いつの日かムーア世界が平和になる日……


 ムーア世界中の温泉をつかりに自由に動き回る幼い少女がいた。まだ幼いながら巨乳を持つ少女の名は、アオイ・シャモン。
「は〜…やっぱここはお約束の入浴シーンやな」
 湯に浮かぶ白い肌をさらす中、その姿をぞろぞろと見に来るのはまだ温泉という効能がよくわかっていないムーア世界の人々だった。大衆の視線にさらされても、剛毅な少女は気にせずつかる。ゆっくりと手足を伸ばして。
「あー、いいお湯やなぁ! けど、実家の温泉の効能には『巨乳になる』ってのがあるんやけど、この温泉はどないやろか」
 平和な日々の訪れと共に、アオイは街にもたらす経済効果を狙って地質調査と地道に採掘作業にあけくれた日々を思い出す。見つかればすぐに故郷の和風温泉宿を建て、温泉まんじゅう、温泉卵、地酒をメニューに加え、宣伝のために温泉のことをリクナビに流したのだ。けれど、娯楽に関しては無知といってもよいほど過酷な生活をしてきたムーア世界の人々にとって、その価値が理解できるようになるまでは遠い道のりであったのだ。
『デモンストレーションなら、やっぱ露天風呂やろなー』
 採掘後も温泉啓蒙に勤めるアオイ。その努力が実る日も近いだろう。

 
 蛇足となるが、異世界人たちの中で自世界に戻りたい者は、いつでも戻れるようになっている。
 それは、ムーア世界を閉じる要がラハとなったことで、異世界乙女リリエルの要請によって可能となったことだという。ただし逆はありえないので、多くの異世界人たちが各々の心残りがなくなるまではムーア世界に留まったという。


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