「ゲット!フリーダム」

ゲームマスター:高村志生子

 バシリ!ビシリ!薄暗い牢の中で鞭の音が響き渡る。
「さあ、吐け!お前の父親は街の反乱分子と関わりがあるんじゃないのか!?」
「知りません……本当に知らないんです。きゃああっ」
 ビシィッ!再び鞭がしなり、打たれていた20歳くらいの女性が悲鳴を上げた。
「おい、顔に傷はつけるなよ。こいつ、レックスの歌姫のアーニャだろう?これほどの美貌なら、街娘でも陛下の慰み者になるかもしれないからな」
「ふん。それもそうだな。おい、お前。上手いことお気に入りになれたら、贅沢のし放題だぞ。良かったな」
 室内に男たちの下卑た笑い声がこだまする。縛り上げられ、銀の髪を乱して床に倒れこんだアーニャは、己の運命を想像して悲痛な色を瞳に宿した。
「お父さん……マスター……トーニャ……助けて……」
 男たちが去り、独りぼっちになった牢の中でアーニャはすすり泣いた。
 街の酒場「レックス」の歌姫であるアーニャが捕らえられたのは、その父親であるクナスが、最近、町で噂されている反乱分子の一員ではないかと疑われたからだった。クナスは街でも屈指の細工師で、その作品は目利きの貴族たちがこぞって大金を積むほどだったが、どれほど請われても誰かのお抱えになろうとはしなかった。その気性が疑われるもととなったのだ。しかし直接クナスをとらえて尋問するには、クナスをひいきにする貴族が多すぎた。また、街の人にも訳隔てなく接する性格が、街人にたいへんな人気だったため、かえって反乱を引き起こす要因になりかねないと考えられたためだった。そこでおびき出すために娘を代わりに捕らえたのであった。だがアーニャは何も知らなかったため、無意味に拷問を繰り返されるはめに陥った。ばかりではない。無類の女好きである当主のささげ物にされようとしていた。
 当主であるレゼルドは、はかどらない尋問にある策をひねり出した。
 アーニャの弟のトーニャが血相を変えて父親のもとに駆け込んできたのは、アーニャがとらえられて数日がたった日のことだった。手には号外が握り締められていた。
「アーニャを処刑するだと!」
「どうしよう、父さん」
 号外を握りつぶしてクナスが苦しげな顔で家を飛び出していった。取り残されたトーニャは、噂の反乱分子を見つけて姉の救出を依頼しようと決意を胸に秘めた。
 クナスの妻はトーニャの幼い頃に病で亡くなっていた。それからあまた寄せられる再婚話にまったく耳を貸そうとせず、男手一つで子供たちを育てていたクナスにとって、弟の母親代わりとして父を良く助けてきたアーニャは目に入れても痛くないほど可愛い娘だった。街でも評判の美人で、歌好きなことから父の親友のマイトの酒場で歌姫として活躍していたアーニャは、しかし生来のはにかみがちな性格から、言い寄る男には一切なびかないで父と弟の世話に明け暮れていた。その娘がいきなり国の警護団に捕まえられたのが自分にあるとわかっていたクナスは、娘の安全と街の平和との間で板ばさみになって苦しんでいた。そう、警護団のにらんだとおり、クナスは反乱分子の1人だったのだ。
 家を飛び出したクナスはレックスに飛び込み、マイトと顔をつき合わせて密談を始めた。アーニャ処刑の報はすでにマイトも掴んでいた。独り者のマイトにとってもアーニャは実の娘のようなものだった。そのアーニャの危機にマイトも苦悩していた。だが、今、反乱分子を集めて決起するわけには行かなかった。貴族たちと戦って勝てるほどの戦力がなかったためだ。
「しかし、このままアーニャを見捨てるわけには……俺が出て行けばことは納まるんじゃないのか」
「早まるな!奴らはこれを機に反乱分子を一掃する気だろう。お前たち親子だけが犠牲になってすむ問題じゃない。なんとか処刑される前にこっそりアーニャを助け出せたら……腕の立つ奴がいてくれさえしたら……」
「報酬が必要なら俺の細工物を差し出してもかまわない。時間がない。なんとか見つけ出そう」
 処刑日は1週間後になっていた。

【アクション案内】

s1.アーニャを助け出す。
s2.クナスに接触する。
s3.マイトに接触する。
s4.トーニャと一緒に反乱分子を探し出す。
s5.警護団に入って反乱分子狩りをする。
s6.その他

【マスターより】

 こんにちは、高村です。
 前作をやっていたころから、頭の中に「拷問される美少女」という図が離れなかった変人でございますが、このたび無事それが開始されることになりました(笑)
 うん、今回こそシリアス。そして目標は「アダルティックに」。どこまでやれるかはわかりませんが、頑張りますのでどうぞ参加してみてくださいね。
 あ、ちなみに反乱分子についても警護団についてもそれなりに報酬がでますので、その点はご心配なく。
(エロティックにはならない予定……うん、予定)