ゲームマスター:田中ざくれろ
【シナリオ参加募集案内】(第1回/全3回)
★★★ ある日、雲を裂いた二つの流れ星が滑る様に流れ、『オトギイズム王国』の紺碧の夜空を横断していくのが空を見上げる多くの国民に目撃された。 一つの星は赤、一つの星は青で、赤い星は青い星の十倍以上の輝きと大きさがあった。『火球』と分類されてもおかしくないサイズだ。 素直に流れていく赤い流星に比べ、青い流星はそれにまとわりつく様な奇妙な軌道を見せていた。 そして、それらは北方の山岳地帯へと消えた。落ちたのだろう。しかし激突の音等は一切なかった。 次に現れたものが遠い見物人達の度肝を抜いた。 山影から二人の姿が立ち上がった。 それは山に比べて頂上には届かないけれども、遥か何キロと離れていてもしっかり視認出来る巨大な人型だった。 一人は均整のとれた銀色に輝く巨人だった。全身が発光し、山の大きさと比べてみれば四十メートルはあるだろう。その表面には赤く太いラインが模様として各所にはしっていた。下半身は夜の山の稜線に隠れている。 もう一人は銀色の巨人の発光に照らされ、不気味な異形ぶりを夜景に浮かび上がらせている。まるで昆虫のセミの様な顔を持つ細身の身体は有機体とメカが混じっているかの様で、両腕の先が巨大なハサミ状になっている。 異形の太い笑い声が山の木霊を引き連れて、遠い『モータ』の町にまで響いてきた。 銀色の巨人は鋭く短い叫びを放って、それに応えた。 至近距離で向き合う二人の巨人の戦いが始まった。 異形の巨人の両ハサミが前に向けられ、そこから幾条もの火箭がほとばしった。 銀色の巨人はそれを軽軽と側転でかわした。 火箭は山に当たって小爆発する。 銀色の巨人のチョップが異形の胸に炸裂する。その巨体に見合う以上の質量が一撃として激突した様だ。 異形はそれによって大ダメージを受けた様で、ふらつきながらも右のハサミから赤い光線を放つ。 銀色の巨人はその光線を浴び、苦しみの叫びを漏らした。倒れそうになり、一旦、片膝を着きながらもすぐに立ち上がる。 この一連の交戦で互いのダメージは互角の様だ。 二人の巨大な格闘戦が続く。 パンチや蹴り。思ったより長引きそうな戦闘で、互いの身体は山に幾度もぶつけられ、ダメージの蓄積が見物人にも解る。ぶつかる度に地響きが見物人を襲う。しかし、銀色の巨人が地面にぶつかる時の衝撃は、異形の巨人がぶつかる時に比べ、はるかに小さかった。 三分ほどたった頃だろうか。 銀色の巨人の胸の中央に半ばまで埋め込まれた様な青い水晶球が赤く変わり、赤い光が点滅を始めた。 それを見た異形の巨人がラッシュをかけるかの如く、両ハサミを突き出しながら銀色の巨人に向かってダッシュした。笑い声が大きく響く。 銀色の巨人は片膝を着いて迎え討つ。点滅する胸の水晶球の前で両手を十字に組んだ。 途端、その十字に組んだ手から、銀色の光の粒子群が猛烈な勢いで発射された。 それは異形の巨人の正面に命中し、凄まじい輝きの爆裂を生み出す。 銀色の巨人の発光は、その発射した光線に変換されていく様に暗くなっていく。 巨人の輝きが消える頃には、異形の巨人はエネルギーの全てを受け止めた様に熱く膨れ上がり、その全身が大爆発を起こした。噴き上がる爆炎。近くの山に降り注ぐ大小の破片は地面に着く前に全てが燃え尽きる。 今はもう銀色の巨人の姿もない。真球の赤い水晶球のみが巨人の胸にあった位置に浮かび、戦闘後の静寂に身を任せていた。 と、その赤い光の水晶球はまるで弾かれたかの様にその場から急に飛び去った。モータの近くの山まで来ると山肌の森に紛れる如く消える。 そう言えば、最初の赤い火球の方はどうなったのか。 オトギイズム王国の国民はその巨大な火球がどうなったかを見つけられず、ただ北方の山に隠れて消えたのだけを知っていた。 突然の非日常な出来事に見物人と化していた国民達はしばらく超都市的な規模で騒めいていたが、やがて夜もふけ、新たな展開がない事には興味が続かず、やがて徐徐にわが家や酒場へと帰り、新たな朝を待つのみとなった。 やがて朝日が昇り、昨夜の事が夢であったかの様に日常的な一日が始まった。 しかし昨夜の事はその日、一日の活発な噂となっていた。 ★★★ 正午ほどに一人の少女がモータの町の『冒険者ギルド』を訪れた。 モータは牧畜が多い、山の多いのどかな町だ。 その十四歳ほどの赤毛の少女は、すっかり疲れ切った身体を見た事もない衣装で覆っていた。 衣装、なのだろう、その姿はまるで裸の身体に密着した様な青いフィルム状のスーツで、首から下をすっかり包んでいた。指から足先まで全て一体の青。ボディラインは丸出しで何かを隠している様な凹凸はない。 その少女は受付嬢の所まで来ると、左手に持っていた赤い小さな水晶球を彼女の前にかざして何事かを話しかけてきた。だが、それは冒険者ギルドの受付ホールに集まっている雑多な冒険者の誰も聞いた事のない言葉だった。 「依頼をお願いしたい」 赤い水晶球から皆が解る声が伝わってきた。若い男の声だ。 「昨晩、空から降ってきた大きな『赤い火球』が今、何処にあるかを調べてほしい。この土地の北の方の山にあるのは確からしい。その詳細を確認して私達に伝えてほしい」 受付嬢は冒険依頼の用紙にその言葉を記入した。そして訊いた。 「あの、お名前は?」 「ウルティマン」若い男の声はそう言ったが、すぐに少女に囁かれ、訂正した。「いや、キリ。赤毛のキリだ」 「報酬は?」 「報酬……」若い男の声は困った様に黙り込んでしまった。 少女がその水晶球に、また誰にも解らない言葉で囁いた。 「報酬はこの星での希少鉱物ではどうだろう」若い男の声。「ダイヤモンドならば百グラムほど用意出来るが」 少女が受付嬢の前で握っていた右手を開くと、そこには見物人達がため息をつく様な美しい輝きが少量、手に載っていた。 受付嬢がギルド内にいる鑑定人に渡そうとしてそれを受取ろうとすると、少女はダイヤを持つ手を握って遠ざけた。 「残念だが、この段階で渡すわけにはいかない。全ては成功報酬だ」 「契約料を前払いしていたただけないのならば依頼は成立しません」 受付嬢はきっぱりと依頼を断った。 少女は赤い水晶球を見つめながら困った表情をした。 「……それでは仕方ない」若い男の声。「念の為、一週間後にまたここに来る」 そう言って彼女は冒険者ギルドを出ていった。 何にせよ、目立つ姿だ。 その姿はモータの町外れまで大勢の通行人や屋台の人達に目撃された。 やがて少女は町を出、あの赤い水晶球が消えた山の方へと去っていたという。 ★★★ 最初は一人の猟師だった。 あの巨大な火球が消えた北方の山辺りで行方不明になる人間が現れ始めた。 怪しい人影が行方不明者を襲っているという噂がたっている。 その人影に追い回されながらもかろうじて逃げた目撃者もいたが、その人影は手先がザリガニのハサミの様になっていて、不気味な笑い声を挙げていたという。 ★★★ |
【アクション案内】
z1.キリ達に会いに『赤い水晶球』が飛んでいった山を調べに行く。 z2.キリ達に会いに一週間後、冒険者ギルドで待つ。 z3.行方不明者が続出する北の山へと調査へ行く。 z4.その他。 |
【マスターより】
「フォッフォッフォッフォ」 「シュワッチ!」 というわけで今回のシナリオはあからさまにある特撮作品のパロディとなります。 リスペクト? オマージュ? それとも単なるパクリ? まあ、設定的には私が考えたなりのオリジナル要素が多分に含まれております。 クライマックスは希望者が〇〇な戦闘が出来る様にしたいと思いますので、期待はして下さい。 と、いうわけでまた。 では、次回もよき冒険があります様に。 |