『ロイヤル・ウエディングは踊る』

ゲームマスター:田中ざくれろ

【シナリオ参加募集案内】(第1回/全3回)

★★★
 謹啓
 青葉若葉も一段と美しく映え、さんさんと輝く空も澄み渡るこのよき時季、皆様にはますますご清祥の事とお慶び申し上げます。
 この度、私達は結婚式を挙げる事になりました。
 つきましては日頃お世話になっている皆様に お集まりいただき、豪勢な披露宴を催したいと存じます。
 ご多用中、誠に恐縮ではございますがご来臨の栄を賜りたく、謹んでご案内申し上げます。
 敬白

 吉日
 ハートノエース・トンデモハット
 シンデレラ

★★★
 デザインが世界の理である『オトギイズム王国』。
 旧ジャカスラック領である『グリングラス領』を治める、第一王子『ハートノエース・トンデモハット』とその婚約者である『シンデレラ・アーバーグ』が結婚するとの話が王国中に伝わった。
 結婚式は一ヶ月後、グリングラス領の城で行われるという。
 勿論、王族は皆、出席するだろう。この王都からグリングラス領への王族の大移動が行われる事になるのだ。
 そして各町の『冒険者ギルド』に王家から直直の依頼が二枚、依頼書となって大掲示板の一番目立つ所へ貼り出された。
 二枚の内容は意味的には同じだ。
 まず、一枚はこの結婚式への三枚の招待状を『獄門島』にある『真理王の国』の『桃姫』、同じく『雷鬼の国』の『むらさき姫』、そして『月』にいる『かぐや姫』に渡し、彼女達を連れて護衛し、グリングラス城での結婚式に参上せよ、という依頼だ。報奨金は冒険者一人につき三十万イズム。
 獄門島は以前、島内の抗争で桃姫をさらったむらさき姫から彼女を救出しようという冒険の舞台となった場所だ。この抗争、誘拐劇の黒幕こそかぐや姫で、この冒険に参加した冒険者者達は最終的にかぐや姫とその親衛隊である五人のバニー戦士に勝利して、島と月に平和を取り戻したのだ。
 姫達はもう敵対はせず、獄門島も平和に治まっているはず。
 その三人の姫を結婚式に招待しようという依頼だ。
 恐らく状況的にはまず桃姫とむらさき姫に招待状を渡した後、むらさき姫の所有するUFOで月へ行ってかぐや姫に招待状を渡すという道のりになる。
 その三人の姫を連れてグリングラス城へ行くのだ。
 そして、もう一枚も結婚式に客人を招待しようという依頼だ。
 だが、この招待状を渡す人物のいる場所は海底だ。
 招待する相手は二人。
 『竜宮城』にいる『乙姫』と『人魚王国』の女王だ。
 この二人は第二王子『バラサカセル・トンデモハット』が行方不明になった事件で、この王国の冒険者と関わっている。
 以前は伝説でしかなかったこの竜宮城と人魚王国が戦争となったが、その陰謀を企てた者は冒険者達の活躍によって改心し、今は直接的な国交はない。
 しかし陸上に招待しようとするなら難易度は高い。
 乙姫は『時の結界』の中にこもって竜宮城から出てこないはずだし、地上へ上がる事が出来ない魚尾の人魚も安全に上陸させる方法から考えなくてはならないだろう。
 むしろ乙姫も人魚の女王も自分達の名代となる代替人を結婚式に向かわせるだろう。その者達はより王国の冒険者と縁が近い者を送らせると思うが、それには招待状を渡しに来た冒険者達の意見も反映されるのではないか、と推測される。これも報奨金は冒険者一人につき三十万イズム。
 このような依頼は冒険者達を騒がせた。
 実はこの時期、この依頼とは別に結婚式に関する大きな噂、いや噂というより確実性の高い情報が巷に流れている。
 この異世界に大大的に出現し、しばしの滞在の後、修理を完了して旅立った船長三千メートルにも及ぶ超弩級硬質飛行船『スカイホエール』内に収まった巨大学園都市『私立羅李朋学園』がこの王国に再訪するというのだ。
 この学園内では旅立ち前の当時、人ならざる情報体、自我を持つ人工知性『亜里音オク』が生徒会長となる事で学園生徒が実質的に精神支配されるという大事件が起こったはずだ。結局、生徒会長は失脚し、その自我は破壊されたと聞くが、現在は新生徒会長によって平和的に施政されているという話だ。
 オトギイズム王国に多くの学園生徒を新冒険者として放逐した、この学園の事は王国民の記憶に深く残っている。また彼らは王国の牢獄に『偶像崇拝禁止教団』、通称グスキキというテロリストを禁固した事でも王国民の記憶に刻まれている。
 その学園生徒会長が結婚式に参加するという。
 不確かな情報では以前、アンデッドに支配されていた『バッサロ領』にこの学園都市が永久的に錨を降ろす事が許可されたとも言われる。国王『パッカード・トンデモハット』が元バッサロ領を『羅李朋学園都市領』とし、この領地を復興させようとしているというのだ。
 まだスカイホエールが再訪するのは一ヶ月後だというので、情報は不確かな先走りにすぎないかもしれない。
 しかし新生徒会長が結婚式に参加するというのは確実性が高いらしい。
 とにかく、オトギイズム王国のロイヤルウエディングが行われるというのだけは全く確実だ。
 この依頼を受ける者が誰だとしても、国賓に招待状を届けるのは難儀な旅となるだろう。
 大掲示板の依頼書を読む冒険者達には空耳のウエディングマーチが聴こえ、空想に豪勢な披露宴を思い浮かべているだろう。
 しかし。
 ……何事もなければいいが。
 この大慶事に皆は何故か、小さな不安を胸に疼かせるのだった。

★★★

【アクション案内】

z1.桃姫、むらさき姫、かぐや姫に招待状を届け、旅を護衛する。
z2.乙姫、人魚の女王に招待状を届け、旅を護衛する。
z3.その他。

【マスターより】


 えー、まあ、おめでたいシナリオです。
 届けるのにとんでもない苦労がいりそうなNPCに招待状を渡す旅です。PC達には以前のシナリオで出会った懐かしのNPC達に結婚招待状を渡し、会場までの旅を護衛してもらいます。
「あ、そういえば前のシナリオであんな事をする予定だったの、忘れてた!」
 という方にはちょうどいいシナリオかもしれません。
 尚、このシナリオに関連する過去シナリオは以下の通り。
 『毛皮の靴』
 『姫! 姫!』
 『海底大戦争』
 『出現! 私立らりほう学園』。
 無理強いはしませんが、あの時に起こった事を思い返したい人は再読した方がいいでしょう。
 では次回も皆様によき冒険があります様に。