ゲームマスター:高村志生子
【シナリオ参加募集案内】(第1回/全5回)
Sアカデミアの基礎過程には年中行事として臨海学校がある。亜熱帯気候のアット世界では海水浴なんて珍しくはないが、Sアカデミア自体は島の中心部にあるため実際の海までは遠く、なかなか気軽に行けるものではなかったので、みんなそれぞれにこの行事を楽しみにしていた。 そんなある日の学内新聞より。 「今年も基礎過程の臨海学校の季節がやってまいりました。3泊4日の短い旅ですが、みんな楽しんできてください。ちなみに今年の引率教諭の1人であるローランド・エクセル先生はかなづちだとのこと。果たしてこの期間に泳げるようになるでしょうか。みんな、生暖かく見守ってやってください・文責探偵部副部長レイミー・パッカート」 新聞をばりっと破って叫んだのは、ローランドの妹で基礎過程在籍中体育学科水泳専攻希望のキリエ・エクセルだった。校内で兄を捕まえると、新聞を突きつけて怒鳴った。 「お兄ちゃん!妹のあたしが水泳選手なのに、その兄が泳げないなんて屈辱以外の何者でもないわ。い〜い、臨海学校期間中に絶対に泳げるようになってもらうからね。わかった!?」 「あちゃ、ばれたか。しかしなぁ。苦手なものは苦手だからなぁ……」 「んもう!気弱なんだから。やるったらやるの!覚悟しておきなさいよ〜!」 怒鳴るだけ怒鳴ってずんずんとキリエが立ち去っていくと、ローランドの背後からくっくという笑い声が聞こえてきた。振り向くと、探偵部部長のディスタス・タイキが必死に笑いをこらえて立っていた。ローランドがしかめ面になった。 「まったく君の情報網には恐れ入るよ。これまで引率役から必死に逃げていた理由をあっさり見破るんだから。おかげでキリエがうるさいったらありゃしない」 「血が繋がらなくても妹には弱いんですね、先生。ん、むぐっ」 ディスの口をローランドがとっさに塞いだ。血相を変えてあたりをきょろきょろ見回し、人影がないことを確認すると、ほーっとため息をついた。 「いったいどこまで知っているんだ……キリエは知らないんだ。誰にも言うなよ」 「わかってますよ。僕だって別にいらぬ波風立てたいわけじゃない。このことは僕の胸の内に秘めておきます。探偵部部長の名にかけて約束しますから安心してください」 「頼むよ……」 「まあ、でもばれたくなかったら、泳げるようになることが一番じゃないですか?」 「放っておけ!」 誰もいないと思って続けられていた会話を、だが物陰でキリエが聞いてしまっていたことに2人は気づかなかった。 「血が繋がってない……え?どういうこと?だって、物心ついたときからお兄ちゃん、いたし。お父さんもお母さんも何も言ってないし。う、嘘よね?聞き間違い……よね?」 キリエはずるずるとその場にへたり込んでしまった。 それから数日後。どことなくふさぎこんでいるキリエをクラスメイトが気にしていたが、ことがことだけになかなか打ち明けられずにキリエは兄が泳げないことへの苛立ちと周りをはぐらかしていた。教壇では聞かれていたとは知らないローランドが臨海学校の日程などについて説明をしていた。 「知っての通り、臨海学校は3泊4日の予定だ。こちらでも行事は予定するが、自主性を重んじたいからな、やりたいことがあったら準備用のホームルームを使って決めること。なお部屋は男女別の大部屋だ。夜間の行き来は禁止。無断外出や外泊も禁止だからな」 「先生〜キリエちゃんの様子が変なんですけど〜知ってますか?」 「え?」 クラスメイトに話を振られてキリエが慌てる。怪訝そうなローランドが視線を向けると、キリエはぶっちょう面で言い放った。 「だからっ。お兄ちゃんが泳げないってのが腹立たしいって言ってるじゃない。いい!絶対に泳げるようになってもらうんだからね。覚悟しておきなさいよ!」 「余計なお世話だ。それと学校では先生と呼びなさい」 「ふーんだ。泳げないお兄ちゃんなんかお兄ちゃんでじゅうぶんよ」 そっぽを向くキリエにローランドが頭を抱えてしまった。 |
S1.臨海学校のイベントを考える S2.様子のおかしいキリエの悩み相談を引き受ける S3.ローランドが泳げない原因を追究する |
【マスターより】
こんにちは、高村です。 やっぱり学校といったら林間学校か臨海学校でしょう。てなわけで、人工島のSアカデミアでは臨海学校に出発〜♪と相成りました。もちろん臨海学校ならではのイベントも用意してありますが、やりたいことがありましたらどしどし提案してくださいね。いかに盛り上がるかは皆さんの発想次第です。 でもって、それだけじゃつまらないので、ちょっぴりシリアステイストも盛り込んでみました。こちらの方も無事に解決となりますでしょうか。友情パワー、期待しております。 真冬ですが心はほっとに常夏パワーで頑張りましょう。よろしくです。 |