同時に「テレポート」で突如出現!
 アンナの方はスクール水着だ。

「やるわよ、アンナちゃん! 学院の体育の授業で習ったアレ!!」
 未来が舞台の前にみんなに向かってキメのポーズをする☆

「はい、ちょっと恥ずかしいけれど……やりましょう!!」
 アンナも一緒に舞台前のモンスターたちに向かって、魔法少女のポーズをキラリ☆

 2人は、アニソンの振り付けの如く踊りながら、歌を歌い始めた……。

***

 問題だらけで、じゃ、じゃ、じゃん♪
 魔法少女のお通りだー♪

 おてんば・おちゃめ・萌え萌え☆

 魔法少女レヴィ、ただいま参上♪

 ワン・ツー・スリー♪
 どかーん♪
 錬金術が爆発☆

***

 まさしく、『魔法少女レヴィ』(アニメ劇場版)のオープニング曲を披露!!
 舞台の前のお友達は、人語のアニメなどさっぱりわからないが、水着の美少女2人が踊って歌う姿に挑発されたようだ……。

 各部隊、挑発されて人面岩へ集まって来て……。
 うち、付近にいた1部隊が人面岩へ向かって突撃!!

 バシリスクが「石化光線」を放ち……。
 サンドスネークが飛び掛かり……。
 アリ地獄モグラが地中でスタンバイ……。

『それ、今だ!! 全軍、撃て!!』

 鈴の声がスピーカー越しで流れて、攻撃開始!!

 鈴のロボは、「20連LRM(長距離ミサイル)ポッド2機」が両肩から発射!
 残数6発のミサイルが縦横無尽に人面岩で暴れている敵へ炸裂!!

「俺の雷撃を受けてみろおおおおおおおおおおおおお!!」
 ジニアスは剣先に蓄えた稲妻から雷光弾を放ち、ミサイルに続き強襲!!
 1発振り終えると、続けて、2発、3発、と連撃態勢に入る。

「ふふん、切り刻んでやるううううううううううう!!」
 風の精霊を召喚していたシルフィーは、「カマイタチ」の連射で、ミサイルと雷撃から逃れた敵を見逃さずに追撃!!
 空へ飛んだヘビや地中に潜りかけていたモグラたちを真空の刃でみじん切り!!

 そうこうして、人面岩付近の一角は爆撃のお見舞いを受け、もくもくと煙を上げていた。
 なお人面岩はマジック・スポットなので、スキル攻撃×2倍が加算。今の襲撃でさらなる大ダメージを敵にお見舞いすることができた。
 結果、敵の1部隊が見事に壊滅。

 鈴たちの爆撃開始と共に、「テレポート」で逃げた美少女たちは……。

「ふう、作戦成功! アンナもありがとー!!」
 未来は、アンナに飛びついて、成功を喜んでいた。

「か……間一髪でしたわ!! まあ、結果オーライですわね……」
 じゃれてきた未来に少し戸惑いながらも、我ながらうまく行ったものだ、とほっとするアンナだった。


5−2 石化光線の強襲


 敵の1部隊が壊滅したところで、残り4部隊いる敵たちは、襲撃をしかけられた方向に向かい、ぞろぞろと集まり始めた……。

 仲間がやられたから復讐しに来た……と言うよりは、のびのびと日光浴をしているところを邪魔されて頭に来たのでやっつけてやろう……と、思ったみたいだ。

 しかし……。
 3部隊が鈴やジニアスたちの方向に向かって来る最中……。

 突如、どこからか1匹のバシリスクが横切って強襲!!
 現れるや否や、「石化光線」をところどころに放ちだし、仲間たちを片っ端から石に変えて行くではないか!?

「石化光線」にやられ、サンドスネーク3匹、アリ地獄モグラ3匹、バシリスク1匹が次々と石化して行ってしまった……。

 どうやら、バシリスクが自分たちを裏切った……。
 と、勘違いしたサンドスネークたちとアリ地獄モグラたちは、付近にいるバシリスクたちを陥れ始める……。

 モグラたちは「アリ地獄」を起こし、文字通り、バシリスクの足を引っぱり……。
 砂の洪水に呑まれているトカゲたちを、今度はヘビたちが毒牙で襲い出す……。

 一方、バシリスクたちからしてみれば、裏切ったのはヘビやモグラであって……。
 怒り狂って、次々と石化光線を放ち、ヘビやモグラが石化して行く……。

 この時点で、敵の1部隊が壊滅し、別の1部隊が半壊した。
 残り、交戦中の3部隊中、1.5部隊。

(へへ、いいぞ、ラサ!! その調子で奴らをかく乱してくれ!!)

 先ほどのオアシス付近で倒したバシリスクに「憑依」しているラサが暴れ回ってくれているうちに……。

 ジニアスも、「魔黄翼」で羽ばたきながら、敵の陣形に斬り込んで行った……。
 魔剣士の青年から攻撃を受けたバシリスクは……。
「石化光線」でジニアスを狙う!!

「そこかっ!!」

 ジニアスは、先ほどの戦闘から「石化光線」の発射タイミングを観察していた。
 今、敵が発射して来た光線に対して、「サンバリー」を急角度で張り、反射させる。
 反射の角度が正しければ、斜め45度に進むはず……。

 そして、斜め45度に折れた「石化光線」は、付近にいたサンドスネークを石化させた!

(やったぜ!! 計算が合っていた!!)

「どうした、バシリスク!? もっとやってくれよ!!」

 攻撃が効かなかったショックと挑発による激怒で、バシリスクは「石化光線」を連射。ジニアスに向けて放ったものの、すべて「サンバリー」で反射され、光線が拡散してしまった。

「ジュディもヘルプしますヨー!!」
 そこでジュディも乱入。

 別のバシリスクが、「石化光線」をジュディに放つ。
 しかし、ジュディは、鏡のような石のシールドを右腕にかざした。
 シールドの鏡面体に反射して、「石化光線」は明後日の方向へ飛んでいく。

「フッフッフ!! ハウ・アー・ユー!? マギ・ジスのマジックストーンはスペシャルよネ!!」

 解説しよう。ジュディが今使っていた盾は、「マギ・ジス産の魔石」を研磨して作った特製の盾である。かつて「聖アスラ学院のお化け事件」を解決したときに学院側から報酬でもらったあの魔石が今、こうして役に立っているのだ。

 ジュディの鏡面反射を見て頭にきたバシリスクたちは、再び「石化光線」を放つ。
 だが、ジュディもアメフトで鍛えた驚異の身体能力で、まるで卓球でもするかのように光線を、ぴんぽん、ぴんぽん、と弾き返すのだ。

 そして弾かれた光線は……付近にいるヘビやモグラを石に変えて行く。
 たまにバシリスク本人も確率で石化している次第だ。

***

 だが、善戦してはいたものの……。

 敵の残りがだいぶ減って……。
 バシリスク1匹、サンドスネーク2匹、アリ地獄モグラ1匹になったところで……。

 砂場の火炎噴射と共に、スネーク2匹が、地中から奇襲を仕掛け、ラサを襲ったのだ!
 バシリスクのラサは、腹と喉(のど)に毒牙の攻撃を受け、出血し、ジタバタとうめき出す。

(しまった!! ラサが!!)

 ジニアスが駆けて行こうとしたら……。
 今度はアリ地獄モグラが砂の洪水を半径10メートルで巻き起こし……。
 ジニアスが「アリ地獄」に呑まれてしまう……。
 さらに周囲には、砂場の火炎噴射が起こり、とても前に進めない状況だ。

「ジニアース!! ラサー!!」
 ジュディは、どちらを助けようか判断に迷った。
 しかし、迷えば迷うほど時間が取られ、足を取られるので、思い切ってラサの方に向かって走り出した。
 与えられているダメージから観て、ラサの方が致命的だからだ。

 走ってきたジュディは、ラサを巻いているヘビたちを怪力の腕力で引きはがした。
 すると今度は、ヘビたちが、ジュディに巻きつき、毒牙で襲い出す。

(くっ……。仲間たちがピンチだ!! 俺は……こんなところで……負けられない!!)

 ジニアスは「アリ地獄」に呑まれながらも、「サンダーソード」を帯電し、真下にいるモグラめがけて自分からスライドして行く。
 そして、帯電された剣先でモグラを直撃し、絶命させた。
 その勢いで「アリ地獄」は停止し、ジニアスは、地上へと這いあがる……。

 ジニアスが砂の上に出たところで、ジュディがヘビ2匹ごと石化していた。
 最後に残っているバシリスクがやったようだ。
 一方で、ラサが「憑依」していた方のバシリスクは本当に動かなくなり、ラサが離脱していた。

「勝負だあああああああああああああああ!!!」
 ジニアスは「サンダーソード」を上段で構えながら、最後の敵に向かって走り出した。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
 バシリスクも奇声を発しながら、ジニアスに向かって走ってきた。

 ジニアスは、雷光弾を放ち、斬りかかり……。
 バシリスクは、「石化光線」を真っ直ぐに放ち……。
 この勝負の行方は……!?
 …………。
 ……。

 沙漠に暖かい旋風(つむじかぜ)が吹き荒んだ。
 砂場は火炎の息を噴射している……。

 ジニアスは石化して、バシリスクは雷光弾で弾け飛んで果てていた。


5−3 トドメの白兵戦


 ジニアス、ラサ、ジュディが石化光線対策で戦っていた頃……。
 敵の最後の1部隊は……。
 敵前逃亡をしようとしていた……。

「お待ちなさーい!! 逃がしませんわよー!!」
 マニフィカが槍をくるくる回しながら、敵を追いかけていた。

『それ、当たれ!!』
 ホバリング機能でダッシュしている鈴のロボは、「パイルバンカー」で弾丸を打ち込んでいるが、逃亡している敵にはなかなか当たらない。ちなみにアンナは、沙漠ではローラースケートが動きづらいので、鈴のロボの肩に乗っている。(ミサイルは弾切れで取り外し中)

「ふふん、逃がすものかー!!」
 と、逃げている敵の前に「テレポート」で現れた未来は、「ごついウォーハンマー」の一撃をバシリスクめがけて降り落とし、弾き飛ばした。

「もうかりまっかー!!」
「出でよ、コボルト!!」

 上空には、ビリーが運転する飛空艇が、後席にシルフィーを乗せて飛んでいた。
 空からコボルトが放つハンマーが次々と落ちて来て、トカゲ、ヘビ、モグラの行く手を遮った。

 やがて逃亡をあきらめた敵らは……。

 ヘビとモグラが地中へ潜り、活動を始める……。
 3匹のモグラが力を合わせ、半径30メートルの巨大な洪水を起こす!!

 一方で、バシリスク3匹は、片っ端から石化光線を放ち、威嚇(いかく)!!

「石化光線」の流れ弾に未来が当たり石化してしまった。
 また、別の流れ弾はビリーの飛行艇を石化させ、乗車していた2人が真っ逆さまに落下してしまったのだ。
 石化した未来、落下したビリーとシルフィーは「アリ地獄」に呑まれて行く……。

「この野郎!!」

 鈴も威嚇(いかく)で、バシリスクに弾丸を撃ち返す。
 だが……。

(ちっ、弾切れか!?)

 鈴のロボの上に乗っていた「レッドクロス」姿のアンナがジャンプ態勢を構え出す。

『鈴さん……。わたくしのステップ台になってくださいね!!』

 アンナはロボを蹴りあげ、思いっきり上昇した。
 その後、落下すると同時に、地中にある「アリ地獄」の真下にいるモグラを直撃。

 モグラを1匹、落下速度で始末し終えると、その勢いで再びジャンプ。
 そして、隣でアリ地獄を起こしている別のモグラにもジャンプ&落下攻撃を繰り出し……。
 3匹目のモグラにも同じ攻撃をくらわせたのだが……。

 地中から飛び出して来た火炎噴射、そしてヘビ2匹の奇襲にびっくりして……。
 アンナがそのまま砂場へ転落!!

 ヘビたちは毒牙でアンナを襲い、「レッドクロス」の装甲でダメージは半減しているものの……体内に毒が回り出す……。

 と、アンナがもがいていたところ、幸か不幸か、バシリスクが「石化光線」を浴びせ、彼女を石に変えてしまった!!

「ビリー……。大丈夫? 早く……未来とアンナを助けよう……」
「は……はい……隊長……ビリー……ただいま……いきまっせ……」

 妖精2人は落下のダメージで弱りながらも、なんとか仲間たちの方まで這って行った。

***

 と、地中でそんな戦闘が行われていた頃……。

 地上ではマニフィカと鈴がバシリスク3匹を相手にしていた。
 マニフィカが槍術を構えながら、トカゲ3匹と間合いを取り、にらみ合っていた。
 一方、弾切れの鈴は、「チェーンソード」を出して、援護しようとしていた。

「シャー!!」

 火炎が吹き荒れると当時に、地中からヘビ1匹が飛出し、鈴を襲う。
 鈴はソードをうならせながら、ヘビを追っ払おうとするのだが……。

(ちっ……すばしこい!! 俺は、白兵戦は苦手なんだから勘弁してくれよ!!)

 と、もがいている最中、バシリスクの1匹が石化光線を素早く放ちだす。
 光線にヒットした鈴のロボとヘビはそのまま石化してしまった。

(鈴さん……!?)

 鈴の石化に気を取られてスキを見せてしまったバシリスクの陣形に向かい、マニフィカは槍で突撃を開始!

 マニフィカは、槍の柄の先端を両手で持ち、ぐるぐると自身ごと回転し出す。
 流派ネプチュニアの秘儀……水術と槍術の合わせ技で……彼女は周囲に巨大な洪水を巻き起こした……。

 やがて、水圧の竜巻に巻かれたマニフィカは攻撃範囲を半径1、2、3、4、5メートルと拡大して、敵陣に迫り……。

 竜巻の水圧は凄まじく、周囲にいるバシリスクたちを次々と飲み込んでは、内部の水圧の刃でバラバラに解体して行った……。しかも、人面岩のマジック・スポットで、スキルの威力×2倍が発動し、敵に与えたダメージにお釣りが出るぐらいの破壊力だ。

 だが、もともと灼熱の砂場でフルパワーを発揮するのが難しいマニフィカは、だんだんと出力が落ちて行き……。

(くっ……。そういえばこの技、消耗が激しいのでしたわね……)

 次第に水圧の竜巻は威力が落ち、人魚姫は「トライデント」を杖にして、座り込んでしまった。

 バシリスクは3匹とも倒したはずだが……。
 マニフィカは、ぼおっとしながら、周囲を警戒……。

 そこで、サンドスネークの残党2匹が砂から飛出し、マニフィカを襲う!

「きゃっ!!」

 と、マニフィカがヘビの毒牙で噛(か)まれるところで……。

「とう!!」
「それですわ!!」

 頭上から未来とアンナが降って来た!!
 未来は、ウォーハンマーでヘビの脳天を直撃!
 アンナは、モップの柄でヘビの喉元(のどもと)に落下!

 こうして、敵の残党は殲滅(せんめつ)されたのであった……。

 敵の残党が全滅していく様を遠方から眺めていた妖精たちは、ほっと一息つけたようだ。

「ふう……。ビリー……。なんとか、間に合ったわね! あたし、もう、くたくた……」
「おおきに……。ホンマ、えろう修行になったで、今日は……」

 シルフィーとビリーは、バタリと仲良く倒れてしまった。


☆人面岩付近 クリア!
☆植林スポット:5カ所確保!



6.リザルト


じゃんじゃか、じゃん♪

☆植林スポット:10カ所確保!
☆判定:大成功!

☆次回:10カ所の植林スポットを確保できたので、十分な植林作業ができる予定です。

☆ファイアバーンからのメール【件名:モンスターの清掃をありがとう!】

「おまえさんたち、植林の邪魔をしていたモンスターたちを全て倒してくれて本当にありがとう!! フレイマーズ大学環境科学研究所を代表してお礼を言わせてもらおう。

 いやあ、おまえさんたち、今日は良いファイトだったぞ! 実は衛星中継で、おまえさんたちの戦いっぷりをじっくり観させてもらっていたよ。最後の方はワシも冷や冷やしたが、仲間たちが力を合わせて強大な敵を撃破していく様は実に感動した。ワシも若い頃を思い出してしまいおったよ。いかんいかん、年寄りの話は長くなる!!

 それで、だ。約束通り、途中経過の報酬をまず出そう。「フレイマーズ特製激辛にんじんドリンク」を諸君らにプレゼント致そう! ああ、それと、「マンドラゴラの浄化水」は持ち帰ってくれてけっこうだぞ。ついでだから、もう1瓶ずつ、おまえさんたちにサービスしちゃおう。

 さて、次回はいよいよ植林を行う。おまえさんたちが守ってくれた10カ所の植林スポットを使って、木々花々を植えていくぞ。植林の最後まで手伝ってくれた者には、ワシの研究所特製の「植林グッズ」もお渡ししよう。植林グッズ……持っていると、フレイマーズ国家のみならず、マギ・ジス本国でも、友人・知人に自慢できるからいいぞー!!

 では、手が空いている者は、次回の植林でまた会おう! なお植林作業のためにお友達を連れてくるのも、新メンバーの加入も歓迎する! 遠慮なく、皆でどんと働きに来てくれるとワシらも嬉しいぞ!

 ドーン・ファイアバーン所長より」

<続く>