ゲームマスター:夜神鉱刃
もくじ ●ディスクI:各エリアの決戦(攻略エリアA、B、C、D)前半戦 I-1「攻略エリアA(VS科学的革命残党分子)前半戦」 I-2「攻略エリアB(VSスケルトンロード・キング)前半戦」 I-3「攻略エリアC(VS霊体土偶)前半戦」 I-4「攻略エリアD(VSドッペルゲンガー・ボム)前半戦」 I-5「モブNPCたちの状況その1」 ●ディスクJ:各エリアの決戦(攻略エリアA、B、C、D)後半戦 J-1「攻略エリアA(VS科学的革命残党分子)後半戦」 J-2「攻略エリアB(VSスケルトンロード・キング)後半戦」 J-3「攻略エリアC(VS霊体土偶)後半戦」 J-4「攻略エリアD(VSドッペルゲンガー・ボム)後半戦」 J-5「モブNPCたちの状況その2」 ●ディスクK:最終決戦 K-1「攻略エリアE(VSガイスト将軍)前半戦」 K-2「攻略エリアE(VSガイスト将軍)後半戦」 ●ディスクL:後日談 L-1「みんなの慰霊祭 ●ディスクI:各エリアの決戦(攻略エリアA、B、C、D)前半戦 I-1「攻略エリアA(VS科学的革命残党分子)前半戦」 参考1:B3(地下3階・最終階層)の戦略マップ ![]() 参考2:攻略エリアAの戦略マップ ![]() 「ここから先は一歩も通さねえ! 科学的革命の名の下に、ガイスト将軍(NPC)の名に賭けて、てめえらを処刑する!!」 戦闘開始直後、エリアAからエリアCへの唯一の通路を遮ったのは、科学的革命残党分子のボス・ヴァイス・フォイエルバッハ(NPC)であった。 彼は、怪しいパワースーツを全力で機動させると瞬時に連絡通路へ到達した。 手下の分子4人を左右二人ずつ引き連れて、5人で通せんぼする。 「よお、インチキ科学者どもよ!? 俺様がフレイマーズ大学最強の科学者ってことを知っていてその狼藉かよ? いいか、ザコども!? 今から俺様が科学の奥義を放つ! すげえやべえ切り札の奥義を放つ予定だから、おめえら全員即死するものと思え! さあ、逃げるなら今だ! うおおおおおおおお、行くぞおおおおおおおお!!」 最強クラスの奥義を放つと豪語し、かめ●め波のような恰好でかっこつけるのは、フレイマーズ大学の心霊科学教授であり冒険家のジョン・ジョンソンズ(NPC)だ。 「ボスゥゥゥ!! 逃げやしょう!! こいつ、なんかやばいっすよ!!」 手下の分子たちに動揺の波が走った。 みんな慌てる中、ヴァイスだけが冷静に対処する。 「落ち着け、野郎ども!! どんな奥義かは知らねえ。だが、俺らのパワースーツには『サイエンティフィック・フィールド』がある! コマンド・防御、でフィールドを張れば防げることだろう。俺らの科学力には不可能がないからな、がはは!!」 ヴァイスたち分子は、全員がフィールドを張り巡らせ防御態勢に入る。 一方、ジョンソンズの全身からはすさまじい紫色の霊気がうごめき……。 彼の両手に抱えられている波動砲がヴァイスたちに向かってぶちまけられる!! 「くらええええええええ!! サイエンティフィック・クラスター・ジョンソンズ・ミレニアム・プレミアム・ウルトラ・メガバスター・フレア・ダイナマイト・スペシャルゥゥゥ!!」 その瞬間、ジョンソンズの半径50メートルの範囲内において、紫色の霊波動が猛速度で吹き荒れ、悪霊たちを消し去るかのように燃え盛る! ジョンソンズの「奥義」を見守っていたアメリカン・レディのジュディ・バーガー(PC0032)は、事のてん末を理解し、うぷぷ、と口を押えて笑い出す。 実は、彼女も同じ「奥義」を持っているからだ。 「奥義」の実態を見抜いたのはジュディだけではない。前回もジョンソンズと共闘してお互いのスキルを知っているリュリュミア(PC0015)も瞬時に察知した。彼女は連携を合わせるべく、ドッペルゲンガーを早々と召喚し、「ブルーローズ」を構える。 「さあ、今のうちよ、みんな!! 突撃!!」 調査部隊の妖精隊長のシルフィー・ラビットフード(NPC)もジョンソンズと長年の付き合いから、彼が何をし出すか理解していた。 「奥義」に「害はない」と確信した上で、仲間たちに命令を下す。 調査部隊と異世界人たちは、この混乱のすきに全力で走った。 紫の霊波動が吹き荒れる中、ヴァイスたちは未だに防御態勢を崩せない。 このチャンスに付け入り、友軍の大半はヴァイスらを通り越して、エリアCへ逃げることができた。 「うわあああん! ボス―!! すんません、逃げられましたー!」 分子のひとりが慌てふためく。 「ちっ、逃げちまった奴らは仕方ねえ! ガイスト将軍の配下にでも始末を任せよう! だが、ここに残っている奴らは何としても俺らで食い止めるんだ!」 やがて紫の波動が吹き終わると、「何も起こらないこと」がわかった。 「ん!? なんだったんだ!? 何も起きねえぞ!? あ、しまった、ハッタリかよ!!」 ヴァイスが、気がついたときには既に遅すぎた。 除霊系のスキルである「ゴースト・ブレイカーVer.マップ兵器」がヴァイスたちに効くはずがないのだ。ヴァイスたちはもちろん幽霊の類ではないからだ。 「がはは!! どうだ、俺様のハッタリは!!」 ジョンソンズが得意になってバカ笑いする。 さすがのヴァイスもこれにはカッとなった。 敵のハッタリにハマって、防御態勢を取らされ、調査部隊や異世界人たちを何人もみすみすと通過させてしまったミスは痛恨の極みだ。 「おい、裏切り者! てめえから処刑してやる!」 科学的革命残党の5人は集結し、ジョンソンズを襲い出す! しかし……!! がちゃこん、がんがら、がしゃん!! 分子の2人が突然、こけた。 どうやら足元で植物の蔦にひっかかったからだ。 「ナイス・ジョブ、リュリュミア!!」 ジョンソンズがグーのポーズを出した。 今回もまた時、既に遅し。 ドッペルゲンガーを出して2人になったリュリュミアは、エリアAの部屋中に「ブルーローズ」のバリケードを張り巡らせていたのだ。 今ではこの部屋はちょっとした樹海だ。 分子たちが逃げないようにエリアCへの通路や階段も青バラで塞がれている。 なお、以前の魔炎戦と同じく、リュリュミアの姿は既になかった。 ヴァイスたちがカッとなってしまったのが運の尽きだ。 分子たちは5人とも「ブルーローズ」にからめとられていた。 「ボス―!! 助けて―!!」 慌てる分子たち。 ヴァイスは冷静さを取り戻し、「ギロチンブーメラン」を駆使して蔦を切り裂いた。 「あ、なるほど! さすがボス!!」 分子たちも真似してギロチンで蔦を解除する。 すると、今度は突然、レーザー光線が襲って来た! ずきゅううううううううううううううん!! 「うぎゃああ!!」 分子のひとりの顔面に直撃した。 「ふはは!! 計算通りだぜ!!」 レーザー光線を放ったのは、中国系技師の呉 金虫(PC0101)である。最終回では、ずんずりした暑そうな身体がアラビアンナイトの衣装に包まれている。 そう、彼は今、レーザー光線持ちなのだ。 クローネ・クリーナーをシナリオ開始前にちゃちゃっと改造して、「レーザー光線発射機能」まで付けてしまったという。 クリーナーを両手で抱えながら、呉はまた樹海の中に潜伏するため逃げた。 「ボス!! 俺らハマっちまいやした! どうしましょう!?」 分子たちは今、袋のネズミだ。 方々から叩かれるしかないのだろうか!? 「バカ野郎! 頭使え! 全員で『グラビティ・ストライク』だ!! まずは樹海から片す!!」 「うおおおおおおおお!! やってやりまさああああああああああ!!」 分子の5人はびびっとチャージした、パワースーツの拳から「グラビティ・ストライク」を放った! 大地を揺るがす強烈物理攻撃が地面を、壁を、樹海を揺るがす! どがどが、どかああああああああああん! どがどがどが、どかああああああああああん、どがどかああああああああああああん!! もちろん、破壊中にPC軍は何もしていないわけではないだろうが……。 蔦が爆殺で消える頃、リュリュミアたちがじゃんけんしていた。 「次はぁ、どっちが先に行きますかぁ……じゃんけんしましょうかぁ! じゃーんけーんぽーん、あーいこーでしょー、あーいこーでしょー!!」 仲間割れをしていた。 疲れたからだ。 どちらが次の攻撃を仕掛けるかでもめているようだ!? 「がはは! もらいましたな、こいつは!!」 分子のひとりが「グラビティ・ストライク」で飛びかかって来た。 「待て、そいつは罠だ!!」 ヴァイスが止めるのも遅く、分子は飛びかかってしまった! ずきゅううううううううううううううん!! レーザー光線がまたどこかから飛んで来た! 罠にハマった老人のひとりは、光線に撃たれてこけた。 「おい、まずはあのずんぐりした奴をやっちまえ!!」 ヴァイスが光線発射元にブーメランを投げたとき、そこに呉はいなかった。 クリーナーを爆発させて仕留めただけだ。 「やーい! バーカ、バーカ!! ここまでおいでー!!」 次に現れたのはティム・バトン(NPC)少年だ。シーフだが今日は、アラビアンナイトの姿である。お尻をぺんぺんしながらヴァイスたちを挑発する。 「野郎!! あいつをやっちまえ!」 ヴァイスたち4人(ひとりはコケている)が一斉にティムに飛び抱える。 機動力を高めたパワースーツをもって高速度で追いかけるが、ティムの超高速ムーブには追いつけない!! ちょこまかと逃げ回るティム。 次第に樹海が復活したらしく、分子たちは蔦に足をひっかけられて次々と脱落。 「はあ、はあ……。やっと追い詰めたぜ!」 もはや後がない。 ヴァイス一人だけが残ったが、ティムは壁際の隅に追いやられていた。 今、まさに「グラビティ・ストライク」が放たれるその瞬間……!! 『べとべとべとおおおおおおおお、ばびょおおおおおおおおおおおおん!!』 空から金色の巨大スライムが降って来た! べちゃべちゃべちゃべちゃあああああああああああああ、と分子たちめがけて飛び散る! 「ぬおおおおおおおおおおお! 猛烈ですなああああああああああ!」 分子たちの約半数が「ベトベトスライムキング」の術にはまった。 ティムに気を取られて油断していたヴァイス、呉の新たなるレーザー光線に気を取られていた2人、合計3人が粘液で行動不能になった。 「ボス!! 今、助けやす!!」 残る部下2人がスライムを解除しようとするが……。 「おっと! 動くな! 今、俺様は『冒険家七つ道具』のひとつ、『グレイテスト・ツインバスター・ハイパー・スコーピオン・ミラクル・ショットガン』を召喚した。こいつに撃たれたが最期、人生がジ・エンド! それでも動くか!?」 たぶん、また何かのハッタリなのだろう。 だが、万が一というときもある。 分子の一人は焦って動けなくなった。 「おっと、あんたも動くな! 俺もさ、すげえ改造施したんだわ。『ザ・ウー・スペシャル・チャイニーズ・マフィアもビックリ・スペリオル・サイバー・レーザー光線』に撃たれたくなかったら、一歩も動くな! こいつに撃たれるとな……変態は死ぬんだ!!」 呉は、何の変哲もない改造つきクローネ・クリーナーを両手に抱えて脅迫する。 分子のもう一人も動けなくなった。 「ぬおおおおおおおおおおお!! 科学的革命残党をなめんなああああああああ!!」 ヴァイスは激怒した! ベトベトで動けないパワースーツを逆起動させ、スーツもろとも真っ赤に燃え上がる! 「やべえ! あいつ自爆で大爆発する気だ!!」 呉が焦って叫んだ。 技師の彼だからこそわかる科学者の最後の手段だ。 科学兵器でこの場で大爆発されたらここにいる全員が危険にさらされる! 「そらよっと!!」 ヴァイスのすぐ近くにいたティムが、ヴァイスから何かを盗んだ。 一瞬だけ、ちらり、と霊魂のようなものがヴァイスから浮かび上がり、ティムはそれをひょいと盗んだ。 「お、おい、何を盗んだ、てめえ!? ん……う、うおおお、ひょろひょろおおおお……」 ヴァイスがひょろけてしまった。 爆発準備も収まり、もはや動くことすらできなくなった。 「やる気を盗んだのさ! やる気がなくなると……なんかやるせなくなるよね?」 ヴァイスがぐったりと倒れ、うち分子2人はスライムにハマり、さらに2人は今、銃器を突きつけられて動きが取れない。 勝負はあったのか!? そこで今度は、地面から異次元の穴が開き、此度の指揮官マニフィカ・ストラサローネ(PC0034)がひょっこりと出て来た。(リュリュミアの配下であるアリ地獄モグラ改のスキルを借りている) 人魚姫は涼しそうだ。アラビアンナイトの服装だからというのもあるが、異次元で避暑していたし、何しろ今は配下の水精霊ウネ(NPC)らが環境改善もしてくれている。 そう、彼女は今の今まで、最終戦に備えて体力と気力を温存していたのである。 (なお、ベトベトスライムキングやティムを放ったのはマニフィカの功績だ) 人魚姫は、悲しそうに、落ちぶれた科学者に語りかけた。 「ヴァイスさん……。ちょっと考えてみてくださいませんか? 格上のガイスト将軍を組織に迎えるということは、指揮下に入るのも同然ですわ。アンデッド化への志願、実質的な自殺を要求されるはずですわね。あなた、人間を辞める覚悟はおありですの?」 マニフィカに説教されると、ヴァイスは、ぐはは、と力なく笑った。 「お、俺らは……。泣く子も黙る、鬼っ子、科学的革命残党分子!! ガイスト将軍にジーク・ハイル!! 将軍が仲間になるなら……アンデッドにだって……なってやるぜ!!」 この口答えにはさすがのマニフィカも恐れ入ったようだ。 ティム少年にやる気を盗まれているはずなのに、この男はまだ無駄口が叩けるらしい。 その元気と意志をもっと別のことに使えればよろしいのに、と姫はあきれていた。 「ねぇ、マニフィカ!? こういうおバカというかぁ、変態にはぁ、もっとぉ、ふさわしいーお説教がぁ、あるんじゃなぁい!?」 既にドッペルゲンガーの方は時間切れでいなくなっているが、本体のリュリュミアには何か提案があるらしい。 「こうするのよぉ!!」 リュリュミアは「ブルーローズ」の鞭でヴァイスをびしばしと叩いた。 称号「変態討伐隊」が機能して、ヴァイスの全身にビリビリと電撃の「麻痺」が走った。 ヴァイスは科学を偏愛する変態なのでこのスキルが有効なのだ! 「ぐはあ……。ヴァイス死すとも、科学的革命は死なず!!」 ヴァイスは自爆装置を起動させ、どの道、自爆して散って行った。 どっかあああん!! 「ボス―!!」 分子たちも続いて自爆した。 どっかあああん!! 呉は自爆の程度具合というか、爆発の色や煙幕の量とか、色々と見て思うことがあったようだ。 「みんな、先に行ってくれ! 俺はちょっとやり残したことがあるのでここに残る!」 呉ひとり残して大丈夫だろうか!? どの道、ガイスト将軍を撃破しなくてはならないので、ここに残っている場合でもない。 「了解しました! すぐに追いついてくださいね!」 マニフィカは先を急いだ。魔竜翼を装備し、飛び立つ。 「ねぇ、ジョンソンズゥー!! おんぶぅー! 疲れたぁー!」 リュリュミアがジョンソンズの背中に飛び乗った。 「ふっ!? 男に背中で語れってか!?」 謎のオヤジギャグを放ち、ジョンソンズがリュリュミアを背負うことになった。 ジョンソンズは、筋力はあるし大柄なので問題はない。 リュリュミアも魔導ラクダの代わりができてご満悦だ。 「んじゃ、僕もマニフィカさんについて行くね!」 ティムも移動行動に移った。 そこで……。 むぅぅうううううううううううう、しゅぱあああああああああああああん!! 鉄板が高熱で発光して熱風が飛び交った。 「ちっ、地形ペナルティかよ!?」 呉が苦しそうに声を上げた。 飛行中のマニフィカ以外のみんなが地形ペナルティを直に受けた。 ただし、味方NPCの風水師などの軽減効果により威力は中程度。 なお、マニフィカは飛んでいて火傷ダメージを受けないだけであって、熱風の暑さは免れなかった。 *** ★モブNPCたちの初期数値など 初期の魔導ホタルの数:41匹 初期のクローネ・クリーナーの数:3台 初期の魔導ホタルのエサ:0個 PCたちの購入により、以下の味方NPCモブの数 ・魔導ホタル ジュディ・バーガー:20匹購入 ビリー・クェンデス:20匹購入 マニフィカ・ストラサローネ:20匹購入 萬智禽・サンチェック:10匹購入 呉 金虫:6匹購入 姫柳 未来:20匹購入 新規購入分:96匹 現時点の合計:137匹 ・クローネ・クリーナー ジュディ・バーガー:5台購入 ビリー・クェンデス:5台購入 マニフィカ・ストラサローネ:5台購入 姫柳 未来:5台購入 新規購入分:20台 現時点での合計:23台 ・魔導ホタルのエサ ジュディ・バーガー:10個購入 ビリー・クェンデス:10個購入 マニフィカ・ストラサローネ:10個購入 萬智禽・サンチェック:10個購入 呉 金虫:10個購入 姫柳 未来:10個購入 新規購入分:60個 現時点での合計:60個 ・味方モブNPC ジュディ・バーガー:フリーマジシャン10人購入 ビリー・クェンデス:虫使い10人購入 マニフィカ・ストラサローネ:フリーマジシャン10人購入(10人全て萬智禽へ譲渡) 萬智禽・サンチェック:フリーマジシャン10人購入(マニフィカの譲渡により現在、フリーマジシャン20人) 呉 金虫:特製お徳用パック購入(フリーファイター3人、フリーマジシャン3人、虫使い2人、風水師2人。合計10人購入) 姫柳 未来:特製お徳用パック購入(フリーファイター3人、フリーマジシャン3人、虫使い2人、風水師2人。合計10人購入) 備考:ナイト・ウィングはジュディが購入。ティム・バトンはマニフィカが購入。 ・マンドラゴラの浄化水 1.新規購入分: ジュディ・バーガー:10瓶購入(使い切り) ビリー・クェンデス:10瓶購入(使い切り) マニフィカ・ストラサローネ:10瓶購入(使い切り) 2.シナリオ開始以前の所有数 ジュディ・バーガー:1瓶 ビリー・クェンデス:3瓶 マニフィカ・ストラサローネ:1瓶 3.譲渡関係 その1 ビリー・クェンデス:13瓶全てをジュディへ譲渡。 マニフィカ・ストラサローネ:11瓶全てをジュディへ譲渡。 4.譲渡関係 その2 ジュディ・バーガー:合計35瓶。35瓶を仲間NPCたちへ譲渡。 ジュディのフリーマジシャンたち:10人いる。ジュディから各自3瓶ずつ譲渡されたので、合計30瓶が譲渡済み。 ナイト・ウィング:ジュディから2瓶譲渡された。 シルフィー・ラビットフード:ジュディから3瓶譲渡された。 ・環境改善 ビリーの冬の精「キチョウ」が冷風を吹かす。 称号「クーラー・キチョウ」発動中。 マニフィカの水精霊「ウネ」が水まき。 称号「スプリンクラー・ウネ」発動中。 風水師:合計4人が風と水で環境改善中。 虫使い:合計14人が魔導ホタルを保護中。 遺跡内部B3(今回)の初期の気温は40℃、湿度は60%。 環境改善後の現在気温は28℃、湿度は40%。 初期設定の鉄板ペナルティ:強 環境改善後の現在の鉄板ペナルティ:中 I-2「攻略エリアB(VSスケルトンロード・キング)前半戦」 参考:エリアBの戦略マップ ![]() エリアAで戦闘が開始された頃、ジュディ・バーガーは、シルフィー、ナイト・ウィング(NPC)、フリーマジシャン10人を引き連れてエリアBへ向かい走っていた。 エリアBへ至るまでの道中でエリアCを通過しなくてはならないが、そこは友軍に対応を任せて、ひたすら走り進んだ。 エリアBの入り口では、ゴースト・バシリスク10匹とマックロ・クローネ40匹がお出迎えしてくれた。魔物の皆さん、ギラりと牙を光らせて攻撃用意は完了だ。 「ヘイ、シルフィーにフリーマジシャンたち! ココはユーたちに任せるネ! ジュディとナイトでスケルトンロード・キング(NPC)をやっちまいマース!!」 ジュディは、シルフィーやフリーマジシャンたちに「マンドラゴラの浄化水」を3瓶ずつ渡していた。ナイトにも念のため2瓶渡していた。 今回のジュディはそれなりに重武装だ。 鎧は、「スケルトンアーマー改」をビキニアーマーの如くまとい、頭には「猿の鉢巻」をぎゅっと巻いている。 盾には、「マギ・ジス産の魔石(研磨版)」を構え、懐には「レヴィゼルのお守り」をしまっている。 仕上げに、「ドラゴンリーフ植物オイル」をざぱあああん、と頭からかけ、これで石化などの状態異常攻撃に備えた。 「ファイアー!!」 ジュディの掛け声と共に、両方の軍勢の激突が始まった! 一直線に突進するジュディとナイトに向かって、ゴースト・バシリスクたちが動いた。それぞれが石化光線をびゅんびゅんと飛ばしてくる! ジュディは盾で光線を何発か弾き返したが、それでもくらってしまった。 ちょうど2発分の光線は、ドラゴンリーフ植物オイルで防いだ。 ナイトは、お手のものともいうように、ひょいひょいと避けた。 いつの間にか、ナイトがなぜか2人になっていた。 おそらく、手品でも使ったのだろう。 「うおおおお、行くぞおおお!!」 「迎撃開始であります!!」 「やってやりまさー!」 フリーマジシャンたちが、「霊波動」の魔術スキルを放つ! それぞれが霊を撃退する波動魔弾を繰り出し、ゴースト・バシリスクを次々と沈めて行く。 シルフィーも最後尾から光属性の「ウィスプ」の魔弾で追撃に加わる。 一方で、ゴースト・バシリスクたちも負けてはいない。 フリーマジシャンたちを石化させ、牙攻撃やMP攻撃も仕掛ける。 他方で、マックロ・クローネもいる。 魔導ホタルを食べることに精を出しているクローネもいるが、フリーマジシャンを牙で攻撃するクローネもいる。 クローネ・クリーナーも起動中なので、クローネたちがクリーナーに吸われたりもしている。 モブNPCたち同士の攻防戦はなかなかの緊張を見せていた。 ジュディがキング3体にたどり着く前に、やはり手下のスケルトンロードたちが道を阻む。合計12体のロードたちがジュディとナイトを囲み出し、じりじりと追い詰める。 「ヘイ、ナイト! スピードあるネ!? ユーがスピードでトリックしマース! ジュディが除霊しマース! 至ってシンプル、ネ!?」 「合点だい、ジュディの姉御! これ以上にないぐらいシンプルな作戦ですぜい!」 ジュディがマギジック・レボルバーでぱんぱんと、威嚇射撃をする。 すると挑発されたロードたち数体が斬りかかって来た! 「もーらい!」 ナイトたちがそのスキマを狙い、ひょろり、とロードの円心領域を離脱。 トリックスターの超高速ムーブを発揮し、エリアBの戦場を縦横無尽に駆けずり回る! 「やーい! こっちにこれるもんなら来てみやがれ、骸骨どもー!」 ナイトの全力速度に追いつける者はこのエリアには誰もいなかった。 まるでスーパーカーにでもなったような神速度でナイトたちは骸骨たちを引っ掻き回す。 「コノオ……。コシャクなハエめ……。撃チ落シテヤル!!」 ついにキング3体が動いた。 それぞれが「回転殺法・改」の必殺攻撃を放つ。 もちろん、ナイトを捉えることなんてできない。 ランダムで、でたらめな攻撃だが、びゅんびゅんと飛び回る2人のナイトに一発でも何か当てられればこっちのものだ。 そう、スピードスターはたいてい、防御力が低い。 一撃でも大打撃を与えれば逆転できるからだ。 「ヘイ、ヤー、ハイ!!」 ジュディも拳に「ハイランダーズ・バリア」をまとい、雑魚のロードたちを順次撃退する。 ロードたちはお世辞にも強いとは言えない。 ジュディが力を込めて殴るとたいてい、一発で崩れ落ちる。 だが、キングたちがいる限り、やられても何度でも復活する。 それが厄介なのだ。 現にエントランスゲートにおいても何度も復活するロードたちに手間取ったものだ。 ロードを一通り倒して道が空けると、ジュディはキングのもとへ突進した! 突進してくるジュディのタックルを直撃で受けたキングの一体がぶっ飛ぶ。 もはや、ナイトだけを相手にしていれば良いわけではないらしい。 (「ゴースト・ブレイカー」……使いたいデース! デスガ、数多すぎマース! あと、ジェネラル(将軍)・ガイストを倒すためのブレイカーも温存しマース! ドウシマショウ!?) ジュディに考えている時間はない。 注意する向きをナイトから変えた2体のキングが大剣を振りかぶって落としてくる。 攻撃は、地面に穴を空け、ジュディが寸でのところで回避する。 もう一撃の追撃もジュディは後退してかわした。 ジュディがキング3体を相手に剣戟を交わしていた頃、ナイトは踊っていた。 「密室のネコ」が完成した! ナイトはエリアBのあらゆる箇所に見えないワイヤーを張り巡らせ、ハコを造った。 もはやハコの外にロードもキングも出ることができない。 その距離、まさに半径50メートル以内は満たしている! それでもロードたちは抵抗を試みる。 罠を外そうと、剣で切ろうとしたり、飛びかかったりなどするが、逆にからめとられた! じたばたと動けない! (オウ!? ナイス、ネ!? キラリと光るワイヤー、あれネ、きっと、トリックよ! ヘイ、チャンスは、ナウ(今よ)!!) 「ゴオオオオオオオオオオオオストオオオオオオオオオ、ブレエエエエエエエエエエエエエイクウウウウウウ!!!!」 ジュディの両手から紫色の霊波動が巻き起こった。 彼女を中心として半径50メートルを包んで、膨大な霊力が吹き荒れる! 「ヌオオオオ、抜カッタ……不覚!」 キング3体は一瞬で除霊されてしまった。 「ウギャアアア!!」 ロード12体も一撃で消えてしまった。 エリアBから骸骨たちがそろっていなくなった! ジュディたちは勝ったのだろうか!? 「フウ! 貴重な『ゴースト・ブレイカー』のマップ・ウェポンを1発使ってしまったデース! デモ、結果、オーライ、デース!!」 と、安心したのも束の間だ! 「ジュディの姉御、あれ、やばくネ!?」 ナイトが叫んだ。シルフィーやフリーマジシャンたちが苦戦しているようだ!? それと同時に、追撃の鉄板攻撃! むぅぅうううううううううううう、しゅぱあああああああああああああん!! エリアBにいる友軍全員が鉄板による地形ペナルティを受けて苦しんだ。 I-3「攻略エリアC(VS霊体土偶)前半戦」 参考:エリアCの戦略マップ ![]() ジョンソンズが壮大なハッタリをかましてくれたお陰で、友軍はエリアCへと抜けられた。このエリアからはさらにエリアBとエリアDへも行ける。エリアEは王座なので、現時点では保留だが。 早々に敵軍全体を仕留めるためにも、一度、ここで戦力を分散した方が効率は良い。 エリアCに友軍が入るや否や、魔導ロボ・エリス(NPC)は魔導銃を構えて、必殺「ナゴヤ撃ち」を霊体土偶たち(NPC)に向けて放つ! エリスの銃器が火を噴くと同時にこのエリアの戦闘が開始された。手前にいる水の土偶と風の土偶がエリスに向かって歩みを進める。 「みずみずううううううう」 「風、風、風!!」 同時攻撃だ。 エリスは土偶の拳法の餌食にされてしまうのか!? 「それー、ですわー!!」 「ですわー!!」 飛び出して来たのは、フランス令嬢で魔法少女のアンナ・ラクシミリア(PC0046)とそのドッペルゲンガーだ。 エリスに向かって放たれた拳を、土属性魔手の「ゴーレムパンチ」で打ち返す! 「土偶のバーカ! こっちにもいるよー!!」 上空からは、ドッペルゲンガーのエリスが魔導銃を乱射してきた。 土偶たちは一度、態勢を立て直すため後退する。 「今ですわ、皆さん! 他のエリアへ進んでください!!」 アンナが友軍に叫ぶと、皆、行動を起こす。 ジュディたちはエリアBへ走り、ビリー・クェンデス(PC0096)たちはエリアDへ走った。魔炎の精(NPC)だけ一人でエリアEへ突っ走ってしまった……。 最後尾では、目玉にアラビアンマントを巻いた軍師・萬智禽・サンチェック(PC0097)がフリーマジシャン20人を引き連れて戦況を分析していた。 「よし、ちょうど前衛は4対4なのだ! 現時点ではマックロ・クローネらはカウントしないことにして、クリーナーにでも任せておこう! アンナ殿にエリス殿、お願いがある! そのまま土偶らを引き付けて……そうだな、部屋の中心部にある魔法陣へ放り込んでくれ! そうしたら後はこっちで何とかするのだ!」 後方から軍師がそう叫ぶと、アンナとエリスは、ラジャ、と答えて戦闘を続ける。 陣形はこうだ。 アンナ(と影)が向かって右側、風と土の土偶を相手取ることにした。 エリス(と影)が向かって左側、残る水と火の土偶を相手取ることになった。 向かって来るアンナやエリスに対して、土偶たちは拳法を構える。 「か・ぜ!!」 突風のようなかまいたちの拳法がアンナを襲う! 「なんの、負けませんわよ! 『ゴーレムパンチ』ですわ!!」 拳と拳が打ち合いをする。 「土・土・土―!!」 怒涛の土砂崩れのような重い一撃が影アンナにふりかかる! 「やーい、とんま! その程度、紙防御で回避ですわよー!!」 ひらり、と軽く回避。そして、カウンター攻撃! 「みいいいずううう!!」 螳螂拳(とうろうけん)のごとく鋭い鎌の一撃がエリスを狙う! 「連打します。撃ちます! 返します!!」 高速連続拳法と高速魔導銃弾が爆発する。 「ひひひのひー!!」 烈火のごとく熱い連打攻撃が影エリスを燃やそうとする! 「あたらないって、そんなのー! うふふ、土偶はまぬけね!」 上空に跳ね上がり、「ナゴヤ撃ち」の魔弾を決める。 戦況は悪くはなっていないが、アンナとエリスの表情がくもった。 それはそうだ、影の口が相変わらず悪いので本体が恥ずかしい思いをしているからだ。 もっとも、ドッペルゲンガーが持つのは3ターンまでだ。 既に2ターンが経過した今、次のターンで土偶たちを魔法陣周辺へ落とし込まないと後がない。 一方、クリーナーたちが交戦してはくれているものの、マックロ・クローネたちもフリーマジシャンや萬智禽のもとへも向かって来る。 本来ならば、20人全員に砲撃準備をさせたいが、そう言ってはいられない。うち1/3のフリーマジシャンはクローネの撃退に取り組んでいる。 「やれやれですわ。最後の1ターンなので、本気を出しますか!?」 「出しますわよ、こんちくしょー!」 アンナとその陰の動きが豹変した。 透明な紫色の桜が戦場を舞った。 桜吹雪の一撃と共に、アンナの拳から重度の霊体打撃が繰り出される! 「『乱れ零桜花、ゴーレムパンチ』でスペシャルですわよ!! 沈んでください!!」 あらぬ方向から、霊力をまとった巨大な拳が風の土偶の背中を猛攻して吹き飛ばした。 「うふふ、死ねですわ、こんにゃろう! ばっははいですわー!」 影アンナも同じ攻撃を放ち、土の土偶は頭をかち割られて魔法陣に落ちた。 「マギ・ジスタンより愛を込めて!!(さようなら!!)」 エリスは上空へジャンプして、霊体攻撃の「シルバー・バレット」を静かに撃ち込む。 下方へ狙撃された水の土偶は、左肩を撃ち抜かれ、よろめいて、その場に足をつく。 「グッバイ、おバカな土偶さん! 地獄へ帰るといいわね!」 影エリスも同じ行動を繰り出した。 「シルバー・バレット」の一撃が火の土偶の首を撃ち抜き、その場で土偶が崩れ落ちた。 土偶たちは追い込まれている。 もちろん、これだけで倒されるような奴らではない! めきめきと再生していた! 一方で、魔法陣から生気を吸い取られてもいる! 「ふはは、戦いは数である! 全軍、撃てー!! 今なのだー!!」 軍師萬智禽が怒鳴ると、対応できる14人のフリーマジシャンたちが「霊波動」の魔術弾を砲撃した。 霊波動は霊体には効果てきめんなので、再生中の土偶たちを容赦なく爆撃する! どがどがどが、どかああああああああああああああああああんん!! どっかあああああああああああああああああん、どがどがあああああああああん!! 霊体土偶4体はもろとも地へ還ったのであった。 ここでお約束の鉄板攻撃も起こる! むぅぅうううううううううううう、しゅぱあああああああああああああん!! 友軍は地形ペナルティのダメージを被った。 なお、クローネたちは増殖していた! I-4「攻略エリアD(VSドッペルゲンガー・ボム)前半戦」 参考:攻略エリアDの戦略マップ ![]() エリアDの入り口は虫使いと魔物たちでわんさかと群れていた。 ビリーのカプセルモンスターたちであろう者たちが暴れていた。 ざっと見ても……。 サンドスネーク、お化けハイランダケ、ウォルターラット、アリ地獄モグラ改、マッハ・ハイノシシ、ブルーカモメ改、おまけに鶏までもいる。 この総勢7名の魔物を引き連れるがごとく、虫使いたち7人が率いて向かって来るのだ! 「ふむ。このエリアを攻めてくる敵陣は、ビーストテイマーとその使い魔たちと見た……。ドッペルゲンガーども、さっそくせん滅してくれ!」 エリアDのボスである復活したドッペルゲンガー・ボム(NPC)が最後尾から指揮を出す。召喚されたビリー、シルフィー、ジョンソンズ、魔炎、エリスなどのドッペルゲンガーが現れるや否や、敵軍の撃退に向かう。 虫使いに促されて、お化けハイランダケがタックルして来たり、ハイノシシが突進して来たり、点滅するネズミの奇襲やアリ地獄なんかも出現した。 「面倒だな? 前衛の全員、自爆しろ!!」 どかああああああああああああああああああんん!! どがどがどが、どっかあああああああああああああああああん!! 戦線の前衛にいた友軍は全滅した。 これにてエリアDはPCチームの負けなのか!? (そおっと……。そおっと、近づくで……。それ、今がチャンスや!) ドッペルゲンガー・ボムの背後数歩にアラビアン姿のビリーがいた。 「神足通」でテレポートしていたのだ! ビリーは「ニードルショット」を放つべく、針の一撃を構えている。 まさに今、針が撃たれるところで……!? カキィィィン!! 横槍が入った。 文字通り、横から槍が入った。 ドッペルゲンガーのマニフィカがトライデントでビリーの針を弾き飛ばしたのだ。 さらにビリーの背後にはジュディのドッペルゲンガーもいた。 手をぱきぽきと鳴らしている。 「ヘーイ! うざいネズミは処分するデース!!」 ドッペルゲンガーとはいえ、ジュディとマニフィカのタッグにぼこぼこにされて、ビリーはたまらない! 「ふはは! そうだな。奇襲攻撃だな、この戦術は!? だって、どう見てもおかしい。戦場にモブばかりでユニークユニットのPCが一人もいないのだ。おまけにあの部隊は即席だ。虫使いはビーストテイマーの一種だが、専門は虫の使い手であり、獣系の魔物の使い手ではない。カムフラージュしたまでは良かったが、詰めが甘かったようだ。では、勇敢なビリー君への報償として、自爆死を捧げよう! やれ、ジュディにマニフィカ!!」 「ひー!! 堪忍してーなー!!」 ビリーは両手を合掌のポーズに合わせて、泣きながら慌てふためく。 どかああああああああああああああああああんん!! どがどが、どっかあああああああああああああああん!! 無慈悲にもビリーは大爆発に呑まれてしまった。 爆撃で吹っ飛ばされているビリーは、なぜかニヤリと笑っていたが……。 PCチームは今度こそ負けてしまったのか!? その直後……。 「行っけええええええええええええええ、レエエエエエエエエル・ガアアアアアアアアアン!! 敵将を撃ち抜けええええええええええええええ!!」 「死ね死ね死ねえええええ!! 爆死しちゃええええー!!」 ばち、ばち……ばち、ばち、ばちっん!! ぎゅるん、ぎゅるぎゅるぎゅるるるるるうううう、ぎゅういいいいいいん!! ドッペルゲンガー・ボムの上空10メートル天井ぎりぎりのところで、JKエスパー(Ver.アラビアンナイト)の姫柳 未来(PC0023)とそのドッペルゲンガーが「とあるイースタンの激・電磁砲」を撃ち込んで来た。しかも「エレクトリック・スターター」の充電済みで、威力は倍だ。2人で威力2倍の攻撃を砲撃しているので、単純計算で4倍の威力になった電磁砲が上方から撃ち落された! どがどが、どっかあああああああああああああああん!! どかああああああああああああああああああんん!! どがどがどが、どかああああん、どが、どがあああああああああああああああん!! 容赦のない高威力攻撃だ。 下方にいたドッペルゲンガー・ボムは無惨にも爆撃されて破壊されてしまった。 それに伴いドッペルゲンガーたちも消え去った。 まさかもう一段階の陽動と奇襲が来ることまでは読めなかったようだ。 一方、ビリーが復活していた。 懐には、マニフィカから預けられたミガワリボサツがひょっこり出て来た。 そう、わざと敵にやられて、誘き出して、その後、復活したのである。 二段階の陽動作戦は成功したようだが……。 戦場にはまだマックロ・クローネたちが残っている。 「みんなー、もう出て来ていいでー! やられて帰還しちまったボクの魔物たちや虫使いたちはしぁーないけれど、元気な奴らでクロスケどもやっちまおうや!」 エリアDの入り口から、味方モブNPCの兵士たちがぞろぞろ入って来た。 彼らは全員、ビリーと未来の臨時の部下たちである。 むぅぅうううううううううううう、しゅぱあああああああああああああん!! ここで鉄板攻撃のペナルティだ! 地上にいる友軍は火傷などのダメージを受けた。 I-5「モブNPCたちの状況その1」 ★モブNPCたちの状況 初期の魔導ホタルの数:137匹 現時点の魔導ホタルの数:111匹(照明に全く問題なし) 初期のクローネ・クリーナーの数:23台 現時点のクローネ・クリーナーの数:17台 初期の魔導ホタルのエサ:60個 現時点の魔導ホタルのエサ:42個 ・味方モブNPC ジュディ・バーガー:フリーマジシャン10人購入(現在、5人) ビリー・クェンデス:虫使い10人購入(現在、5人) 萬智禽・サンチェック:フリーマジシャン20人購入(現在、16人) 備考:マニフィカがフリーマジシャン10人を譲渡済み。 呉 金虫:特製お徳用パック購入(フリーファイター3人、フリーマジシャン3人、虫使い2人、風水師2人。温存したため、現在、数の変化なし) 姫柳 未来:特製お徳用パック購入(フリーファイター3人、フリーマジシャン3人、虫使い2人、風水師2人、合計10人購入。現在、虫使い2人が撤退) ・環境改善 ビリーの冬の精「キチョウ」が冷風を吹かす。 称号「クーラー・キチョウ」発動中。 マニフィカの水精霊「ウネ」が水まき。 称号「スプリンクラー・ウネ」発動中。 風水師:合計4人が風と水で環境改善中。 虫使い:合計7人が魔導ホタルを保護中。 遺跡内部B3(今回)の初期の気温は40℃、湿度は60%。 環境改善後の現在気温は28℃、湿度は40%。 初期設定の鉄板ペナルティ:強 環境改善後の現在の鉄板ペナルティ:中 ●ディスクJ:各エリアの決戦(攻略エリアA、B、C、D)後半戦 J-1「攻略エリアA(VS科学的革命残党分子)後半戦」 仲間たちが別エリアへ向かった直後、呉は配下の風水師と魔術師を呼び寄せて軽く治療してもらった。 鉄板ペナルティで火傷とそれなりのダメージを受けたが、お陰で早期に回復できた。 なお呉は、配下のNPCモブたちを前回の戦闘には参加させず、戦力を温存していた。 なぜなら、マニフィカとリュリュミアがいた時点でヴァイスらに勝てると計算したからだ。呉なりの省エネである。 「さて、俺も仕事に取り掛かるか……」 呉は方程式チョークをポケットから取り出して、ヴァイスの死体(?)を突っついた。 つんつん!! 「おい、起きろ! さっきの自爆がカムフラージュだってことぐらい同じく科学者の俺は見抜けるぜ? どうせ、やられたふりして、みんながエリアAを去った後、後ろから奇襲攻撃でもするつもりだったんだろう? くくく、見え透いた作戦だな、科学的革命の残党さんよお?」 そこまで言われるとさすがのヴァイスも立場がないので、むっくりとパワースーツごと起き上がった。 「ち、ばれてたか……。で、どうすんだ? 第2回戦目でもおっぱじめるか? こっちは負傷した分子5人だが、そっちはてめえ1人にモブ10人か……。ざっと暗算すると……俺らが53%の確率で勝利……」 呉は、へへへ、と笑い出す。 「いいや、第2回戦目のお誘いじゃねえよ、さすがに。そもそも俺は戦闘向きじゃねえし……。あと暗算だが、計算ミスだ。48%の確率であんたらの勝ちだな。ま、要するにこのままドンパチやっても今のお互いの戦力では五分五分の勝率だ。それに今さら戦ったところで生産的な展開はお互いに一切ない」 ヴァイスと分子たちも、ぐへへ、と笑い出した。 「そうか……。てえと、俺らに何の用だ? てめえの見取り算が見えねえなあ? どうせ、俺らを何かに利用してえとか、腹黒いこと考えてるんだろう? 腹を割れや!?」 呉は、きりりとした表情でヴァイスたちに語りかけた。 「んじゃ、まず科学の話をしようか? 科学ってのは、世界というものがどうやって出来上がってるかを、誰にも理解できるように客観的な言葉や図に置き換えたもんだ。科学は魔術に負けたわけじゃない。俺が元いた世界のSF作家も言っている、『十分に発達しすぎた科学は魔術と区別がつかない』と。同じコインの裏表なんだ。科学という三角形は、今、魔術という三角形と大きく組み合ってるだけで滅びたわけじゃない。まだ生きている。共存しているんだ!」 呉は、そこまで言うと方程式チョークを改めて持ち直し、鉄板の地面に向かって公式をつらつらと書き始めた。 まず、チョークで大きな六芒星を描いた。そして、その中央に『科学≒魔術≒世界』と書き込んだ。 彼は話をそのまま続ける。 「俺がやって来た元の世界でも、そうやって気功という魔術が科学と合体して、文化や技術として発達してたんだ。この世界でも科学と魔術は共存できるはずじゃないかな、ヴァイスさんよ?」 ヴァイスと分子たちは、がはは、とバカ笑いをした。 「ふ、若いな。俺にもてめえみたいに若い頃もあったんで、熱意は買うぞ。科学と魔術は共存できる、か……。俺らもさ、戦争をしたくてやっていたわけじゃねえんだよ。もともと魔術が強かった世界でひとりの輝かしい科学者が迫害されて、それで魔術勢力に科学勢力がやり返して、大げんかになって、んでもって魔術が悪だってことで魔女狩りを始めたら、魔術勢力が怒り狂って、一気に世界規模の戦争になっちまったわけだ。結局、戦争は科学勢力が負けたが、この世界では今でも戦火の残りかすは所々に散っていて、くすぶっているわけさ。もし、この世界が戦争なんてしていなかったら、もしかすると、科学と魔術が仲良く共存したパラレルワールドでも存在しかたもしれねえな……」 ヴァイスは熱い目をして早口で言い捨てると、タバコを取り出して火を点けた。 そこで分子の一人が会話に加わる。 「若い技師さん。あんた、立派だよ! だが、すまん! 俺らも科学勢力の残党だ。まさかあんたらの仲間になってガイスト将軍に反逆することなんてできねえ!」 呉の狙いはそこではなかった。なので、弁解する。 「あ、いや、違うぞ! 今から仲間になってくれっていう交渉じぇねえぞ! 俺が交渉の材料に使いたいのは、さ……。あのさ、そのパワースーツ、俺にくれねえか? 給料3か月分までなら払えるぞ! 後払いになるが……」 ヴァイスはタバコをふかして消し終えると、携帯灰皿に捨てた。 そして、呉に向き直る。 「ほう? 俺のパワースーツが欲しいと? たしかに、こいつがありゃあ、非力な老人である俺であっても、さっき戦ったとおり、パワフルに戦うことができるわな。ま、ガイスト将軍を軍門に加えるとか、さっきの戦いでしらけちまったんで、俺ら、この辺で撤退するつもりだったから、あげてもいいぜ? だがよ、こちらも条件はある。てめえの3か月分の薄給なんていらねえよ。その代わりだが……。さっきのクリーナーにレーザー光線を改造してただろう? あれ、くれねえか?」 改造版クローネ・クリーナーが交渉の材料になった。 呉は、ううん、と頭をひねる。 「てめえの言いたいことはわかるぜ? 俺らにその技術を渡したら革命とかで暴れて悪いことするかもしれねえってことだろう? それ言うならよ、てめえこそ、そのパワースーツでガイスト将軍と戦うつもりだろう? 同じじゃねえか。技術は飽くまで技術だ。それを人間がどう使うか、だろう?」 ヴァイスの言い分はもっともらしい。 呉としても、ひとまずお互いに目をつぶろうと思い至った。 「わかった。交渉成立だ。改造クリーナー1台を譲ろう。その代わりパワースーツはもらう。こちらが引き渡しの後攻でいいな?」 ヴァイスは、うむと頷くと、パワースーツをあっさりと脱いだ。 「ま、さっきまで着ていたんで、汗や加齢臭でくせえかもしれねえが、それは勘弁な。あとよ、さっきの戦闘でところどころ壊れているがいいか?」 呉はスーツを引き渡されると、すぐに改造クリーナーを差し渡した。 「ああ、多少の損壊ぐらい俺の技術で直せるさ。よし、これ、もらうんで、ひとまず今回の交渉はこんなところでいいな?」 ヴァイスは、改造クリーナーを両手で抱え、パワフルな分子たち2人に神輿(みこし)のように担がれた。 「おう! てめえ、なかなか気に入ったぜ! 俺ら、学院とか魔術研究所とかの前でよく革命集会やっているから、今度俺を見たら声かけてくれ! ワスプにでも飲みに行こうぜ? 飲めるくちだろう?」 呉は、あはは、と大笑いした。 「おう! いいさ! 次に会うことがあればワスプででも飲もうか? あばよ!」 ヴァイスたちがB2への階段からいなくなったと同時に、配下のモブたちが血相を変えて呉のもとに走って来た。 エリアCの通路側を見張っていたフリーファイターたちが慌てている。 「呉さん、大変です! 別エリアからクローネたちが攻めて来ました! どうしましょう?」 呉は、うがあああ、と頭をかいた。 「おいおい、なんだよそれ! 俺は今からパワースーツの修復やクリーナーの追加改造に忙しいんだよ! よし、モブらよ。俺が作業中のときはあんたらで対応してくれ! フリーファイター3人、フリーマジシャン3人、風水師2人で撃退! 虫使いたちは、エリアAの魔導ホタルの保護!(ホタルがいなくなると作業の手元が見えねえから) 作戦は以上!」 ラジャ、と配下たちは即座に返事をして持ち場についた。 かちゃ、かちゃ……呉の修復&改造作業が始まる。 最終戦までには間に合うのだろうか? クローネと配下たちがドンパチやる中、呉は黙々と作業を進めた。 J-2「攻略エリアB(VSスケルトンロード・キング)後半戦」 「オウ、ノー!!」 ジュディは口をあんぐりと開けて焦っていた。 スケルトンたちは完全に退治したものの、ゴースト・バシリスクとマックロ・クローネが半数ほど残っていた。 それに対して友軍のシルフィーが石化していて、モブの魔術師は5人まで数が減っていた。(戦闘不能になった魔術師は即座に撤退している) ジュディはこの場の指揮官なので、いつまでも焦っているわけにはいかない! 「ヘイ、ナイト! シルフィーを頼むネ! ジュディはガンファイトしマース!」 ジュディは、2丁拳銃を抜き出した。 これらの闇系の敵には光属性が効果的と判断したので、光の弾丸を中心に攻めることにした。 称号「ガンファイター・ジュディ」がきらりん、と機能する。 「ヘイ、ユーたち、オーケイ!? ヘイ、モンスターども、ゲット・ア・ウェイ!(どっか行け!) ファイア、ネ、ファイア、ファイア、ベリーマッチ!!(たくさん発砲するわよ!!)」 高速の拳銃さばきが炸裂し、今にも魔術師たちを滅ぼす勢いだったクローネとバシリスクたちが、魔の弾丸で消し飛び、吹っ飛んだ! 敵らがジュディに気を取られているすきに……。 「もらったー!!」 ナイトが超高速ムーブで走り、シルフィーの石像に向かって浄化水をぶちまけた。 すると、シルフィーが……。 「ん!? あら、いけない、石化してたじゃん、あたし!? ナイト? ありがとう!! ああ、ジュディやモブがピンチ!! 今、加勢するわ!」 その後、シルフィーがウィスプの光弾丸で加勢したり、モブが何度か石化したり魔法陣にハマったりなど騒ぎもあったが、エリアBの敵対魔物たちは全て排除された。 「フウ……。エリアBにモンスターはもうイマセーン! モブ残り4人デース! ナイト&シルフィー無事デース! では、封印しマース!」 次の鉄板ペナルティが来る前にジュディは封印を決行する。 シルフィーから封印玉を受け取って、危うく光る赤い高炉に向かって投げつけた。 しゅうううううううううううううううううううううん、しゃきん!! ゴーストシェル遺跡エリアBの封印がこれにて解除された。 以後、鉄板ペナルティは起きない。 「よし! でかしたわ、ジュディ! 封印はまず1つね! もう1つの方はビリーや未来が今頃上手くやってくれているんじゃないかな?」 シルフィーは業務遂行の一部が終わりご満悦だ。 「グッドラック、ビリー&未来!!」 ジュディも仲間たちの武運を祈った。 「さあ、行きやしょう! このままエリアEへ突撃、お化けジジイを倒しやすぜ!」 ナイトがパーティモンスターみたいに、いやっほうと、飛び上がると、モブたちも一緒になって、きゃっほうと飛び出した。 J-3「攻略エリアC(VS霊体土偶)後半戦」 土偶を倒したまではいい。 残るはクローネのみだ。 クローネはクリーナーらを倒して増殖していたのだ! 前衛にはアンナとエリスが残っている。(ドッペルゲンガーたちは撤退済み)。 アンナはモップで、エリスは魔導銃で、クローネたちを撃退するが、一向に減らない! わんさかと群がるクローネたちが萬智禽らに突撃する! 「わー! こっち来たのだ、この黒め!! フリーマジシャン全軍に告ぐ、撃退せよ!!」 ラジャと叫び、フリーマジシャンらは即座に撃てる魔弾の発射にとりかかる。 距離のリーチが間に合わず、何匹かのクローネが包囲網を抜けてしまった。 (ちっ、来たか!? 私自らが相手をするしかないな!?) 目玉の軍師は、即座にマギジック・レボルバーを取り出して火の弾丸を、ぱんぱんと発砲する。 「ギャース!!」 どうも弾が当たらない!? 気配を殺しているのだろうか!? 「しまった! 抜かれたのだ!?」 クローネたちの狙いは軍師ではなかった! 何を思ったのか、エリアAへ向かっていた! すると……。 バキバキバキ、カキィィィン!! エリアAから移動して来たマニフィカがトライデントでクローネたちを葬った。 シュパシュパシュパ、ばしばしばし、ぱしん!! 同じく、リュリュミアが青バラの鞭でクローネを撃退。 おまけにティムとジョンソンズも続き、残りのクローネと戦う。 「おお!? そなたらは!? 分子どもは倒したのだな!?」 目玉の軍師は仲間たちが頼もしかった。 なぜか呉だけがいなかったが、このときは、後方に続いているのだろうと軽く考えていた。 だが……。 「わりい! 何匹か抜けちまったぞ!!」 ジョンソンズが謝って叫ぶ。 どうやらクローネの何匹かは対処しきれず、エリアAへ行ってしまった。 「おい、呉殿がやはりいないぞ! マニフィカ殿かリュリュミア殿、知らぬか!? エリアAにいるのであればクローネどもが追撃してくるぞ!」 萬智禽は、すぐ隣まで来ていた人魚姫と緑のお姉さんに即座に聞いてみた。 「呉さんはエリアAでまだやることがあるそうです! お供の方が10人護衛についているので大丈夫でしょう! それよりも……」 「そうよねぇ、マニフィカ!? まずはぁ、クローネよねぇ!!」 答えながらも、マニフィカとリュリュミアはそれぞれの武器を振り回して増えるクローネたちと攻防戦をする。 もっとも、友軍が気にしなくてはならないのはクローネたちだけではない。 マニフィカたちがエリアCに来たということは……。 エリアEからそろそろ誰かが来てもおかしくはない……。 『ガイスト将軍にジーク・ハイル!! ただいまより、我らガイスト軍へ反逆に来た魔術勢力の精鋭どもを制裁する!! 各員、突撃開始!!』 いよいよゾンビ兵の科学者たちがエリアEから攻めて来た! ゾンビ兵たちは、PCたちがエリアAとエリアCで消耗するそのときを待っていたのだ。 しかもPCの軍勢は全員がそろっていない! 「エリス、大丈夫ですか!? ちょうどこのまま前衛にわたくしたちがいますので、対処しますわよ!」 アンナはモップをくるくると回転させて、飛びかかって来るゾンビに向かって行く。 「細かいことを言うと私は前衛ではなく中衛向きのキャラなのですが……。つべこべ言えませんね、これ!! 了解です! ゾンビを倒します!!」 エリスは、アンナのやや後方へ走り込み、愛銃で射撃に勤しむ。 ちょうど最前線のアンナの死角を補う形のポジションに収まった。 そこに今度は、魔炎の精がエリアEから飛び出て来た。 「おう、なんかやべえじゃん、これ!? エリアC前半戦のどさくさに紛れて、フライングでエリアEに飛び込んだが、ゾンビどもの群れがすげえのなんの!? ジジイとタイマンしてる場合じゃねえし、俺1人だし、もう無理!! んじゃ、手伝うわ!」 魔炎も前衛に加わり、アンナと共にエリスを守る形で、最前線で魔剣を繰り出す。 なにやらエリアCがごちゃごちゃとしてきた。 敵味方入り乱れ、乱闘が始まっている。 しかし、こういうときだからこそ、軍師は冷静でいなくてはならない。 (フウム……。戦況を分析するに……) *** 敬称略: 前衛:アンナ、エリス、魔炎。対するはエリアEから流れ込んで来たゾンビたち。ガイスト将軍の姿はない。 中衛:マニフィカ、リュリュミア、ジョンソンズ、ティム。ゾンビはあまりいない。主にクローネを対処。 後衛:軍師の私。フリーマジシャン現在13人。流れて来たわずかなゾンビとクローネを対処。 その他:エリアBとエリアDの戦闘はおそらく継続中なので、誰も来ない。エリアAと呉の戦況は不明。エリアEではおそらくガイスト将軍が待機中。 *** 萬智禽は、巨大な目玉をギラりと光らせた。 敵の作戦が読めた! 「皆の者! 聞け! これは前哨戦(ぜんしょうせん)だ! ガイスト将軍は私たちを小手調べしているだけだ! 本格的なラスボス戦は友軍全体がエリアEへ突入したときに始まる! 全軍、今いるゾンビとクローネを倒し終えたら、エリアCに待機! エリアA、B、Dにいる友軍が帰還するまで必ず待機! 全軍がそろったら全力でエリアEへ攻める! それまでは何とかここで持ち耐えろ! 次の数ターンでゾンビらは退くはずだから!!」 軍師が的確な戦況分析を友軍へ伝えると、全員から、ラジャと声が上がった。 そして、萬智禽の見立て通り、次のターンでゾンビとクローネがエリアEへ全員撤退して行った。 J-4「攻略エリアD(VSドッペルゲンガー・ボム)後半戦」 鉄板のペナルティが来たものの、空中を飛んでいた未来と飛翼靴を履いていたビリーは、地面が足に付いていないので火傷攻撃免れることができた。(追加の熱気は免れなかったが……) 一方、ビリーの部下の虫使い残り5人、未来の部下(フリーファイター3人、フリーマジシャン3人)は、鉄板ダメージを受けてしまった。 (ビリーの部下の虫使い5人と未来の部下のうち2人の虫使いは前半戦で撤退済み。風水師2人は鉄板ペナルティを受けない) 地上に降りて来た未来はすぐに指示を出す。 「風水師の2人、モブの仲間全員の火傷治療お願いね! 魔術師を優先的に治療して! 治療を受けた魔術師は、回復魔術でみんなを回復してあげて!!」 部下たちはラジャ、と答えて各自の仕事に取り掛かった。 一方、戦闘は終わったわけではない。 増殖していたクローネたちが未来やビリーを狙っていた。 「もー! これからラスボス戦なんで、わたしら、無駄な消耗は避けたいんだよねー!?」 そう言いつつも、未来は腰元に巻いていた2丁拳銃を抜き出した。 そして、速度3倍効果だけの「ブリンク・ファルコン」(10%)を発動し、風に乗った。 火炎弾丸と電気弾丸の連射がクローネたちを襲う! どががががががが!! ばきゅん、ばきゅん、ばばばばきゅん!! どが、どが、どっかあああん!! クローネたちが次々と灰になって行った。 「ボクも支援しまっせー!! ぴいいいいいいいいいいいいいいいい!!」 ビリーは、首に巻いていた「大風の角笛」を取り出して思いっきり吹いた! すると、爆風が巻き起こり、クローネたちがぶんぶんとぶっ飛ばされる! びゅごおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!! ばちこおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん☆ 未来とビリーのコンビがクローネの残党を徐々に減らして行く。 随時、回復したモブの配下らも戦闘に加わり、未来軍とビリー軍の兵たちが全力で撃退する。 フリーファイターらは、剣や拳などで物理的にクローネを倒す。 フリーマジシャンらは、魔術の弾丸でクローネを排す。 虫使いらは、殺虫剤を取り出してクローネを除去する。 風水師らは、風と水の魔弾でクローネを蹴散らした。 それでもやはりモブはモブであまり強くない。 この戦いで、各4種類のモブ1人ずつがやられて撤退してしまった。 やがて、クローネの全軍が滅ぶと、危うく光る紅蓮の高炉が開けた。 エリアの敵軍が全滅したので、あとは封印だけだ! 「なあ、未来さん。隊長から封印玉を預かっているねん! どないする? もしかして、封印したいかいな?」 未来は、ビリーの問いかけに、ううーん、と悩んだ。 「そうだね? じゃあ、こうしよう! 私が、そーれ、と叫んだら、ビリーが投げてね!」 「おっしゃあ、そうするで!」 「そーれ!」 未来が叫んだ。 「うりゃ!」 ビリーが封印玉を高炉に投げ入れた。 すると……。 しゅうううううううううううううううううううううん、しゃきん!! 封印が完了! 高炉の紅蓮が色あせて、遺跡の機能が停止した。 これでガイスト将軍の「無敵化」スキルが解除された。 将軍がやや弱体化したので倒しやすくなった。 時同じく、エリアBでも封印が完了していた。 これにて、封印ミッションそのものは終了だ。 「あれ? 鉄板の追加攻撃が来ないところを見ると……。ジュディたちは封印に成功したのかな?」 未来からの質問にビリーがニカッと答える。 「せやな。ジュディさん、ナイトさん、隊長、モブらのチームやったら、普通に勝つやん!?」 さてと、と未来はエリア内の全軍に向き直り、高らかに告ぐ。 「では、これより、エリアCへ進もう! 仲間たちと合流したらいよいよラスボス戦だね! みんなー、行くよー!!」 ビリーとモブたちは、拳を高く掲げて、おおー!! と叫ぶ。 ついにラスボス戦の幕が開ける! J-5「モブNPCたちの状況その2」 ★モブNPCたちの状況 状況その1までの魔導ホタルの数:111匹 現時点の魔導ホタルの数:95匹(照明に問題なし) 状況その1までのクローネ・クリーナーの数:17台 現時点のクローネ・クリーナーの数:9台 状況その1までの魔導ホタルのエサ:42個 現時点の魔導ホタルのエサ:27個 ・味方モブNPC ジュディ・バーガー:フリーマジシャン10人購入(現在、4人) ビリー・クェンデス:虫使い10人購入(現在、4人) 萬智禽・サンチェック:フリーマジシャン20人購入(現在、13人) 備考:マニフィカがフリーマジシャン10人を譲渡済み。 呉 金虫:特製お徳用パック購入(フリーファイター3人、フリーマジシャン3人、虫使い2人、風水師2人。現在、フリーファイター1人、フリーマジシャン1人、風水師1人が撤退。) 姫柳 未来:特製お徳用パック購入(フリーファイター3人、フリーマジシャン3人、虫使い2人、風水師2人 現在、虫使い2人、フリーファイター1人、フリーマジシャン1人、風水師1人が撤退) ・味方モブNPCの隊列変化 エリアEへ突入するにあたり、友軍全モブNPCを萬智禽へ預ける。 萬智禽・サンチェック:フリーマジシャン21人。フリーファイター4人、虫使い6人、風水師2人。 ・環境改善 ビリーの冬の精「キチョウ」が冷風を吹かしていたがクローネに敗北、撤退。 未来の冬の精も加わり冷風を吹かす。 マニフィカの水精霊「ウネ」が水まき。 称号「スプリンクラー・ウネ」発動中。 風水師:合計2人が風と水で環境改善中。 虫使い:合計6人が魔導ホタルを保護中。 遺跡内部B3(今回)の初期の気温は40℃、湿度は60%。 状況その1までの気温は28℃、湿度は40%。 環境変化後の現在気温は30℃、湿度は45%。 初期設定の鉄板ペナルティ:強 環境改善後の鉄板ペナルティ:中 現在の鉄板ペナルティ:エリアBの封印により解除 ●ディスクK:最終決戦 K-1「攻略エリアE(VSガイスト将軍)前半戦」 参考:攻略エリアEの戦略マップ ![]() 萬智禽らがゾンビたちとの前哨戦を終えて間もなく、エリアCに友軍のほぼ全軍が集結した。 エリアBとエリアDの攻略も無事に終わったらしく、ジュディらも未来らも無事だった。 味方モブの数もやや減ってしまったが、現状、戦力として不足はない。 エリアAの呉だけ未だに姿がないが、確認したところ何かの作業中なので放置。 なお、ここで「やること」があると言ってジョンソンズとリュリュミアが隊列から抜けた。 「さあ、最後の戦の前である! 皆の者、補給や回復は今のうちにきちんとやっておけよ!」 軍師萬智禽は友軍の皆にそう告げると、自身も『ノーザン天然かき氷』をぐしゃり、と頬張り、属性を水・氷・闇に変える。これは、闇属性のアンデッドの攻撃を吸収しやすいようにするための対策だ。 他の皆もビリー、フリーマジシャンたち、風水師たちに回復を手伝ってもらい、最終戦の前でHP全快ができた。魔力が切れたフリーマジシャンや風水師にはとるいぬ(NPC)からの支援があり、意外にも無償でMP回復ができた。(彼らの福利厚生の一環らしい)なお、暑さの対策も必要なので、ここで友軍全員は水分補給も抜かりなくやっておいた。 環境改善は未だに冬や水の精霊たちががんばってくれているが、何分、先ほどの戦闘で風水師の数も減ってしまった。若干の温度や湿度が上がって戦いづらくなってしまったことはやや否めない。(*詳しくはJ-5「モブNPCたちの状況その2」参照) 一方、ガイスト軍の方も最終戦の準備をしていた。ガイスト将軍は配下のゾンビたちを霊術で回復して回った。もともと霊的に再生ができるゾンビたちの回復は早い。先ほどの前哨戦で数人がHP切れになったが、難なく再生できてしまったので、ゾンビの数はほとんど減っていない。なお、エリアEからCへやってきたクローネたちの数がやや減ってしまったが、奴らは奴らでまた増殖していた。 先ほどのエリアDの攻略によりガイスト将軍のパッシブスキルである「無敵化」が破られてしまった。ガイスト将軍はやや計算外だったようだが、無敵化が解けたところであっても、PC軍との実力差は未だに優位だ。 さて、どちらから仕掛けたものだろうか……!? ガイスト軍は先ほどの前哨戦以来、お通夜のようにしーんとしている。 軍師萬智禽は士気が下がらないうちに兵を突撃させた方が良いと判断した。 『これよりエリアEを攻略してガイスト軍を制覇する! 各自、先ほど皆で考えた陣形のもと行進せよ! 狙うは敵将ガイスト殿のみ! ゾンビどもを蹴散らして王座へ突進するぞー!!』 『おおー!!』 軍師が指令を下すと、友軍の全員が手を挙げて、声も勇ましく応答した。 最前線で先行するのは、まず未来だ。 「行っけええええええええええ、けちらせええええええええええええ!!」 未来の電気銃から最大出力の「とあるイースタンの激・電磁砲」が繰り出される! ばちばちばち、ばちばち、ぎゅるるるるる、ぎゅるうううううううううううん!! まるで大蛇にでも化したような怒涛の電磁砲の直線攻撃が道を阻むゾンビらを吹っ飛ばした! ゾンビは全部で70人程度いるようだ。今の一撃は、ガイスト軍の前衛と中衛を2、30人規模で吹き飛ばしたようだが……。敵軍としても手をこまねいているわけでなく、次々と攻めてくる! 未来が宙返りして一歩下がった。 今度は、魔炎とアンナが最前列に立った。 「へへへ、やっぱり戦は、こうならなくちゃよっと!! 行くぜええ、ゴースト・クラアアアアアアアアアッシャアアアア!!」 魔炎は巨大な魔剣を真下に振り落として、除霊効果付きの剣技を爆発させる。 どかああああん、どがどが、どっかあああああああああああああああん!! ゾンビどもが宙を舞った。 向かって来た前衛10人から15人程度を吹き飛ばした。 「こら、魔炎危ないですわ! そらそらゾンビども!! これでもくらうといいですわよ!!」 アンナの姿は、霊界の紫の桜吹雪に隠されて見えなくなった。 次の瞬間……。 ばき! どが! ばしばしばし、どがどが、どっかあああああああああああああああん!! 『乱れ零桜花』が乱れ咲き、あらぬ方向から急角度攻撃のモップ突撃が舞う! 魔炎が討ち漏らしたゾンビたちをばったばったと片付けて行く。 数としては、10人はいなかったが、それでも友軍への攻撃を未然に防いだことは大きい。 大剣を爆発させる魔炎、死角を補うアンナ、魔石のナイフ二刀流で応戦する未来。 その後ろでは、マニフィカがお経を詠唱していた。 『南無阿弥陀仏、南無妙法蓮華経、オンキリキリソワカ……。地獄から参りました千の腕を持ちます御仏よ……。我らの敵軍を撃ち滅ぼし給え……』 すると……。 ゴゴゴゴゴゴゴオオオオ……。 天井から異次元が割けて、無数の仏の手が召喚された。 『裁キジャ……。地獄へ還ルガイイ……屍の軍勢タチヨ……』 どが、ばき、ぐしゃ、ぐしゃり、べちゃり……。 どがどがどが、ばっきいん、ばっきん、どがどが、どっかあああん!! 無数の拳や掌底がゾンビ兵士たちを殴り殺した。 殺しても復活するゾンビたちだが、そこはまた何度も殴り殺した。 マニフィカの『センジュカンノン』というマップ兵器のお陰で、敵勢はだいぶ数が削げた。 最初に未来やアンナらが倒した後に復活したゾンビらも数えて、実に40人程度がぶっ飛ばされた。 前衛のチームがかなりの数のゾンビたちを吹っ飛ばしたものの、ゾンビはすぐに復活する。吹っ飛ばされながらも復活したゾンビの群れが萬智禽行軍の中衛陣に入ってきた。 「行くぜ、ティム!! 俺らワスプの意地を見せてやろうぜ!」 「もちろんです、ナイトさん!! みんなにかっこいいところ見せなくちゃ!」 ナイトとティムのコンビが超高速ムーブで飛び出した。 それぞれナイフとブーメランが武器だが、神速度でびゅんびゅん飛び回りながら、群がるゾンビたちをコンビプレイで撃破して行く! 「援護します!!」 らたたたたたた!! ワスプコンビの背後からエリスが飛び出し、銃器を連射する! ちょうど死角になった部分からゾンビを撃ち落して行く! 「ヘイヘーイ!! ソレソレー!!」 ワスプコンビとエリスが中衛の防衛戦をしているところで、ジュディがやや戦線離脱して走り回る。 ジュディが手元に抱えているのは、マニフィカから預かった「魔法陣無効ボール」3発分だ。 魔法陣に近づいては、ボールを投げて、ヒット&ウェイだ。 第2回からの反省でも、ガイスト将軍は魔法陣の扱いが達人的に上手い。 きっと、今回も魔法陣を使った罠を張ってくるだろうことは目に見えた展開だ。 なので、マニフィカと相談した結果、ジュディが遊撃隊になり、まずは魔法陣3つを潰すところから始めている。 お陰様で、エリアEの魔法陣は悪用される前に全て潰すことができた。 (フム。ここまでは予想通りなのだ……。だが、ガイスト将軍のことだ。そろそろ何か仕掛けてくるはずでは!?) 目玉の軍師は警戒しつつも、付近にいる友軍に気を引き締めるよう呼びかけた。 今、萬智禽の周辺には、フリーマジシャン21人。フリーファイター4人、虫使い6人、風水師2人がいる。(*詳しくはJ-5「モブNPCたちの状況その2」参照) 魔術師タイプのシルフィーとサポート要員のビリーも後衛にいるが、飽くまでこの2人は最後尾からの支援だ。 後衛に流れ込んでくるゾンビやクローネの相手は、モブNPCたちが対応してくれている。 かきん、かきん、かきん、かん、かん、かん! フリーファイターたちとゾンビ兵士が白兵戦をしているが……。 かきぃぃぃん! ぐさり!! 「ぐはっ!!」 フリーファイター1人が負傷した。やはり力量に差があることは否めない。 「そら! 元気だせい!」 背後からビリーがファイターに鍼をちくり、と激励。 元気のツボが打たれた。 「よっしゃあ! 負けないぜ!」 ファイターたち4人は「集団戦術」の形を取り、ゾンビを撃退する。 「おのれー! クローネどもめー!!」 フリーマジシャンらが徒党を組んで、魔弾でクローネを追い払う。 だが、クローネの方が数は多い。 10匹規模で、突撃して来た! 「それー! まにあえー、ゴーレムゥゥゥ!!」 かきぃぃぃん!! 召喚されたシルフィーの「ゴールデン・ゴーレム」がクローネの大群を弾いた。 「それ、そこかー!!」 フリーマジシャンたち、そして虫使いが追撃して、クローネの大群を撃退した。 (おかしい……。上手く行き過ぎていないだろうか!?) 友軍優勢の状況化、軍師萬智禽はやはり疑っていた。 ゾンビやクローネたちも攻撃してくるものの、いまいち手ぬるい。 こちらの友軍のPCたちが強いからとも言えるが、なにせ相手は頭の中で戦争継続中の亡霊軍団だ。この程度で済む方がおかしいのだが……。 (む!? ガイスト殿が王座からいないぞ!? しまった!! ゾンビやクローネに気を取られていたせいで……!!) ガイスト将軍はある意味で魔王なので王座から動かず、高みの見物をしているという先入観がPC軍にはあったのかもしれない。 しかし、気がついたときには遅かった。 『地獄の業火で焦がした己が双剣に焼き斬られるがいい……。インフェルノオオオ、スラアアアアアアアアアアシュ!!』 ガイスト将軍が「転移」してきた。 心霊の彼からすれば転移などお手の物だ。 PCの友軍はゾンビやクローネの撃退で乱戦していた。 とてもガイスト将軍のことなど気にしていられる場合ではなかったところ……。 双剣の99回連続攻撃で行軍中の中衛に向かって突っ込んできたのだ! 「うお!? なんですかい、それは!!」 ナイトが狙われた。 ナイトもスピードと手数では群を抜いている戦闘力を持っている。 もちろん、ナイトも両手のナイフで連続攻撃を回避、防御、反撃して応戦した。 それであってさえも……。 「ぐはぁー!! つええよ、このジジイ!!」 ナイトが猛連撃に耐え切れず宙を舞いぶっ飛んで倒された。 もちろん、隣にいたティムやエリスも何もしていないわけではない。 タイミングを見計らって、ティムが高速で飛び込み、エリスが狙撃する! かん、かん、かん、かきぃぃぃん!! 地獄の連撃は猛威を止めることがなかった。 真っ赤な剣の閃光に見舞われながら、ティムとエリスが遥か後方へはじけ飛んで倒された。 「ふん。若い世代の実力はこの程度か!! なあ、アスラよ、魔術勢力はこの程度か!?」 この場にアスラはもちろんいない。 だが妄念に突き動かされている亡霊将軍は、魔術勢力の全滅に向かって全力だ。 誰よりも焦ったのは軍師をしている萬智禽だ。 まさか将軍自らがこのタイミングで中衛を滅ぼしに来るとは思っていなかったからだ。 ちなみにジュディは、戦線離脱をしていたので幸いにもやられなかった。 ジュディは今、乱戦している戦場のどこかに潜伏している。 さあ、中衛が倒された。 すると今度は後衛が狙われる番だ。 「負けずに攻撃するのじゃ! 『マクスウェル』が乗り移ったあたし、いざ突撃じゃー!!」 シルフィーは中衛が全員倒されることぐらい予測していた。 それぐらいに先ほどの『インフェルノ・スラッシュ』は劇的だった。 しかも、少なくとも火属性の奥義だと彼女は見た。 ならば、水属性の強化魔弾なら将軍を倒せるはず! 「ふむ。貴様の魔力を断つ!!」 向かって来る水の弾丸を、あろうことか将軍は二刀流で真っ二つに切断した。 威力が壊された強化魔弾は二つに分裂して、あらぬ方向へ飛んで行ってしまった。 「魔力遮断の太刀」が決まった瞬間であった。 「行くぞ! 悪霊でもくらい死ね!!」 ガイスト将軍から暗褐色の炎が舞い上がり、無数の悪霊が召喚された! 悪霊は後衛にいるPC軍の多数を襲った!! 「うぎゃあああああ!! たすけてええええ!!」 まずは一番弱いモブたちが犠牲になった。 フリーマジシャン6人、フリーファイター2人、風水師1人、虫使い1人が今の悪霊攻撃で行動停止になり自爆されて戦闘不能だ。 次にシルフィーとビリーに悪霊の魔の手が広がる。 「きゃああああ!!」 まかさの強化魔弾が弾かれた後のことだ。 1ターン行動停止中のシルフィーに悪霊を避ける手段はなかった。 悪霊はシルフィーを猛毒にして自爆した。もちろん戦闘不能だ。 「なんでやねええん!? だが、しかし!!」 ビリーはやられる間際、どさくさでゴースト・バスターボールを将軍に投げつけた。 将軍はカウンター攻撃も持っていることだろう。 だが、彼は今、攻撃したばかりだ。 ならば、カウンターを出すまでもなく、次のターンは最低でも防御行動に入るはずだ。 はずだったが……。 「うおおおお!! 将軍のために死なせて頂きます!!」 ゾンビ兵士3人が突っ込んできて、ガイスト将軍の盾になった。 スキル「忠誠心」を発揮したゾンビたちは、将軍が受けるはずだったゴースト・バスターボールのダメージを代わりに受けて消えて行った。 ビリーに容赦なく悪霊が取り憑いた。 ビリーは電撃でビリビリと感電した後、自爆されて戦闘不能ぎりぎりになった。 (ビリーがポケットに入れていたコットンのお守りのお陰でダメージは軽減された) もちろん、将軍は軍師を潰すつもりだ。 中衛からいきなり切り崩して、後衛に突進したのもある意味でそのためだ。 悪霊は萬智禽にも呪い殺す勢いで取り憑いたが……。 「うおおおお、ぐおおお……! 腰(目玉)が抜ける!!」(だがな……) ところでこの悪霊がバッドステータスを付加するのはランダムだ。 幸いにも、今の攻撃は軽い方である「スタン」攻撃に留まった。 闇属性の自爆攻撃すらも、先ほどの「かき氷」のお陰でMP吸収になった。 もちろん、この事態を前衛にいた仲間たちが黙認していたわけがない。 最前列に群がるゾンビたちを魔炎の精とドッペルゲンガー魔炎に任せて、PCたちは将軍の打倒へ向かった。 「マニフィカ、参りますわ!!」 マニフィカは既にドッペルゲンガーとホムンクルスを召喚していた。今、マニフィカは3人になった。3人そろったマニフィカは、「トリプル・ブリンク・ファルコン」を連撃し無双するが……!! 「悪いくはない太刀だ! だがな……我が地獄の業火を切り裂く刃の敵ではない!!」 「トリプル・ブリンク・ファルコン」と「インフェルノ・スラッシュ」の押し合いが始まった。 常人ではとても目視すらできないほどの高速連撃が激突する。 なにせ、マニフィカたちは、7連続攻撃・先手攻撃率97%・敏捷性上昇6倍の攻撃を、3人同時で繰り出している。しかも「トリプル」の加算補正がかかっているので、連撃の回数が3人分プラス・アルファされ、攻撃力がランダムで上昇し、さらにクリティカルダメージを複数回連発している。 対するにガイスト将軍の方は、3人同時で来た槍の連続攻撃に向かって、1人で99回連続斬撃で応戦しているのだ。 つまり将軍はマニフィカ1人頭に対して、33回分の連続攻撃をもって、攻めてくる10連続攻撃(7+α)を弾き返し、戦っている。 速度や攻撃力やクリティカル率を高めようとも、同程度かそれ以上の33回連続攻撃を10回分の連続攻撃程度で防げるわけも凌駕できるわけもなく……。 「ふはは!! 甘い、遅い!! もらった!!」 地獄の断罪刃が人魚姫たちを容赦なく食い殺す!! ドッペルゲンガーとホムンクルスだったマニフィカたちは魔剣の餌食になり消滅してしまった。 そしてマニフィカ本体すらも……。 「きゃああああああああ!!」 マニフィカは、最後の連続攻撃数十発がクリーンヒットされたため、後方へ弾き飛ばされてしまった。そしてそのまま、がくりと動かくなった。 もちろん、マニフィカが戦っている最中、前衛の友軍は鑑賞していたわけではない。 次に向かい打つは、未来とアンナだ。 詠唱後、「二身一体心眼少女」が決まった! 未来とアンナには今、ガイスト将軍が止まって見えるはずだ! しかし、将軍は……。 「ふん!!」 マニフィカを葬った直後、「魔力遮断の太刀」を放った。 ちょうど充電が完了した「二身一体心眼少女」のスキルそのものを攻撃開始の寸前で断ち切ったのだ。 「そう来ると思ったー!! 実は、そっちはおとりなんだよねー!!」 未来は魔術の重ね掛けをしていた。 アンナと一緒に用意していた「二身一体心眼少女」の直前に、「ファルコンチャージ」を完了していたのだ。 将軍が一度に遮断できるスキルは1つまで。 と、いうことは、「ファルコンチャージ」の方は、まだ生きている! 未来がサイコセーバーを構え、猛速度の「ブリンク・ファルコン」で飛びかかる! ファルコンバッジも加えて、8連続攻撃の攻撃力3倍攻撃。 つまり、24回連続攻撃の重量を持ったハヤブサの連続斬撃が将軍を襲う! しかもアンナはアンナで攻撃を用意していた。 アンナは「乱れ雪桜花」(雪と桜の吹雪だけ版)を戦場一面に吹かした。 場違いにきれいな雪と桜が将軍を覆い、彼の視界が遮られる……。 「将軍、覚悟ですわ!!」 ガイスト側から見て、アンナは彼の背後数メートルから、ゴースト・バスターボールをぶん投げた。 ここで将軍からは、「対除霊攻撃」という意味で、「ガイスト・カウンター」が入る! 「そこか!!」 ガイストは、ボールを紙一重で回避した直後、アンナを「ツイン・スラッシュ」で切り捨てた。 デフォルト攻撃ではあるが、カウンター・クリティカルが入り、アンナは背後へぶっ飛ばされた。将軍は追撃をするべく飛んで行く! 「きゃああああああああ!!」 もちろんこのアンナの攻撃すらもおとりだ。 未来は、おとりにおとりを重ねて、ついに最終攻撃に入る。 視界の悪い中、アンナをカウンターで切り捨て追撃している今の将軍に対応の余地はない。反撃したものの猛攻で戦闘不能になったアンナに代わり、未来の8回連続3倍重量攻撃の「ブリンク・ファルコン」が、将軍を直撃した! どっかあああああああああああああああああん!! どがどが、どっかあああああああああああああああん!! もくもくと煙が立ち込めるなら……。 そこに幽鬼の姿がうっすらと浮かび上がる……。 「え!? ウソ!? 今の全力攻撃だったのに!?」 くはは、と将軍が冷ややかに笑った。 「『エーテル体』というのをご存知かな? 早い話、幽霊に対して物理攻撃は通りが悪いことを学習していなかったか?」 そう言い捨てるや否や、攻撃直後で呆然としている未来に将軍が突撃した! 未来はサイコセーバーで必死に防御するが、攻撃の手数が間に合わない! 将軍は、「インフェルノ・スラッシュ」すらも使っていないはずなのに!? 未来は、「ツイン・スラッシュ」の熾烈な連撃に押し切られて戦闘不能になった。 ところが、劣勢はいつまでも続かないものだ。 将軍を軸にして、東西南北の四方向から、凄まじい霊気を伴った紫色の波動が吹き荒れた!! 「な!? 今度は何だ!? まだいるのか!?」 将軍は、中衛、後衛、前衛、と叩き潰したはずだ。 もっとも、ジュディがどこかへ逃げていたことに将軍は気が回っていなかった。 「ゴオオオオオオオオオオオオストオオオオオオオオオ、ブレエエエエエエエエエエエエエイクウウウウウウ!!」 4人のジュディが「ゴースト・ブレイカーVerマップ兵器」を同時に放ったのだ! 本体、ドッペルゲンガー2体と異次元獣1体(うちビリーから装置1つと異次元獣を借りた)……合計4人のジュディが一斉にゴースト・ブレイカー攻撃を将軍へ直撃させた。 この攻撃準備にはさすがの将軍も気が付いていなかったので、無防御で重度の除霊攻撃を4回連続も受けてしまった。 軍師はこのときを待っていた。 友軍がばったばったと片付けられる中、やっと将軍にすきができた。 今、まさに反撃と打倒のチャンス!! 『残っている友軍全員に告ぐ! 『一斉砲撃』なのだ!! 総軍、攻撃開始!!!!』 萬智禽が指揮を執ると、残っているモブたちが砲撃に入る。 残っているフリーマジシャン15人、フリーファイター2人、虫使い5人、風水師1人がそれぞれのスキルで突撃する! 「ボクも加わるでー!!」 ビリーは角笛で暴風を吹かせて攻撃に加算した。 「俺もいるぜ! 忘れてくれるなよ!」 魔炎が飛んで来た。ドッペルゲンガーは既に倒された後だったが、ぼろぼろになった本体の魔炎が「ゴースト・クラッシャー」の爆撃を加算してくれる。 「ヘイ、ジュディたちもやりますよー!!」 ジュディたち4人は、それぞれ拳銃やライフルを構えて連続銃撃を死ぬほど浴びせた。 (くっ……。総軍の人数が予定よりだいぶ減っているのだ……。だが将軍は、ジュディ殿の連続4回除霊攻撃を受けているから、押し切れるかもしれん……!!) どかああああああああああああああああああんん!! どがどが、どかああああああああああああああああああんん!! K-2「攻略エリアE(VSガイスト将軍)後半戦」 軍師萬智禽率いる軍勢残りから総攻撃を受けたガイスト将軍。 このとき、誰もが将軍の敗北を確信していた。 ガイスト将軍だた一人を除いては……。 爆撃後に煙硝が吹き荒れる戦場……。 真っ白い煙が吹き消えると……。 そこには幽鬼がぼろぼろの姿で、剣を杖にして立っていた。 「ぐはっ、げほげほ……。はあ、はあ……。ははは、やるじゃないか……アスラの精鋭部隊どもよ……楽しいぞ……実に楽しい……何十年ぶりの感動だ、これは!?」 ガイスト将軍は、無傷とはとても言えないまでも、まだ消滅していなかった。 もっとも、将軍がこれ以上戦えるわけがなかろう。 そのとき萬智禽は……。 ジュディが代表して一歩前に出た。 将軍に手を差し伸べた。 「ヘイ、ジェネラル・ガイスト! ユーはよくやったヨ! もうマジックとサイエンスのワー(戦争)はフィニッシュ、ネ……」 そう、萬智禽は、ジュディのように降参や仲直りを呼びかけようとは思っていなかった。 なぜなら、それこそが、罠であって……。 「行けない、ジュディ殿!! 逃げろ!!」 軍師が指示を出すや否や、残っているゾンビ兵たちがジュディにタックルをくらわせてぶっ飛ばした。 ガイスト将軍は、ニヤリと笑い、剣の長い方を杖にして、短い方を避雷針にして、天井へ向かって高く掲げた。 「いいや、戦争は終わっていないのだよ、レディ……。むしろ、こういう戦が本当に楽しくなるのは、これからだ……。ガイスト軍全軍に告ぐ!! 再生霊術式を限界超えで解放!! 全軍、立て、行け、敵勢を呪い殺せ!! 科学勢力の名の下に燃え上がれ!!」 ガイスト将軍は特殊スキル「将軍の激励」を戦場全体へ向かって放った! そのとき、戦場に奇跡が起こる……!! 「将軍、オ呼ビデスカ!! コノ、キング、骨ノ全テヲ捧ゲマショウ!!」 エリアBで倒されたはずのスケルトンロード・キング3体がロードたちを率いて復活していた! 「みずみずうううう!!」 「火、火、火!!」 「風、かぜええ!!」 「つーちー!!」 今度は、エリアCで倒されたはずの霊体土偶の四大元素全てが復活した! 「ははは! さすがは将軍、頼もしいというか、楽しくて仕方がありません! 戦争ゲームはそうじゃなくちゃいけませんね!」 最後に、エリアDで倒されたはずのドッペルゲンガー・ボムがドッペルゲンガーたちを率いて復活してしまった! 「いいぞー、しょうぐーん!!」 「ガイスト、ガイスト、ガイスト!!」 「ガイスト軍に勝利と祝福を!!」 おまけに、エリアEで倒したはずのゾンビの大半までもが復活してしまう次第だ。 敵勢は復活そうそうにぎわっていた。 今、まさに戦争の続きが始まったからだ! もっとも、復活した敵勢全てはガイスト将軍の隣にはいない。 マップの位置で言えば、今、将軍はちょうどエリアEの中央にいる。 将軍を取り巻くかたちで周辺に復活したゾンビたちがいる。 キング3体とその配下たちと4体の土偶たちは、エリアE内の左右端付近で復活していた。ボムと配下たちはエリアEの入り口付近で復活していた。(各エリアで復活するのは距離があるので、将軍がここまで魂を呼び寄せた) 敵軍が復活祭で大騒ぎをしている中、一番、冷や汗をかいているのは軍師萬智禽だ。 まさかこの土壇場でこんなでたらめな切り札を切ってくるとは思いもよらなかった。 将軍が激励を飛ばしたと同時に敵軍のほぼ全員が復活してしまっている。 しかもこちらの友軍は既に手負いか戦闘不能者ばかりだ。 ここで萬智禽は、戦争時代の英雄の恐ろしさを直に知ったのであった。 (くっ……。なんという戦力差だ……。私としたことが、力量というか実力を計り違えていたとは……!? どうする!? もう、あとがない!?) 友軍で焦っているのは萬智禽一人だけではなかった。 戦場では、気力が死んだ者から順に離脱して行く……。 「うわー!! 逃げろー!!」 「きゃあー!!」 虫使いや風水師がパニックになった。 作戦の途中であるが、復活劇で恐怖を覚えた者たちが逃げた。 「わりい! 俺、帰るわ! フリーランスなんで、命捨ててまであんたらに付き合うつもりねえし!」 フリーファイターたちが一気に離脱した。 「そ、そうですね……。死にたくないし……。ごめんなさい!」 フリーマジシャンたちもバツが悪そうに恐る恐る離脱した。 「おい、待てよ、そなたら!? 敵前逃亡する気か!?」 焦る萬智禽が止めるが、雇用された兵士たちは一目散に逃げ去った。 あと、残るは、魔炎、ジュディ、ビリーだ。 「ははは……。逃げるか、ザコ兵士どもがよ……!! 俺はこれでも、戦の炎、魔炎の精だ! 戦って死ぬなら本望だぜ!!」 ぼろぼろになった魔炎が大剣を振りかぶって敵軍に攻めて行く。 「ヘイ、ユー!! 一人で死に急ぐことないネ!」 ジュディも魔炎の後方から連続銃撃で応戦する。 「サポート、マジでしまっせー!!」 ビリーが魔炎とジュディの傷に鍼を投げて治療する。 残りの仲間たちがカラ元気で対応してくれていたものの……。 「ぐはっ……。すまねえ、やられちまった……!!」 魔炎が将軍の必殺剣で殺された。 「ノー!! ココまで、ナノ!?」 ジュディが土偶4人やドッペルゲンガーたちに集中攻撃されて倒された。 「ははは……。さすがにきついなあ……」 ビリーがキング3体に斬り殺された。 萬智禽だけが戦場に残された。 おぞましい孤独感が軍師を襲った。 (うう……。なんということだ……。これが敗戦というものか……。これでは、あのときと同じではないか!! ゾットスルー族が人間どもの革命で敗戦し、国が滅びて、私は逃げた……。いつか、立派な軍師になって戦争では誰にも負けない奴になろうと決めて、数多(あまた)の軍事演習や書籍の大量読破で力量を上げ、今回までの実戦でもめきめきと上達したはずだった……。だが、将軍は違うのだよ!! 戦争そのものを心から楽しんでいる!! 戦争することの意味が我々では違うのだ!!) ゾンビ兵たちは容赦なく斬りかかって来た。 巨大目玉はゾンビの斬撃や打撃でぼこられながら、幻聴が聞こえて来た。 『弱虫目玉の萬智禽!! ゾットスルー族は弱虫!! 目玉は弱虫!! 弱虫は革命にして死すべし!!』 さて、萬智禽らがあることを見落としていたことを皆様方はお気づきであろうか? そう、それは……。 『行っけええええええええええ、ファ●ネエエエエエエエエエエエエエルゥ!! サイエンス・イズ・ノーデッド!(科学は死なない!)』 完璧に修復されて強化改造までされたパワースーツに乗って、呉がエリアEの戦場へ高速度で突っ込んで来た!! 宙に舞う改造付きのクリーナー2台がレーザーの猛撃で敵勢を蹴散らす! 呉は、『グラビティ・ストライク』を放ち、手前にいたドッペルゲンガー・ボムを必殺の一撃で粉砕した! 奇跡はもうひとつ起こった。 突然、エリアEの戦場の左右の壁に異変が起きた! エリアBとエリアDの壁が爆破され、対角線攻撃でエリアEの壁を通り抜けて爆発! 爆発した紫色の霊気がエリアEへ押し寄せて来たのだ! ゴースト・ブレイカーのような猛吹雪が起こる中、ガイスト軍のゾンビの大半が吹き飛ばされた。 「な、なんだ、この土壇場の攻撃は!? 全軍、防御!!」 さすがのガイスト将軍もこれには焦ったことだろう。 今の襲撃でスケルトンロード・キング2体や霊体土偶2体(水と火)といった武将までが倒された。 エリアB側のぶっ壊れた壁からは、ジョンソンズが。 エリアD側の破壊された壁からは、リュリュミアが。 某遺跡ものの映画のヒーローみたいに、ロープにつたって再登場!! 「いやあ、わりいな、みんな。待たせたわ! これぞ『冒険家七つ道具』で有名な爆発トラップ張り巡らせだ! ま、俺も心霊科学者なんで、アンデッドの生態や戦略はよく知っている。ガイスト将軍やその部下が倒されたところで復活することぐらい計算に入っていたのさ! がはは、天才の俺様に感謝しろよ!!」 ジョンソンズは現れるや否や、バカ笑いをする。 「ジョンソンズの助手のリュリュミアもぉ、お忘れなくぅ〜!! わたしもぉ、一緒にぃ、トラップをぉ、手伝ったんでぉ、そこのとこぉ、よろしくぅ〜!!」 リュリュミアも得意そうにえっへん、と胸を張る。 だが、彼らが出て来たところで、いったい、何が変わるのか!? 「おい、目玉! ちゃんと指揮しろよ! 俺様たちの軍団、壊滅状態じゃねえかよ!」 ジョンソンズが萬智禽を叱る。 「いやさ、ジョンソンズさんよお、俺らも悪いよな? 俺は修復と改造に夢中になっていたしさ、あんたらはトラップを各地に張り巡らせていたんだろう? すまん、萬智禽さん! 頼むから指揮って!!」 様子が変だ。 萬智禽は、大きな瞳から涙を流し、赤く燃え盛っていた……。 「あぁー!? 萬智禽がおかしくなっちゃよぉ〜!!」 リュリュミアは真っ青だ。 エリアE前半戦の戦場で彼に何か恐ろしいことがあり、恐怖で狂ってしまったと思ったのだ! 萬智禽は、狂いながら(?)も、燃えて、ぶつぶつ言っていた……。 「わ、わ・た・し・は……、私は……弱虫目玉なんかじゃない!! ふはは、来てくれたな、呉殿よ、ジョンソンズ殿よ、リュリュミア殿よ!! 信じていたのだ、そなたらがここへ来てくれることを!! そして、来たれ、アンナ殿、未来殿、マニフィカ殿、ジュディ殿、ビリー殿、シルフィー殿、エリス殿、魔炎殿、ナイト殿、ティム殿!! あと、帰って来い、モブども!! 全軍集結して戦うぞ!!」 目玉の軍師は本当にダメになってしまったのだろうか? 既に倒された者たちや逃げた者たちのことまで戦力に入れているようだ……。 「ガイスト殿……。そなたは正しい。そう、友軍が全滅しかけているのであれば、全軍を奇跡か何かで復活させてしまえばいいだけだ……。そのスキル、もらったのだよ……。私は、ゾットスルー族の残党、名は萬智禽・サンチェック。お礼に、私の国の戦の真を教えてやろう……。鬼に会っては鬼を斬り、仏に会っては仏を殺す! 迷わず逝けよ、逝けば成仏出来るさ、である!」 覚醒した萬智禽から燃え盛る真っ赤な炎は、彼を軸にして大きな円を描き、エリアEの戦場全体に波及した! 軍師の精神の奥底から湧き出た温かな波動は、倒されたはずの友軍全員を包んだ。 「ワッツ!?(何!?)オウ、コレは!?」 ジュディが目を覚ました。 「ん!? なんやねん? 朝かいな?」 ビリーが起きた。 「あら、いけませんわね……。たしか、戦いの途中でしたわね?」 アンナが立ち上がった。 「くぅぅ……。いてて、将軍め! あ、寝てた、わたし!?」 未来が跳ね起きた。 「何かしら、この炎!? 心地よいし……闘志が湧きますわね!?」 マニフィカが復活した。 その後、シルフィー、エリス、魔炎、ナイト、ティムらも復活を遂げた。 さて、逃げたモブたちは……。 「おい、なんかすげえことになってんな?」 「も、もしかして、戻った方が……!?」 「でも、私たち、逃げてきたし」 モブたちの背中を押すように、とるいぬがウマドランVを差し入れた。 「ファイト一発ですぞ! 行ってあげなさいって!!」 戦闘に極力参加しないようにしていたが、このときばかりはさすがのとるいぬも応援してしまったのだ。 「ふはは! 見たか、ガイスト殿め! そなたもかつての戦争の歴戦の将軍であろうが、私といえども、革命戦争を超えた革命の闘士なのだよ!! くぐった修羅場の場数では負ける気がしないぞ、ぐはは!!」 萬智禽はこのとき、どんなチートをしたのであろうか? 簡単な話だ。 ガイスト将軍の切り札である特殊スキル「将軍の激励」を「コピーイング」したのである。 もっとも、ただの劣化コピーではなく、覚醒した萬智禽のアレンジ入りのコピーである。 「行け、我が友軍全員よ!! ガイスト軍はもう後がない!! 倒すのだ! 滅ぼすのだ! 全滅させるのだー!!」 萬智禽はいつも以上に心がうきうきしていた。 やはり戦場こそが彼の居場所なのだ。 そしてそれは、ガイスト将軍も同じであり……。 「行け、ガイスト軍よ!! 復活した武将が何人か倒されたぐらいで怯むな! 敵軍も去勢を張っているだけだ! 戦力の総量ではまだ我が軍の方が優勢にある! なんとしても要塞を守り抜け! この戦争に勝利するのは我ら科学勢力だ!」 どちらの軍師も「将軍の激励」はもう使えない。 また、どちらの軍勢も既に力はほぼ使い切っている。 あとは、戦に惚れた者同士の、熾烈なまでのガチの殴り合いが展開されるだけだ! 凄まじい激突だった。 両方の全軍が全力で激突することで遺跡、いや、要塞の各地ががたつき、破壊された。 エリアEの戦場はもはやぼろぼろだ。 そもそもエリアBとDに封印が施された時点で、この遺跡そのものにもう再生力はない。 したがって、遺跡が崩れ果てるまで、既にカウントダウンが数えられるぐらいだ……。 危険を察知したとるいぬが大声で叫ぶ。 「皆さん! ここは危険ですぞ!! 逃げましょう!! エリアEの入り口に転移門を召喚しました! ここから外へ逃げてください! もはや将軍たちと戦っている場合ではありませんぞ!」 まず、モブたちが逃げた。 先ほどは萬智禽の「将軍の激励」に押されたが、冷静に考えるとやはり命は欲しい。 モブたちは転移門を目指して一目散に解散した。 「よっしゃあ、退き時だぜい! わりいな、お化けども、ワスプもずらかるや!」 「ですね、ナイトさん!」 ナイトとティムが戦闘を止め、高速度で離脱し、転移門へ逃げた。 後衛で一緒に戦っていたシルフィーやビリーも萬智禽を促す。 「ねえ、逃げようよ!? この際、将軍は見逃そう! あたしたちまで遺跡の下敷きになったら元も子もないよ!」 「せやな! はよ逃げんと、ボクらホンマにお陀仏やで!!」 最前線で戦っている将軍には逃げる気など全くない。 前衛では、エリアE前半戦の戦いがあたかも繰り返されていた。 アンナ、未来、マニフィカに加わりジュディの四人がガイスト将軍を抑え込んでいた。 中衛では、土偶、骸骨、ゾンビ兵らの攻撃に対して、リュリュミア、エリス、ジョンソンズ、呉、魔炎が戦っている最中だ。 将軍は前衛四人を一気に吹き飛ばし、後方へジャンプして距離を取った。 そして、再び短い剣を振り上げて、何やら科学式の詠唱を始めた。 取り巻きのゾンビたちが将軍を守り出す。 萬智禽は今度こそ最大レベルで焦った。 将軍はまだ何か切り札を持っていたのだ!? 一方でシルフィーやビリーの言い分もわかる。 今、みんなで退く判断をしないと、今度こそ、遺跡の下敷きで本当の全滅だからだ。 『皆の者―!! 後退なのだ! 撤退するのだ!! 将軍との決戦は中止する!! 全軍、退け!!』 軍師の判断は的確であった。 だが、将軍の詠唱は既に完成していた。 時、既に、遅し! 将軍が危うい光の玉を拡散して方々に投げた。 友軍は抵抗したものの、逃げ遅れた全員が光の玉に捕らえられてしまった。 (くっ……。今度こそ本当に負けてしまったのか……!? 手はないか!? まだ手ははないか!? くそぉ……こんなところで、終わってたまるか……!?) 目玉の軍師は、光に包まれてどこかへ飛ばされてしまった。 飛ばされたのは彼だけではない。 PC軍全員が飛ばされてしまったのだ! そのとき、友軍は飛ばされながらもあることを悟った。 (将軍、あなた、まさか!?) マニフィカは……。 (え? ウソだよね? アンナ!?) (まさか、ですわ、未来!?) 未来とアンナも……。 (な、なんやて!? ん、んな、アホな!?) ビリーも……。 (最後はぁ……。そういうことなのぉ!?) リュリュミアも……。 わかってしまった。 「ヘイ、ガイスト!! ノー、ヨ、ソレ!! ユーは……ソレでイイノ!?」 ジュディが叫んだ。 「ガイスト将軍……。ありがとう……。成仏してくれ!!」 呉は合掌した。 現代魔術研究所の軍勢が「転移」心霊術で外部へ飛ばされたところを見届けながら……。崩れ行く要塞の中で、ガイスト将軍は、パイプを取り出し、火を点けて、ふかしていた。 「ふっ……。さらばだ、魔術勢力の若手たちよ……。戦争がとっくの昔に終わっていたことぐらいわかっていたさ……。ただな、私はこれでも将軍であるし軍人だ。ワトキンソン様(当時の科学のトップ)の命令なしに動くことなどできないのだよ……。楽しい戦争だった……。マギ・ジスタンの将来は貴様らに託す……」 この日、このときをもって、ゴーストシェル「要塞」は完全に崩壊した。 ●ディスクL:後日談 L-1「みんなの慰霊祭」 ゴーストシェル遺跡崩壊の数日後……。 現代魔術研究所調査部隊の報告により、以下のニュースがマギ・ジスタン世界全土へ伝わった。 ガイスト軍が心霊として遺跡の中で存命し、彼らの中で未だに戦争中だったことが各地のマスメディアやソーシャルメディアなどで取り上げられた。 科学と魔術の戦争は既に終わっていたはずなのに、未だに戦争を続けている人たちがいた……。この事実は、かつて戦争を経験した世代も戦争を知らない世代も、誰もがショックなニュースだったに違いない。 現代魔術研究所、聖アスラ学院、マギ・ジス大学、フレイマーズ大学の協力体制をもって、ガイスト将軍たちの慰霊祭を開催しようという運びになった。 フレイマーズ国家は沙漠と火と心霊で有名な国だ。 慰霊祭では、崩壊したゴーストシェル遺跡周辺を囲って、所々にキャンプファイアが設置されている。燃え盛る炎はフレイマーズ国家を象徴し、鎮魂の効果をも持つ。 沙漠がやや涼しくなる夕方頃、点在するキャンプファイアの周辺を囲って、慰霊祭の参加者たちが黙祷や追悼を行った。 シルフィー率いる調査部隊や彼女らと共に遺跡の探索をしたメンツは当然、本日の慰霊祭に参加している。 シルフィーの調査部隊は、遺跡の真正面にある巨大なかがり火を囲って、それぞれが遺跡の心霊たちへ祈りを捧げた。 (思えば、ボクがマギ・ジスタン世界に来てからというものの、今回が最大の試練だったかもしれんなあ……。ボクは決して前衛で戦うことはできんかったけれど、皆さんのサポート役として役立てたかいな? カプセルモンスターどもは上手く使いこなせたかいな? 今回の心霊の遺跡での連続4回戦は、ホンマ、色々と思うことあったわ……。ボクも精進したいねん! 悲惨な戦争なくすためにも、早く、ホンマもんの救世主になりてぇ……なれるのはいつやろう? ま、ぼちぼち行くか!) ビリーが祈った。 (それにしても今回の戦いは本当に厳しい戦いでしたわね……。「ブリンク・ファルコン」や「センジュカンノン」といったスキルをかなり高度に練り上げたものの、わたくしはまだまだかもしれません……。戦争時代の亡霊というのも恐ろしい相手でしたわ……。タイマンで挑んだガイスト将軍には歯が立たなかった……仲間がいたからこそなんとか引き分けた……その思いをバネに今後も精進しましょう! 学院での文武両道活動は今後も続けて参りますわよ!) マニフィカが祈った。 (ヘイ、ジェネラル・ガイスト! ユーは、ジュディがこの世界に来てからファイトしたエネミー(敵)の中でも、屈指の一人だったデース! チャンスがアレば、またファイトしたいデース! デモ、ジュディまであの世へレッツ・ゴーはごめん被りマース! ジュディ、このファイアに誓って、今後もファイターとして実力を高めて行く覚悟を宣誓しマース! トコロデ今回、色々ヒストリーをラーニングしたデース。今度、保健体育の授業で皆さんにジェネラルたちのことをお話スルデス!) ジュディが祈った。 (いやー、すごい戦いだったねえ……!! 普通に学院生やってたら、授業の訓練であってもここまでやらないよねー? 科学と魔術の戦争なんてわたしは全く知らない世代だけれど……今回学んだ戦争は歴史の勉強になったね! それにしても将軍たち、強すぎ!? 戦争を経験した世代だったからこその強さかな? わたしもまだまだ若輩者だけれど、戦争世代に負けないぐらいに強くなろう! 広報部の次回のニュースネタはガイスト将軍で決まりだね!) 未来が祈った。 (ふう……。沙漠の遺跡での長い戦いがやっと終わりましたわね……。正直なところ、今回は最後まで勝てる自信はありませんでした。ですが、未来や萬智禽を始めとした心強い味方もいたのでここまで来られたのかしらね? 連続4回戦の連戦のお陰でかなり鍛えられましたわ。霊体対策の攻撃手段まで手に入ったのは美味しい誤算でしたわね! さて、そういえば世界史の授業のレポートありましたわ……。ゴーストシェル遺跡と心霊国家計画について改めて調べて書いて提出しますか……) アンナが祈った。 (ああーん! 話がだいぶ違ったよぉ〜!? 沙漠で楽しいバカンスの遺跡巡りじゃなかったのぉ〜!? シルフィー、話が違うんですけれどぉ〜!? まぁ、でもぉ、ジョンソンズとお友達になれたしぃ、ガイスト将軍たちと戦えたしぃ、新スキルも手に入ったしぃ……。チャラとしましょー! それにしても沙漠暑すぎぃ―!? 一応ここ、魔術クーラーが結界内でかかっているはずよねぇ!? そーいえばぁ、この国って植林でも有名よねぇ? 赤い沙漠のおみやげ屋にでも帰りに寄ろうかなぁ!?) リュリュミアが祈った。 (科学と魔術の戦争か……。俺はこの世界に来てそんなに経ってないが、今回の連続4回戦は本当にすごい経験をしたなあ……。ガイスト将軍らとやりあったり、ヴァイスとちょっとした友人になったりとか、色々あったが、両勢力の対立の根が深いってことはよくわかった。俺も科学者として、この世界の科学や魔術や平和に何か貢献できねえもんかねえ……。よし、マギ・ジス大学の研究所に帰ったら所長に提案してみよう! 平和のための発明でもするか!) 呉が祈った。 (ガイスト将軍、ドッペルゲンガー・ボム、霊体土偶、スケルトンロード・キング……。対戦した敵将であったそなたらに深い祈りと敬意を捧げよう……。私も自分の国でかつて革命戦争を経験した身ではあったが、今回のマギ・ジスタン世界の戦争の続きというのも身を染みて理解したぞ……。そなたら、本当に大変な思いをして激動の時代を生きたのだな……。さて、今回の反省点も踏まえて、現代魔術研究所での次回の研究テーマは、対心霊戦の戦略研究でも行うか……。あの世で見ていろよ、ガイスト殿……。絶対にそなたを超えてみせるからな!!) 萬智禽が祈った。 そしてその後、シルフィー、魔炎の精、エリス、ジョンソンズ、ナイト、ティム、とるいぬにモブNPCたち、ヴァイスら分子たちもそれぞれの思いを胸に祈りを捧げた。 マギ・ジスタン世界における科学と魔術の戦争は既に終わったものの、今回みたいな戦火の火種はまだまだこの世界には各地で残っていることだろう。 一度戦争をしてしまうと、勝っても負けても、その傷の痛みは永遠に残り続けるのだから……。 それでも、現代魔術研究所の調査部隊を始めとして、マギ・ジスタン世界に生きる今の世代は前を向いて進むことだろう。それがガイスト将軍ら戦争で散って行った世代が将来の世代へ託した思いなのだから……。 (終わり) |