「ゴールデン・ゴーレム・ラッシュ」

ゲームマスター:夜神鉱刃

もくじ

●みんなで狩りに行こう!

●通常狩り班の前半戦(午前)

●大物狩り班の前半戦(午前)

●運送解体班とさぼり班の前半戦(午前)

●休憩(昼休み)

●後半戦(午後)

●宴



●みんなで狩りに行こう!

 転送装置を抜けると、そこは風光明媚な秋の山岳だった。
 狩りの対象であるゴールデン・ゴーレムがいるという鉱山の洞窟まで少々の距離がある。
 ワスプと雇われのメンバー達は軽くハイキングをしながら、本日の狩りに対してそれぞれが色々な思いを抱いて挑む。

 先頭には場所を熟知しているビーハイブ支配人(NPC)とナイト・ウィング(NPC)が歩いている。先頭のやや後ろにジャイアント・アメリカン・レディのジュディ・バーガー(PC0032)が親友のコーテス・ローゼンベルク風紀副委員長(NPC)と仲良く歩いている。本日は、二人とも迷彩柄のハイランド戦闘服という衣装だ。

「ヘーイ! 本日はナイス・デイ! ゴールドラッシュなんて、イッツ・アメリカン・ドリーム、ネ! ガンガン稼ぐデース!」
「ガンホー、ですね……、ジュディさん! 僕も……がんばります!」
 ジュディは、今回の狩りの話が出る時、ちょうどワスプで樽酒を飲んでいた。
 酔っ払いながらだったが、嬉しくてはしゃいでしまったものだった。
 昔、アメリカにいた頃を思い出し、モチベーションは即マックスだったのだ。
 だが、ジュディはハイランダーズ国家にあまり土地勘がない。
 そこで、親友でありハイランダーズ国家出身のコーテスを誘ってみる事を思い至った。
『ガッツリ稼いで親孝行ネ』と誘い、真面目な彼は『はい!』と即答だった。

 ジュディ達に続くのは、人魚姫女子大生のマニフィカ・ストラサローネ(PC0034)だ。彼女の隣にはティム・バトン(NPC)もいる。この二人もおそろいのワスプ製ハイランド戦闘服を着ている。閑古鳥が鳴くワスプの現状に驚いたマニフィカは、社内ニート中と嘆くティムを励まし、ゴーレム狩りの報酬は折半という約束を交わしたという。
「さあ、洞窟までもう少しですわ! 今日は一緒にがんばりましょうね、ティムさん!」
「ええ、そりゃあもう、脱社内ニート目指してぼろ稼ぎを目指しますよ!」

 マニフィカはティムとその妹であるジェニー(NPC)の成長を見守るのが実は楽しみだったのだ。ウマドラの卵料理の依頼があって以来、色んな機会にティム&ジェニー兄妹とは縁を深めてきた。例えば、ジャンクフード祭りやマギケットはジェニーとの良き思い出がある。マニフィカが仏の座山脈で修行する際もティムは力を貸してくれた。そんな兄妹が抱く夢がホットドッグスタンドという事をマニフィカは知っている。未曾有の不景気に見舞われたワスプにとって、今回の狩りは起死回生を企てる打開策ではあるが、兄妹にとっても起業資金を稼ぐ絶好のチャンスでもある。これを助けない手はありませんわ、と人魚姫は密かに思いを抱いている。

 マニフィカ達の少し後ろに続くのは、交易会社の女社長であるクライン・アルメイス(PC0103)だ。サングラスとハイランド戦闘服を着用している彼女の手元には、事前に仕入れた金鉄鉱山の地図がある。地図はペンやマーカー等で色々とマーキングされている。実は鉱山洞窟の見取り図からゴールデン・ゴーレムの出現が予想される場所まで事前に情報を手に入れていたのだ。ビジネスは情報戦が勝負だったりする。
「あなた達、本日の狩りの予習はちゃんとして来ましたわね?」
「ええ、ばっちりです。でもすごいですね、短期間でここまで情報集められて!」
 クラインは本日、ワスプモブ達も上手く使うつもりだ。
 一緒に行動するモブ達にも情報は行き渡らせている。
「おい、ティム! クラインさんの地図のコピーは持っているよな? ちゃんと予習して来たかどうか気にかけていらっしゃるぞ!」
 モブに促されて、前を歩くティムは、もちろんと頷く。
「クラインさん、本当にありがとうございます。本来なら、僕かナイトさんがやらなければならない事だったのですが、つい頼ってしまいまして……」
 クラインは少し照れて笑いながら答える。
「いえいえ、まだ地図がお役に立つかどうかわかりませんので、お礼は早いかもしれませんわね」
 クラインのお陰で本日のゴールデン・ゴーレム狩り班は良い具合に情報がまとまっている。
『上手な人の使い方こそが経営学の真髄』これ、クラインの標語である。

 クライン達のやや後ろを歩いているのは、超ミニスカJKの姫柳 未来(PC0023)だ。本日の狩りでもハイランド戦闘服ではなく超ミニスカが健在だ。高低差なんて大丈夫、彼女は空を飛べるから。(何かが見えたらごめんなさい!)
 困っている人を放っておけない未来は、経営危機のワスプの話を聞くや否や、彼らを助ける為、ゴールデン・ゴーレム狩りにすぐ志願したそうだ。そこで今回、恋人のトムロウ・モエギガオカ(NPC)も誘い合わせた上、彼にも手伝って貰える事になったのである。
「ねぇ、トムロウ? 秋風が寒いよ……?」
 未来はトムロウへ手を差し伸ばす。
『トムロウがぎゅっと手を握り返した。大丈夫だよ、未来ちゃん! 二人で手を繋げば秋風なんて寒くないさ!』
 と、でも返せばまだ話は繋がったものの……。
 何を思ったのか、トムロウは未来の超ミニスカートの中に入ろうとした。
「大丈夫だよ、未来ちゃん! スカートの中に入れば、寒くないさ!」
 トムロウの見事なHENTAIプレーが鮮やかに決まり……。
「きゃあああ! HENTAI!!」
 未来から強烈な回し蹴りをくらい、トムロウは鼻血を出してぶっ飛んで行った。

 賑やかなのは未来達だけではない。
 大勢のカプセルモンスター達(CM分隊)をぞろぞろと連れて後ろを歩いているビリー・クェンデス(PC0096)もそうだ。子ども用のハイランド戦闘服をまとい、楽しそうにきゃっきゃっと山道を歩いている彼であるが、実は今回の一件は心底穏やかではなかったらしい……。
『福の神』見習いのビリーにとって、大不況を招くマギ・ジス金融恐慌は、世界規模で不幸を呼び寄せる強大な敵とも言える。その強敵を前にして、特に何もできなかった力不足を痛感していたのだ。
『アカン……これホンマにアカンやつやで……』
 そう悩んでいたある日、恐るべき『マギ・マンショック』に立ち向かわんとするワスプの人達を目撃する。彼らから勇気を得たビリーは精神的に復活し、こう思った。『負けては、おられへんで! ボクもボクにできる事するねん!』
 そんなビリーの勇姿に拍手を送った人物がいた。それは、現代魔術研究所の調査部隊隊長のシルフィー・ラビットフード(NPC)だ。ちなみに彼女は現在、ビリーとは同盟関係にある間柄なので、誘ったらすぐに駆けつけてくれたようだ。彼女はビリーの隣をてくてくと歩きながらため息をつく。
(まあ、不景気の煽りを受けて、調査部隊も予算削減に直面していて、色々と苦しいのよね……)
 と、いうシルフィーなりの実情もあったそうな。

 後方を歩いているのは、ハイランド戦闘服マントを翻し、念力でぷかぷか浮いている巨大目玉の萬智禽・サンチェック(PC0097)だ。
「ふふ……。念力で浮いて移動すれば山道など楽勝なのだ。いや、待てよ、『念力』はスキルだから魔力は使っているはずだな? ん? まあ、いいさ、楽だから……」
 浮遊目玉のすぐ隣にはハイランド戦闘服姿の技術師おじさん呉 金虫(PC0101)がぶつぶつ言いながら歩いていた。
「金。GOLD。元素記号Au。原子番号79。展性、延性、熱伝導、電気伝導に優れ、ほとんどの化学的腐食に強い。装飾品として高価だが、その性質から科学的にも非常に利用価値が高い貴金属……だな」
 本日、対戦する相手であるゴールデン・ゴーレムについて何やら思いを巡らせているようだ。金に対してどう戦うか、みたいな。
 しかし、時々、怪しい笑い声も立てていた。
「ぐふふ……。がっぽりと稼いだ金で……俺は……モテモテだ!!」
 気味が悪くなった萬智禽は心配して話しかける。
「おい、呉殿! 大丈夫か? なんか怪しいのだ!」
「ん? 何、萬智禽さん? 俺は常に科学の事を考えている生真面目なおじさんだからこの通り、大丈夫さ!」
 うん、呉の言葉を信じよう。

 最後尾の辺りを歩いているのはフランス令嬢のアンナ・ラクシミリア(PC0046)だ。実は彼女、楽天家で事業の才能のない父親とやさしいけれど金銭感覚のない母親という両親を持っているので、お金の問題には理解のあるお嬢様だったりする。
(お金がない辛さ、わかりますわ。そういう訳でして、今回、微力ながらも協力させて頂く事にしましたわ。正直言いますと、お金は地道に稼ぐものだと思いますわ。ですが、チャンスは活かすものですわ。可能性があるのでしたら、一攫千金を狙ってみるのも手ですわね)

 本当の最後尾には天然植物由来のお姉さんリュリュミア(PC0015)が、るんるん♪と楽しそうにスキップしながら歩いていた。
「みんなでお出かけ、楽しいですねぇ〜♪」
 腹の中では黒い事も考えていたようだ。
(ゴーレムですかぁ、リュリュミアとは相性が悪そうですぅ。応援するので、みんな、がんばってくださいねぇ)
 この時、アンナは『悪友』の企みを止めるべきだったのかもしれない。
 だが、アンナもこの時は山道でハイになって気分が良かったので見過ごしてしまった。
(ん? リュリュミアが妙にニタニタしていますわね? ふふ、きっと、狩りが楽しみではりきっていらっしゃるのでしょうね?)
 いやいや、アンナさん、たぶん、違うんです、とナレーターは差し出がましく言えない。

 本日、100名を超える数の狩人達が金鉄鉱山に狩りへ入る。
 皆でお金になるゴーレムを無事に狩り尽くす事はできるのだろうか?

●通常狩り班の前半戦(午前)

 狩りの時間がさっそく始まり、各自、チームに分かれて行動する。
 通常のゴールデン・ゴーレム狩りの班のメンバーは……。
 クライン、マニフィカ、萬智禽、ティム、ワスプモブ30人だ。

 突入する前に、クラインはある事をしていた。
 サイフォースのサーチ機能を起動させて、ゴーレム達の位置を確認しようとするが……。
「あら? 変ですわね? 機能していないのかしら……」
 それを見ていたマニフィカがこっそりと教える。
「サイフォースとは異世界の力ですわね? 実はマギ・ジスタン世界は異世界の力が使えない事が多いですわ。例えば、サイフォースに関して言いますと、動力源がこの世界では流れておりません。力の流れが違うのでしょう……」
 それを聞いてクラインはその技能を使うのはあきらめたが、改めて地図を広げて招集をかける。そして、本日の作戦について全員に確認を取る。
「皆さん、わたくしが作成した戦略地図をお持ちですわね? 標的のゴールデン・ゴーレムに会うまでに無駄な戦闘は避けたい所ですので、地図を有効活用しましょう。事前にこの辺の冒険者達からゴールデン・ゴーレムが出そうな場所は聞いておりますので、そこを目指して進みましょう」
 そこで萬智禽が手を、いや、目玉を挙げる。
「地図の件、ありがとう、質問なのだ。私は奴らの餌であるマグネタイタンをワスプから大量に購入したが、これの使い道はなかろうか? 例えば、どこかに餌を置いて、そこに来た奴らを一網打尽にするとか良いだろう?」
 クラインは地図のマーキングしていたある所を指す。
「それでしたら……。ここですわね。ちょうど洞窟の真ん中で高低差が込み合っている辺りですが……出現率が高そうなここに餌をまいて、ゴールデン・ゴーレム達を捕まえて倒す、というのはいかがでしょうか?」
 マニフィカも賛成するが補足で質問する。
「良い作戦だと思いますわ。わたくしもマグネタイタンは大量に持っていますので、提供致しましょう。あとは……そうですわね、潜伏している伏兵がいると良いかもしれませんわ? 直接的な戦闘であればわたくしが志願致しますわ」
 クラインは、今度は鋼鉄製のロープと盗聴器を取り出した。
「高低差を利用して、その問題となる箇所にこのロープを張り巡らせましょうか。足場を崩したゴールデン・ゴーレム達はひっくり返る事でしょうから、そこを狙いますわ。あと、盗聴器も周辺に仕掛けましょう。盗聴器はそうですわね、モブ達、お願いできるかしら? これを地図にある指定の数か所に仕掛けてくださいね……。ええ、マニフィカさんには遊撃隊長をお任せ致しますわ」
 作戦がまとまり、30人越えのパーティは洞窟の中心部まで歩みを進める。
 ここはゴーレムの敵地であり聖地だ。
 道中、スクラップ・ゴーレムが現れたり、サンド・ゴーレムが現れたり、それなりにエンカウントはあった。
 もし、クラインによる事前の調査がなかったら、エンカウント率はさらに上昇していた事だろう。
 中衛にいる指揮官のクラインをなるべく消耗させないような形でパーティは進行した。
 先頭にはマニフィカが立ち、得意の槍術でザコゴーレム達をばったばったと片して行く。マニフィカに続き、ティム、フリーファイター、フリーシーフ等も戦闘に加わり、ザコ相手であれば向かう所、全く敵なしだった。
 最後尾には萬智禽が就き、フリーマジシャン達を指揮して、前衛が撃ち漏らした死角や敵勢の残敵にとどめを刺す形で行軍した。

 そろそろ洞窟の中央部だろう。
 そこで、中ボス格とも言えるアイアン・ゴーレムがザコのスクラップやサンドのゴーレム達と共にどかん、と地中から爆発して出現した。
 アイアイ・ゴーレムは今までのザコ達とは格がやや違った。
 戦闘開始直後、敵は重たい鋼鉄の拳を振り落とし、モブを2、3人倒してしまった。
 味方前衛に損傷がでるや否や、マニフィカは焦って魔竜の槍を構え直す。
 後衛にいる萬智禽が前衛に向かって叫び出した。
「マニフィカ殿にティム殿、そのゴーレムを引き付けていてくれないだろうか? 私に考えがある!」
 了解ですわ、もちです、と前衛2人は頷き、即座にかく乱作戦に移る。
 ティムが最高速度で戦場を駆けながら敵の「やる気」を盗む。マニフィカが風の魔力で速度を上げて翻弄する。
 一方、サンドやスクラップらもいるので、これらは中衛にいるクラインとモブ達で引き受ける事にした。
 萬智禽はランタンを構え、呪文を高速度で詠唱し、暴れているアイアン・ゴーレムに術をかける。幸い、敵はマニフィカとティムを狙う事で精一杯なので、後衛の目玉の軍師には注意が向いていない。
 がちゃこん。
 こんな感じの音がしたような気がした直後、アイアン・ゴーレムの動きが鈍る。
 魔術でできた鉄の生命体であるので、魔力の動力源に多少の影響を与えたようだ。
 そこにチャンスが生まれる。
「今ですわ、ティムさん! 行きますわよ!」
「合点です!」
 前衛二人の同時攻撃により、アイアン・ゴーレムはひっくり返って倒れた。
 そこで目玉の軍師が慌てて叫ぶ。
「ストーップ! そこまで、でお願いするのだ。ちょっと私に任せて貰いたいのだが……」
 萬智禽は、ぎらりと輝く眼球のような宝石を取り出して、ぴぴぴ、と倒れたゴーレムに術をかける。
 すると……。
「グオオオオ!!」
 アイアン・ゴーレムが復活したのか!?
「おっと、待て! こいつはもう敵ではないのだ! 倒した相手を私の宝石の術で操っているだけなのだよ!」
 なるほど、と前衛達は理解して、新しいパーティのメンバーにアイアン・ゴーレムも入れて行軍する事にした。なお、この傀儡作りのイベントがある最中、クライン達中衛はザコを倒し終えてくれていた。典型的な頭脳派に見えたかもしれないが、実はクライン、鞭さばきなんかも得意だったりするようだ。

 何とかして、洞窟の中心部まで着いた。
 道中、ザコとのエンカウントも少しあったが、新しいパーティメンバーの傀儡がそれなりに役立ってくれた。現時点までにモブは5人倒されてしまったが、強い前衛が増えたので戦闘に苦労する事はなかった。
「では、さっそく、ロープと盗聴器と餌を仕掛けましょうか……」
 クラインは作戦指揮の司令塔なので、洞窟中央部から皆に指示を出す。
 萬智禽はロープを念力で持ち上げ、ぷかぷかと高低差を移動し始めた。
「私は『念力』で浮遊して移動するから土地の高低差を気にする必要はないであるかな……。一部、念力だけでは上がれない高い所もあるが、そこはこのハイランドのマントをひらり、と使ってよっこらしょっと……うむ、この辺にロープを縛るかな?」
 少し高低差のある高い所から目玉の軍師の合図が来る。
 下にいてロープのもう片端を握っているティムは、合図を受けてすぐに岩に縛り付ける。
 モブ達の何人かはクラインの地図を頼りに盗聴器を仕掛けた。
 これで敵勢の足取りがわかるはずだ。
 もちろん、こういった作業は全て敵地で行われているので、警備も欠かせない。
 マニフィカとフリーファイター達が警備に回り、突然、出現したザコのゴーレム達をばっさりとなぎ倒した。

 仕掛けの作業が完了した。
 後は、餌をまいて伏兵の準備だが……。
 ロープが張り巡らされている中央部で、マニフィカがマグネタイタンをどっしり、と10個置いた。
 萬智禽は念力を駆使して、同じく10個もの重たい餌をどかん、と置く。
 クラインは1個の餌を、ティムは3個の餌をそっと置いた。
 合計24個ものマグネタイタンが美味しそうに並べられている。もちろん、ゴーレム目線で。
「では、さっそく隠れて待ちましょう……」
 クラインが指示を出し、全員が各自の持ち場へ走って移動する。
 待つ事、5分もなかった……。
 クラインの手元の受信機がジジジと音を立てる。
「来ましたわ……。ゴーレムの重たい足跡がどしどしと響いていますわ……。近いですわよ、遊撃隊、準備をお願いしますわ!」
 指示を受けて、岩陰にいるマニフィカ、ティム、モブ達が頷く。
 別の岩陰でアイアン・ゴーレムといる萬智禽やモブ達も頷く。
 さて、上手く罠にかかってくれるだろうか……!?

 どがあああん、どんがらがっしゃん、どがどがどおおおん!!
 集まって来たゴーレム達は鋼鉄のロープに足がひっかかり盛大にこけた。
 しかもドミノ倒しで前からも横からも順番にこけて行く。
 総勢で20体もいたゴーレムが次々と倒れた。
 弱いスクラップやサンドのゴーレムには、今の罠で戦闘不能になった者達もいる。
 アイアン・ゴーレム達もそれなりにダメージを負ったようだ。
 敵勢の中には3体のゴールデン・ゴーレムまでいた。
 今の所、作戦は順調だ。指揮官はにやりと笑う。
「ゴールデン・ゴーレムはあまり賢くない魔物ですわ! 相手の動きは単調ですわ、冷静に対応しましょう!」
 指揮官からの掛け声に現場のモブ達が「おおー!」と反応し、戦場へ出て行く。
 こけているゴールデン・ゴーレム達に集って、びしばしと攻撃を加える。
 遊撃隊長のマニフィカと副官のティムも急いで襲撃にかかる。
 一方で狩りの目的とは関係ないザコ達もそれなりに数がいる。
 それらには萬智禽やフリーマジシャン達が対応に当たった。
「行けー、我がゴーレムよ! 行けー、我らがワスプの魔術師達よ!」
 目玉の軍師の指揮官の下、傀儡のゴーレムや魔術師達の攻撃が猛威を振るう。
 15体近く同時に相手をしている最中、順調かと思いきや……。
 どがががが、どががああああん!!
 アイアン・ゴーレムに囲まれた傀儡のゴーレムは、ゴーレム・パンチの連続打撃に援護攻撃を受けて、鉄くずに変えられてしまった。
 そして付近にいたモブ達5人も倒されてしまった。
「くっ……。手玉がじりじりと減って行くのだ……どうすれば!?」
 目玉の軍師が戦場を見渡すと、マニフィカとティムのチームがゴールデン・ゴーレムを1体、倒し終えた所だった。これをどう運ぶか、みたいな議論をしていた所……。
「ストーップ! それ、私にくれないか?」
 軍師の意図を理解したマニフィカはそのゴーレムを譲ってくれた。
 萬智禽は再び宝石を煌めかせて術をかけ、ゴールデン・ゴーレムを傀儡にする。
「グオオオオ!!」
 倒されたはずのゴールデン・ゴーレムが立ち上がった。
 立ち上がると同時に、ゴーレム・パンチを繰り出して、敵勢をばたばたなぎ倒す
 この性能の差には、操っている軍師本人がとても驚いていた。
 だが、それ以上に今、彼には気になっている問題がある。
「むう。こういう風に亡骸を操っているとネクロマンサーになった気分であるな。死体をもてあそんでいる様でちょっと心が痛いが、せめて倒したゴーレムをリサイクルしていると考えるのである」
 その後、萬智禽は再び金色の傀儡や魔術師達を率いて別のゴールデン・ゴーレムも倒しに向かったのであった。

 戦況は冒険者側がだいぶ有利だ。
 既にゴールデン・ゴーレムは5体倒されている。
 最初の3体のゴールデン・ゴーレムが来た後も、餌に釣られてもう2体やって来た。
 もっとも、サンド、スクラップ、アイアンらも連れてだが。
 そして、まんまと再び罠にはまってドミノ倒しだ。
 クラインはこの状況を見て思わず笑ってしまったという。
 ゴーレムはあまり頭が良くないと聞くが、まさかここまでだったとは……。
 こういった調子でがんがん狩りを進めて行けると思ったら……。

 どがががが、どっかああああああああああああんん!!
 地面が大爆発を起こした。
 なんと、ゴールデン・ゴーレムが5体も地中から出現したのだ!
 現れるや否や残っている餌を全てぱくりと完食し、マッチョのポーズを決める。
 行くぜ、我ら5人戦隊、ゴールデン・フラアアアシュ!!(と、言っているのだと思う)
 凄まじい閃光が戦場を駆け巡る。
 5体同時にフラッシュ攻撃をされて、その場で全く平気でいられる者は今、一人もいない。
「くっ……。なんて、眩しいのでしょうか? 皆さん、ご無事ですか?」
 クラインはサングラスをかけているが、5回連続フラッシュはさすがにこれでも眩しいぐらいだ。
 中には目を傷めて、撤退してしまうモブ達もいた。
 萬智禽は傀儡のゴーレムを盾にしたが、それでもまだ眩しい。
 しかも目玉の塊の姿なので、目玉への光攻撃が一番厳しいのも萬智禽なはずだ。
 レヴィゼルのお守りがなかったら、彼も危うくここでゲームオーバーだった事だろう。
 一方でマニフィカは現場の指揮をティムに任せて、一時撤退していた。
 岩陰で魔法人魚に変身していた。戦術を変えるためにだ。
 フラッシュ直後、マニフィカはクリアランスの聖水を味方陣に振りまいて、目の状態異常を解除して回った。

 敵勢からのフラッシュ攻撃の後、敵陣からの猛攻が続いた。
 5体のゴールデン・ゴーレムを中心に、格下のゴーレム達も暴れるに暴れた。
 重たいパンチ、固い弾丸、援護攻撃の数々がワスプ陣を追い詰める。
 それでも萬智禽は傀儡と術師らを率いて善戦していたが……。
 こちらがゴールデン・ゴーレムならば相手もゴールデン・ゴーレムだ。
 しかも数は敵勢の方が上だ。
 プロゲーマーでもある操作の上手さとモブの助力により1体は落した。
 だが、もう1体とパンチの相殺で相打ちになり、傀儡が倒れてしまった。
 フリーマジシャン達も何人も敗退してしまった。
「な、なんと!! 一時撤退なのだ、逃げるぞ、モブ達!」
 萬智禽の軍勢が散り散りになって戦場から撤退する。
 あと3体ものゴールデン・ゴーレムがいるが……。
 敵勢には逃げる気配はなかった。
 理由のひとつは、未だにロープが絡まっていたり、くずになった元仲間達が足場の邪魔だったりするから。理由のもうひとつは、面白い奴らを見つけたので単純に戦いたいから。

 萬智禽本人が戦闘不能になった訳ではないが、この一陣が撤退した事により、味方陣には動揺が走った。既に逃亡する者もいれば、最後まで戦おうとする者もいる。作戦の司令塔でもあるクラインは鞭をぴしゃりと地面に叩きつけて味方に告ぐ。
「撤退しますわ! 午前中はここまでで上等ですわ! 味方にこれ以上の損害が出ないうちに退きますわよ!」
 クラインを補助する形でティムが戦場を駆け巡り、仲間達に撤退を呼びかける。

 撤退する者達に代わって最前線に出て来たのはマニフィカだ。
 撤退指示は理解している、だが、逃げ遅れた者達もいる。
 皆が安全に逃げ切るまで、誰かが敵を引き付けておかなければならない。
 ところで今、マニフィカは3人いる。
 ホムンクルス、ドッペルゲンガー、本体の3人だ。
 3人はそれぞれ竜人化して、魔竜の槍を構えて、風の魔槍の術を裁く。
 対するゴールデン・ゴーレム達も武骨な金塊の拳で応える。
『行きますわよ、とくと、くらうが良いですわ! トリプウウウウウウル・ブリイイイイイイインク・ファルコオオオオオオオオオオオン!!』
 3人の魔竜が魔槍を駆使して疾風の如く金塊に無数の斬撃を与える。
 8斬撃デフォルト、1斬撃バッジで補強、1斬撃術のボーナス……。
 1人につき10回連続攻撃が3人分……。
 つまり30回連続斬撃がクリティカルでゴールデン・ゴーレム達を襲う……!!
 勝つのは、金の拳か、風の魔槍か!?

 どがががががん、どっがががが、どかあああああああああああん!!

 激しい爆裂音と共にゴールデン・ゴーレム達3体はばったりと倒れた。
 トリプル・マニフィカの勝利である。
 戦闘を追えて、本人の一言。
「ふう、何とか勝てましたわね……。本当は、スーパー・ゴールデン・ゴーレムとエンカウントした時の切り札でしたが、こういう使い方も悪くはありませんわね……」
 ボス格である3体が同時に倒されたのでザコ達は慌てて地中へ逃げ帰った。
 通常狩り班は戦力的にも時間的にも判断して、この時をもって戦場から撤退した。
 現時点でゴールデン・ゴーレム10体を狩った。
 とても優秀な成績だ。

●大物狩り班の前半戦(午前)

 大物狩り、つまり、スーパー・ゴールデン・ゴーレムを主に狙うのがこの班の目的だ。
 メンバーは、アンナ、ジュディ、呉、未来。
 NPCのナイト、コーテス、トムロウ、そしてワスプモブ達30人。
 37人という大勢で大物を狙いに行く。
 さて、この班の作戦は、というと……。
「ねえ、ナイト? 金脈を当てるのが得意って聞いたけれど? ナイトが探し当てて、そこに餌を大量にばらまいて大物を呼ぶっていうのはダメかな?」
 未来の作戦は単純かつ明快だ。
 一番怪しい所に大量の餌を置く物量作戦だ。
「ヘイ、ナイス、ネ! 実はジュディもマグネタイタン、イッパイ、アリマース! ぜひ、ガチでばらまき、ガチでファイト、ネ!」
 パワースーツに身を包んでいる呉もがしりと拳と拳を合わせる。
「おう、いいなそれ、男らしくて? 今日の俺はファイトハツラツなんで、乗るぜ? あ、俺もマグネタイタンたくさんあるぞ?」
 魔法少女姿のアンナも快く頷く。
「いいですわね、未来。わたくしもどちらかというとガチで殴り合うタイプですので、それがわかりやすくていいですわね!」
 NPC達ももちろん、反対するメンバーはいない。
 この班のメンバー的に、物量まいてガチで殴り合い、というのはある意味で既に決定事項だ。

 と、いう訳で、パーティは金脈を探り当てるナイトを守る形にして行軍した。
 大物との遭遇までに体力をセーブしたいというジュディの申し出により、エンカウントになる度になるべく離脱する方針で皆、動いた。
 しかし、どうしても戦闘になる時もたまにはある。
 行方を阻むのはザコのゴーレム達だ。
 もっとも、ザコ達はガチで殴られてガチで撤退して行った。
 ジュディの怪力(+コーテスの援護)、呉の科学力、未来の超能力(+トムロウの援護)、アンナの土魔法の拳……。
 これらの総力を前にして立ち向かえるザコ敵はいなかった。
 だが、目的地へ着くまでにモブを6人失ってしまった。

 やがて洞窟に入ってから、洞窟全体の下左端へパーティはやって来る。
 ナイトが手に持っている怪しいルーレットがぴこん、ぴこん、と反応する。
「お? ありやしたぜ! ここでずぜ、スーパー・ゴールデン・ゴーレムが出現しやすい地点ってのは!」
 ナイトが探し当てた地点はどこかひっそりとして落ち着いた場所だ。
 シーンと静まり返っているが、本当にここに奴らは現れるのだろうか?
「うん、じゃあ、ここにマグネタイタン、置いてみよー!」
 未来はアイテム袋から、じゃらじゃらと100個ものマグネタイタンを取り出す。
 あれ? アイテム袋って、四次元のポケットみたいだな……?
 まあ、そこはゲームのお約束という奴で、続いてジュディも10個、呉も10個、取り出して合わせて置いた。
 NPCからは、ナイトが3個、コーテスが3個、トムロウが4個、寄付してくれた。
 合計130個ものマグネタイタンが最も怪しいスポットに置かれた訳だ……。
 そして、ナイトから戦線離脱の申し出が……。
「わりいが、この金脈当てるスキル使うと、俺、速度や運のペナルティがあるんすよね……。スピードがないスピードスターって、笑えないぐらい使えねえし、しかもその状態で大ボスとのバトルで最後までもつ気がしないんで、岩陰に隠れていやすや……」
 まあ、そういう事情ならば仕方がない事だろう。
 幸いにもこの班は数的にもメンバーに恵まれているので、ナイトの一時離脱は許可された。

 待つ事、数分もしなかった。
 どががががががが、どっかああああああああああああんん!!
 激しい爆裂音と共にジャイアントサイズの金塊の魔物がマッチョポーズで出現した!
 さっそく来たのだ、スーパー・ゴールデン・ゴーレムが! 3体も!
 手下のスクラップ、サンド、アイアン、ゴールドのゴーレムらもぞろぞろと集まって来る。
 マグネタイタンの物量で押し切った重課金の力ってすごい!

 大物が3体同時に現れるや否や、既存の班は小さな班へすぐに分かれて行動に移る。
 ジュディ&コーテスの班。アンナ&呉の班。未来&トムロウの班。
 この3班を各自フォローする形で残り24人のモブ達は8人ずつに3分割した。

***

 ジュディはイースタ製の電気銃に充電し、一気に放電する。
「ゴオオオオ、ファイアアアアアアアアアア!!」

 ぎゅるん、ぎゅるん、ぎゅるるるる、ごおおおおおおおおおお!!
 強大な電磁砲攻撃が戦場を一直線に駆け巡る。ゴム弾も同時に弾けて敵勢を襲う。
 道中を邪魔するザコ達は弾き飛ばされるか、ゴム塗れだ。
 だが、全員が倒された訳ではない。
 撃ち漏らされた者、回避や防御した者、完全に倒されなかった者……。
 それぞれのゴーレムがパンチや弾丸で襲って来る!

「それ、そこ……!! ふふ、ジュディさんの……援護をする時点で……その辺は計算済み!」
 コーテスが頑丈な防御力を持つ深緑色のシールドを張り巡らせる。
 大きなバリアに守られたジュディとコーテスは敵陣からのダメージを弾き返す。
 弾き返されて倒れて行くゴーレム達も続出した。

「ナイス、コーテス! サッスガ、息ぴったし、マイ・ベストフレンド、デース!!」
 ジュディとコーテスがハイタッチを交わした後、二人の快進撃は止まらなくなった。
 多数のザコ達を押しのけて、ついに大物にまでたどり着く。

 スーパー・ゴールデン・ゴーレムにしても決して頭が良い方ではない。
 だが、戦慣れしているのだ。
 こういう力押しの強敵に勝つには……。
 そう、統率スキルを駆使して皆で集中攻撃だ!

「ヘイ、コーテス! ジュディをぶん投げるデース!」
「オーライ、ジュディさん!!」
 コーテスは補助魔術で腕力を強化し巨大化して、ジュディを抱える。
 ジュディにしても2m越えのジャイアントだが、今のコーテスはそれ以上だ。
「ファイアアアアアアアアアア……です!」
 コーテスがジュディを勢い良く放り投げて、ジュディが突っ込んで行く。
「スキル、ブレエエエエエエエエエエエイク!!」
 ジュディは両手を掌底にして、統率スキルを放とうとする大ボスに突撃する!
 がしゃああああああああん!!
 ジュディの無効化攻撃により、スーパー・ゴールデン・ゴーレムの統率スキルは使い物にならなくなった。それによって、大ボスの覇気が落ちたのだろうか。統一感を失ったザコ達は迷走する。
 コーテスがザコゴーレム達から連続でぶん殴られた。
「ぐはっ!! さすがに痛い……! この野郎……」
 マッチョ化したコーテスが殴り返し、殴り合いになった。
 一方で、ジュディは巨大な金のゴーレムと殴り合いをしている。
「グオオオオ!!」
「ヘエエエエイ!!」
 どがあああん! 莫大な金の拳とバリアを巻いた巨体の拳が火花を散らす。
 マッチョ対マッチョの究極の殴り合いが実現した。
 しかし、相手の方は15mもある。
 いくらジュディが巨体でも2m程度であるので、体格差はかなりあるが……力量は負けていない!
 ザコを倒し終えたコーテスはジュディと合流する。
 コーテスがバリアを張り巡らせ、ジュディはラッキーちゃんとの合体魔術を唱える。
「イーハー!! ジュディ・ナーガ・ヴァージョン、爆誕ネ!!」
 愛蛇と合体したジュディは足元が大蛇だ。
 蛇の精霊と化した今のジュディは移動力も魔力も上昇している。
 ジュディは金塊の巨大な足に尻尾を絡め、素早くその場でひっくり返した。

「ゴールドは、熱にウィーク(弱い)、デース!! ヘイ、ラッキー、コーテス、アー・ユー・レディ?(準備はいい?) 大爆発しマース!!」
「シャー!!」
「もちろん、援護……します!!」
 ジュディとラッキーの心がシンクロする。
 一心同体になった主従は爆撃の炎を生成して、大砲の集中砲火を炸裂させる。
 しかもコーテスが魔力をナーガに捧げる事によって、魔術攻撃力が飛躍的に向上したのだ!

 どっがあああああああん、どがががががああん、どっっかあああああああん!!

 強力を超えた強烈なフレアキャノンがクリティカルヒットで決まった。
 周辺のザコ達まで巻き込んでの大爆発だ。
 スーパー・ゴールデン・ゴーレムはジュディ達を前にして大敗北を喫した。
 魔装解除したジュディとラッキー、コーテスは一緒に勝利の踊りを踊った。

 その後、ジュディは、強敵だった物の本体にマジックタイヤセットを付け、運送班に引き渡すのであった。

***

 科学力のフィールドに守られたパワースーツの呉は、行動開始と同時に巨大なギロチンブーメランを敵勢に向かってぶん投げる。
「うおおおおお!! 突撃だー!! ロケットのパアアアンチ……いや、ギロチイイイン、ブウメラアアアアン!!」
 巨大ブーメランにぶっ倒されて、ザコゴーレム達がドミノ倒しになる。
 だが、撃ち漏らされた者、防御で凌いだ者、新しく沸いて来た者もいて、ぞろぞろとかかって来る。
「ゴーレムには、ゴーレムをおおおお、ですわ!」
 魔法少女アンナからは土塊のゴーレム・パンチが炸裂する。
 ゴーレム達と腕力を競い、殴り合いながら、アンナが側面から呉をフォローした。

 大ボスへ向かって行けば行くほど敵勢は増えた。
 呉はパワースーツの近接技も遠距離技もスキル回数を使い果たしてしまった。
 途中でアンナもゴーレム召喚の術で自分のコピーを造り出した。
 2人のアンナと呉の快進撃は続いたが、敵は増えて行く一方である。

「どうする、アンナさん? このまま敵が増え続けたら俺らの体力が尽きて押し切られるぞ!?」
「ですわね! では、速攻で大ボスを仕留めてはいかがでしょうか? 速攻で撃破した後、全力で逃げますわ!」
 そういう作戦になり、大ボスにたどり着くや否や、アンナが仕掛ける。
「ナマズですわよ〜!!」
 アンナはナマズキングを召喚して、大ボスを中心とする敵陣に大地震を起こす。
 ぐらぐらぐらぐらぐら……とすごい勢いで揺れた地面で大量のゴーレム達がこけた。
 そこでスーパー・ゴールデン・ゴーレムに一瞬の隙が生まれた。

「もらったぜ! そこか!!」
 レーザー光線発射改造されていた呉のパワースーツから高熱のレーザービームが発射された!
 倒れかけていた大ボスの左膝に強烈なレーザーの一撃が見舞う!
「グオオ!?」
 今度こそスーパー・ゴールデン・ゴーレムは膝をついた。
 そのはずだ。
 金属は熱伝導性が高い上に、高威力のレーザービームを受けては、関節が解けるからだ。

 態勢が余計に悪くなったチャンスに、アンナ姿のゴーレムが飛びかかる。
「ゴーレム・パアアアンチ、ですわああ!!」
 次は左肩関節を狙った!
 どぎゅううううううううん!!
 金属の高速弾が炸裂!
 アンナのゴーレムはこの一撃を最後にして打ち砕かれてしまった。
「なんの、こっちにもいますわよ!」
 今のは、囮だ。
 本物のアンナの方が、大ボスの右肩関節を狙い、土塊の拳の一撃で叩き落とす!
(例え相手が金属で武装していても、関節の細い部分を狙えば、斬れない事もないと思いますわ!)
 スーパー・ゴールデン・ゴーレムはアンナの狙い通り、右肩関節を負傷した。
 形成が逆転したかと思っていた所で……。
 どががががががが!!
 敵勢の猛攻により、呉がぶん殴られ、ぶっ飛ばされた。
 押し寄せて来たのは、アンナへも同じだ。
 アンナは即座にグランドクロス……土の防壁を張り巡らせて対抗する。

 何が起こったのか。
 スーパー・ゴールデン・ゴーレムはやられながらも統率スキルを駆使していた。
 戦い慣れした大物は、自身が動けないが、他のゴーレムを使って反撃しているのだ!
 敵の猛攻にアンナがぶっ飛び、戦場の場外へ押し流される。
「呉、ごめんなさい! 先に離脱しますわ!!」

 殴られた分を殴り返して態勢を立て直した呉は、粘り強くもレーザー攻撃だ。
(よっしゃあ……! 残りのレーザー光線で左右の肘関節も溶かして壊した……。敵はもう反撃すらできないだろう。だが、俺ももう大技は出せない……)
 既に大ボスはまともに戦闘できない所まで落ちぶれた。
 一方で、近くにいたジュディ班の方は決着が着いたようで、その動揺も手伝い、逃亡する敵が増えた。
 呉と一緒に戦っているモブも気が付けば8人から2人に減っている。
 呉は近くにいたフリーシーフ2人に呼びかける。
「かく乱はできるな? 頼みがある! 敵をかき回してくれ! その隙に俺は大ボスにぶちかます!」
 フリーシーフ達は最後の力を振り絞って、かく乱をがんばった。
 そのお陰で呉は大ボスの至近距離まで行けたが、その時と同時に味方モブは倒されてしまった。
「くらえ!! この一撃でどうだ!!」
 呉は既にグラビティ・ストライク等の回数を使い果たしている。
 いったい、何の大技なのだろうか、この拳の一撃は!?
 ぼろぼろになったスーパー・ゴールデン・ゴーレムはこの一撃でノックアウトだった。
 倒した後、呉は運送班へすぐに残骸を引き渡して全力で戦線離脱した。
 そう、このとどめの一撃とは、Sフィールドの装甲で全力体当たりをしたのであった。

***

 未来とトムロウのペアは、戦闘が始まると同時に洞窟の天井へ移動していた。
 未来は魔白翼とテレポートの力によって、トムロウは戦闘服と回転シューズの脚力によって。
 そして二人は、敵勢の射程が届かないこの天井を背にしてチャージする。
(ちなみに部下のモブ達はかく乱用として下で使役している)

 びり、びりびりびり、びびびびび、びいいいいいいいいいいい!!
 未来はエレクトリック・スターターの因子を覚醒させた。
 強烈な電流が彼女の身体を駆け巡る。

 びびびびび、ぴー、どがががああああああああああああ!!
 一方でトムロウも超能力はないが、イースタの科学技術電池によって電力を跳ね上げる。

「トムロウ、用意はいい?」
「おう、いつでも、未来ちゃん!」
『行くよおおお!(行くぜえええ!)愛のダブル・激・電磁砲!!』

 未来はトムロウから以前もらった愛用の電気銃を構え、トムロウも自らの痛アニメ柄の電気銃を構え、同時に、全力で、いや、全力超えで砲撃する!

 ぎゅるるるる、ぎゅいいいいいいいいい、ぎゅおおおおおおおおおおん!!
 がんがらがっしゃああああああん、どごおおおおおおおおおおおおおおおおん!!

 強化された二重の電磁砲攻撃という愛の稲妻が天井から真下に向かって直進撃する!
 もちろん、真下にいるのは、スーパー・ゴールデン・ゴーレムだ。
 激しい雷撃音と爆撃音を奏でながら、大ボスと周辺の手下達は即座に大崩壊してしまった……。

「お? やったかな、未来ちゃん?」
 トムロウはニヤリと笑って真下をじっと凝視する。
「ふふ、愛の力はすごいのだ! ん? ちょっと待って……! あいつ、まだ生きてる!?」
 さっきまで笑っていた未来が焦る……。

 とても良い作戦だった。
 敵の射程外の天井から真下へ二重の全力砲撃を撃てば、反撃を受けない上に、並みの相手であれば瞬殺できた事だろう。
 しかし相手はスーパー・ゴールデン・ゴーレムだ。
 強力な電気で金属を破壊された今も、まだ、持ちこたえ、反撃のチャンスを伺っているのだ!

 戦場は、天井へ向かって強烈な光が炸裂する。
 ゴールデン・フラッシュが凄まじい勢いで猛威を振るう!

「うお! しまった、目が!!」
 物理攻撃は射程外であるが、光の伝達速度と範囲を見誤っていたのかもしれない。
 トムロウは直撃ではないが、目をやられて天井のその場にうずくまった。

「きゃあ! 目が……!!」
 未来も直撃ではないが、目をやられてしまったようだ。
 しばらくの間は、光の衝撃によって何も見えない事だろう……。

 だが、なぜか未来は、超能力の愛刀を抜刀して、魔白翼を羽ばたかせ、真下に急降下する!
 無数の疾風を切り刻む激しい連続斬撃をもって、スーパー・ゴールデン・ゴーレムの頭部すらも砕き割って、撃破してしまった!

 事が終わった後、天井のすぐ隣に帰って来た相棒を見て、トムロウは驚いた。
「すげえよ、未来ちゃん! 心眼って奴か!? 見えなくても相手を気配で斬れるってか?」
 未来は首を横に振る。
「いいや、違うよ。さすがにまだそこまでできないかな? 今のは、電磁波を周辺に流して、物体間の距離を把握して、魔剣を放っただけだよ」
 エレクトリック・スターターは電気を操るので、こんな芸当までできるのだ。
 大ボスを倒し終えて敵勢が退いた後、未来は運送班に指示を出し、金塊の残骸を回収して貰った。

 さて、ここまででこの班はスーパー・ゴールデン・ゴーレムを3体倒した。
 今回の場合、1体でも倒せれば優秀な方だろうが、みんなで3体も倒すとは……。
 ヘビーゲーマーさんってすごい!

●運送解体班とさぼり班の前半戦(午前)

 狩りの2班が各自行動を開始したと同時に運送解体班も準備を始めた。
 この班はビーハイブ支配人の指揮下、ビリーやシルフィーが働いている。
 ビリーは安全ヘルメットをしっかりと被り、空飛ぶ愛船に通天閣のミニチュアを設置し、現場に大型スピーカーを置いた。
 大型スピーカーからは『木竜音頭』のアレンジ版が流れた
『あっ♪ 商売繁盛でぇ♪ 金塊持って来い〜♪』
 ビリーとCM分隊はみんなで木竜音頭を、竜の真似をしながら、それそれ♪と踊り歌い出す。
「ほな、皆さんを祝福しまっせ♪ 出てこいや、出てこいや、ゴールデン・ゴーレム♪ ボクら、もうかりまっか、おおきに、頼んます〜、せいせいせい♪」
 福の神の見習いであるビリーによる祝福の歌唱とダンスには幸運の上昇効果があったのかもしれない……。実は、狩りの2班がゴールデン・ゴーレムやスーパー・ゴールデン・ゴーレムにエンカウントした因果の一つとして、この儀式が関係していたとかいないとか……。

 ビリー達が愉快に歌って踊っている頃、ビーハイブ支配人はぱっぱと準備を終えていた。手元には巨大な出刃包丁がある。何気に魔物解体の免許すらもっているマッチョな支配人は、本日、この大きな得物でばきばきとゴーレムを解体するのだろう……。
 ところで、この班、実は人数が少ない。
 ユニークユニットを抜かすと、モブは10人しか人員が割けていない。
 ちなみに周辺にも20人いるが、彼らは支配人の班の護衛達なので、運送や解体そのものを手伝う訳ではないのだ。
「おい、人手が足りねえぞ? 誰かアイデアねえか?」
 支配人の呼びかけと同時に、シルフィーが何かを召喚していた。
 出て来たのは、魔炎の精達(NPC、いや、召喚獣?)だった。
「おう、俺達に任せてくれ!」
 5人の魔炎の精達は、それぞれが大きな剣を肩にかけて背負っている。
 踊りと歌が終わったビリーは、支配人の元まで帰って来ると、仰天した。
「な、なんやと? 魔炎の精さんって……何人もおったのか?」
 魔炎はきらりと笑う。
「ははは! 実は俺がユニークユニットではなく、量産型のモブNPCだった事は、みんなには内緒だぜ?」
 そういえば彼の名称は種族の一般名を指す「魔炎の精」であって、「太郎」とか「二郎」とか固有の名前が付いていない。
 とんでもない秘密が発覚したが、ビリーは、うはは、と笑ってごまかしたとか。
 それはそうと、シルフィーは鞭でぴしぱしと地面を叩いた。
「さあ、魔炎の精達、働きなさいよ! 支配人の解体や運送を助けるのよ!」
「あいあいさー!」×5。
 ともかく、人材不足も何とかなったようだ。

 解体は支配人とシルフィーと魔炎の担当になった。
 ビリーは愛船に乗って、お供達と共に運送を手伝う事にした。
 まず、通常狩り班の様子を見に行く。
 戦場では既に倒れているワスプモブ達がいた。
 体力不足でもはや起き上がれない者もいる。
 ビリーは船から降りて、肩回りと腰回りにちくり、と鍼を刺した。
「これで大丈夫や。あんさん、歩けるかいな?」
「ん? おお、なんとなく、起き上がれるぞ? おう、ありがとう!」
 こんな具合に、倒された上に撤退すらできなかったモブ達をビリーは次々と救ったのだ。
 どうやらモブから話を聞く所、この班は現在、洞窟中央へ戦いに行ったらしい。
 ビリーは再び船に乗り、現場へ急いだ。

 洞窟中央では激しい戦闘になっていた。
 クライン、マニフィカ、萬智禽等がどんぱちやっている最中だ。
 巻き込まれるといけないので遠くから見ていたら、ゴールデン・ゴーレムがあっという間に倒されたではないか。さすがやな、とビリーは感心していた。
 運送班のモブ達も来ていたので、ビリーはゴールデン・ゴーレムの亡骸の回収作業を手伝う。
「うんしょ、うんしょ……!!」
 モブ達は重そうだ。
 ビリーは力持ちのマッハ・ハイノシシを貸す事にした。
「ロープあるよな? こいつに持って行かせれば、運べるんとちゃう?」
 ビリーの思惑は上手く行ったようで、巨大な台車の上に金塊の亡骸を乗せ、ロープで括り付けられたゴンロクが引っ張っていく形で運搬する事になった。
 その後もゴールデン・ゴーレム達は次々と倒されたが、モブ達は手早く対応する。
 ここは任せても大丈夫そうやな、とビリーは戦場を後にした。

 ビリーは船で浮かびながら次は、大物狩り班を探す。
 道中でまた倒れているワスプモブがいたので、治療を施した上、情報を貰った。
 どうやら、この班は洞窟の左下の方で狩りをしているようだ。
 既に班は戦闘中らしく、ビリーは急いだ。
 さらに道中で倒れているアンナに会った。
「あ、あかんやろ! ぼろぼろやないか!」
 アンナはさっきまで呉と共に戦闘していたが、多数のゴーレム達に流されてはぐれてしまったようだ。その後、逃げ惑うゴーレム達に踏みつけられて、既にずたぼろで伸びていた。
 ビリーはアンナの魔法少女服の背中を開け、首、肩、背中、腰……と、要所に鍼とお灸をした。
「これで大丈夫なはずや! アンナさん、起きられるかいな?」
 すると、アンナがぴくりと動き、目を開けた。
「あら、ここは……!? え、ビリーですの? ……そ、そうでしたの……。わたくし、助けられたのですわね?」
 ひとまずアンナに応急処置を施したビリーは、彼女に支配人の元まで帰還して貰う事にした。負傷したまま手伝って貰うのも酷だと思ったからだ。同行のお供にはブルーカモメ改のマタザと冬の精のキチョウを付けた。
 しばらくすると、スーパー・ゴールデン・ゴーレム達すらも続々と倒されて行くのが確認できた。ビリーは一緒に来ていたモブ達と共にまた巨大台車の手伝いをする。
「ほな、回収しまっせ!」
 ところが、今度の金塊はあまりに巨体過ぎて重い! 持ち上がらない!
 そこでビリーは「神足通」を駆使して、テレポートで巨大金塊を浮かせた上、台車に転送した。今度の台車は重い物も楽に運べる魔術式の物なので運送に力はいらないようだ。
「おお! さすがビリーさん! ありがとうございます、このまま運んで行きます!」
 こんな具合で、何とか回収と運搬も上手くいったようだ。

 気が付けばもうすぐ昼休みである。
 各班の決着が着き、運送も終わった。
 解体現場では支配人と魔炎達が巨大包丁で巨大金塊をばきぼきと解体していた。
 ビリーは弁当支給の手伝いに回った。

***

 みんながみんな真面目に働いている訳ではない。
 中には、さぼり班という真面目に働かない人達の班もできていた。
 その中心にいる人物はリュリュミアだった。
 不真面目なモブ10人を引き連れて、岩陰で寝そべっていた。
 ところでこの大きな岩陰が曲者であって、どの班からも死角になっている。
 つまり、どの班もそれぞれ忙しい上に注意が向いていないので、さぼり放題なのだ!

 緑色の悪いお姉さんは、マギボトルから美味しい水をごくごくと飲んでいる。
 ぷはあ、と満足そうな息を吐き、楽しそうに戦闘を鑑賞している。
「今日のお弁当はどんなのかなぁ。リュリュミアはまかないが楽しみでお手伝いしてるんですよぉ」
 悪い子班のお頭がそうぼやくと、手下達は、そうだ、そうだ、と頷き、ぎゃははは、と大笑いした。
 誰か注意してくれよ、この不良達を!
 と、思ったあなたは健全だ。
 世の中には、悪い事をしていても不思議と注意されない事も多々あったりするのだ。

 リュリュミアは何を思い出したのか、すくっと立ち上がって、両手を振り始める。
「がんばれぇ〜! がんばれぇ〜!! うふふぅ……わたし達は応援班なのよぉ! 後で支配人とかから叱られそうになったらぁ、みんなもそう弁解するのよぉ〜」
 なるほど、悪い事をしているという自覚はあるようだ。
 しかも叱られた後のアフターケアまでも考えていた。
「がんばれー! がんばれー!」
「がんば、がんば!!」
「みんな、がんばるんだー!」
 モブ達は次々と立ち上がり、声を上げて、手を振って応援する。
『赤信号、みんなで渡れば怖くない』の精神がここで実現された。
 リュリュミアは、もはやこの班のカリスマと化したようだ。

●休憩(昼休み)

 午前中の仕事がどの班も終了して、ついにみんなが待ちに待ったお昼休みだ。
 ワスプ達は鉱山の出入り口付近で陣取りそれぞれが休憩に入る。
 ちなみに敵陣も休憩なようで、この時間帯は戦闘になる事はない。
 男と男のお約束みたいな物なのだろう。

***

「昼休みに入りまっせ〜! 弁当やで〜! 弁当、取って行ってなぁ〜!」
 ビリーはワスプのエプロンをかけ、首から弁当のトレイを吊るしている。
 そして方々を歩いて弁当を配り歩く。シルフィーや手下達も一緒に付いて回り、手伝う。
 本日は十八番の小槌は封印したようだ。
 せっかくのワスプからのご厚意のお弁当なので、ここは出番をワスプに譲ったのだ。

 ビリーからお弁当を受け取ったワスプモブ達は美味しそうにがつがつと一瞬で平らげる。
 中にはマナーが悪い人達もいて、サンドイッチ袋やペットボトルがその辺に捨てられていた。
「いけませんわね! お掃除ですわ!」
 アンナが箒と塵取りを持って、地面を掃いて、ゴミを回収する。

 そんな献身的なビリー、シルフィー、アンナを見ていたナイトが駆け寄って来た。
「ほら、おまえさんらの弁当と飲み物な、これ! 手伝ってくれるのは嬉しいが、おまえさんらも休憩取る時はちゃんと取れよ! 業務命令ですぜい!」
 ナイトからそう言われてしまうと、三人は休憩を取らない訳にもいかない。
「すまんな、心配かけてな? ほな、サンドイッチとお茶、頂くで!」
「あらら、メルシーですわ、ナイト? では、わたくし達も休憩しましょうか?」
「そうね、みんなで食べようか?」
 ビリー達は少し遅い休憩を一緒に取るのであった。

***

 未来とトムロウはお弁当を受け取ると、丸い小岩に隣同士で腰かけてサンドイッチを開ける。
 未来のサンドイッチはハム&チーズだ。
 トムロウの方はカツサンドだ。
「はい、アーン♪」
 未来はサンドイッチを持って、トムロウに食べるように勧める。
 トムロウは赤く照れて、じたばたする。
「お、おう!? こ、これが、恋人同士のはい、アーンって、奴か!?」
 未来に再度迫られて、カチコチのトムロウは降参して大口を開けて、ばくりと食べた。
 今度はトムロウから未来への「はい、アーン♪」が始まった。
 未来も恥ずかしそうにじたばたもがく。
 だが、ここは覚悟を決めて、ぱくり、と噛り付く。
 そんな激甘な恋人シーンを繰り広げていた二人だったが、「はい、アーン♪」の一口が終わった後は、各自のサンドイッチを猛烈に食べだした。
 午前中の激しい戦闘により、実はものすごくお腹が減っていたのだ。
 水分補給も忘れる事がなく、水分タブレットやスポーツドリンクで補給した。
 お腹がいっぱいになった後の事……。
「トムロウ、少し寝ておく? 午後に備えて体力回復はちゃんとやった方がいいよ?」
「おう? そうだな? あ、ごめん! 俺、枕を持って来るの忘れたや! その辺の岩を枕にしても頭がいてえしな……」
「大丈夫よ、トムロウ。ここに枕があるよ!」
 未来の太ももが枕とは!?
 再び赤くなったトムロウは恋人の特権を行使して、未来の膝枕で休む事にした。

 微笑ましい若いカップルだ。
 前回のマギ・ジスタン世界のイベントでカップル成立したばかりなので、まだまだ初々しい所があるアツアツの二人である。
 そんな微笑ましい光景を中年技師のおじさんはチキン・サンドイッチや水分タブレットを無表情で頬張りながら眺めていた……。
 そして、いきなり立ち上がり、両目から大量の涙を放射しながら叫んで、突っ走って行ってしまった!
「うおおおおおおおおお! 俺、うらやましくなんかないからなああああああ!!」
 フルーツ・サンドイッチと水分タブレットを食べていた萬智禽は、友人の奇行を目にすると、ごくりと勢いで飲んでしまった。
 そして、浮遊しながら全力で追い駆ける。
「おい、呉殿、待てー!! だったら、私の目玉で膝枕してくれてもいいのだぞー!!」
 新手のカップル成立となるか!?
 しかし、萬智禽には性別すらないのだ……。
 ふむ、前途多難か……。

***

『腹が減っては戦はできぬ』とは、フードファイターも兼ねるジュディやコーテスにとってはもはや常識レベルのスローガンだ。
 ジュディはご相伴にあずかり、ワスプ弁当を次々と平らげて行った。
 コーテスのハートに火が点いたのか、彼も同じ行動を取る。
 二人でがつがつとサンドイッチ弁当を何個食べた事だろう!?

 一通り食べ終えると、ジュディは隣の岩の席に座っているコーテスの首に腕を回す。
 彼女が飲んでいたマギボトルをコーテスに差し出した。
「ヘイ、ドリンク、ネ! 盃を交わすデース!」
「え、ええと……。サンキュー、デース! ……で、いいのかな?」
 コーテスはよくわからないまま盃を交わし、マギボトルをぐびっと飲む。
 これはもしや間接キスでは!?
 二人は未来とトムロウのように恋人ではなく、異性の「親友」というまた特殊な関係だ。
 ここにもまたひとつ、技師のおじさんが泣いてしまうような甘酸っぱい関係があった。
 コーテスはボトルを返すと、ジュディの胸元に目が行った。
 それは、決していやらしい意味ではなく、ジュディが首から下げているお守りに注意が向いた、という意味だ。
「あ! ジュディさん……。それ!!」
 ジュディは首からお守りを外し、ニヤリと笑い、ガッツポーズを取る。
「オウ、イエス! ユーがくれたお守りネ! 大事にしてるデース!」
 そう、それは過去にコーテスがジュディに手渡した物だ。
 ジュディが肌身離さず大事にお守りを身に着けている様子を見て、コーテスは素直に感動していた。

***

 クラインは午前中に自分と同じ班だった者達を集めた。
 午後の戦闘に備えてモチベーションを上げる為、コミュニケーションを取ろうと思ったからだ。
 だが、全員は集まる事がなかった。
 萬智禽は呉と一緒にどこか遠くで食べているらしく、モブ達に関しては大半が既に戦闘から離脱して帰ってしまったからだ。
 それでも、マニフィカ、ティム、モブ数人が集まったので、一緒に昼食を取る。
 クライン達がビリーからお弁当を受け取ろうとしたら、ティムがある事を呼び掛けた。
 実はティムはティムでお弁当を作って来ていたからだ。
 当日、同じ班になる人達にお手製のホットドッグを配ろうと考えていたらしい。
 マニフィカはその話を聞いて思わず嬉しくなる。
「いいですわね、それ!! ぜひ、わたくしもティムさんの特製ホットドッグを食したいですわ!」
 クラインも、それならばお願いしますわ、という事でティムから特製弁当を受け取る。
 モブ達もご相伴にあずかった。
 マニフィカは久しぶりのティム・ドッグの味を味わい、頬っぺたが落ちそうだった。
「そう、これですわ! このお味! 良い焼き加減の肉厚ウィンナーがジューシーですわね。それに野菜、特製タレ、パン生地も相性が抜群で手作り感がまた良いですわ」
 マニフィカが褒め称えると、ティムは、えへへ、と笑って照れていた。
 あのマニフィカがそれだけ褒めるのだ。きっと美味しいはずでしょう、とクラインもぱくり、と一口食べる。一口食べた後、感想を言うつもりだったが、美味しすぎて食が止まらなくなってしまった!
「あ、あら、ごめんなさい、ティムさん! ついつい全部食べてしまいましたわ……。それにしても素晴らしい料理スキルですわね? これならば将来、ワスプでのコック出世も夢ではございませんでしょう?」
 するとティムは少しはにかんだ様子でこう答える。
「いや、実は出世コース志望じゃないんですよね、僕……」
 ティムは将来、ホットドッグスタンドの経営者を目指しているのだ。
 彼が熱く夢を語り、その夢を知っているマニフィカは今までの経緯を補足した。
「あら? 経営者を目指していらっしゃるのね? 実はわたくし、こう見えても、交易会社の社長ですわ! よろしくてよ、ティムさん! ホットドッグのお礼に後日、経営学の基礎をレクチャーして差し上げますわ!」
「わあ! 本当ですか! 嬉しいな!」
 さて、話も良い感じの所でお昼休憩は終わりに差し掛かっている。
 水分のサプリも採った後、クラインは戦場へ帰る前に激励を入れる事にした。
「皆さんの動きは実戦慣れしていて、とても素晴らしいですわね! 午後も共にがんばりましょう!」
 昼食を共にした仲間達は、えいえい、おー!! と、合唱するのであった。

***

 ついにさぼり班のさぼりがバレてしまった……。
 原因は、支配人がスタッフの数のカウントを始めた事による。
 午前中に護衛班の人数が著しく減ったとの事だった。
 20人いた護衛班は今では半分以下に減った。
 これは、モブらが戦闘で倒されてしまったからだ。
 それならば、倒された分、他の班の余りから調達して数を合わせようと考え至るのは、ごく普通の流れだろう。
 ただ、支配人はどこの班から人数を回して貰うべきなのかを詳しく調べた所、どこの班にも所属していなかった人が11人もいた事を発見してしまったのだ!
 昼食中であろうが何だろうが、支配人の怒りは収まらなかった。
 雷オヤジの如く、支配人の頭上からは強大な稲妻がぴしゃりと落雷した。
「こらー!! 午前中、さぼった奴ら、いただろー!! そいつら全員、昼飯抜き! 午後は根性を鍛え直してやるから護衛班をやれー!」
「うひゃー! ばれちまったよー! 逃げろー!!」
 さぼり班は蜘蛛の子を散らすように逃げた。
 だが怒り狂っている支配人は瞬く間に10人も捕まえて、護衛班へ連れて行ってしまった。

「さぁてとぉ……。午後もさぼっちゃおぅ〜!」
 逃げ延びた悪い子お姉さんは植物系のスキルを駆使して即席でハンモックを作った。
 今度は死角の岩陰どころか、天井から蔦を張り巡らせて特等席を自作。
 ここならば、誰からも邪魔されずお昼寝ができる事だろう……。
 リュリュミアはトマトとレタスのサンドを食べた後、ハンモックに揺られて、うたうたとお昼寝だ。

●後半戦(午後)

 午後に入り、狩りの後半戦が始まった。
 狩りの2つの班は前半でアイテムやスキルの大半をそれぞれ使い切ってしまっていた。
 なので、後半戦は緩くやろうというムードがどちらの班にもあった。
 実際、どちらの班も割と近場でぼちぼちと狩りを再開した。

 後半戦が開始してからそんなに時間が経たないうちに、とある異変が起きた。

 どががががが、どっがああああああああああん!!
 地面が爆発して、スーパー・ゴールデン・ゴーレムがマッチョポーズで現れた。
 この現れた場所がまたおかしい。
 なんと、支配人の班が解体をやっている所に現れたのだ!
 多数のゴーレム配下達を引き連れて現れ、運送解体班に奇襲を仕掛けてくる!

 異変をすぐに察知した支配人は血相を変える。
「おい、なんだよ、それ! 護衛班は何してる? てか、俺の班、みんな無事か!?」
 そう、護衛班が何をしているのか? と、いうのがまず問題だ。
 前半戦ではワスプモブ達が引き受けていたが、昼休みのカウントの時には20人いた護衛が5人に減っていた。
 そしてさぼり班から人員を調達して、現在、15人の護衛モブがいたはずだ。
 さぼり班から連れて来たのがいけなかったのか?
 いや、彼らは彼らで後半戦は心を入替てちゃんと護衛の位置で戦っていたのだ。
 しかし、相手が悪い。
 スーパー・ゴールデン・ゴーレム率いる各種ゴーレム軍団が現れては、対抗する術などあるはずがなかった。なぜなら、この班の構成員は、皆、名もなきモブの集まりだからだ。

 護衛班が全滅すると、敵勢が次に運送解体班を襲い出す事は想像に難しくない。
 あまり頭の良い魔物ではないが、戦のセオリーは戦い慣れしてわかっている。
 敵陣の陣地に王手をかければ戦争は勝利できるという事を。

 現れたゴーレム軍団の猛攻により運送解体班も一瞬で半壊した。
 残っているのは、もはや、ビリー、シルフィー、魔炎達、支配人だけだ。
 ビリーの今日の上司は支配人だが、いつものクセで隊長に判断を仰いだ。
「隊長、どうすればええねん?」
 シルフィーも即席の判断が求められる事態なので支配人をすっ飛ばして指示を出す。
「ビリーは狩りに出た2班に撤退を告げて来て! 魔炎達はあたしと一緒に今、この場の魔物達をくい止めて!」
 支配人は怒るどころか感心して話を聞いていた。
「よっしゃ! んじゃ、今日は撤退だが、あとは任せたぜ! 俺はその辺で倒れている手下共を回収したらずらかるからよ!」
 各自の役割が決まり、撤退に向けて動き出す……。

 結局、陣形の配置ミスによって、後半戦はワスプ陣の敗退となった。
 ビリーが撤退勧告に向かった時、戦場では2班が合流して戦っていた。
 敵陣の軍勢に囲まれてしまっていた、との事だった。
 その敵陣は陽動部隊であったのだろう。
 スーパー・ゴールデン・ゴーレムが多数のゴールデン・ゴーレムを連れて出現したので、狩りの2班は、皆、血相を変えて必死に戦っていたのだ。
 ビリーが勧告しに来なかったら、このまま全滅プレーをしていたかもしれない。
 残念だが、自分の命、仲間の命、ワスプ側の都合も優先しなければならない。
 全員で退路を開くや否や、一目散に逃走して、鉱山の出入り口まで駆け抜けたのであった。

●宴

 後半戦は負け戦になったものの、今回の狩りでワスプはかなり稼いだ。
 ゴールデン・ゴーレムを10体倒した。
 これは換金すれば100万マギンだ。
 スーパー・ゴールデン・ゴーレムを3体倒した。
 これも換金すると300万マギンだ。
 つまり、換金した結果、400万マギンが即日で手に入った事になる。
 これはまずまずの儲けだ……。

 後日、狩りのお疲れ様会の宴が開かれる事になった。
 本日の宴を開く事を提案した人物は、萬智禽・サンチェックだった。
 会場はもちろんワスプ貸し切りで、萬智禽は代表して会の挨拶から始める。
「本日は、ゴールデン・ゴーレム狩りのお疲れ様会なのだ。主催提案者として、まずは皆にお疲れ様、ありがとう、と挨拶をさせて頂く。
 そもそもの始まりは、仕事が終わったら、ゴーレム狩りの自分への報酬はワスプへ寄付……と思っていたのだが、ちょっとした閃きがあって、考え直したのだ。相談に乗ってくれた呉金虫と一緒に、自分達の報酬分全てを大盤振る舞いして、沢山の豪華な料理や菓子や酒の出る大宴会を開き、労をねぎらいたいと思ったのである。
 会場はもちろんワスプである。ワスプに全額寄付するだけならば、ワスプが潤うだけだが……。宴会にすれば料理の材料や酒を用意する商人や外から呼んだ者達にもお金が使われるのである。『マギ・マンショック』で閉塞した空気を解放する為にも、金はバンバン天下に回した方がいいのである。そういう事で……乾杯!!」
 目玉の軍師がビールジョッキを念力で2杯浮かせ、空中で涼しい音を演出する。
 皆、それぞれが飲み物のグラスを取って乾杯をする。
 成人のほとんどは酒で、未成年はソフトドリンクで。
 盛大な乾杯があった後、萬智禽は皆から拍手で感謝されたという。

 萬智禽は先ほどスピーチの中で言っていた。『呉金虫と一緒に』今回の宴の開催を決め、共に稼いだ額を寄付したのだ、と。
 呉は、今回の功績と金回りの良さを武器に多数の女性を集めて、バカ笑いしながら飲み暮れている。ちなみにこれらの女性とは、ワスプモブだったり、不況をくらった飲食街周辺の女性達だったりする。ともかく、ありえないぐらいの女性が呉に群がって、皆で仲良く楽しくお酒でフィーバーしていたのだ。
「がはは! ついに俺の時代が来たぞ! 俺は、今、成功の絶頂にいる! さあ、皆の者、今宵は天才科学おじさんの呉金虫を崇め讃える飲み食い騒ぎをするぞー!」
 女性達は、今をときめく輝かしい呉に対して黄色い声で絶賛していた。

 呉が男の浪漫を遂げていた所を間近に見た青年達は興奮していた。
 トムロウが呉の群れに割り込んで行く。
「うおおおお! 俺も混ぜてくれえええ! 俺も綺麗なお姉さん達と遊ぶぜい!」
 コーテスが急いで続く。
「トムロウ君、抜け駆けは……良くないよ! うおおお……僕も……フィーバー……!」
 そこで電撃の衝撃がトムロウを貫いた。
 びびび、びりびりびり……トムロウが感電死する勢いだ……。
 未来が引きつった顔で笑っていた。
「うふふ……。トムロウはわたしとジュースを飲むんだよね?」
 がしり、コーテスの襟首をジュディが捕まえた。
「ヘイ、コーテス! バッドなアダルト(悪い大人)の真似はノー、デース! WAHAHA、ジュディと飲むデース!」
 その後、ジュディとコーテスはフードファイト宴会になったとか……。

 夜も更け、裏方ではビリー、アンナ、リュリュミアがお手伝いしていた。
 ちなみにシルフィーは研究所の方の都合があり、手伝い終えると先に帰った。
 ビリー達のお手伝いのお陰で裏方はだいぶ回転が良かったらしい。
 ナイトがやって来て、3人にウマドランVを手渡した。
「素晴らしくもくだらないこのマギ・ジスに乾杯! ……なんて、昔のCMであったなあ……。てか、おまえさんら、えらすぎ! 本来ならば祝福されるべきゲストだぜい? それなのに手伝ってくれて、泣けるぜ!」
 Vを受け取ってビリーはごくりと飲み干す。
「せやな。素晴らしくもくだらないワスプに乾杯や! ナイトさんら、誘ってくれておおきにな。今回の試練を経て、ボクはまた一層、福の神に近づいた気がしたで……」
 アンナとリュリュミアもVで乾杯した後、ごくりと飲み干す。
「ところで、リュリュミア? ひとつ、よろしいかしら? 先日の狩りでは、リュリュミアはどこの班にいらしたの? 全然、お姿を拝見しませんでしたけれど?」
 リュリュミアは、ぱあっと笑顔で答える。
「もちろん、応援班よぉ!」
「へぇ〜。そうでしたの? そんな班がありましたの? お疲れ様ですわ」
 アンナは悪友にだまされた事を知らない。
 2人はまた一段と悪友の仲が深まってしまったようだ……。

 カウンターではマニフィカとクラインが飲んでいた。
 マニフィカよりもクラインの方が酒に強いという訳ではないのかもしれないが、凄まじい勢いでお酒を飲んでいた人魚姫は早めにでき上がってしまった。
 そこにティムが介抱しに来る。
「ほら、マニフィカさん! しっかりして! ワスプの宿に泊まって行きますか?」
 マニフィカは、うふふ、と妖艶に笑った。
「あら、ティムひゃん、いけまへんわよ? としうえのじょせいに、おとまりなんて……!」
 ほにゃほにゃと言うマニフィカに対して、ティムは、ふう、とため息をつく。
「いや、違います! 決してお泊りを誘っていません! 僕が言いたいのは、帰るのが無理であれば、ワスプの宿で休んでいったらどうですか、という意味でしてね……」
 マニフィカはスースーと寝てしまった。ティムは無言で毛布を優しくかけてあげた。

 そんなやり取りを見ていたクラインは微笑していた。
 その後、近くにいた支配人に声をかける。
 支配人は今、カウンターでバーテンダーをやっているのだ。
「ところで支配人。ワスプの再建には目途が立ちそうでしょうか?」
 歴戦のオヤジさんは、わはは、と笑いながらカクテルを作る。
「とりあえず、お金は手に入った。『マギ・マンショック』も一時的な経済現象なんで、そう長くは続かないだろう……。今回、手に入ったお金を元手に何とかしてみるさ!」
「そう、ですか……。ところで、『何とか』って、どうやってですの?」
「そりゃあ、『何とか』さ。うちは良い意味でいい加減だからな……。がんばれば、いつも、『何とか』なるのさ」
「あら、支配人? 経営学は学問ですわよ? 『何とか』で何とかなるほど甘くはないですわ?」
「いや、だからな、『何とか』さ……」
「はぁ、支配人……。そもそも、経済学には『ストック』と『フロー』がありましてね……。今のワスプに足りないのは『ストック』ですわよ? そもそもあなたの会社、まともに『ストック』、つまり、『貯蓄』がないままでその場のノリでお金をばらまいていらっしゃるでしょう?」
「う……。お姉さん、鋭いなあ、あはは……」
 その後、支配人はクラインによって、みっちりとお金のレクチャーを受けた。
 後日、クラインがワスプの経営アドヴァイザーに就任した事は、また別の話。

 狩りに参加した者達のそれぞれの夜が更け、素敵なパーティは幕を閉じた。
 ワスプは今回のピンチをチャンスに変えた事で、倒産を回避したどころかさらに勢いが増す冒険者ギルドへと様変わりしたとの事。ワスプが再建した頃には、世の中の『マギ・マンショック』という真夜中も明けていたようだ。
 ゴールドには幸福がある。
 昔の偉い誰かもそんな事を言っていたとか、いなかったとか……。

 了