「英雄復活リベンジ・オブ・ジャスティス」

第3部「宇宙編」第2回

サブタイトル「特攻だ! 宇宙に神風が吹くとき」

執筆:燃えるいたちゅう
出演者:熱きガーディアンのみなさま

1.種子島の闘い

 種子島、宇宙センター。
 そこでは、いま、ガーディアンたちの乗り込んでいるスペースシャトルが宇宙に発射されようとしていた。
 恐るべき最終兵器、デッドスペシャルカノンを搭載した戦艦デッドダゴンを中心とする、デッド星人の地球襲撃艦隊。
 究極の脅威を前に、ガーディアンたちはついに宇宙に飛び出す覚悟を固めたのだ。
「首相も、OKを出したか。対アーマードピジョン法案が提出されているというのに、ガーディアンたちにデッド星人駆逐の協力を依頼することになろうとはな」
 自衛党の第2派閥、滅入派のボスである滅入芸太郎は、宇宙センターのビルからシャトルを眺めながら、呟く。
 アーマードピジョンのガーディアンが、スペースシャトルに乗って宇宙にあがり、デッド星人の艦隊と闘う。
 前代未聞の計画が実現したのも、デッド星人襲来という緊急事態の中、世論がアーマードピジョンを支持する方向に傾き、首相もついに心が動かされ、シャトルの使用許可を出したためだった。
 特に、ガーディアンたちが東京の性犯罪者部隊を壊滅させ、女性にとっての脅威をほぼ完全に駆逐したことは、女性団体からの賞賛の的となり、人々の心を大きく動かしたことだった。
 滅入氏にとっても、女性団体は強力な後ろ盾であり、アーマードピジョンの活動が女性団体の支持を得たことで、ピジョン擁護の活動を始めやすい状況となっていた。
 だが、在日米軍は、ガーディアンをシャトルに乗せることには徹底反対していた。
 ときの首相は、米軍の反対を押しきって、今回の計画を断行したのである。
 まさに英断だが、対アーマードピジョン法案を提出した直後のことだけに、首相の言動には大きな自己矛盾が感じられた。
 今後、米軍との関係のこともあり、追い込まれた首相は、自分から辞任するかもしれない。
 そうなったときは……。
 滅入氏は考えるのをやめた。
 いまは、シャトルの発射を見守ろう。
「オー、ミスター・メイル! ナイス・トゥ・ミーチュー! ハジメマシテ〜」
 ジュディ・バーガーが現れ、滅入氏に握手を求める。
「きみは、ガーディアンか? 今日、きみと会談するアポはなかったはずだが」
 滅入氏は戸惑いながらも、握手をかわす。
「アポ? ノーノー! アポナクテモアエマシタ、イッツノープロブレム!」
 ジュディはおおげさに肩をすくめてみせる。
「私にどんな話がある? 何にせよ、いまはシャトルの発射を見守ろうではないか。きみの仲間も乗っているんだろう?」
「オー、シャトル! ベリーベリーワンダフル! NASAニマケナイギジュツガ、ニホンニハアリマスネ!」
 ジュディは本気で感心していた。
 彼らの目の前で、シャトルの発射は秒読みに入った。
 5、4、3……。
 そのとき。
「ふわーはっはっは! 愚かな地球人どもよ。そのようなおもちゃで宇宙の我らに攻撃を仕掛けようとは、笑止千万! 攻撃開始だ!」
 デドン将軍の指示で、デッド星人の円盤群が種子島上空に現れる。
「むっ、いかん!」
「オー、デンジャラス!」
 滅入氏とジュディは、一瞬手に汗を握った。
 だが、そのとき。
「妨害なんか、させません。必ず打ち上げは成功させてみせます!」
 高田澪がシャトルから駆け出した。
 彼女もまたシャトルに乗り込んで出発する予定だったが、円盤をみて気が変わった。
「アルティメットドレス、純着です!」
 いまやアーマードピジョンの一員である彼女が叫ぶと同時に、ドレス胸元のブローチに仕込まれたレッドクロスが光を放ち、展開する。
 クロスをまとった澪は、ロングスカートドレスの姿となっていた。
「みんなを、みんなを守ります! スーパーバリア!」
 澪はスペシャルテクニックを発動。
 ブーン
 光り輝くエネルギーバリアが、シャトルを円柱状に包み込む。
 カンカンカン!
 バリアは、円盤からの攻撃を完璧に防ぎ、弾き返してしまった。
「おのれ!」
 デドン将軍は歯ぎしりする。
 その間にも、シャトル発射の秒読みは進行した。
 2、1……。
 ゼロ!
 しゅどどどどどどど
 エンジンブースターが炎を上げ、シャトルが大空に打ち上げられた。
「みんな、無事で!」
 バリアの一角に穴を開け、シャトルが通れるようにしてから、澪は祈りを捧げる。
「がんばって、行ってきてくれ。みんな、きみたちの帰還を待っているぞ」
 滅入氏もまた、シャトルを見上げて天に祈りを捧げていた。
「オー、グッバイ、サラバ! キット、ビクトリー、ツカンデキテネ!」
 ジュディもまた、拳を振りあげてシャトルに叫ぶ。
「さて、ジュディくん。話を聞こうか」
「オー、タントーチョクニュー。イイカナ、コレカラ、アメリカニイッテ、プレジデントト、ハナシヲスルネ!」
「なに、大統領と!? そんなことができるのか」
「ホワイトハウスニ、ナグリコミネ!」
 ジュディは笑った。

2.艦隊戦

 宇宙。
「お、おい、やったぞ。ついに俺たちは宇宙まできたんだ!」
 シャトルの窓から広大な宇宙空間を眺めて、ガーディアンたちが興奮気味に騒ぐ。
「ああ。だが、本番はこれからだ。あそこにみえるデッド星人の地球襲撃艦隊、あれを破壊しなければ」
 とあるガーディアンが、緊張した面持ちで艦隊を指さす。
「ああ、やらなければな。だが、俺たちは本当に勝てるのか? あの艦隊に」
「勝たなければ、地球が滅びる。何としてもやりとげなければならない。そう、俺たちの生命にかえても!」
 ガーディアンたちのクロスが、光を放つ。
「いくぞ」
「おう!」
 気炎をあげて、シャトルから宇宙空間に飛び出してゆくガーディアンたち。
 レッドクロス、そしてスペシャルフラッシュの力で、ガーディアンたちは宇宙空間でも支障なく活動できる。
 ガーディアンたちがシャトルを離脱した直後。
 びー。
 どかーん!
 デッド星人の艦隊からのビーム攻撃を受けて、シャトルは木っ端微塵に砕け散ってしまった。
「くそっ、退路を断たれたか!?」
「まあ、どうにかなるんじゃないの?」
「さっき、生命にかえても、っていっただろ」
 ガーディアンたちは動揺を何とか抑えようともがきながら、宇宙空間を移動してゆく。
 目標は、艦隊。
 攻撃開始だ!

「タイタン、大気圏突破。デッド星人の艦隊、目前に。ガーディアンたちのシャトル、破壊されました」
 タイタンのブリッジで、リーフェ・シャルマールはオペレーターからの報告に耳を傾ける。
「シャトルが破壊されたか。だが、心配するな。勝利の暁には、他のガーディアンたちをこのタイタンに収容して帰還しよう」
 リーフェは落ち着いた口調でいう。
「ガーディアンとデッド星人艦隊の戦闘、始まりました」
「よし、タイタンも攻撃を開始する」
「了解!」
 ずどーん、ずどーん
 タイタンはミサイルやビームを連射しながら敵艦隊へと近づいてゆく。
「超未来型戦闘機、フルメタルが大気圏を突破!」
「フルメタルが? エルンストか」
 リーフェの推測はあたっていた。
 エルンスト・ハウアーが、フルメタルに乗って宇宙にあがってきたのだ。
「よーし、いくぞ〜。こうなりゃ、どこまでもやってやるわい! ガーディアンどもはこの機体をまともに動かせん。このワシが、鋼の機体に魂をこめ、破壊の神と化さしめてくれるわ! ゆけ〜」
 エルンストの操作で、戦闘ロボ形態へと移行したフルメタルが敵艦隊に突進。
 ちゅどーん!
 敵艦に拳の一撃を叩きこみ、一瞬で破壊する。
「む? こざかしい真似を。撃てー、撃てー!」
 デドン将軍の指示で、艦隊の攻撃がフルメタルに集中。
「う、うおおお〜メタルブローック!」
 攻撃をくらった震動に悲鳴をあげながら、エルンストはフルメタルの防御機能を発動させる。
「よし、あたしもいくもん!」
 タイタンのブリッジで、カミッラ・ロッシーニが気炎をあげる。
「ハッチを開けて!」
「了解!」
 開きかかったタイタンのハッチに向かって走りながら、カミッラの義体アリアはボール状のレッドクロスを振りかざす。
「アルティメットドレス、律着だーい!」
 アリアの身体がクロスに覆われ、ロングスカートドレスの姿となる。
「出撃!」
 アリアは宇宙空間に飛び出した。
「くらえ、刺し貫くアリア!」
 アリアはスペシャルテクニックを発動。
「あーあーあー」
 宇宙空間に、アリアが喉から張り上げる音撃が、巨大な剣の形状となって、敵艦隊に襲いかかる。
「なぜ宇宙で音撃攻撃ができる!? これもクロスの力なのか?」
 リーフェは疑問を覚えたが、深く考えないことにした。
 ぶーん。
 どごーん!
 剣状の音撃が見事敵艦に炸裂。
 すさまじい爆発が巻き起こった。
「よーし、わたしも!」
 タイタンのブリッジで、今度は姫柳未来が気炎をあげる。
「ハッチ、開けなくていいよ。テレポートするから」
「了解!」
 未来はボール状のレッドクロスを振りかざした。
「神々から授かったスペシャルフラッシュの力、みせてあげる! 変身!!」
 未来の身体がクロスに覆われる。
「おお、その姿は……!」
 普段冷静なリーフェも思わず感嘆の声をあげる。
 スペシャルフラッシュの力で、未来のクロスには形状に変化が生じていた。
 新しく生まれ変わったその姿は、背中に翼がついた、純白のドレスを着込んでいる。
「てれぽーと!」
 未来はテレポートでタイタンから離脱。
 戦闘宙域に出現する。
「さあ、いくわよ。エンジェルハープーン!」
 未来はスペシャルテクニックを発動。
 レッドクロスの裾から飛び出した10個の光球が、スペシャルフラッシュの貫く光を連射しながら敵艦隊にまとわりついてゆく。
「はあ〜」
 未来は目を閉じ、念で光球を操る。
 ぴきゅーん、ぴきゅーん!
 10個の光球が、フラッシュの力で次々敵艦を落としてゆく。

3.決死の突入

 すさまじい艦隊戦のただ中で、宇宙空間をふわふわと漂う存在があった。
 アンナ・ラクシミリアである。
「あらら。すさまじい光景ですわ。光がいっぱいで眼が痛いですわ」
 アンナは目をこすりながら、デッドダゴンの点検用ハッチにたどり着く。
 ぷしゅう
 すぐ側のパネルをいじっていると、ハッチはゆっくりと開いた。
「お父様、今日は門限を破ってしまってすみません。でも、アンナは今日は宇宙でお掃除をやってみたいのですわ」
 アンナはデッドダゴン艦内に侵入。
「まあ、思ったとおり。汚れていますわ!」
 アンナは呆れ顔でモップをかけ始める。
「誰だお前は! 何だ、清掃婦か。しっかりやっとけよ」
 アンナに気づいた艦の乗組員が声をかけるが、艦の清掃スタッフと勘違いして放っておくことに決めたようだ。
「お掃除、お掃除」
 アンナはひたすらモップをかけ続ける。
 その先には……。

「よし、行くぞ」
 アクア・マナは妹を促す。
「姉さん、準備は完了だよ」
 フレア・マナはうなずく。
「タンクの水を放出するときがきたようだな」
 リーフェ・シャルマールはタイタンの巨大タンクに搭載されている大量の水を、宇宙空間に放出。
「アクア、フレア、出撃!」
 同時に、姉妹はタイタンから離脱、宇宙空間を移動する。
「集え、虚空の水滴よ! 凝りかたまりて漂う氷塊となれ!」
 アクアは水氷魔術の力を発動。
 宇宙空間に放出された大量の水が一瞬で凍りいて、巨大な氷隕石と化す。
「さあ、行くぞ」
 姉妹は氷隕石の陰に身を隠す。
 氷隕石は、徐々にデッドダゴンに接近してゆく。
「将軍! 隕石のかけらが本艦に接近してきますが?」
 デッドダゴンのブリッジで、氷隕石の接近に気づいた乗組員がデドン将軍に報告する。
「構うな。いまは交戦中だ。隕石のかけらなどがぶつかった程度で、この艦には傷ひとつつかん」
「了解!」
 将軍の指示で、乗組員たちは氷隕石を無視することにした。
「よし、デッドダゴン艦内に侵入するぞ」
 アクアとフレアは氷隕石に隠れてデッドダゴンの直近までゆくと、アンナが開けたのと同じ点検用ハッチから艦内に侵入した。
「うん!? 何者だ、敵か!」
 姉妹の侵入に気づいた下級兵士が銃を乱射してくる。
「とあー、みぞおち!」
 アクアは下級兵士のみぞおちに一撃を与え、気絶させた。
「よし、服をもらうぞ」
 姉妹は兵士の服に着替えて、艦内を進んでゆく。

「よし、そろそろ将軍が乗ってるという、デッドダゴン艦内に突入するぞ」
 佐々木甚八もまた、タイタンのブリッジで気炎をあげる。
「気をつけて。何が待っているかわかりません」
 リーフェは甚八に敬礼していった。
「わかっているさ。それじゃ!」
 甚八は義体ソラとともにハッチに向かって走る。
「蒼着変身! ブルーブライド・アルティメットヴァージョン!」
 ソラがボール状のレッドクロスを振りかざし、ロングスカートドレスの姿となる。
 ゴゴゴゴゴ
 タイタンのハッチが再び開く。
「発進だ!」
 ソラに抱きかかえられた甚八が叫ぶ。
 甚八とソラは、宇宙へ飛び出した。
「目指すは、デッドダゴンだ!」
 ソラは、甚八を抱えてデッドダゴンへ一直線。
「甚八さーん、待って下さい」
 義体ヴァネッサに抱えられたイングリット・リードが甚八を追って宇宙を飛翔してくる。
「突入作戦を開始しよう。ソラ、スペシャルテクニックだ!」
「わかったよ! セラフィックトゥルー!!」
 ソラはスペシャルテクニックを発動した。
 しゅばあああああ
 ソラの背中から、輝きを放つエネルギーで構成された、3対の光の翼が出現する。
「とあああああああああ!」
 ソラは叫び声をあげながら、デッドダゴンに高速接近。
「む、あれは!? 撃て、撃てー!」
 ソラに気づいたデドン将軍が、攻撃命令を出す。
 びゅっ、びゅっ
 デッドダゴンの拡散レーザーがソラに炸裂するが、クロスの力に弾かれてしまう。
「すごい力だ。こんなものが本当にこの世に存在を許されるのか?」
 甚八はどこか不吉なものを感じていた。
 レッドクロス。
 この力は、闘いが終わり、平和が戻れば、禁忌の技術となるのではないか?
 甚八の思いをよそに、ソラはデッドダゴンに向かって強烈な拳の一撃を叩き込む。
 どごっ
 がーん!
 すさまじい音とともにデッドダゴンの装甲が破れ、大きな穴が開いた。
「よし、いまだわ」
 ソラがスペシャルテクニックで開けた穴から、イングリット・リードがデッドダゴン艦内に侵入。
「敵、侵入! 迎撃、迎撃!」
 艦内の兵たちが銃を乱射して突進してくる。
「ヴァネッサ、闘うのよ! って、あらら」
「ふあ〜。眠いです」
 焦るイングリットの眼前で、ヴァネッサは大きなあくびをひとつすると、主人の身体にもたれかかって、すやすやと眠りについてしまう。
「この子ったら、宇宙を移動していて疲れたのね」
 呆れるイングリットの眼前で、ヴァネッサのクロスが輝きを失い、ボール状に凝縮される。
「イングリット、ここは俺たちに任せろ!」
 イングリットの後から侵入してきた佐々木甚八が叫ぶ。
「わかったわ。先に行かせてもらうわ」
 イングリットは眠りこけている義体ヴァネッサを背負って、艦の奥へ向かった。

「未来さ〜ん!」
 宇宙空間で翼をはためかせ、敵艦と戦闘していた姫柳未来に、一人のガーディアンが近づいてくる。
 トリスティアだ。
「なに? あなたも闘うの?」
「うん! 一緒にデッドダゴンの艦内へテレポートしよう!」
「わかったわ。それじゃ」
 二人は手と手をつなぎあわせる。
「てれぽーと!」
 果たしてどこに出現するのか?

4.参謀の正体

「敵侵入! 敵侵入!」
 デッドダゴン艦内にすさまじい警報が鳴り響く。
「どうやら、誰か気づかれたようだな」
 敵の兵に扮装したアクアとフレアは、ことを早くすませる必要があると判断した。
「カノンの管制室は、ここか!?」
 姉妹はデッドスペシャルカノンの管制室に踏み込む。
 そこには。
「ゲロゲロ〜」
 ゲロン参謀の姿があった!
「参謀、カノンの点検を行いたいのですが」
 アクアはいった。
「ゲロゲロ〜。そんな芝居が私に通用すると思うか? お前たちが侵入した時点で、私は気づいていたゲロ。きっとここにくると思って、待ち構えていたゲロ!」
 だだだっ
 姉妹が踏み込んだ扉から、大勢の兵士が銃を構えて突入してきた。
「くっ」
「観念しろゲロ!」
 そのとき。
「う、うわー!」
 彼方からとどろく、敵の兵たちの悲鳴。
 ちゅどーん!
 すさまじい爆発とともに、高らかな声が響く。
「くぉらー! 逃げるなー!」
 どごーん!
 管制室前の廊下にトリスティアが現れる。
「うん、ここに全員集合かな? がおー、やっちゃうぞ!」
 トリスティアは管制室内部に勢揃いした敵の兵たちにも攻撃を開始。
「うわー!」
 トリスティアの連続キックをくらった兵たちが次々に倒れてゆく。
「ゲ、ゲロゲロ!?」
 ゲロン参謀は目を丸くする。
「トリスティア、ここは違う」
 フレアがトリスティアにいった。
「えっ、違うの?」
「デドン将軍はこの上、ブリッジにいるぞ」
「あっ、そっかー。じゃあね!」
 トリスティアはエヘへと舌を出して管制室から去ってゆく。
「お、おのれー。ふざけた真似を! ゲロー」
 ゲロン参謀は顔を真っ赤にして、巨大な舌をアクアとフレアに打ち出す。
「ゆくぞ!」
 舌をかわし、兵の服をかなぐり捨てて、姉妹は参謀に向かってゆく。
「管制室はここね!」
 イングリット・リードも管制室に姿をみせた。
「もう闘いは始まっているようね。ヴァネッサ、起きなさい!」
 イングリットは眠りこけているヴァネッサを床に下ろすと、往復ビンタを放った。
 ばし、ばし!
「ふわ〜。痛いですぅ」
 ヴァネッサはようやく目を覚ました。
「さあ、レッドクロスを!」
「むにゃむにゃ。人使い荒すぎ〜」
 ブツブツいいながら、ヴァネッサはボール状のレッドクロスを振りかざす。
「アルティメットドレス、瘴着ぅぅぅ」
 レッドクロスが光を放って展開され、ヴァネッサの身体がロングスカートドレスに包まれる。
「ゲロゲロ、お前から死ね!」
 ゲロン参謀はヴァネッサに舌を打ち出す。
「ガードですぅ」
 ヴァネッサは拳で舌を打ち払った。
「よし、この、舌が戻っていく瞬間の隙をつくのよ!」
「はい〜」
 イングリットの指示で、ヴァネッサはシークレットアーツを発動。
「ベルゼブブ・レギオン!」
 ブーンブーン
 大量の蠅が管制室に現れた。
「こ、これでは私たちも身動きがとれない!」
 蠅の量があまりに多く、空間内を隙間なく埋め尽くすほどであったため、フレアとアクアは戸惑うことになる。
「安心して。私がこのガマガエル参謀を倒すから」
 イングリットが笑っていったとき。
「フフフ。それはどうかな」
 ゲロン参謀の眼が光を放つ。
「ゲロゲロ、パワー解放!」
 参謀が口を大きく開くと、そこから無数の舌がひゅるひゅると打ち出されてゆく。
 パクパクッ
 ゲロン参謀は大量の蠅を次々に腹におさめ始めた。
「フフフ……愚かな。蠅は、私のエネルギー源! ことに地球の蠅はうますぎるのう」
 蠅をたらふく食べた参謀の身体が光を放つ。
「いまこそみせよう、私の正体を! 宇宙怪獣・デッドガマゲロン!」
 管制室の天井に頭がこすれるほどの、巨大なガマが現れた。
「これがガマガエル参謀の正体……って、ただ大きくなっただけじゃないの!」
 イングリットはぽかんと口を開けている。
「さあ、ベルゼブブよ、お前を食って私はもっと強くなろう!」
 デッドガマゲロンの巨大な舌が、イングリットの身体に絡みつく。
「くっ!」
 イングリットは必死で抵抗するが、その身体は徐々に敵に引き寄せられてゆく。
「止めなければ」
「はい、姉さん!」
 アクアとフレアは目を合わせてうなずいた。
 姉妹は、デッドガマゲロンを挟みこむような位置にそれぞれつく。
「はあ〜、炎の剣!」
 フレアは伸縮警棒に炎のオーラをまとわせる。
「はあ〜、氷の刃!」
 アクアは南京珠すだれを伸ばして、そこに氷の塊を張りつかせて、鋭利な刃とする。
「祈りの力、スペシャルフラッシュ!」
 姉妹が祈りを捧げると、それぞれの身体に青白い火花、スペシャルフラッシュが。
「神の力で、お前を撃つ! この銀河を清浄とするために! 姉妹剣・氷炎グランドクロス!」
 姉妹は、互いの武器、炎の剣と氷の刃でデッドガマゲロンに同時に斬りつけた。
 ぶしゅっ
 斬り裂かれたデッドガマゲロンの表皮から、不気味な黒い油がほとばしる。
「これは……ガマの油!?」
 イングリットは戦慄した。
「ゲロゲロ、切り札ゲロ! ガマの油ガソリンファイヤー!」
 フレアの炎が、ガマの油に引火する。
 ちゅどーん!
 大爆発が巻き起こった。
 そして。
 爆発の煙がおさまると、そこには、アクア、フレア、イングリット、ヴァネッサたちが黒こげになって倒れていた。
「ううう……何としぶとい」
 アクアは天井をあおいで、歯ぎしりする。
「はっはっは、さあ、食ってやる! 身体を舐めまわしながらな!」
 デッドガマゲロンが舌なめずりをしたとき。
「お掃除、お掃除〜。まあ、ここは汚れすぎですわ」
 アンナ・ラクシミリアが管制室に姿をみせる。
「ゲロ!? 何だお前は」
「私はお掃除戦士! この艦の厨房をきれいにして、蠅一匹いない環境にしたところですわ」
「な、何だと!? おのれ、厨房の蠅を食べるのが私のこの艦の最大の楽しみだったというのに!」
 デッドガマゲロンは怒りに我を忘れた。
「貴様、死ねや!」
 デッドガマゲロンが大きく口を開いて舌をアンナに打ち出す。
「とあー」
 アンナはモップで敵の舌を弾くと、モップの先端を敵の大口の中に突き入れた。
 がぼっ
「あっ? あぐあぐ」
 デッドガマゲロンはうめく。
「私はただ、この宇宙をきれいにしたいだけですわ」
 アンナは、宇宙全体の浄化を祈って、目を閉じた。
 ばちばち
 アンナのレッドクロスがスペシャルフラッシュを放つ。
 デッドガマゲロンの口中のモップの先端が光を放ち、すさまじいエネルギーの塊を膨れあがらせる。
「あふあふ」
 デッドガマゲロンはうめいた。
「徹底消毒いたしますわ! アンナ・スチームインパクト!」
 アンナが叫んで、目を開いたとき。
 エネルギーに包まれたモップの先端が、デッドガマゲロンの口中で高速回転する。
「ぷくううううう、ゲロゲロ、やめろゲロ〜」
 デッドガマゲロンの体内の水分が瞬時に気化し、水蒸気でガマゲロンの身体が風船のように膨らむ。
 そして。
 ばちいいいん。
 ちゅどーん!
 ついにガマゲロンの身体は破裂。
 大爆発が巻き起こった。
「よし、やったぞ。デッドスペシャルカノンの管制室の装置も破壊された。これでカノンは発射不能になったはず……だ。ガクッ」
 それだけいって、アクアたちは意識を失った。

 デッドダゴン、ブリッジ。
「そこどけー! とあー!」
 ブリッジへの扉が破壊され、トリスティアが殴り込みをかける。
「きたな!」
 デドン将軍はトリスティアを睨みつけ、頭から突き出ている2本の触角をしごく。
「ビーム!」
 触角から放たれたビームが、トリスティアを襲う。
「トリスティア、ジャーンプ!」
 トリスティアはハイジャンプでビームをかわす。
 ドゴッ
「いててっ! わーん」
 高く飛びすぎて天井に頭をぶつけたトリスティアがうめく。
「ふっ、しょせんはその程度か」
 デドン将軍は笑いながら、司令席から立ち上がり、ゆっくりトリスティアに近づいていく。
 腰におびたサーベルを抜き払って、トリスティアに向けて構える。
「死ねやー!」
「うわ〜」
 デドン将軍のサーベルを、トリスティアは必死で転げまわってかわした。
「くっ、往生際の悪い奴」
 デドン将軍は舌打ちして、トリスティアを追う。
「うーん、頭が痛いよぉ。でも、大丈夫。ボクの右足が、やってくれるんだ!」
 トリスティアは、未来に教わったとおりにした。
 天に祈りを捧げ、母なる星・地球の平和を守ることを考える。
 ばちばち
 青白い火花がトリスティアの右足にまとわりつく。
「フラッシュ発動だ! ハイパー流星マシンガンキーック!」
 近づいてくるデドン将軍に、トリスティアはやみくもにキックを放つ。
 キック、キック、キック。
 キックの雨だった。
「ぬ、ぬおおっ」
 予想外の激しい攻撃に、デドン将軍は身を固くする。
 カチャーン
 サーベルが床に落ちた。
「そりゃそりゃー!」
 トリスティアのマシンガンキックがなおもデドン将軍に炸裂する。
「デ、デドデドデド〜」
 2本の触角をうごめかして、デドン将軍はうめく。
「とどめだ。とりゃー!」
 トリスティアは威勢のいい締めのキックを放った。
 ドゴーン
「うぐっ」
 最も強力なキックをくらったデドン将軍の身体が吹っ飛ぶ。
 ずごーん
 デッドダゴンのブリッジの壁を砕いて、将軍の身体が宇宙空間へ放り出される。
「待てー!」
 トリスティアも将軍を追ってブリッジの壁の穴をくぐり、宇宙空間へ。
「しょ、将軍さまぁ!」
「待て、落ち着くんだ。壁の穴を塞がなくては」
 ブリッジの乗組員たちは、慌てふためいて壁の穴を塞ぎにかかる。
 ようやく壁の穴を塞いで、乗組員たちがホッとしたとき。
「はーい、ご苦労様ぁ!」
 ブリッジの司令席に、テレポートで登場した姫柳未来の姿があった。
「くっ、貴様! やれ!」
 乗組員たちは次々に未来に向けて発砲。
「通じないもん。とあー!」
 クロスの力で弾丸を弾いた未来が、サイコキネシスで乗組員たちの身体を宙に浮き上がらせ、床に叩きつける。
「う、うぐっ」
 うめく乗組員たち。
「心を読んでしまうわよ。リーディング、発動!」
 未来は乗組員たちの心を超能力でのぞきこみ、艦の操縦方法を学び取った。
「よーし、わたしが動かすわよ! 面舵いっぱーい、なんてね」
 未来ははしゃぎながら、オペレーター席について、操作を始める。
「デッドスペシャルカノンを、デッド星人の艦隊に向けてはっしゃー! あれれ?」
 未来は戸惑った。
 正しく操作してるはずなのに、カノンの発動はおろか、自分が意図した方向に艦が動くということもない。
「こ、これは……!」
 オートモードにはしていないはずだが、艦は勝手に動いていた。

5.目覚める知能

「そんな……! 将軍と参謀を追いやって、ブリッジを占領したのに! 艦が全くいうことを聞かず、勝手に動いている。どういうことなの?」
 姫柳未来はパニック状態になりかけている自分をやっとのことで抑えていた。
 巨大宇宙戦艦デッドダゴンはガーディアンたちへの砲撃を繰り返しながら、徐々にその機体を変形させ、巨大なロボットの姿へと変わってゆく。
 未来がどんな操作をしても、その動きを止めることはできない。
「どうやら、デッドダゴンは戦艦自体が意志を持っているようですね。フルメタルのように高度なAIが搭載されているとみるべきでしょう」
 タイタンのブリッジで、状況を分析していたリーフェ・シャルマールが呟く。
「デッドダゴン、バトルロボ形態に移行。巨大な砲門が胸から! デッドスペシャルカノンを発射しようとしています!」
 オペレーターを務めていた女性ガーディアンが悲鳴をあげる。
「カノンの発射は、意地でも止めなければいけません。タイタン、特攻します」
 リーフェの指示で、タイタンはロボット形態のデッドダゴンに急接近する。
 デッドダゴンがタイタンに攻撃を開始。
 ミサイル、ビームなどが次々にタイタンの機体に炸裂する。
「うわあ!」
「きゃあ!」
 巻き起こるクルーの悲鳴。
「みなさん、がんばって下さい。何としてでもカノンの発射は止めなければ! 私たちの生命を賭けてでも!」
 そのとき。
「ちょっと待った。そう簡単に死に急ぐもんじゃないぜ、リーフェ」
 アーマードベースの武神鈴から通信が入る。
「武神か。何か策があるのか?」
「おいおい、忘れたわけじゃないだろう? やるんだよ、グレートピジョンロボを」
「なに!? あれはまだ微調整が済んでいない!」
「この状況でそんなこといってられるか。いくぞ!」
 アーマードベースがタイタンに急接近。
「うむ。武神がその気なら。よし、タイタン、アーマードベースとの合体機構を起動! グレートピジョンロボを完成させる!」
「了解!」
 リーフェの指示に、オペレーターがびっくりしたような顔で答える。
 グレートピジョンロボ計画。
 アーマードピジョン内部で相当の議論があり、凍結となっていた最終兵器の開発。
 それがついに、この究極の戦場で発動しようとしていた。
「合体シークエンス起動。タイタン、アーマードベース!」
 タイタンとアーマードベース。
 2大戦艦が宇宙で合体し、変形。
 超巨大戦闘マシン・グレートピジョンロボが誕生した。
「よし、対消滅炉起動!」
 武神はダークピジョンロボのエネルギー装置であった魔力炉を、新開発の対消滅炉に換装する。
 光のクリスタルと、闇のクリスタル。
 2つのクリスタルのデータを素に複製をつくりだし、さらにつくりだした複製の光と闇を相互に干渉させることで生まれる超エネルギーが、対消滅炉から生み出される。
 ブンッ
 鈍い音とともに、グレートピジョンロボの両眼に光がともった。
「ロボの装甲は新開発の超合金ニューデッド413に変えてある。この機体で、あいつをやってやるぜ!」
 リーフェたちのいるブリッジに現れた武神が、意気揚々と叫ぶ。
「ふっ」
 リーフェは笑った。
「何がおかしい!?」
 武神が問う。
「タイタンは、元来ピジョンロボの増加装甲兼追加火器エネルギーブースターとして開発された。いまのこの姿こそ、本来あるべきものだったのかもしれないな。武神、やれ!」
「いわれなくてもわかってるぜ。ロボ、行け!」
 グレートピジョンロボがデッドダゴンに向かう。
「くらえ、追加武装のロングバレルランチャーだ!」
 グレートピジョンロボが巨大な砲門をデッドダゴンに向ける。
「ピコピコ。テッキ、ハカイ!」
 デッドダゴンに搭載されている暗黒AIが、グレートピジョンロボを敵と認識、デッドスペシャルカノンの砲口を振り向ける。
「うっ、こちらに発射するつもりか!」
 リーフェも顔色がさすがに青くなる。
「面白い! 撃つなら撃て! 俺もやってるやるぜ! 死にたくない奴は5分以内に退避しろ! 1秒たりとも待つ気はないぜ! 対消滅炉、エネルギー全開!」
 グレートピジョンロボのロングバレルランチャーの砲口に、巨大なエネルギーが集積される。
「スペシャルカノン、ハッシャ。ピコ!」
 デッドダゴンのデッドスペシャルカノンがグレートピジョンロボに放たれた。
「対消滅弾、発射だぁ!」
 グレートピジョンロボもまた、ロングバレルランチャーから必殺の超エネルギー弾を発射する。
 エネルギーとエネルギーがぶつかり、すさまじい閃光がほとばしった
 ちゅどーん!
 すさまじい爆発が宇宙空間にまきおこった。
 爆発がおさまったとき、そこに浮かんでいたのは……。
 グレートピジョンロボだった。
「や、やったぜ。はははは」
 武神は狂気の笑みを浮かべていた。
「きゃあああああ! もう」
 悲鳴とともに、タイタンのブリッジに、姫柳未来、アクア・マナ、フレア・マナ、アンナ・ラクシミリア、佐々木甚八、義体ソラ、イングリット・リード、義体ヴァネッサの姿が突然現れた。
「未来!? テレポートしてきたのか」
「そうよ、ったく、私たちが乗っていてもお構いなしなんだから」
 未来は膨れ面だ。
「確かにひどいな。武神、いまのやり方はどうかと思うが?」
 アクアとフレアが問うても、武神は答えない。
「はははははは! やった、やったぞ! 圧倒的な破壊力だ! これであいつにも勝てる! 待っていろよ、ははははは!」
 武神は笑い続けている。
「武神……」
 リーフェは胸騒ぎを覚えていた。
「イッちゃったわね」
 イングリットは呆れ顔だ。
「やはりあの男は危険か」
 佐々木甚八は眉をひそめる。
「まあ、汚れていますわ。お掃除、お掃除」
 アンナ・ラクシミリアはグレートピジョンロボ艦内にモップをかけ始めた。

「待てー! この野郎!」
 宇宙空間で、トリスティアとデドン将軍はもみあっていた。
「は、放せ! このまま艦隊から離れれば、永遠に宇宙を漂流することになるぞ!」
「そんなの、知るかー!」
 トリスティアはデドン将軍の触角をつかんだ。
「ぐ、ぐわー!」
 激痛に、将軍は悲鳴をあげる。
 と、そこに。
 ゴゴゴゴゴゴ
 光り輝く巨大な戦艦が現れ、トリスティアたちの付近で停止した。
「う、うわ、これは!?」
「む、戦艦ブライトか。くそっ、宇宙平和維持軍め、遠くから見物していたとは!」
 デドン将軍は青くなった。
 戦艦から、小型の円盤が発進し、トリスティアたちの直近までやってくる。
「こちらは、戦艦ブライト。大宇宙究極裁判所で死刑を宣告された極悪犯罪者、デドン将軍を拘束する」
 トリスティアの携帯端末に戦艦の通信が入り、不思議な声を伝える。
 円盤から放出された拘束ビームがデドン将軍を包み込む。
「く、くそ〜」
 うめきながら、デドン将軍は円盤内に収容されていった。
 デドン将軍を収容した円盤が、戦艦内に帰還してゆく。
「犯罪者の拘束に協力してくれて、感謝しよう。貴公に大宇宙のおおいなる意志の加護のあらんことを」
 トリスティアにそれだけいって、戦艦は宇宙の彼方に消えていった。
「はあ〜、持っていかれちゃった。でも、いっか。きっと死刑になるもんね!」
 ぽかんとしていたトリスティアは、元気を取り戻すと、向きを変えて、宇宙をふわふわ移動していった。
 タイタンへ、仲間のもとへと。

6.トドの牙

 そのころ、地球の、日本、若狭湾付近の海中のことである。
「デッド、デッド、デッド潜水艦〜!」
 再生超甲人機軍団を乗せた潜水艦が、若狭湾に向かって進んでいた。
 デッドクラッシャーズロシア支部のデッドトドが指揮する潜水艦は、ウラジオストックを出発し、いま、日本上陸作戦を実行に移そうとしていた。
「トドトド〜! 若狭湾の原発を破壊し、日本を大混乱に陥れてやる!」
 デッドトドは怪気炎をあげていた。
 日本支部が壊滅したなら、またつくればいい。
 それが、デッドクラッシャーズの考えだった。
 だが。
「きたな!」
 若狭湾には、マニフィカ・ストラサローネが潜んでいた。
「ギガンティックモード!」
 スペシャルテクニックで巨大化するマニフィカ。
 海神ポセイドンもかくやという巨大な姿が、若狭湾に屹立する。
「デッド〜! 面白い。勝負だ!」
 デッドトドは潜水艦から飛び出し、マニフィカに向かってゆく。
「いくぞえ!」
 三叉槍を構えたマニフィカに、水飛沫がかかる。
「うん、これは?」
「デッド、デッド、デッドホエール!」
 デッドホエールMk.IIが現れ、恐怖の潮を吹き上げながら、マニフィカに体当たりをかけてきた。
「し、しみるぞえ!」
 デッドホエールの吹き上げる潮が目に入って、マニフィカはうめく。
 がぶっ
 そんなマニフィカに、デッドトドがかみついてきた。
「ぎえ〜」
 マニフィカは悲鳴をあげる。
「デッド〜死ね!」
 デッドトドは冷気を口から吐き出す。
 マニフィカ付近の海面が、氷に覆われた。
「ふふふ、どうすることもできまい?」
 デッドトドが笑ったとき。
「母なる神よ、わたくしに力を!」
 両手で顔を覆った状態で、マニフィカは祈りを捧げる。
 ばちばちばち
 青白い火花が、マニフィカの身体にまといつく。
「う……目が、みえるようになったぞえ!」
 マニフィカは目を開くと、三叉槍を振り上げた。
「火球よ、いまこそ槍の先に宿れ! 不浄の氷を溶かしつくすぞえ」
 火炎魔術の力で、槍の先端に巨大な火球が現れる。
 ずぶっ
 しゅううう
 マニフィカが槍を海面の氷に突き立てると、火球が氷を溶かして、白い水蒸気をたちのぼらせる。
「やるな! もう一度潮をくらえ! うっ」
 デッドホエールは絶句した。
 マニフィカがホエールの巨体を抱えこんで、海上へと引き上げた。
 そのまま、マニフィカはホエールをデッドトドの海面から出ている頭部に投げつける。
 どごーん
「ぐわー!」
 トドとホエールは悲鳴をあげた。
「いくぞえ、潜水攻撃!」
 マニフィカは海中に潜ると、槍を構えてトドとホエールに接近。
 ずぶりっ、ぶすっ!
 海中から、槍が超甲人機を貫く音が響く。
 ちゅどーん!
 大爆発が巻き起こる。
「お、おのれー! だが、もう遅い。潜水艦は若狭湾に向かったぞ。がはー!」
 デッドトドとホエールは悪態をつきながら息絶えた。

7.原発防衛命令

 再生超甲人機たちを乗せた潜水艦が、ついに若狭湾内に侵入した。
 ざばあっ
「きゃー!」
「うわー!」
 潜水艦から若狭湾沿岸に上陸し、次々に人々を襲い始める再生超甲人機たち。
「デッド、デッド、みなごろし〜。原発を狙え! 若狭湾沿岸の原発を破壊するのだ!」
 デッドベアー(Mk.II)は余裕の笑みを浮かべながら指示を出す。
 デッドトド亡きいま、ベアーがリーダーとなっていた。
「待てー! お前たちの好きなようにはさせないよ」
 アリー・ナセルが義体ヘレンとともに再生超甲人儀軍団の前に立ちふさがる。
「ふん、人形使いに何ができる! かかれ!」
 ベアーの指示で再生超甲人機たちがアリーたちに襲いかかる。
「や、やるしか、な、ないんですかぁ」
 義体ヘレンが泣きそうな声でアリーに訴える。
「そうだよ。ここまできたら、やらなきゃ! ほら」
 アリーに促されて、ヘレンはボール状のレッドクロスを振りかざす。
「ぐすっ、アルティメットドレス流着ですぅ」
 レッドクロスが展開され、ヘレンはロングスカートドレスの姿となる。
 義体がもともと使用する強化ドレスを、クロスの力でさらに強化した姿である。
「デッド、デッド、デッドカンガルー! 死ね〜」
 まずデッドカンガルーが、ぴょんぴょん飛び跳ねながらヘレンに襲いかかる。
「こ、怖いですぅ」
「デッドキックゥ!」
 跳躍したデッドカンガルーが恐るべきキックをヘレンに放つ。
「わぁ、ドレス展開ぃ!」
 ヘレンが泣きながら叫ぶと、ドレスがふわっと広がってヘレンの身体全体を包み込んだ。
 ずぶっ
 カンガルーのキックの衝撃を、ドレスが軽減する。
「おのれ。デッド袋詰めぇ!」
 苛立ったカンガルーはヘレンを頭から腹部の袋の中に入れてしまう。
「あわわ〜。き、切り裂け、ドレスぅ!」
 カンガルーの袋の中で逆さまになってもがくヘレンは、ドレスの襞を鋭利な刃に変えた。
「ぐ、ぐわー!」
 ドレスの刃に体内を切り裂かれ、カンガルーは悲鳴をあげる。
「回転〜」
 切り裂きながら、ヘレンは高速回転。
 ちゅどーん!
 デッドカンガルーは爆発。
 ヘレンは投げ出された。
「デッド、デッド、デッドシャチホコォ!」
 今度はデッドシャチホコがヘレンに襲いかかる。
「くらえ、デッドフラッシュ!」
 シャチホコの目の部分が光り、まばゆい殺人光線を放つ。
「わ〜、目隠しぃ!」
 ヘレンは慌ててドレスの裾で目を覆い、デッドフラッシュを防ぐ。
「く、くらえ、やらしい触手ぅ!」
 ドレスの裾が細長く伸びると、先端が鋭い触手に変化。
 ずどどどどど
 触手は地中を掘り進んだかと思うと、シャチホコの下に移動し、地中から脆弱な腹部を攻撃した。
「ぐ、ぐわぁ!」
 デッドシャチホコは爆発。
「お、おのれぇ! 勝負だ」
 怒りにかられたデッドベアーが、ヘレンに覆いかぶさって絞め技をかけてくる。
「きゃ、きゃあ、変態ぃ!」
 ヘレンは泣きながらドレスを展開。
 再びヘレンを包み込んだドレス全体から、トゲつきの鉄球が生えてくる。
 がぶっ
 巨大な双腕でヘレンを抱き締めたベアーに、鉄球のトゲがもろに突き刺さる。
「ぐわあああ! いてぇえええええ!」
 ベアーは悲鳴をあげて、ヘレンを解き放つ。
「い、いくよぉ! スパイラルチャージ!」
 ヘレンの全身を包むドレスが、巨大なドリル状に変化。
 そのまま、ヘレンは身体を高速回転させてベアーに突っ込んでいった。
「ぐわああ!」
 ヘレンのドリルアタックを受けたデッドベアーが爆発する。
「やったね! あっ」
 歓声をあげかかったアリーは気づいた。
 デッドペンギンが、原発に向かっていることに。
「ヘレン、原発を守るんだ!」
 デッドペンギンに向けて銃を撃ちながら、アリーは叫んだ。
「ペーン、ペーン!」
 雄叫びを発しながら原発に近づいていくデッドペンギン。
「ま、待てー!」
 ヘレンは、ドレスの裾を細長く展開させて、ペンギンに覆いかぶせようとする。
「原発、破壊ぃ! ペーン!」
 デッドペンギンは原発付近で自爆。
「メルティケージ!」
 ヘレンのドレスの一部が爆発寸前にペンギンを包み込む。
 ちゅどーん!
 球体状になってペンギンを包み込んだドレスが爆発を抑えこむ。
 ぶすぶす
 黒く焼けただれたドレスが、煙をあげる。
「あーん、燃えちゃったよぉ」
 ヘレンはめそめそ泣き始めた。
「ヘレン、しっかりして。原発の破壊は防げたけど、ペンギンを追いかけている間に、他の超甲人機が日本の街に入り込んでいっちゃったよ」
 アリーはヘレンをなだめながら舌打ちする。
 再生超甲人機のうち、デッドモグラとデッドムササビの日本侵入を許してしまった。
 だが、原発の破壊を防げた意義は大きいはずだ。

8.姉妹の祈り

 アーマードピジョンの運営スタッフが会議に使う、電脳チャット空間。
 いまそこに、端末から接続したホウユウ・シャモンの姿があった。
「ミスターゼット、出てきてくれ。あんたに聞きたいことがあるんだ」
 ホウユウの呼びかけに答えるかのように、ミスターゼットがチャット空間に現れる。
「何か用かな? ホウユウくん」
 ミスターゼットは落ち着いた声でいった。
 ホウユウの携帯端末にうつるその瞳には、深い知性をうかがわせる、どこか冷たい光が宿っている。
「教えてくれ。デッドロードは、デッドナイトなのか?」
 しばしの沈黙の後、ミスターゼットはいった。
「それを聞いて、どうするのだ? 『扉』をくぐってデッド星にいくつもりか?」
「もちろんだ。デッドナイトは俺が倒したはずだった。まだ生きているなら、結着をつけにゆく」
「やはりそうか」
 ミスターゼットは、再び沈黙し、しばらくしてからいった。
「きみは、レッドクロスがなぜ危険なのか、わかるか?」
「うん? 絶大な破壊力を持つ……から?」
 いきなりの質問に、ホウユウは戸惑いながら答える。
「確かに、それもある。だが、それだけではない。レッドクロスは、その使用を続けていくことで、この世界のバランスを崩していくのだ」
「バランスを? どういうことだ?」
 ホウユウは頭をかいた。
 難しいことはミズキに聞いてみないとわからない、と思いながら。
「レッドクロスは、我々の知るこの世界の物理法則に従って動いているものではないのだ。きみは考えたことがあるかな? 私たちの住むこの世界、この銀河とは別に、いくつもの並行世界、異世界があるのではないかということを?」
「俺たちの住むこの世界とは全く違う世界? そんなものが本当に存在するのか?」
「存在するのさ。それも、いくつもいくつも、おびただしくね。中には、科学の代わりに魔法が極度に発達した世界もあるし、あるいは、機械と自然が共存する世界や、物質文明が崩壊した世界など、実にさまざまな異世界が存在する。もちろん、人間が存在しない世界もある。そして、同じ人物が複数の世界で同時に活躍するということもありうるのだ。本人は別の自分が異世界にも存在するなどとは、全く感じていないだろうがね」
「同じ人物が? それじゃ、それらの世界に、いくつもの俺が存在するということか?」
「そうだ、ホウユウくん。こうしている間にも、とある世界で、きみは恐ろしい魔物と闘っているかもしれない。あるいは、広大な帝国の皇帝として統治を行っているかもしれない」
「何だか、話が大きすぎて、さっぱりだな。あんたのその話と、レッドクロスとどういう関係があるんだ?」
「それじゃ、ヒントを与えよう。もし、それらの並行世界、異世界の中に、肉体を持たない、精神だけの知性体だけが住む世界があるとしたら?」
「精神だけの知性体? それじゃ、レッドクロスは……」
「そうだ。レッドクロスは、おそらく、その異世界の知性体が開発したものなのだ。肉体を持たない精神が、念じるだけで、様々な物質を生み出し、様々な文明を生み出せるように開発されたのだ。当然、争いに際しては、鎧や武器にも自在に変化できるようにね」
「でも、何で、この世界とは全く違う世界で生み出されたものが、現にこの世界に存在するのだ?」
「それは、私にもわからない。だが、この星にかつて存在した古代アトランティスの文明では、レッドクロスが生み出された世界の知性体とコンタクトをとることができたようなのだ。アトランティスだけではない。この日本の、古くからの神々というのも、もしかしたら……」
 異世界からやってきた、精神だけの知性体そのものかもしれない。
 そういいたいのを、ミスターゼットはこらえた。
 目の前の青年に、全てを教えても理解はできないし、教えるべきでもないだろう。
「最初の質問に答えよう。デッドロードは、恐らくデッドナイトが変貌した存在だろう。奴は最初から、『扉』をくぐってデッド星にわたり、強大な力を身につけるつもりでいたのだ。だが、忘れるなよ、ホウユウくん。レッドクロスの力を引き出せば引き出すほど、この世界のバランスが崩れるということを。そして、究極の発動が起きた際には……」
 ホウユウは、最後まで聞かなかった。
「それだけ聞けば十分だ。ありがとう! 難しいことはわからないが、俺は絶対デッドロードを倒して、この世界に平和を取り戻すぜ!」
 一方的にいって、ホウユウは接続を切ってしまった。
「お兄様、ミスターゼットは何と?」
 クレハ・シャモンが心配そうに兄の顔をのぞきこむ。
「うん? デッドナイトはやっぱりデッドロードだそうだ。あと、難しいこといってたけどよくわからなかったな」
 ホウユウは笑って、妹の頭を撫でる。
「やはり行くのですね」
 ミズキ・シャモンがいった。
「ああ。協力を頼むぜ。この『扉』を開けて、俺はデッド星に行く!」
 ホウユウと妹たちは、富士の樹海、デッド星と地球をつなぐ『扉』の前にたたずんでいた。
「気いつけてな。あたいら、兄ちゃんにもしものことがあったら……」
 アオイ・シャモンが憂いをおびた声で呟く。
「心配はいらないさ。俺は必ず勝利をつかんで帰ってくる。さあ」
 ホウユウは、妹たちを促した。
「はい。『夢想結界・神』発動!」
 クレハは目をつぶって祈りを捧げた。
 クレハのクロスが青白い火花、スペシャルフラッシュをまとい始める。
 千光太刀(せんのひかりのたち)の力でガーディアンそれぞれが発動できるようになった、神の光である。
 フラッシュの力で強化された夢想結界の力が、『扉』をこじ開けようとする。
「私もやりましょう。五聖獣招来!!」
 ミズキもまた、フラッシュをまとったスペシャルテクニックを発動する。
 四神である玄武、青龍、白虎、朱雀に加えて麒麟を召還し、『扉』を広げようとする。
「あたいもやるで!」
 アオイは大型のランチャーを構えて威勢よく叫ぶ。
「震えるでハート! 燃え尽きるほどにヒート! 叩きこんだるで、弾幕のビート! フルバースト・フォーメーション・オーバードライブ!」
 アオイのクロスがフラッシュを放ち、全砲門一斉射撃が始まった。
 ちゅどどどどどど!
 神の光で祝福された圧倒的な光の弾丸の力で、『扉』はついに開いてゆく。
「よし、行くぞ! 必ず戻るからな!」
 ホウユウは『扉』をくぐって旅立った。
「待て、俺たちもだ!」
 サイドカーに乗ったグレイズ・ガーナーも『扉』の奥に突進する。
 果たして、デッド星で彼らを待ち受けるものとは!?

9.ROJの秘密

 ホウユウが『扉』をくぐってデッド星に降り立ったとき、それはいた。
 光ささぬデッド星の地表の闇において、なお周囲の闇より暗い、人馬一体の騎士が。
「答えろ! お前はデッドナイトか?」
「さあな。だとしたらどうする?」
「斬る! 決着をつける!」
 ホウユウは突進した。
「てっきりあの男がくると思っていたのだがな。お前がくるとは」
 ホウユウの攻撃をあっさりとかわして、デッドロードは呟く。
「くっ、お前も抜け! 本気でぶつかってくるんだ!」
「私はもう、お前を遥かに越える存在となった。本気を出す必要などはない」
「いったな。俺は、いや、俺たちは、もういままでの俺たちではない! 新しい力を得たんだ! みろ!」
 ホウユウは祈りを捧げた。
 ホウユウのレッドクロスが、青白い火花をまとい始める。
「ほう。祈りの力か? どうやら、クロスの力の真の発動を避けるために、そのような中途半端な力を与えたようだな、日本にいるあの男は」
 デッドロードは笑った。
「何がおかしい!? くらえ、雲燿ノ太刀・天!」
 青白い火花、スペシャルフラッシュをまとったホウユウの斬神刀が天高く振りあげられ、デッドロードに向かって振り降ろされる。
 デッドロードは、避けなかった。
 ざくっ
 斬神刀がロードの肩にくいこむ。
「うおおおおお〜死ね〜!」
「その程度では、無意味だ。もっと私を強くする存在になれ!」
 ロードは斬神刀の切っ先に肩を裂かせたまま、ホウユウの身体をつかんだ。
「デッドエンドタイフーン!」
 ホウユウの全身に闇のエネルギーがからみつく。
「こ、これは!?」
 闇のエネルギーはすさまじい力の渦をつくりだし、ホウユウの身体を巻き込んで、天高く放り投げた。
「う、うわあああああ!」
 放りあげられ、墜落したホウユウの身体がデッド星の地表を転がる。
 デッドロードに払いのけられた斬神刀が、ホウユウのかたわらの地表に突き刺さった。
「なぜだ!? フラッシュ発動技も通じないなんて!」
「闇を極めた私には、神の光も通じはしない! ホウユウよ、神の力など借りなくとも、お前はもっと大きな力を引き出せるはずだ」
 デッドロードはなおも攻撃を続け、ホウユウを追い詰める。
「く、くそう! ここで負けるわけにはいかない! ここで負けるわけにはぁ!」
 ホウユウのレッドクロスが光を放つ。
「弱きままでいるなら、仕方あるまい。死ね!」
 デッドロードがひづめを鳴らしてホウユウに突進する。
「貫く悪意! 闇のきりもみロード!」
 ロードの輝く槍が、ホウユウの胸を貫くかに思えた。
 だが。
「なに!?」
「う、うおおおおお!」
 ホウユウの両掌が槍の先端を挟みこんでその動きを止めていた!
「やってやるぜ、どこまでも! 必ず、必ずお前を倒す! 必ず!」
 ホウユウのクロスが放つ光はいよいよ強くなり、光ささぬはずのデッド星の地表が煌煌と照らされる。
 キーン
 耳鳴りがして、ホウユウの意識が極限まであがってゆく。
「斬れ……」
「弱さを捨てろ……」
 デッド星までホウユウについてきた英霊の囁きが、彼をあおりたてた。
「フフフ。いいぞ。その調子だ」
 ロードの顔に満面の笑みが浮かぶ。
 楽しくてしょうがないという風に。
「いかん。フラッシュを捨て、そのような方向に力を高めていってはいかん!」
 ホウユウの携帯端末にミスターゼットの焦った声が響くが、本人には聞こえない。
「う、うおおお、うわああああ」
 ホウユウの身体が半透明になってゆく。
 抑えるものをなくしたロードの槍が、虚空を貫いた。
「こ、これは!? 肉体が消失してゆく!? 半物質化か!? いや、それ以上だ」
 グレイズ・ガーナーは冷や汗を禁じえない。
「解き放て、永劫の力を!」
 光の塊と化したホウユウの意識が、デッドロードに向かってゆく。
「ほう、これは!」
 ロードの周辺の地表が爆発し、塵を吹きあげる。
「戦艦ブライトより通信。全銀河フィールド観測機より連絡あり、デッド星地表で重力場の異常を感知。次元断層が広がってゆきます。このままだと、我々の知るこの銀河が崩壊して、他の世界と融合することになります」
 通信を受け取ったミスターゼットだが、どうすることもできない。
「ホウユウを止めることはできないのか!? リベンジ・オブ・ジャスティスは、使用する者を肉体の束縛から解き放ち、精神体だけの存在とするのだ。そして、その精神体は、この世界の法則とは別の、精神体だけの世界での法則に従って動き始める。精神体が念じるだけで、全てが実現するようになるのだ。だが、その代わりこの世界のバランスは崩壊し、精神体だけの他世界との融合が促進されることになる! この宇宙はもう終わるのか」
「死ね! 正義のために!」
 ホウユウの意識がデッドロードの破壊を念じる。
 びし、びしびし
 ロードの漆黒の鎧にひびが入り、崩壊が全身に広がってゆく。
 だが、デッドロードは平気な様子だ。
「私はお前を倒して、さらに強い力を手に入れる。その先のことは考えていないが、私は誓ったのだ。私の国を滅ぼしたあの力よりも、さらに強大な力を手に入れたいと。私はただ、力ある存在になりたいのだ!」
 デッドロードの鎧が崩壊した後から、黒い霧のようなものが現れ、ホウユウの意識へと向かってゆく。
「くっ! まだ生きているのか!」
「精神体同士で結着をつけよう! 死ね、いや、消滅しろ!」
 ホウユウとロードの意識がまっこうからぶつかりあおうとしたとき。
「ストーップ! そこまで。やめるのですぅ!」
 少女の声が、ホウユウを制止する。
「だ、誰だ、お前は?」
「ララですぅ。あなたはぁ、存界同士のバランスを崩そうとしていますぅ。これ以上はぁ、私たちも看過できません〜。そんなやり方には頼らず、別のやり方で敵を倒すべきですぅ」
「何をいってるんだ? う、あああああ」
 ララの呼びかけによってホウユウの意識がクールダウンしてゆく。
 みるみるうちにホウユウの肉体が復活。
「はっ? ここは……さっきまでいたデッド星か」
 それだけいって、ホウユウは気絶。
「しっかりしろ。ここは撤退するぞ」
 グレイズ・ガーナーはホウユウをサイドカーに乗せて『扉』をとおり、地球へ帰還した。
「次元監視者か? おのれ、邪魔をしおって。かくなるうえは!」
 デッドロードもまた肉体を復活させると舌打ちして、グレイズを追う。
「グレイズ、追ってくるよ」
「何だって」
 レベッカの指摘に、グレイズは青くなる。
「地球にまた来るつもりか!? ここはホウユウの保護が先決だ。振り切るぞ」
 グレイズたちは、『扉』を抜けた。
 直後。
 デッドロードも、『扉』を抜けて地球に現れた!

10.デッドロード、降臨

 富士の樹海に現れた、デッドロード。
「お、お兄様を、早く!」
 ホウユウの妹、ミズキ、クレハ、アオイは必死でホウユウの気絶した身体を運んでゆく。
「ふっ、お前たちをもっと焦らせてやろう」
 デッドロードは笑いながら、天高く駆けあがる。
 霊峰・富士山の山頂に、恐るべき邪悪の戦士は降り立った。
「永遠(とわ)の冷気よ、日本を包め!」
 デッドロードが槍を天高く振りあげると、すさまじい冷気がほとばしる。
 冷気は、富士山の上空から日本中に広がってゆく。
「うわー、寒いー!」
「助けてー、カイロ欲しい!!」
 日本中から、人々の叫び声があがる。
 日本のほぼ全土が分厚い冷気に覆われ、激しい降雪に見舞われた。
 湖や沼のほとんどが、氷に覆われる。
 電車はストップし、飛行機も飛ぶことができない。
 道路も凍りつき、都市の機能が停止した。
「ふふふ。さあ、どうする? このまま、冷気は世界中に広がってゆくぞ」
 デッドロードは笑った。

 アーマードピジョンの事務スタッフがミーティングに使用している、電脳チャット空間。
「デッドロードが地球に現れたか。何とかして倒さなければ。だが、どうやって?」
 ミスターゼットは苦悶していた。
 高度な知能を誇る彼でも、この状況は抜き差しならないものだった。
「武神とリーフェのグレートピジョンロボがもうすぐ帰還します。彼らの力でどうにかなるのでは」
 スタッフがいった。
「武神、か。あの男が開発に成功したのは、光と闇のクリスタルのレプリカに過ぎない。そんなものが本当に通用するのか?」
「それでは、ホウユウが発動に成功しかかった力では?」
「それこそ危険だ。デッドロードを倒せたとしても、この世界と異世界が融合して、我々の文明は崩壊する。我々は肉体を失うだろう。意識はどうだか知らないが」
 ミスターゼットは叫んだ。
「ホウユウを拘束しろ! もう闘わせてはいかん!」

「さあ、きてもらおうか」
 ホウユウの妹たちの前に、ガーディアンの医療班が現れる。
「きてもらおうかって、何や? 兄ちゃんをちゃんとみてくれるんやろな?」
 アオイはいぶかしげに首をひねる。
「大丈夫だ。きみたちの兄貴には、しばらく静養してもらおう。どこにも出られないように、大切に保管するよ」
 医療班は、怪しい笑みを浮かべながらホウユウを運んでゆく。
「本当に、大丈夫なのかしら?」
 クレハが首をかしげた。
「お兄様を、監禁するつもりでは?」
 ミズキも不安を禁じえない。
「もしものときは、多少手荒なことをしてでも、兄ちゃんを取り返すしかないで。でも、いまは、治療が先決や」
 アオイは決意を秘めた目でいうのだった。

 アメリカ合衆国、ワシントン、ホワイトハウス。
「アワ・プレジデント! タノモー!」
 ジュディは、ホワイトハウスの扉を叩いた。
 その後から、おっかなびっくり滅入芸太郎がついてくる。
「やれやれ。本当にくるとは」
 ホワイトハウスの扉が開き、大統領が現れた。
「やあ、きみたちが来るのは聞いていた。CIAからの連絡でね」
 大統領は、ニカッと笑った。
「うわ、まさか本当にお逢いできるとは。大統領、ア−マードピジョンの存在をアメリカが認めるわけにはいかないのか? 日本の国民の多くは、平和維持にガーディアンの力が必要だと信じている」
 滅入氏は熱っぽく語った。
「その件は、また後で話そう。結論を急ぐ必要はない。いま、先に検討すべき課題は、奴だ」
 大統領は、ホワイトハウスのテレビを指さした。
 そこには、デッドロードの力で冷気に覆われた日本の都市の姿が。
「奴、デッドナイトこそ、我が国が最大の脅威と目する存在だ。そう、デッドクラッシャーズや、ガーディアンなどよりも遥かに危険な存在だ。いま、奴を駆逐する力としてなら、ガーディアンにも協力を依頼したい」
「なるほど。ですが、その後は? 彼らを拘束し、処刑するつもりですか」
「それは、彼らの選択だ」
「というと?」
 大統領は、明確な回答は避けた。
 滅入氏とジュディに背を向けて、地球儀をまわす。
「きみたちは、聞いたことがないかな? NASAが、スペースコロニー計画を進めていることを」
「コロニー!? では、本格的な宇宙開発を」
 滅入氏は目を丸くした。
「闘いが終わった後、ガーディアンたちが地球上にとどまるというなら、レッドクロスは没収しなければならないかもしれない。だが、米国のために協力してくれるなら、地球以外の場所で活躍の場を与えてもいい」
「ま、まさか……だが、彼らがそんな仕事をするとは、思えない!」
 戦慄する滅入氏の横で、ジュディはぽかんとしていた。
「オー、ナニイッテルカ、ヨクワカラナイネ! デモ、ロードヲタオスタメニ、イッチダンケツ、オッケー! プレジデント、ミンナデ、ワーット、ファイトシマショウ!」
 ジュディはガッツポーズをとった。

 どうすれば、デッドロードを倒せるのか。
 そして、闘いが終わった後、ガーディアンたちはどうなるのか!?

(第3部第2回・完)

【報酬一覧】

高田澪 2、000万円(シャトルを円盤の攻撃から守る)
アンナ・ラクシミリア 5、000万円(ゲロン参謀を倒す)
武神鈴 5、000万円(デッドダゴンを破壊する)
マニフィカ・ストラサローネ 1、500万円(デッドトド、デッドホエールMk.IIを倒す)
アリー・ナセル 1、500万円(再生超甲人機3体を倒す)

【マスターより】

 今回も遅れてしまって申し訳ありません。さらに多忙でお休みを頂くことになって申し訳ありません。次回が一応最終回ですが、その後、後日談的シナリオをやることも考えています。まだ秋芳さんに相談していませんが(汗)。それでは、お花見でアニソンよろしく! って、みんなに「リア遅らせるんじゃねー!」と殴られるかも。本当にすみませんでした。
代表秋芳より補足:「後日談シナリオ」運営は確認できてます♪
ぜひご予定に入れておいてください☆