「心いろいろ〜彼岸を越えて〜」

ゲームマスター:高村志生子

【シナリオ参加募集案内】 (第1回/全2回)

 ガッシャーン!と、派手にガラスの割れる音と、生徒たちの悲鳴が校舎に響き渡ったのは、お昼休みに入って間もない時刻のことだった。1階の廊下が内側に向かって何枚も割れ、飛び散った破片で怪我をした生徒の血が辺りに広がっていた。特に大きな怪我をしていたのは、新入生のミルカ・ハニャハだった。元々体が弱かったという彼女は、歳よりはいささか幼い体をぐったりとさせていて、駆けつけてきた治癒能力者の手当てを受けていた。
「最近、被害がひどくなったねぇ」
 ぽつりとつぶやいたのは探偵部部長のディスタス・タイキだ。そしておもむろに隣に立っていたレイミー・パッカートの眼鏡をひょいと外す。一瞬慌てたレイミーだったが、くいくいと指さされて、ようやく立ち上がって頭を下げて礼を言っているミルカをじっと見つめ……るまでもなかった。
「今、逃げていきましたよ」
「あ、やっぱりいるんだ」
 レイミーは眼鏡を外すと気を見ることができる。その能力でもって、ミルカを覆うようにしていながら、レイミーの視線に気づいたのかすばやく消え失せた黒い影を見出していた。
 ディスがつぶやいたとおり、ミルカの周辺では入学直後からこのような不思議な現象が頻繁に起きていた。しかもだんだん強くなっていくようだった。
「これは、あれかな。彼女が入学する直前に事故で死んだ、お姉さんの霊かな」
 その事故死した姉・メリアは、だがディスの情報ではひ弱な妹を溺愛していたはずだ。死因もミルカには無関係だ。
 ミルカが探偵部を訪れたのはその日の放課後だった。メリアの霊がミルカを恨んで騒動を起こしているというのは、すでに学園中の噂になっていたので、相談にやってきたのだ。ミルカは涙をたたえた目でディスたちに訴えた。
「今起きていることが本当にお姉ちゃんの仕業なら、なんとか落ち着かせることはできないですか。12月のパラミッタまでに。でないとお姉ちゃん、成仏できなくなっちゃう!」
「パラミッタ?ああ、君の家って、あの宗派だったもんな」
 多次元世界と交流があるということは、宗教も様々なものがあるということだ。地球の仏教に準拠した宗派を信仰しているらしいハニャハ家では、12月の祭事・パラミッタで新しい死者があの世に行くとされていた。
 だが、この現象の原因がメリアであるならば、その理由は何なのだろうか。


【アクション案内】

S1.メリアについての情報を探る
S2.ミルカを災厄から守る
S3.黒い影を調査する
S4.その他

【マスターより】

 こんにちは、高村です。
 夏にやるならホラーよね、お盆よね、と言ったのは桜の季節のことでした……。災害レベルの異常気象に負けていたらお彼岸も過ぎてしまいました。でもアットだからなんでもありよね!ということでアットです(笑)開始時期に合わせて祭事を冬にしてしまいましたが。いいの、アットだし!←くどい。
 全2回と短いシナリオですが、どうぞよろしくお付き合いくださいませ。