ゲームマスター:田中ざくれろ
【シナリオ参加募集案内】(第1回/全1回)
★★★ オトギイズム王国・王都『パルテノン』の冒険者ギルド。 一階の受付ホールに掲げられている大掲示板には、今日も様様な冒険者向け冒険依頼書が並び、雑多な冒険者達の眼を引きつけ、会話の話題となっていた。 だが今日はその中に混じって、奇妙なイベントの通知ポスターが貼られていた。 『冒険者ギルド主催・闇鍋大会』 開催日は今日から一週間後だ。 この冒険者ギルド二階の酒場の個室で行われるらしい。 「むう……何かデジャブ(既視感)を感じるが……」 「憶えているのですか!? ライディーン!?」 ポスターを眺めながら唸った巨体の冒険者に、その隣にいたシルクハットの冒険者が訊く。そう、訊いた冒険者もデジャブを憶えているのだ。確かに以前、こういう事があった。 「闇鍋……それはある異世界では友同士の親睦を深める為、主に冬に行われる」太い腕を組んだ、額に『大往生』という入れ墨を彫った巨漢が滔滔と解説する。「部屋の照明を一切落とした暗闇の中、互いの持ち寄った食材を一つの鍋に放り込んで煮込み、参加者はその箸が掴んだ食材を必ず食べなければならないという、和気あいあいとスリルが紙一重になった義侠心あふれる料理イベントだ。子(し)のたまわく『闇鍋奉行にコショウはいらねえんだよ!』、美味を楽しむよりはハプニング性を重んじるという事だ(琳民明書房刊『満漢全席・裏編』より)」 ライディーンと呼ばれた冒険者は以前の記憶を辿りながら語っていた。 そうだ、確かに冒険者ギルドで前にも闇鍋が行われた事があった。 噂によれば、最後に残った者が『黄ワサビ』なる物を食べ、七転八倒の有様だったと聞く。しかも彼自身が入れた物らしい。 冒険者達は彼の解説を聞きながら、ポスターの文字を眼で追った。 |
『闇鍋ルール *鍋は冒険者ギルドの用意した大きめの土鍋とコンロを使用する。 *ベースとなるスープは昆布と鰹節の合わせ出汁。 *参加者一人に一人につき、三種類の食材を用意する事。 *食材は必ず食べられる物を。毒物、劇物禁止。 *食材は事前に他の参加者に教えてはならない。 *食材の大きさ、重さの基本は箸かフォークで掴める、口に入れられる程度の物。大きな食材は一口程度にカットする事。 *固い皮のある食材は事前に取り除いておく。 *溶け崩れる物や液体、粉末、バラバラにほぐれてしまう物は禁止。(普通のおにぎりは煮崩れてしまうので×だが、ほぐれない様に焼き固めた焼きおにぎりは〇。フランスパンは〇だが、具材がバラバラになってしまうハンバーガーは×) *食べる時、箸かフォークで掴んだ食材は必ず一度は口に入れる事。 *美味しくても不味くても構わない。恨みっこなし。それこそが闇鍋だから。 なお、闇鍋用の食材調達には、日頃の労力に報いたい冒険者ギルドと提供元の地域住民の好意により、以下の地域が一日だけ食材取り放題になるという。 A.『アシガラ』山 食材参考:山芋が冬の旬。動物達は冬ごもりしているのでそれを捕らえる手もあり。村の人に頼めば白菜も提供してくれる。変わったところで柚子なども。 B.桃姫川 食材参考:一般に夏だとも思われている様だが、実はウナギの旬は冬。冬ごもりしているカエルは通好みか。川底でじっとして大人しくしているナマズを捕らえるのよし。 C.『ポーツオーク』近海 食材参考:何と言ってもアンコウが狙い目。ただし深海にいる為、捕獲難易度は難。脂肪の多いアカカマス等、基本的に海産物は冬が旬。アメフラシやカメノテ等の珍味も。 D.『モンマイの森』 食材参考:野生のキャベツがザックザク。鹿やイノシシやウサギ等の野趣あふれた肉も。冬眠に失敗したクマは凶暴なので出会わない様に注意。 E.『モータ』の牧場 食材参考:牛や豚、山羊や羊の肉を分けてくれる。また、それらの乳から加工した乳製品も。 |
開放日は一日だけなので、どの場所に行くか、要選択。 間違えて、知性を持つ原住民を捕獲・殺傷しない様に注意して下さい。』 「……こいつはなかなか面白そうじゃな」 ポスターを見ていた冒険者は低い位置から突然聞こえたキンキン声に驚いた。 そこには先程までいなかった一人の男が皆と同じ様にポスターを見ながら、大声で呟きを漏らしていた。 身長は百五十センチほどで、ぼさぼさの黒髪を頭の後ろで縛っている。 牛乳瓶の底の様にグルグルした黒縁の丸眼鏡をかけ、大きな鼻からは口元まで覆う髭が左右に反り返っている。 薬品の染みがあちこちに見られる白衣の前をきっちりと合わせ、裾を床に引きずっている。 マッドサイエンティスト、いやマッドデザイナーの趣きがあった。 「ちょっと面白い事はないかと冒険者ギルドを訪ねてみたが、来た甲斐はあった様じゃな」 その男はキンキンした高音で受付嬢に語りかけた。まるで受付口にぶら下がっているかの様な印象を与える。 以前、パルテノンの冒険者ギルドに現れ、後に怪物同士の決闘へと発展した一連の依頼の中心人物だ。 名前は確か、Drアブラクサス。 それ以来、ずっと現れなかったマッドデザイナーがこのパルテノンのギルドにいる。 「毒物、劇物は禁止とあるが、ただの固体の薬物なら問題はないじゃろう?」 「……ええ、多分」 「調合したのはいいが、いまだ生体での効果が解ってない物があるからそれらを試してみるか」 受付嬢に質問したDrアブラクサスは面白そうにそう語った。 「では、一週間後に……」 受付で申し込みをすませた彼は冒険者ギルドから出ていった。 「こいつはまた一波乱ありそうですな、ライディーン」 「ああ、そうだな……ディーノ男爵」 受付ホールの冒険者達はDrアブラクサスの背を見送りつつ、一週間後の闇鍋に波乱を予感するのだった。 ★★★ |
【アクション案内】
z1:冒険者ギルドの闇鍋に参加する。『アシガラ』山へ食材調達。 z2:冒険者ギルドの闇鍋に参加する。桃姫川へ食材調達。 z3:冒険者ギルドの闇鍋に参加する。『ポーツオーク』近海へ食材調達。 z4:冒険者ギルドの闇鍋に参加する。『モンマイの森』へ食材調達。 z5:冒険者ギルドの闇鍋に参加する。『モータ』の牧場へ食材調達。 z6:その他 |
【マスターより】
一回のみの短編シナリオです。 このシナリオに参加するPCは自動的に闇鍋の参加者になります。 戦闘や謎解きや冒険ではありません(ある意味、冒険?)。皆さん、ふざけて楽しんで下さい。 なお、このシナリオにおいてだけ、食材調達にはPCの所持金は消費しない事にします。ですので金に糸目をつけず、高級食材を調達する事も出来ます……でも、それだけじゃ闇鍋は面白くないでしょう?(ニヤリ) 食材調達に海や山に行く人は、何を採ってきたいのかアクションで明記して下さい。 誰がどの具材を食べるかは、厳正なる抽選(アミダクジ)で決めさせていただきます。 もしかしたら、自分が調達した食材を自分で食べる事になるかもしれません。 PCの好物、苦手な食物、美味しい物を食べた時のリアクション、苦手な物を食べた時のリアクション等を書き添えてくれるとマスターとしては非常に嬉しいです。 では次回もよき冒険(?)があります様に。 (前回と同じ事を書いていますが手抜きではありま……まあ、説明する事は同じだし(笑)) |