ペンギニック・ワールド

ゲームマスター:田中ざくれろ

【シナリオ参加募集案内】(第1回/全4回)

★★★

 港町『ポーツオーク』の港に大型船が接舷した。
 タールの塗られた黒い木造船。船名の脇に描かれた白いペンキの文字が『エスマ・サーカス』の所有船だという事を示している。
 朝霧の立ち込めるオレンジの朝景の中で、黒いシルエットとなっているサーカス団長『エスマ・アーティ』はオーナーとして、その船を出迎えた。
「さて、これで我がサーカスにも大きな呼び物が一つ加わったな」
 エスマ団長は葉巻の端をシガーカッターで切り落としながら呟く。
 実はこの船が行ってきた島は海図には載っていない。
 どの航路からも外れた所にある、最近二十年以内に火山活動によって生まれた島だ。
 そこにいつのまにか密林が生まれ、何処から現れたか解らない生物が棲みついた。
 その生物をある人間達はこう呼んだ。
 『恐竜』。
 ドラゴンさえいる、この『オトギイズム王国』でその恐竜は一部羽毛の生えた姿で、異世界では図鑑等でよく知られた姿で原生していた。
 エスマ団長はその恐竜の内『T(ティラノサウルス)・レックス』として知られる肉食の大型恐竜を一頭、極秘裏に集めた冒険者達によって捕獲、この町まで運んできたのだ。
 用途は勿論、見世物だ。
 身の丈七mはあるというその大型恐竜を船倉の大型檻につないであるはずだ。
 後は薬物によって眠らされているはずのそのT・レックスを檻ごと運び出す手順。
 実にこの計画は多大な金と時間と労力をかけた。
 以前、前衛的な広告宣伝を失敗したエスマ・サーカスとしては久久な新興業だ。
 これに失敗したら事業としてのサーカスはおしまいになるかもしれない。しかし、これに成功すれば他の同業者に対して非常なアドバンテージを得られる。そこまでこの見世物に賭けていた。
 心躍る気分で、エスマは船倉の扉が開くのを待った。内部の乗組員によってそれが開かれるのを。
 ……紫煙をくゆらせながら、どれだけ待った事だっただろう。
 おかしい。
 いつまで待っても船倉が開かない。
 それどころか、乗組員の姿が何処にも見えない。この船を波止場にもやい綱で船をつなぐ人員が現れてもおかしくないのに。
 エスマ団長は他につきそわせていたサーカス団員と共に船に乗り込む事にした。
 甲板は海面に近い。
 乗り込むと、団員達は船倉を覗き込める甲板床の格子状になっている大窓を覗き込んだ。
 すると船が揺れた。
 波ではない。船倉内で暴れ始めたものの仕業だった。
 突然、甲板にはめ込まれた格子窓が壊れ、中のものが大跳躍で飛び出した。
 飛び散る木片の中、しっかりとした筋肉質な二本脚で甲板を捕らえたものは。
 T・レックス。
 身の丈七mの黒色と白色の毛に覆われた肉食の大型恐竜。
 それが甲板に乗ると揺れる船上で大きな咆哮を挙げた。
 そして、さらに大跳躍してポーツオ−クの港へと上陸した。
 波止場にいた見物人達が悲鳴を挙げ、右往左往して逃げ回る。
 T・レックスは倉庫街を抜け、人通りの多い宿屋街へと走り出す。唸り、走ると粘液状のよだれが鋭い凶器である牙列から糸を引いた。
 ポーツオークの人人はパニックになった。
「そ、そんな……」
 船上で朝の街のパニックが広がっていくのを見ながらエスマ団長は呆然と呟く。
「船のあちこちで乗組員が全員、食い殺されて死体が散らばっていますぜ!」
 船に乗り込んで中を見回っていたサーカス団員が船の各所で声を挙げた。
 とんでもない騒動になった、と団長は面子が潰れたどころではないこの騒動で出迎え用の派手な服を着た身を震わせた。
 サーカスの見世物は、見世物にならない内に朝の大事件となった。
「出来るならば、その恐竜は殺さずに捕獲してくれ……! 大事な出し物なんだ……!」
 このパニックの中、果たしてエスマ団長の声は、思いがけず町中でそんな大物と戦う事になった衛士達や冒険者達に届くか。
 この騒動の中で皆は気づかない。
 船の中腹にある荷の取り込み用の戸が内部より開き、大勢の『何か』が朝霧の中で港町へと侵入していく姿を。
 それは港にある運河に走り込み、下水道の中へと消えていった。

★★★

【アクション案内】

z1.T・レックスを捕獲、もしくは退治する。
z2.船から逃げた『何か』を調べる。
z3.船の中を調べる。
z4.その他。

【マスターより】

★★★

 『ジュラ△ックパーク2 ロスト▽ールド』という映画を観た事がおありでしょうか。
 あの映画は今回のオープニングでも書かれた様にティラノザウルスが町に上陸して暴れるのですが、それに関して重大な伏線が一つ、回収されていません。
 それは「T・レックスを運んできた船の乗組員を皆殺しにした犯人が何ものなのか?」なのです。
 てっきり3作目でその謎が明かされて伏線が回収されるのだと思っていたのですが、観た方はご存じの通り、3は全く別の話です。
 今回のシナリオは私のその不満から発想を得たものです。
 勿論、シナリオは全く私の解釈であり、映画での真相を当てているとは限りません。
 後半は思いがけない方向へ話が飛ぶ予定です。
 恐竜っていいよね☆
 そしてペンギンも☆
 では、次回にもよき冒険があります様に。

★★★