「臨床錬金術ゼミ@マープルのアトリエ」
―箱の中の楽園―
第1回(素材採取編)

ゲームマスター:夜神鉱刃

【シナリオ参加募集案内】(第1回/全2回)

●臨床錬金術ゼミの講義案内
 聖アスラ学院大学部は今期も無事に授業が終わり、いよいよ夏休みを迎える。
(とは言え、マギ・ジスの気候は常に「春」だが、便宜上、ここでは「夏休み」としている)
 夏休み期間中も勉学に励みたい学生諸君の為に学院側はゼミ合宿等も開講している。
 その一例として、錬金術学部のアガサ・マープル先生(NPC)のゼミ合宿は学内でも有名だ。

 今回の物語は所変わってサウザンランドに位置するマープル先生のアトリエ別荘である。
 夏休みに開講する「臨床錬金術ゼミ」は学内ではなく学外で行われるそうだ。
「はいはい、皆さん、揃いましたね。これから全2日のゼミ合宿の目標と予定を説明しますよ。助手の人達も準備はいいですね?」

「はい、問題ありません!」



「は、はい……。大丈夫……です!」


 マープル先生の呼び掛けにゼミ助手である二名の大学生が元気良く返事をする。
 一人は、学院の風紀委員長であるスノウ・ブロッサム(NPC)である。
 もう一人は、同じく風紀副委員長であるコーテス・ローゼンベルク(NPC)である。
 二人の肩書は風紀委員会だが、今回、風紀の仕事ではなく純粋に学生としてのゼミ参加なのだ。

「まずゼミの目標の確認から始めようかしら。今回のゼミでは、数ある錬金術体系の内、『臨床錬金術』という分野を学びます。この分野は錬金術の練成によって心の問題に取り組むセラピーとしての錬金術ですね。今回は、錬金術の『箱庭』を練成する事が目標となりますよ。さて、なぜ『箱庭』なのかわかりますか、スノウさん?」

 マープル先生からの指名を受けてスノウが優等生口調で即座に答える。
「それは、臨床錬金術が『箱庭療法』というセラピーを行うからです。錬金術の粘土で錬成した人形を錬金術の箱の中に入れる事で『物語』が発生します。この『物語』は術者の心の中の想像力(あるいは創造力)を表現しているものと言われています。心の『物語』を自らが振り返る事によって、『気づき』を得て、『癒し』に繋がる訳です」

 マープル先生はにこにこしながら「正解ね」と回答する。
 ここで、講義の話題が日程の話に移る。
「日程は全2日あるわね。初日は、錬金術の粘土である『錬金粘土』を密林の沼地である『ドロール沼』から採取しますよ。この粘土がないと2日目の箱庭の練成は出来ませんから、初日の採取で失敗しないようにして下さいね。ちなみに『錬金粘土』は高価な素材である上に、素材採取の経験は錬金術では大切な事です。ですから、合宿初日の作業になったのですよ。
 そして2日目ですけれどね、この日はアトリエ別荘の調合実習室でゼミを行います。実習室には竈(かまど)や箱庭といった魔道具が充実していますので、各自、調合に取り組める事でしょう。2日目の詳細については、また明日、お知らせしますね。
 ところでコーテスさん。初日の補足をいいかしら?」

 今度はコーテスが指名を受けて冷静に独特の口調で補足する。
 実は、コーテスは助手として下調べを先行していたのだ。
「初日に錬金粘土を……採取する事になる……『ドロール沼』ですが……。そこは、問答無用に……密林です。しかも沼地です。まず暑いですので……熱中症や水分等は……気を付けましょう。現地では……主に三班に……分かれる予定です。錬金粘土を沼地から採る……採取班。採取班を守る……護衛班。採取班と護衛班を……後方から支援する支援班。いずれかの配属と……なります。
 当然、……虫もいれば、自然の障害物もあります。陸地には……虫系や植物系の魔物も、わんさかいます。沼地にも……魚介系の魔物が……沢山います。魔物は討伐する必要は……ありませんが……くれぐれも……気を付けましょう。
 この日の目標は……最低限……僕達の人数分の『錬金粘土』の……確保です。『錬金粘土』を一定量……確保して……持ち帰るまでが……初日のゼミ内容となりますので……。キツイ事も……あるでしょうが……お互いに……頑張りましょう」

 コーテスの下調べに問題はなく、マープルも回答に満足した笑みで講義を続ける。
 本日、講義の最後のまとめに入る。
「臨床錬金術はマギ・ジスタン世界でも実用的な学問として認知されています。皆さんも今回のゼミ合宿で『箱庭』を練成して、ぜひ心の世界の働きを学んでみて下さいね。
 それと今回のゼミは学外にも開放されています。例えば、マギ・ジス大学みたいな他大、現代魔術研究所みたいな研究機関、ワスプみたいな冒険者ギルドにも各組織の研修内容として参加する事が可能です。ちなみに学内に関しても大学生以外、教員研修や中高生の特別課題としても参加を許可しています。
 お互いに見知らぬ人が多いゼミ合宿になるかと思います。ですが、仲良く切磋琢磨して錬金術の臨床の初歩を会得しましょうね」

 そういえば、ゼミの席にはシルフィー・ラビットフード(NPC)やナイト・ウィング(NPC)といった外部組織のメンツも多数いる事が窺える。
 こういった学術資源の外部への開放は聖アスラ学院の特長でもあるのだ。

 そして、おそらく、このゼミの席には異世界人やネイティブのあなた方も同席している。
 今回の初夏のゼミ合宿で良い汗を流しながら課題に取り組んでみるのも楽しい事だろう。
 臨床錬金術を学び、己の心の世界や創造の力を内省するきっかけになれば幸いである。

【解説】

<成功条件>(第1回における)

・サウザンランドの密林であるドロール沼地から錬金粘土をゼミ合宿用に採取する。
(少なくとも参加PC人数分は確保)

<失敗条件>(第1回における)

・錬金粘土の採取失敗。
(錬金粘土が必要分に満たない場合も失敗。採取は少し多めに見ておくと良いでしょう)

<備考>

・難易度は「普通」。
・判定結果は参加者全員の働きぶりの合計から判定します。(今回はPCごとではなく)
・第1回で「失敗判定」が出ますと第2回の調合実習はなくなります。

<概略>

 このシナリオは全2回のシリーズものとなります。
 全2回を通して「臨床錬金術における箱庭療法」を学びます。

 第1回(今回)は「素材採取編」です。皆さんには「錬金粘土」を採取して頂きます。
 内容的には戦闘シナリオとなります。ただ、特定の敵NPCを倒すタイプではなく、「錬金粘土」という素材を採取する事が目標となります。
「アクション」では、「採取班」「護衛班」「支援班」(他「その他班」)のいずれかに分かれて現地で行動する事になります。(班の詳細は【アクション案内】参照)

 前回の「文化鑑定士試験」みたいに特に試験があったり免許が出たりはしません。
 また、参加にあたり今回参加しないと次回参加できない訳でもありません。
(参加する回は任意で選べます。もちろん、全2回通しの参加も大歓迎です)

 要するに今回のお話は、夏のゼミ合宿というロールプレイとなります。

<シナリオ参入フック>

 皆さんのPCさんは一律に同じ学校で同じ学年な訳ではありません。
 通常の場合、同じ学校の同じゼミで同席する事は難しい場合もあります。
 ですが、マープル先生の「臨床錬金術」ゼミは学外にも開放されています。
 それぞれの所属を鑑みて、参入理由をこしらえましょう。
(参入理由は「アクション」に必ず書かないといけない訳ではありません)

 例えば、以下のような参入設定が考えられます。

・聖アスラ学院大学部=そのまま大学の授業として取る。
・聖アスラ学院高等部=「特別課題」という高校の授業で大学の授業を受けられる。
・聖アスラ学院教員=他の教員の授業に参加して教職の研修をする。
・現代魔術研究所=研究員の研究能力を向上させる研修の為に授業に出られる。
・マギ・ジス大学等の他大=他大の授業を学術交流として受けられる。
・ワスプ=ギルドの冒険者として腕を上げる為の研修として授業に出られる。

<採取場について>

・聖アスラ学院(マープルゼミ)の所在地はマギ・ジス(春の国家)です。ですが、今回のシナリオ全2回では「サウザンランド」(初夏の国家)が舞台となります。

・採取場はサウザンランドに位置する「ドロール沼」という密林の沼地になります。

・シナリオ(「アクション」/「リアクション」)の開始は「ドロール沼」に到着した辺りから始まります。

・国家的な気候では「初夏」ですが、密林や沼地は特に暑いですので気を付けましょう。
 天候は終日「晴れ」です。

・「ドロール沼」の足場は、「沼地」と「密林地帯」の2つに分かれています。
「沼地」に「錬金粘土」(輝いている泥の塊)が浮かんで落ちていますので採取します。
「密林地帯」の陸地が基本的な足場となります。

・「沼池」は「水中移動」系のスキルやアイテムがあれば使用出来ます。
(ただし、純粋な「水」ではなく「泥水」ですので「敏捷性」や「機動力」等に若干のマイナス判定が入ります)

・「採取班」の人達は、少なくともPC参加人数分の錬金粘土を「沼地」から確保しましょう。

・「支援班」の人達は、今回の活動の拠点となる「キャンプベース」を作りましょう。そこを拠点として怪我人の治療や食料の用意等をします。

<敵NPCについて>

・このシナリオで主に戦闘する役目であるのは「護衛班」の人達です。「護衛班」は「錬金粘土」の採取中である「採取班」を魔物や障害物等から守って戦います。(「採取班」は基本的に戦闘に参加しません。「支援班」は物資等の後方支援です)

・「密林地帯」にはキラー・ドロール・ホーネットやキラー・ドロール・スパイダーみたいな昆虫系の魔物等がいます。他、ドロール系統の人食い植物や人面草花といった植物系の魔物等もいます。魔物は、数はいますがそこまで強くはありません。魔物のスキルは、各魔物の形状や能力に沿ったものとなります。

・「沼地」には沼に潜むキラー・ドロール・フィッシュやキラー・ドロール・ザリガニみたいな魚介系の魔物等がいます。採取や護衛等の活動にあたり水中戦にも気を配りましょう。こちらの魔物も数はいますがそこまで強くはありません。魔物のスキルは、各魔物の形状や能力に沿ったものとなります。

・「密林地帯」でも「沼地」でも人の手が入っていないジャングルですので、自然の障害物も多々あります。障害物にもある程度、気を付けていましょう。障害物や罠の解除系のスキルやアイテム等があるとなお良いです。

・このシナリオでは魔物の数はほぼ無限に出て来ます。魔物討伐のシナリオではありませんので、特定の魔物や特定数の魔物を倒さないといけない訳ではありません。飽くまで「錬金粘土の採取」がクリア条件の成否を決めます。

・このシナリオではネームドの魔物(上記登場魔物の上位)の登場は伏せています。もしかしたら、「密林地帯」か「沼地」のどこかでネームドと遭遇するかもしれません。(なおネームドの討伐はシナリオの成功条件とは関係がありません)

<味方NPCについて>

・このシナリオは「募集案内」小説パートにもありますように、各勢力の主要NPCがゼミ合宿に参加しています。

・味方NPCを呼ぶ場合は、今回は「特別な関係にあるNPC」を1人だけ呼べます。NPCの能力やスキルはGMのアドリブとなります。

・デフォルトの味方NPCとして、スノウ委員長とコーテス副委員長がいます。スノウとコーテスは「アクション」で呼ばれれば、無条件でシナリオに参加出来ます。この2人の能力とスキルはGMのアドリブとなります。

・マープル先生も味方NPCとして参加しますが基本的に戦いません。「支援班」で治療や食料の用意等をしています。

<ショップ>

・今回のシナリオで何か必要な物があれば「ショップ」から事前に購入出来ます。「ショップ」は「聖アスラ学院の購買部」あるいは「サウザンランド密林の関所」にあります。

・今回、ショップの販売詳細情報は作成しません。シナリオ内で購入する「アイテム名と効果」と「金額(マギン)」はPL側の「アクション」の自己申告とします。(あまり便利過ぎたり値段に合っていなかったりするような場合はマスタリングが掛かります)

<その他>

・今回と次回の「リアクション」ではPCさんたちの課題内容を点数という数値では評価しません。(ゼミ合宿への真面目な出席と貢献が成績を左右します)

【参考イメージ】注意:写真は飽くまでイメージです。実物の商品・実際のサービスとは異なることもございますので、あらかじめご了承ください。


【臨床錬金術ゼミ】




解説:竈(かまど)で何やら怪しい物を煮込むのは錬金術の醍醐味ではないでしょうか。今回は、錬金粘土を主に煮込んで調合する為に採取します。実際に竈で煮ての調合は次回(合宿2日目の課題)となります。


【サウザンランドの密林】



解説:今回のゼミ合宿(初日)ではサウザンランドの密林へ錬金粘土を採取しに行きます。ドロール沼地から素材となる錬金粘土を採取します。2日目の箱庭作りに向けて錬金粘土を抜かりなく確保しましょう。

【アクション案内】

y1.採取班(錬金粘土を沼から採取して確保する班)
y2,護衛班(採取班を魔物から守って代わりに戦闘する班)
y3.支援班(キャンプベースを作って、手当や調理等のサポートをする班)
y4.その他

【マスターより】


 お久しぶりです。既に季節は夏ですが、皆さんはお元気でしたでしょうか?
 学校関係で真夏の暑い季節に頑張って勉強するイベントには色々な名称がありますね。
 サマースクール、夏期講習、集中講義、ゼミ合宿等。
 今回は、いわゆるその類のお話となります。
 熱中症とか夏バテとか色々ある季節に汗を流して必死に頑張るって、正に青春だから出来る事かもしれませんね。