ゲームマスター:田中ざくれろ
【シナリオ参加募集案内】(第1回/全4回)
★★★ ある日、まるでふらりと立ち寄る様に一人の猿男が『冒険者ギルド』に現れた。 「よお」 その冒険者ギルドは彼の事をまだ憶えている者が沢山いて、訪問はあまり好意的に受け取られなかった。 そいつ、猿男『エイプマン』は以前、自分が謎の襲撃者に狙われているという名目でギルドに護衛の依頼をしてきた事があったのだ。 しかし、その謎の襲撃者などは嘘っぱちで、自分が虐待した相手に復讐を受けそうといった案件を、さも自分が無実の被害者の様に装って、いけしゃあしゃあと真実を隠して冒険者達をその復讐者と戦わせたのだ。(参照依頼『チェーンソーに心奪われし者達』) 「どうやら、俺にいい印象を持ってない奴が多そうだな」エイプマンはその猿面を笑いながらしかめてみせた。頭のてっぺんが地球の中世修道僧のトンスラの様に禿げている。「今じゃ、俺は心を入れ替えたんだ。あの復讐者のカニ男の『アッシュ』とは今じゃ友達づきあいだぜ。それに俺がここに来たのはそのアッシュに関しての事なんだ。……お願いだ。アッシュを捜してくれ」 受付嬢にエイプマンの言う事には、アッシュは二週間ほど前からいきなり行方が解らなくなったらしい。 三日の旅に出て家を空けるのも、最近ではエイプマンに一言言ってからというのが普通になっていたという。なのに黙って消えてから二週間だ。 「家の中をよく見るとどうやら突然さらわれた様な痕跡があってな……いや、これは俺がそう思うだけでそうじゃないんかもしんねえけども。『魔法の如雨露』だとか金目の物は残ってるしな。……ちょっと報酬金額は安いが、アッシュがどうなってるか、捜してきてくんねえか」 依頼報酬は一人頭、五〇〇〇イズムだと言う。 人間型のカニ男に右手だけがチェーンソーの義手になっているという姿のアッシュだが、勿論、以前のあの復讐以来は物騒なチェーンソーを人を襲う武器として使ったりはしていない。 もしかしたらその特殊な道具を持っている風体だけに、事件に巻き込まれたのかもしれない。 「というわけで、依頼を頼んだぜ。あ、俺とアッシュは前と同じあの村にまだ住んでるから」 ★★★ 『オトギイズム王国』に最近、おかしな噂が広まっていた。 王都『パルテノン』を取り囲む外壁の北東によりかかる様にしてある『大牢獄』。 その付近に奇妙な二人組が目撃されている、と。 それは医療用の白衣を着た男と、黒い服の看護婦。 奇妙だが彼らが特に何かをしたという話は聞かない。 彼らは大牢獄の周囲をうろつき、その強固な警備をただ観察しているだけだという。 少なくとも今のところは、だ。 ★★★ 未明に突然、ギュイーン!というエンジン音とバズ音が響き、暗闇に盛大に火花が散った。 それは大牢獄の閉ざされた金属製の大門をやすやすと切り裂き、大型錠を壊してあっさりと重い門を倒壊させた。 詰めの一〇〇人もの衛士達が槍を手に次次と駆けつけるが、大牢獄の中に侵入してきた十数人の骸骨模様の黒タイツの男達にあっさりと排除された。 その黒タイツの男達とよく似た男を衛士達の何人かは見た事があった。 以前『シン・仮面バッター』騒ぎの時に見かけた悪の組織『スリラー』の戦闘員達と似ている。全てが似ているわけではないが雰囲気が同じだ(参照依頼『バッタもの奇譚』)。 「イーッ!」 その戦闘員達は一人で五人の衛士と互角に戦えるだけの戦闘力を持っていた。素手だったがパンチやキックといった単純な攻撃で槍を折り、革鎧の衛士達に重い打撃を見舞っていく。倒れた衛士にとどめを刺す残酷さも持っていた。 一斉に突き出された十数本の槍の長柄を全部まとめてチェーンソーで両断した後、その主犯格の男は大牢獄内部の中庭に進み出てきた。 その中庭の周囲の城壁には矢を撃つ為の銃眼が何十か所も取り囲んでいて、一斉にその男めがけて強力な弩弓が放たれた。 一瞬でその男の身体は矢ぶすまとなったと思えた。 が、その装甲は強固に全ての矢をはね返した。弩弓といえば金属製の鎧さえ貫通する強力な射撃武器。それをはね返すとは尋常な防御力ではない。 チェーンソーを右手の義手としたサングラスのカニ男は牢獄内部の大扉をも切り裂いて、戦闘員と共に内部に堂堂侵入した。 未明の突然の騒動に囚人達が沸いた。金属製の皿をスプーンで叩いてわめきたてる。 「イーッ!」 カニ男や戦闘員達はかかってくる残りの衛士達をあしらいながら、囚人達の牢の錠を壊して回った。 コソ泥痴漢から凶悪犯まで様様な囚人が牢獄を脱出しようと開放された門まで走る。 「囚人共! もし、仲間を必要とするならば我ら『デスリラー』を探すがよいっぺ!」カニ男が通廊をすれ違う囚人達に叫んだ。 カニ男達は大牢獄の奥まで来ると以前スリラーを率いていた黒幕である『元ジャカスラック公』の家族をそれぞれ収めた牢の鍵を壊して回った。 「以前、スリラーをバックアップしていたというその手腕、我がデスリラーでも発揮してもらうべ」 恐らくは彼が襲撃の最重要目標だったのだろう、カニ男と戦闘員達は元ジャカスラック公を脱獄させると共に大牢獄を撤退した。 やがて王城より一〇〇〇人もの衛士が駆けつけてきたが、デスリラーを名乗った者達は逃亡した後で、パルテノン内を逃走する脱獄囚人達の確保にも人手をとられ、謎の襲撃者達は一人も確保出来ずにその逃走を見失ったのだった。 ★★★ 二日の内には脱走した囚人達の三分の二が再び捕らえられたが、三分の一がまだパルテノン内に潜伏している事となる。 都市を囲む城壁は門を固く閉ざし、完全武装した衛士達による検問は水をも漏らさぬ厳しさで都市外に逃走しようとする囚人を捕えていった。 三日の内には九割の囚人が再び捕らえられたが、いまだ逃走中の者にはカニ男と戦闘員、元ジャカスラック公といったデスリラー関連が含まれていた。 ここでパルテノンの冒険者ギルドに『パッカード・トンデモハット』国王直直の冒険依頼が発布された。 『デスリラーと名乗る犯罪組織の犯行を未然に防ぐ為、それを調査し、全構成員を確保、または討伐せよ。依頼報酬・五〇〇万イズム』 彼らはこのパルテノン内に依然潜伏していると思われたが手がかりがない。 果たしてデスリラーとは何者なのか。何を企んでいるのか。 五里霧中の中でスリラーの恐怖を思い出しながらパルテノンの一般市民は怯えていた。 そして、それどころかちっちゃな騒ぎがパルテノンに起こっていた。 市井の噂によればパッカード国王がパルテノンのあちこちでせこい小騒ぎを起こしているというのだ。 突然、供もつれずに一人で町に現れた国王は市場からりんごを盗み、老人から杖をとりあげて折り、砂場で遊んでいる子供からアイスを奪って口に押しつけ「ほら、アイスが好きなんだろう。食べろよ。食べすぎて死んじまえよ」など罵詈雑言を放って暴力をふるうという蛮行を行っているというのだ。 噂ではその国王は抜身の剣でも隠しているのか、右手には何か大きな物を握った手を布を巻きつけて隠しているという。 はたしてこの小騒ぎも何か関係しているのか。 トンデモハット王国に混沌の嵐が吹き始めようとしていた。 ★★★ |
【アクション案内】
z1.デスリラーを捜し出し、戦う。 z2.エイプマンの依頼を受け、アッシュを捜す。 z3.白衣の医者について調べる。 z4.その他。 |
【マスターより】
★★★ 以前退治した悪の組織『スリラー』が『デスリラー』としてパワーアップし、帰ってまいりました。 何処かで見た事あるカニ男を始め、様様な怪人が悪の計画を行ってくる予定です。 基本的に気分は『仮面バッター』です。 『仮面〇イダー』を観ている時の気持ちでプレイしてもらえれば幸いです。 では次回も皆様によき冒険があります様に。 ★★★ |