ゲームマスター:田中ざくれろ
【シナリオ参加募集案内】(第1回/全1回)
★★★ 家屋に囲まれた薄灰色の空。 今日もある町の裏通りで、その町に住む子供達が集まって遊んでいた。 三十人はいるだろう。 男の子。女の子。人種や種族や宗教も関係ない。共通点と言えば、特に裕福とは言えない家庭の者達だという事か。まだ職に就いていない子供達が裏通りに放置された壊れた荷車や樽を椅子やテーブル、踏み台の代わりとし、昔から伝統として受け継がれた様な児戯で時間を潰していた。 人形遊び。ままごと。囃子歌を歌いながらの縄跳び。 男の子達が樽をゴールに見立てたサッカーに似た競技『バレルボール』で、古い布を集めて固めて作ったボールを蹴り合うのもよくある光景だ。バレルボールの興奮は血気の盛んな少年達を乱闘へといとも簡単に導くものだった。 そんな日日の中で、今日は珍しくリーダー格の少年を中心にし、活発な議論を交わす。 それは言ってみれば、青空学校の授業の様なものだった。 わいわい騒ぎ立てる子供会議の話題は『将来、どんな職業になりたいか』だった。 議論はいつにともなく子供らしくなく白熱して、舌足らずの声が話題を十分以上にかき混ぜる。 ところがディスカッションに慣れていない子供達の会議の内容は、大勢が意見を交わす内にどんどんずれていく。『将来、どんな職業になりたいか』が様様な意見で吟味される内に『どういう人が理想の大人か』へと変わってしまった。 更に子供達は壊れた大テーブルを囲みながら、雀の群が騒ぐように唾を飛ばすのをやめなかった。このテーブルに興味を持った子供が年も様様に集まってきて、ついに町中の子供達が集まる大会議となる。 話題は議論の白熱と共にシフトしていき『どういう人が理想の大人か』が『どういう国が理想の国か』へ、『どういう国が理想の国か』が『大人になったらどんな国に住みたいか』へ、『大人になったらどんな国に住みたいか』が『オトギイズム王国は自分達が大人になった頃、どういう国になっているか』へと変化していく。 議論は二時間も白熱した。 疲れ知らずの子供達はついに話題を『千年後はどんな世界になっているか?』にまで辿りつかせた。 「千年後って?」 子供の一人がリーダー格のジョルジュに訊く。 「千年後の世界だよ!」 「千年後の世界って想像つく?」 「未来すぎて想像つかねーよー」 「‥‥俺が思うに、人間は千年も経つと人間はすっごく変わってると思うね」 「例えば?」 「例えばだな……人間は空を飛べる様になってるんだよ。鳥みたいに」 「妖精みたーい」 「妖精って、口で『ぱたぱたー』って言ってる間だけ羽で空を飛べるってホントウ?」 色色な子が口を挟み、小さな女の子が話を脱線させそうになると一人の少年が手を挙げる。 「はいはーい! 千年後の未来には世界から戦争なんてなくなって、すっごく平和になってると思いまーす」 「千年後には病気なんか何でも治せる薬が出来てると思うなー」 「全ての美味しいフルーツが生る、究極の木が発見されてるんじゃないかな」 「きっと人間は皆、海の中でも息が出来る様になって、海の底でも生活するようになってるよ」 「馬なしで走る馬車とか発明されると思うな」 「馬や犬と喋れるようになってるんじゃない?」 「兵隊は何でもスパスパ斬れる剣持って、背の高さが二十mくらいになってるよ、きっと」 「世界を滅ぼせる究極魔法で人間が全て滅んでるかもよ」 「悪の変態達が世界を支配するんだ」 「みんな、お菓子のおうちに住むのー」 子供達は想像力の限りに意見を出した。結論のない話題をいじくって頭を使うのは、それなりにとても楽しい時間だった。 ふと子供の一人が大人達の意見を聞いてみたい、と呟いた。 「冒険者のおじさんやおばさんに話を聞いてみないか?」 「なんで冒険者なんだよー!」 「大人達がよく言ってるじゃないかぁ。『困った時にはとにかく冒険者に任せよう』って」 「別に困ってないじゃん、俺達」 「でも親父やお袋とかより、面白い意見聞けそうじゃないか。冒険者やってるって事自体、ぶっとんでるんだから」 ジョルジュが木づちでテーブルを叩いて、裁判官の様に皆を黙らせた。 「よし! 冒険者に依頼しようぜ!」 こうして子供達は『千年後はどういう世界になっているか』の意見を訊きに、冒険者達に依頼する事に決めた。 子供達は冒険者達を雇うために小使いを集め合った。皆の分を集めると少なめの依頼料分くらい(?)にはなった。 総額三千イズム。これを千年後の世界を解説してくれる冒険者に山分けしてもらうのだ。 かくして『冒険者ギルド』に依頼しに、ジョルジュを先頭に子供達が長い列を作って行進する。 ★★★ |
【アクション案内】
z1.子供達に『千年後の世界』を語る。 z2.子供達と一緒に遊ぶ。 z3.その他。 |
【マスターより】
★★★ 大雑把に見積もって、中世風のオトギイズム王国の千年後はプレイヤー諸氏の住む時代くらいですかねー……もっと未来か? 文明世界から来たPCは自分達の住んでいた世界を語るのもいいかもしれませんね。尤も子供達に『自動車』『スマホ』『原子炉』『DNA』だのの言葉を直接語ってもチンプンカンプンでしょうから、上手く噛み砕いて説明しなければならないでしょう。 いっそ、自分で考えためちゃくちゃな未来予想を考えるのもアリです。 と、いうか、出来るなら皆さんには想像力の翼を是非羽ばたかせていただきたいところです。 では、皆様によき冒険があります様に。 ★★★ |