ゲームマスター:夜神鉱刃
もくじ ●ディスクE:攻防戦 第1回戦目 E-1「第1回 攻城戦A DPのPCルート」 E-2「第1回 攻城戦B DPのNPCルート」 E-3「第1回 攻城戦C その他ルート」 E-4「第1回 防衛戦 蒋介石ルートの遮断VSミッドウェイ海戦」 E-5「第1回 その他NPCの生存確認」 ●ディスクF:攻防戦 第2回戦目 F-1「第2回 攻城戦A 引き続きDPのPCルート」 F-2「第2回 攻城戦B&C 奇襲作戦」 F-3「第2回 防衛戦 桶狭間の戦いVS平家物語」 F-4「第2回 その他NPCの生存確認」 ●ディスクG:攻防戦 第3回戦目 G-1「第3回 攻城戦 電撃作戦」 G-2「第3回 防衛戦 特攻隊VS鳥羽伏見の戦い」 G-3「旗取りゲームの勝敗」 G-4「第3回 その他NPCの生存確認」 ●ディスクH:戦後処理 H-1「解体作業」 ●ディスクE:攻防戦 第1回戦目 E-1「第1回 攻城戦A DPのPCルート」 (参考:B2の戦略マップ) ![]() ゲーム開始と共にブザー音が階層全体に響き渡った。 各自、攻防の役割に分かれて、分散する。 攻城戦を目指すグループの四人は南方向の部屋へ向かって走り出した。 先頭を走るのは、アラビアン・ナイト少女のアンナ・ラクシミリア(PC0046)だ。モップを掲げながら颯爽とローラースケートで滑走する。 (ドッペルゲンガーとはまた厄介ですわね……。力量も技も互いに知っているわけですから、うかつには戦えませんわね……) アンナとほぼ同列で走っているは、魔炎の精(NPC)である。大剣を振り回しながら、張り切っている。PCのドッペルゲンガーと戦えるのが楽しみらしい。 「ぐはは! 来い、ドッペルゲンガーどもめ! 俺が叩き切ってやるぜ!」 魔炎の後方で、銃を両手に構えながら走っているのは、これまたアラビアン・ナイト少女の姫柳 未来(PC0023)である。 (ミラージュ・ボム(NPC)は、仲間ととるいぬ特製バリアケースに任せよう! 要は向こうより先に、こっちが目標を撃破すればいいんだよね!) 最後尾で遅れながら走っているのは、ずんぐりとした中国系技師の呉 金虫(PC0101)である。 「はあ、はあ……。ぬぬ、ドッペルゲンガーだとー! 俺の許可を取らずに、勝手に俺のドッペルゲンガーなんか作ってんじゃねえ!」 半ばキレながら叫んでいた……。 *** 初期位置から見て南の部屋。つまり、PCのドッペルゲンガーが待ち構えている部屋だ。攻城戦組の四人がしばらく走っているとドッペルゲンガーに出くわした。 いや、ドッペルゲンガーは待ち構えていたのだ。 今回、参加PCは8人だ。 ドッペルゲンガーのPCも8人いる。 今、この部屋にいる友軍は4人だ。 それに対して敵対勢力は8人いる。 つまり、このままやり合えば、1人頭2人を担当する計算になる。 両軍がじりじりとにらみ合っていたところで、呉が一歩前に出た。 まあ、待て、俺に考えがある、とでも言わんばかりに、味方へウィンクした。 (しかし、俺の性格のネガティブな部分を強調したドッペルゲンガーか……。という事は俺みたいに科学偏重の科学バカで、俺みたいに巨大ロボットにはよだれを垂らしかねないほど巨大ロボットフェチで、俺みたいにSFオタクで、俺みたいに救いようがないほどのスケベで……あうう、自分の悪い面ばっかり見つめてたら落ち込んできたじゃねえか……! だが……そこに突破口がある!!) 「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 何を思ったのだろうか、呉は突然、ドッペルゲンガーの未来とアンナがいる方向へ走り出した。 そして、「あること」をしようとしたが、ドッペルゲンガーたちがアラビアン・ナイト姿のズボンなので、「そのこと」ができず、攻撃は未遂に終わった。 「操(ツァオ)!!」 あまりにもショックだったのだろうか。呉は、両手で膝をついて、地面をガンガンと叩きながら、思わず中国のスラング(=悪い言葉)を叫んでしまった。 それを見ていた、呉のドッペルゲンガーこと、DP呉(以下、ドッペルゲンガーPCやNPCの名前は名前冒頭にDPの略称を入れる)が、がははと、下品に笑い出した。 「どうした本物よ? まさかスカートめくりでもやって、女性陣を撃退しようとでも思っていたのか?」 呉は、悔しそうに反論する。 「ああ、そうさ……。この状況を打開するには、それしかない!! あんたのスケベ心を利用してあんたらを倒す予定だったのさ……」 ふむ、とDP呉は高慢に笑う。 「スカートめくりなどガキの遊び! それは、素人がやることだぜ! 大人の玄人はどうするかあんたは知っているか? こうするのさ!!」 あろうことか、DP呉が、DPアンナとDP未来のズボンを脱がすべく襲いだす! 「ズボンめくりさ! そこにスカートがないのならば……ズボンごとまとめてめくってこそ大人の玄人よ!」 呉の脳裏に天啓が過った。 「そ、そうか……!! スカートがないことが問題じゃないんだ! そこであきらめなければ、試合終了じゃない……!! ズボンがあるじゃないか! ズボンをめくればよかったんだ!!」 DP呉は、ズボンめくりが未遂に終わり、DPアンナとDP未来に蹴とばされて、呉の方へ飛んで来た。 「ぐは(血を吐く音)、はあ、はあ……!! 行くぞ、呉! 本物とDPで力を合わせて合体攻撃だ! 俺たちの合体で、そこにある限りの全てのズボンをめくり、男の夢を実現させるのだ!」 「ふはは! そうだな、同志よ! あんたは正しい! ここは本物とDPで力を合わせて合体するとしよう! 俺たちの底力(=スケベ心)を解放するのが、今がまさにそのときよ!」 DP呉と呉の間で同盟関係が成立した。 二人の呉は、うひょひょとスケベな笑い声をあげながら、DPアンナとDP未来のズボンを襲いだすのであった! 「きゃあああああ、変態ですわ! こっちに来ないでください!!」 DPアンナが逃げ回る。 「きゃあああああ、スケベ、痴漢、外道! こっちに来るなー!!」 DP未来も叫びながら逃げる。 『うひゃひゃ!! 待て待て〜!! ぱん・つー、ぱん・つー、俺たちの希望の布!!』 こうして、呉二人とDP未来&アンナの怪しい鬼ごっこが始まった。 *** 「ぬぬぬ!? 呉の奴……やるじゃねえか! そうか、陽動作戦で敵を混乱させて、そのすきに敵をやっちまえばいいのか!!」 魔炎は、呉の愚行……いや、勇姿を見て感激していた。 本物のアンナと未来は、ため息をついて見守っていた。 一方、軍師DPの巨大目玉こと黒い萬智禽もこの状況を心待ちにしていた。 ギラリ、と牙が光る。 『友軍に告ぐ!! これより、作戦コード『風林火山』を決行する!! 全軍、『風の如く走り抜け!!』今、この混乱のときを無駄にするな!! 一気に攻め落とすのだー!!』 軍師が命令を出すと、DPたちは、大声で賛成した。 DPマニフィカ、DPリュリュミア、DPジュディ、DPビリーは、軍師を担ぎながら全力疾走でPC味方陣地へ向かって走り出す! 「あらら!? 敵に先手を打たれましたわ! 敵軍の半数が味方陣地へ行ってしまいますわ!! どうしましょう、未来?」 アンナは、ここでどんぱち戦闘して敵軍を倒すつもりでいた。 それなのに、混乱を利用されて逃げられてしまっては当然困惑する。 「いや、これはチャンスだよ、アンナ! 戦闘を回避できたんだから! 大丈夫!! 味方陣地にいる仲間たちを信じて、わたしたちはわたしたちのやるべきことをやろう! さっさとドッペルゲンガー・ボム(NPC)を撃ち落そう!」 未来の意見に魔炎が乗っかる。 「おうよ! そうこなくちゃな! 未来の言う通り、今から追いかけなくてもいいぜ! 呉の陽動が効いているうちに俺らも攻城戦をやっちまおうぜ!」 ともかく、意外な展開になってしまったが、友軍は暴れている呉たちを置いて、攻城戦を続けるのであった。 一方、呉たちは……。 どか、ばき、ずこ、どがが、ばきばきばき、どがどが、どかああああん!! DPアンナ&未来に成敗されていたそうだ……。 (ぐは……。もはやここまでか……!! 男の夢、見果たせず!!) E-2「第1回 攻城戦B DPのNPCルート」 味方陣地から向かって西側の部屋ではNPCのドッペルゲンガーが待ち構えていた。 その部屋には、魔導ロボ・エリス(NPC)のみが向かった。 NPCのドッペルゲンガーは4人いる。 エリス、魔炎、シルフィー、ジョンソンズのドッペルゲンガーである。 つまり、ここでは4対1での戦闘になる。 「おい、エリス! 降参してそこを通せ! いくらおまえでも4対1は無理だよな、がはは!」 DP魔炎が見下して言いながら笑い出す。 他のNPCのDPたちも、冷ややかに笑い出した。 「たしかに……。正面からやり合う分には、4対1はきついでしょうね……。では、こうすればどうですか!?」 ずがががががががん!! エリスが上空へ向かって「ナゴヤ撃ち」を放つ。 「ふふふ。エリスは、おバカだね!? そんなところ撃ってどうすんの?」 DPシルフィーが冷やかした。 「ははは。暑くて回路がいかれたんだろう?」 DPジョンソンズが代わりに答えてあげた。 銃撃が終わると同時に、部屋が真っ暗になった。 「な、なんだ、停電か!?」 DP魔炎が焦る。 「は! そうですか! 魔導ホタルを殺したんですね?」 DPエリスは、ここで本物エリスが何をしでかしたかを理解した。 そう、エリスはこの部屋にいた魔導ホタル5匹を全滅させたのである。 「では、さようなら〜!!」 その直後、エリスは「気配殺しICカード」を作動させて、闇の中へ消えて行った。 なお、彼女には「赤外線暗視スコープ」があるので、真っ暗な中でも十分に見える。 (さて、ボスでも始末してさっさと終わらせましょう!!) E-3「第1回 攻城戦C その他ルート」 呉がパンツ騒動で暴れて、南(初期位置から見て)の部屋が混乱していた頃……。 (ふむ。そろそろボクも出動するねん!) アラビアン・ナイト・キューピーことビリー・クェンデス(PC0096)は出撃の用意をした。『魔導動物概論(ネズミ編)』で自身を透明化させ、「飛翼靴」で空中移動の走行だ。口元には、「水分タブレット」をくわえている。なお、今回、「テレポート」が禁止なので、走って行くしかないようだ。 (いやー! ズボンめくりかいな? 派手に暴れとるな? 世俗の言葉で言うと、スケベオヤジ言うねんか? けったいやけれど、きっとこれも作戦やねん? 呉さん、ファイトやで!) DP萬智禽たちは、行軍で忙しいのでビリーの気配に気が付かない。 DPアンナとDP未来もダブル呉を撃退するので忙しい。 ビリーは、フリーパスで敵陣のボス陣地へ入れた。 (おし。ここまでは作戦成功や! ボスの視界に入る前に、召喚済ませておきましょ!) ビリーは、今のうちにカプセルモンスターを召喚した。 以下、召喚。(省略) ・サンドスネーク(ボーマル)+調教グッズ。 ・お化けハイランダケ(リキマル)+調教グッズ。 ・ウォルターラット(トーキチ)。 ・アリ地獄モグラ改(ゴローザ)。 ・マッハ・ハイノシシ(ゴンロク)。 ・ブルーカモメ改(マタザ)+調教グッズ。 (うしし! あのミラーボールの出来損ない、こっちに気が付いていないねん! おや? あれはエリスさんやないか? 仕掛けるつもりやな? よっしゃあ、同時に仕掛けてゲームセットや!!) E-4「第1回 防衛戦 蒋介石ルートの遮断VSミッドウェイ海戦」 『今から防衛戦に入るぞ!! まず、リュリュミア殿(PC0015)、南と西の両方の出入り口にバリケードを張り巡らせるのだ! そしてシルフィー殿(NPC)、特に南の方のDP・PC陣が突撃してくることに備えて、ゴールデン・ゴーレムをバリケードの強化として配置するのだ!』 勇ましく指揮を執っているのは、目玉の軍師萬智禽・サンチェック(PC0097)だ。 彼の声が味方たちの耳元に備えられたイヤホンに響き渡る。 だが、なぜか彼の姿はない……。 リュリュミアは、マギボトルの水をごくごく飲みながら、片手で「ブルーローズ」を召喚して、バリケードを張った。シルフィーも彼女と同時に召喚する。 一方、ミラージュ・ボムらしきボール(NPC?)の周囲には、とるいぬから購入したバリケードが張り巡らされている。その少し後方の離れた位置には、アメリカ・レディ(今日はアラビアン・ナイト・レディ)のジュディ・バーガー(PC0032)が両手をぱんぱんと鳴らし、腰を落して突撃のポーズをしていた。 (本日は、ディフェンス、シマース!! なんとしても、マイボールを守り抜きマース!!マイチームなら楽勝デース♪) 他方、ミラージュ・ボム(?)の少し斜め前方では、フレイマーズ・ジョンソンズ(NPC)と人魚姫(今日はアラビアン人魚)マニフィカ・ストラサローネ(PC0034)が待機していた。なお、マニフィカは護衛の意味で、ジョンソンズを気にかけていた。 ジョンソンズは、武器の「バイオレットローズ」を取り出して、しばいていた。 口元では、ガムをくちゃくちゃと食べて、携帯シガレットケースにぺっと、捨てた。 マニフィカは、先ほどめくっていた『故事ことわざ辞典』の言葉を思い出しながら目をつぶっている。 (【ONE FOR ALL ALL FOR ONE(一人はみんなのために みんなは一人のために)】 今回の戦いのキーフレーズはきっと、これですわね! 仲間を信頼できない性格のひんまがったドッペルゲンガーに負けるわけにはいきません! なにしろ、わたくしたちには仲間を信頼するチームワークがあるのですから!) *** 『全軍、突撃―!! バリケードを破るのだ―!!』 DP萬智禽の怒声が南方向の部屋から響いて来た。 リュリュミアが張ったバリケードとシルフィーのゴーレムは耐久できるのだろうか。 「腐食ぅ、じゅんかぁあああん!!」 DPリュリュミアが「腐食循環」スキルでバリケードを解除した。 「ブルーローズ」が腐って土に還り、バリケードが一瞬で壊れた。 (ああぁ……。やっぱりぃ、そうなるわよねぇ……) 本体リュリュミアはちょっと残念そうだった。 「ファイアアアアアアアアア!!」 今度はDPジュディが大声で叫ぶ。 「激・電磁砲」が放たれ、ゴーレムが大ダメージを負う。 「ブリイィィィンク、ファルコオオオオン!」 同時に、DPマニフィカが「ブリンク・ファルコン」を仕掛ける。 手負いのゴーレムは粉々に砕けた。 一方、西のバリケードの方も、DP魔炎やDPシルフィーのスキルによって、残念ながらも簡単に解除されてしまっていた。 「ふはは! ぬるいぞ、ぬるいぞ! 解除完了! これより新作戦に移る! 作戦コード『蒋介石ルートの遮断』!! 敵軍の補給を断て! 補給が断たれた軍隊は死滅するのだ!!」 DP萬智禽は、どうやらイケイケな性格でかなり押してくる! もちろん、本物萬智禽も負けるわけにはいかない! 『ぬぬぬ……。やるな、あいつ……。だが……友軍の皆よ、高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対応するのである! 武闘派には魔術派。魔術派には武闘派を!! 属性が違う敵を相手にするのだ!!』 さて、『蒋介石ルートの遮断』とは……。 なぜか、敵陣はPCたちを攻撃してこなかった。 その代わり……。 「ファイア、ファイア!!」 DPジュディは、二丁拳銃で、魔導ホタルを狙撃していた。 「ファルコオオオオン!!」 DPマニフィカは、飛び上がり、空中の魔導ホタルを攻撃している。 「それぇ、ぱっくんちょぉ!!」 DPリュリュミアは、怪しい植物を放って、魔導ホタルを食べさせている。 「ほいほいやでー!!」 DPビリーは、魔導ホタルほいほいを召喚して、魔導ホタルを集めている。 (しまった! 狙いは……ライフラインの魔導ホタルか!! ならばこっちも作戦コードを……) じりじりと焦る軍師目玉だが、仲間に指示を出すことを疎かにしてはいない。 『魔導ホタルを攻撃させるな!! だが、敵軍をそのまま攻撃するな! 敵軍をジョンソンズ殿の中心に集めろ!! ……それとジョンソンズ殿、聞こえるか? 作戦だが……』 ここで全軍、入り乱れながらの攻防戦に入る。 マニフィカは、DPジョンソンズ&DP魔炎と。 ジュディは、DPリュリュミア&DPシルフィーと。 リュリュミアは、DPマニフィカ&DPジュディと。 シルフィーは、DPビリーと。 なお、DP萬智禽は、本体を探しているが、その代わりに「マッハ・ハイノシシ」と「サンドスネーク(マンスネーク)と戦うことになった。 また、ジョンソンズは中心部で何かを詠唱している。 (くっ……。DPジョンソンズ先生の鞭さばきにDP魔炎さんの剣さばき……。両方同時に相手はきついですわね!) マニフィカは、魔槍で二人と剣戟を弾かせながら、中心部へ誘導する。 (ヘイ、DPリュリュミアの植物アタックとDPシルフィーのマジック・アタック、すさまじいデース!! デスガ、銃撃でターンして、カーブして……) ジュディも、銃撃戦をしながらも、誘導する。 (ふぅ、ふぅ……。ここで座っていればぁ、何もしなくていいんじゃなかったのぉ? なんか聞いていたのと違うんだけれどぉ……? DPマニフィカとジュディ同時相手はぁ、さすがにへろへろぉ〜!!) リュリュミアも鞭打ち攻撃で二人のビッグ・レディを誘導する。 シルフィーとDPビリーも過激な魔術合戦をしていた。 DP萬智禽は、カプセルモンスターに対して、同類のカプセルモンスターを放ち、撃退する。そして、指揮に戻る。 DP萬智禽は、ギラリと笑った。 ライフラインの撃破がより容易になったからだ。 何も、魔導ホタルだけが全滅対象ではない。 ジョンソンズを殺してしまえばそれでも勝ちなわけだ。 そして今、全軍がジョンソンズに接近している。 命令を出すなら、今だ!! 『全軍、撃てえええええええええええええ!! 標的をジョンソンズに変えるのだ!!』 ドッペルゲンガーの全員が一斉に攻撃対象を切り替えた。 それぞれのドッペルゲンガーの全力攻撃がジョンソンズを襲う! 『ぐはは! 来ると思ったぜ……。 ゴオオオオオオオオオストオオオオオオオオオオ、ブレエエエエエエエイカアアアアアアアアア!!』 ジョンソンズの半径50メートルでは、怪しい紫色の魔法陣が発光する! 魔法陣からはすさまじい量の霊力が吹き荒れ、その円陣に乗っている全ての霊体が一瞬にして消し飛んだ! 味方陣地にいた敵軍は全滅した。 「ふはは! 俺様のタマを取ろうなんて百万年早いぜ! 目玉、アドヴァイスありがとよ! こんな感じでよかったな!?」 実はこれ、目玉の軍師の指示でもあった。 『うむ。皆の者、実に見事だった。敵が『蒋介石ルートの遮断』で来るのならば、こちらは『ミッドウェイ海戦』で反撃したのだ。敵陣は、とにかくライフライン=魔導ホタルの撃破に必死だった。ならばこちらは、ライフライン=ジョンソンズをおとりにして、敵陣が集まったところで一気に除霊したわけなのだ!!』 「ヘイ、さすが軍師デース!! 弘法筆を選ばずデスネ!!」 ジュディが明るく笑いながら、そう言うと、巨大目玉はちょっとデレた。 まあ、弘法大師の例は少し間違っているかもしれないけれど。 「さて、どうにか第1回戦目は無事に防衛できましたわね。ですが今の戦いで、こちらのライフラインである魔導ホタルが全体の半数ほど死んでしまいましたわ。また同じ攻撃をされたら、今度こそわたくしたちは全滅ですわよ?」 マニフィカの懸念に対して、シルフィーが提案を持ち掛ける。 「敵陣が復活するまでに少し時間があるね? みんなで魔導ホタルの死骸を一か所に集めてくれる? それを『フェニックス』で生き返らせれば再利用が可能になるよ!」 「おっけえぇ! みんなでぇ、虫集めよぉ〜!!」 リュリュミアは、「ブルーローズ」を器用に駆使して、魔導ホタルの死骸をひょいひょいと集め始めた。現在動くことができる仲間たちが一緒に虫の死骸集めに精を出した。(目玉の軍師は未だに不在?) E-5「第1回 その他NPCの生存確認」 ★魔導ホタル:初期57匹 ビリー:10匹購入。 ジュディ:10匹購入。 マニフィカ:10匹購入。 萬智禽:2匹購入。 合計:89匹 エリスが銃撃して殺害:5匹 DPたちが攻撃して殺害:40匹 合計:44匹 シルフィーがフェニックスで蘇生:20匹 現在の合計:64匹 備考:照明に問題なし。 ★魔導ホタルのエサ:初期0個 ビリー:9個購入。 ジュディ:5個購入。 マニフィカ:5個購入。 萬智禽:1個購入。 合計:20個 戦闘巻き添えで負傷した魔導ホタルが飲食:2個消費 備考:DPに攻撃されたほとんどのホタルが飲食する前に即死判定。 現在:18個 備考:戦闘する部屋を中心に魔導ホタルのエサが様々なところへばらまかれている。 ★ミラージュ・ボムの耐久力:デフォルト攻撃3発まで耐久 ★とるいぬ特製バリアケースの購入 ビリー:2個購入。 ジュディ:2個購入。 マニフィカ:2個購入。 萬智禽:2個購入。 未来:2個購入。 シルフィー:2個購入。 合計:12個(デフォルト攻撃36発分の防御力) ★水精霊ウネ(水まき)と冬の精キチョウ(クーラー)が環境改善中。 遺跡内部B2の元の環境:気温は30℃、湿度は60% 現在のB2環境:気温は25℃、湿度は40%。 ●ディスクF:攻防戦 第2回戦目 F-1「第2回 攻城戦A 引き続きDPのPCルート」 向かうところ敵がいないはずの道中で、アンナ、魔炎、未来はおかしなことを目撃した。 ダブル呉と鬼ごっこをしていたはずのDPアンナとDP未来がボス部屋の前で待ち構えていた。 「あら? あの二人は呉と追いかけっこしていたはずでは? どこからここまで回り込めたのかしら?」 アンナが不思議がっていたら、未来がはっとして答えた。 「こら! ドッペルゲンガー・ボム! インチキだよね、それ!! テレポートは禁止でしょう!?」 未来の叫びに、どこからかドッペルゲンガー・ボムの声が響いた。 『いや、インチキではない。これは、『テレポート』ではないからだ。ドッペルゲンガーを召喚し直しただけだからな。『テレポート』とは一緒にしないで欲しい。ルール違反は一切やっていないぞ!』 ぐぬぬ、と未来は悔しくなった。 たしかに、ルール違反ではなくても、グレーゾーンのやり方だからだ。 今度は、アンナが前に出た。 「未来と魔炎……。先に行っていてください。ドッペルゲンガーは何度でも召喚再生してしまうようですので……。早いうちにボスを撃破した方がよろしいですわ……。わたくしがドッペルゲンガーの相手をします!」 迷っている場合ではない。 未来は今回の作戦でボス撃破を第一義的に考えている。 この場は、アンナに任せた方が良かろうとも判断した。 「うん、じゃあ、任せるね! すぐにボス撃破するね!」 「おう、アンナなら心配ねえな。ステージボスは強敵だろうから俺も未来について行くぜ!」 そう答えて、未来と魔炎はボス部屋に向かって走り出した。 そこに、手裏剣が飛んでくるが……。 かん、かん、かん!! アンナが割り込んで、モップを回転させて弾き返した。 「相手は、ここにいますわよ!」 DP未来とDPアンナが、ケタケタと笑った。 「バッカじゃなぁい? DPアンナはあなたと互角よ。それに加えてわたしまでいるんだよ? 戦力差は目に見えているよね?」 「おバカですわよ、おほほ!!」 DPたちの罵倒にも屈せず、アンナがにらみ返す。 「でしょうね……。あなた方からしたらおバカに見えるのでしょうね、仲間への信頼なんて……。でもね、わたくしは、負けるわけにはいきませんのよ!!」 怒りの吹雪と桜が舞った。 次の瞬間、アンナの姿が既になかった。 DPたちが油断していたすきに、あらぬ方向から猛打撃がDPたちを襲う! 「くっ!! 油断しましたわね! 『乱れ雪桜花』の奇襲ですか? でもねえ、アンナ……。わたくしだって同じことができますのよ、おほほ!!」 DPアンナも「乱れ雪桜花」であらぬ方向から連撃を加えてくる! そこにDP未来の「ブリンク・ファルコン」まで追加されて、アンナを襲う! 「きゃあああああ!!」 攻撃の全てを避けきれるわけがなかった。 なぜなら、同等スペックの敵の攻撃を回避するのが精いっぱいだ。 さらに別方向からの友軍の連撃までが加わり、アンナには防ぎようがなかった。 未来の連続蹴りに弾き飛ばされて、アンナが地面を転がった。 だが、すぐに起き上がる。 「くっ……。さすがに……普通のやり方では、敵いませんのね?」 うふふ、とDPたちは冷ややかに笑う。 「アンナ、ここをあなたの墓場にするといいですわ! 次回のシナリオからはわたくしがあなたに代わって差し上げますわ!」 「そうだね! まずはアンナ同士が入れ替わって、そして次は未来同士が入れ替わる! 影のマギ・ジスタン世界の誕生があるといいね!!」 DPたちは楽しそうだ。 アンナは当然、楽しいわけがなく、苦笑いしていた。 (そう、普通の威力の攻撃では意味をなさない戦いですわ……。今までは、その確認をしていただけですわ……) アンナは、この遺跡に入ってからの過去の戦いを思い出していた。 エントランスゲートでは、ジュディがスケルトンロード・キングを相手に「ゴースト・ブレイカー」を閃き、一撃で撃退した。そういえば、B1での土偶との戦いでも、自分は苦労して倒したのに、ジュディはまたもや「ゴースト・ブレイカー」で滅していた。 もっとも、アンナは「ゴースト・ブレイカー」なんてできないし、そもそも「スキル・ブレイカー」すら使い方がわからない。 だが、「乱れ雪桜花」を授けてくれたサクラ・ブロッサムからあることを聞いていた。 このスキルは奥義であると。奥義には続きがあると。あなたがピンチの時、新しい奥義が閃くかもしれない……そのときこそが開眼である、と……。 ここは心霊の遺跡だ。 周辺からは霊体の気配や霊力が冷たく感じられる。 アンナは、自らの桜吹雪に、周辺の霊力を集めて上乗せしてみた。 目には目を。 ゴーストには、ゴーストを!! 次の桜が舞う頃、桜は透明色でありつつも、怪しくも紫色に発光していた。 急降下の桜吹雪攻撃に、ドッペルゲンガーたちは戸惑った。 「な、なんなのですか、これ!? アンナはこんなスキルなんて持っていないはずですわ!」 取り乱したDPのアンナに対して、アンナの霊体突きが変化球で胸を貫通した。 貫通と同時に、霊体が爆発を起こし、消滅した。 「え? こんなの聞いてないよー!!」 逃げ惑うDP未来の背中には、アンナの霊体モップ・トス攻撃が突き刺さった。 突き刺すと同時に、この霊体も爆発と同時に消えて行った……。 アンナは新スキルの威力を確認しつつ、ニヤリと笑った。 「やはり、これが効きますわね……。『乱れ雪桜花』に霊力を乗せて、霊体攻撃に切り替えるだけでこんなにも効果がてき面なのですわね。おそらく攻撃力は10倍かしら? まさかDPたちも本体の進化には追いつけなかったわけですね? うん、このスキルは、『乱れ零桜花』とでも名付けましょう!」 無事に撃破が終わったアンナは、未来たちを追いかけるべく急いだ。 F-2「第2回 攻城戦B&C 奇襲作戦」 「行くでえええええええ!! トラトラトラやあああああああああ!!」 ビリーのカプセルモンスター軍団が先に動いた。 ボーマル(ヘビ)が牙を光らせて急速度で突進する! リキマル(キノコ)が速度を加えたタックルでぶつかる! トーキチ(ネズミ)が透明になりながら八重歯を光らす! ゴローザ(モグラ)がアリ地獄攻撃を繰り出す! ゴンロク(イノシシ)がマッハで突撃する! マタザ(カモメ)が急降下自爆攻撃で挑む! 「ナイスです、ビリーさん!! 私も続きます!!」 エリスが「ナゴヤ撃ち」で連撃に加わった。 火を噴き続ける銃口がミラーボールの出来損ないを襲う。 『ふはは! 誰かが奇襲に来るとは思っていたよ! 既にバリアは展開済みだ! だがな諸君!! ボスステージへ奇襲に来た者には必ずトラップがあることはご存知かな!?』 ドッペルゲンガー・ボムがギラリと輝いた。 そこにいないはずのドッペルゲンガーが召喚されていた。 エリスに向かって、DPエリスが走り出した。 ビリーに向かって、DP呉が走り出した。 『さようなら、勇敢な諸君!!』 どかああああああああああああああああああんん!! どかどかどか、どっかあああああああああああああああああああああん!! 盛大な自爆攻撃によってビリーとエリスは歓迎された。 二人の奇襲によってドッペルゲンガー・ボムにそれなりのダメージは与えたものの……。 自爆攻撃を防ぎきることはできず、友軍の二人は敵地にて倒れた。 召喚されたカプセルモンスターたちも全滅した。 「ううっ……。ダメだったかいな……。すまん、みんな……」 ビリーは、頭から血を流し、首をがくりと垂らすと動かなくなった。 エリスも既に機能が停止して壊れてしまっていた。 F-3「第2回 防衛戦 桶狭間の戦いVS平家物語」 敵陣は思ったよりも早く攻めて来た。 もちろん「テレポート」したわけではない。再召喚されただけだ。 ここでも一度、萬智禽が怒り、苦情を申し出たが、ドッペルゲンガー・ボムが「これは反則ではない」と開き直って来た。 やるせない怒り心頭な仲間たち一同だが、気を取り直して第2回目に突入。 先ほどの防衛戦でバリケードやゴーレムは意味がないことがわかった。 それならば、今度は人力で防壁を造るまでだ。 南方面には、マニフィカとジュディが。 西方面には、リュリュミア、シルフィー、ジョンソンズが立った。 萬智禽は姿を消してどこかにいる。 部屋の奥には、ミラージュ・ボム(?)が浮いている。 周辺には、とるいぬのバリケードが何重にも張り巡らされている。 やがて、南方面からDP萬智禽が指揮を執り攻めて来た! 『全軍、全力攻撃! 作戦コードは、『桶狭間の戦い』なのだー!! 狙うは敵将のみ!!』 DPの軍勢は怒声をあげながら雪崩込んで来る! 一番に攻撃に出たのは、DPマニフィカ……。いや、DPマニフィカ三人衆だ! 猛烈な「トリプル・ブリンク・ファルコン」が奥の球体を目指して襲う! ジュディが向かい打ち、「スキル・ブレイカー」で無効化を図るが、弾かれる。 いくらジュディでもマニフィカが三人いたらとても厳しい。 『怯むなマニフィカ殿! こちらもトリプルなのだ!!』 「トリプル・ブリンク・ファルコン」はこちら側の切り札でもある。 それを今の段階で消耗させるとは、敵もなかなかの軍師かもしれない。 マニフィカは迷っている暇はなく、異次元獣やホムンクルスを行使し、三人になり、「トリプル・ブリンク・ファルコン」で迎え撃つ! 白兵戦では加熱した剣戟が飛び散る。 何せ実力が互角な者同士が六人同時に全力攻撃を繰り出す。 合計六人いるマニフィカたちは、死に物狂いで槍さばきを放つ。 どのマニフィカも互いに譲らず、譲れない攻防が展開されていた。 「ヘイ、ユーの相手は、コッチ、ネ!!」 DPジュディが、ゴッドベア・ナックルのハイランダーズ・バリア・パンチで本体ジュディを襲って来た。 本体ジュディも、負ける物かと、同装備の拳で拳を受け止めて、熱いファイトに応じる。 「ヘイ、ユー、なかなかやるネ! 全力で倒してあげるデース!!」 ジュディ同士の戦いもかなりの熾烈さだ。 本体は「ゴースト・ブレイカー」で霊体の無効化を狙う。 一方のDPは、「スキル・ブレイカー」でジュディの攻撃無効化を狙う。 こちらも繰り返しできりがない。 さて、残るDPリュリュミアは……。 「ふわぁー! 眠いよぉ……。よおしぃ、みんな戦っていて忙しいみたいだからぁ……隠れて寝ちゃえぇ☆」 DPリュリュミアはわざと荒れている戦場に入って行き、安全地帯を探した。 そこにハンモックの植物を召喚して昼寝することにした。 一方、西側は……。 「うおおおおおおお、鞭打ちの刑だぜ、この変態野郎!!」 DPが仕掛ける。 「ぐはは! 負けるものか、このとんま野郎!!」 本体も張り合う。 ジョンソンズたちが荒れていた。 ジョンソンズ同士は、「バイオレットローズ」の鞭打ち攻撃で争っていた。 本物のジョンソンズは、リュリュミアからリリのクッキーをもらって口にくわえているので、その分、パワーで押している。 「えぇー、『ブルーローズ』と似たのが使えるんですかぁ、すごいですぅ!」 隣でそれを見ていたリュリュミアは感激していた。 さて、青いバラを紫のバラにすれば、どうすればいいのか? 「お化けさぁ〜ん!! おいでぇ、おいでぇ!!」 リュリュミアは、その辺にいる心霊たちを集め出した。 どういう原理でそうなったのかわからないが、誘き出された幽霊たちが「ブルーローズ」に宿った。 すると……。 きゅぱん☆ 「ブルーローズ」が「バイオレットローズ」になった!! 「それそれぇ〜!! わたしもやりたいでぇすぅ!!」 ジョンソンズの鞭打ち攻撃をリュリュミアも真似して猛攻撃を繰り出した。 これにはDPジョンソンズが一歩後退した。 「おい、DPリュリュミア助けに来い!! 何してる!!」 焦る偽者ジョンソンズ。 まさか昼寝をしているとは夢にも思わなかったことだろう。 シルフィー同士は互いにゴーレム・ファイトでガチンコやっていた。 あれ? DP魔炎の精が余っているが……。 DP萬智禽はニヤリと笑った。 未だに本物の本体がどこにいるかはわからない。 だがこれはチャンスだ。 誰も相手にしていなかった魔炎にミラージュ・ボムへ突撃指令を出した! 「うおおおおおおおおおおおお!!!! もらったああああああああ!!」 DP魔炎の「ダークフレア・スマッシュ」がクリーンヒットで決まった!! 暗い炎を宿した大剣がミラージュ・ボムの脳天に振り落とされた!! 「がはは!! かかったのだな!?」 バリケードがいくつか破壊されたものの、ミラージュ・ボム(?)は生きていた。 がはは、と笑い、頭から血を流していた。 そもそも感触がおかしい。 爆弾ではなく生ものの感触がDP魔炎の剣には伝わっていたのだ。 そう、何を隠そう、今まで敵軍がミラージュ・ボムだと思っていたのは、萬智禽・サンチェックだったのだ。 萬智禽がとるいぬから購入した「魔法絵の具」でミラージュ・ボムのふりをしていたのだ。 しかもミラージュ・ボムの本物の方は、「魔法絵の具」の透明色で透明化していた。 つまり、戦場では、ミラージュ・ボムに扮した萬智禽がミラージュ・ボムに見えていたのだった。しかもとるいぬバリケードのフェイク付きで……。 今がチャンスだ。 敵陣は突然の可笑しな異変に戸惑い行動停止している! 『ゴオオオオオオオオオストオオオオオオオオオオ、ブレエエエエエエエイカアアアアアアアアア!!』 ジョンソンズがゴースト・ブレイカーのマップ兵器を放つ! 『ヘエエエエエエエエエエエエエエイ、レエエエエエエエエエエエツウ、ゴオオオオオオオオオストオオオオオオオオ、ブレエエエエエエエエエエエエエエエエエエイク!!』 ジュディがジョンソンズを真似て、同じくゴースト・ブレイカーをマップ兵器で放つ! 二つの紫色の円陣が凄まじい勢いで霊力と共に発火する。 ジョンソンズの半径50メートルとジュディの半径50メートルにいる全ての霊体が一瞬で除霊された。 第2回戦目の防衛戦も成功した。 軍師萬智禽は、頭から血を流しつつも、ニヤリと笑った。 「ふはは!! 敵が『桶狭間の戦い』で来るのならば……。こちらは『平家物語』なのだ……。化けて出たのだよ!」 F-4「第2回 その他NPCの生存確認」 ★魔導ホタル:64匹(第1回戦目終了まで) 戦闘に巻き込まれて死亡:12匹 現在の合計:52匹 備考:照明に問題なし。 ★魔導ホタルのエサ:18個(第1回戦目終了まで) 戦闘巻き添えで負傷したホタルが飲食:6個消費 現在の合計:12個 ★ミラージュ・ボムの耐久力:デフォルト攻撃3発まで耐久 ★とるいぬ特製バリアケースの購入 合計:12個(デフォルト攻撃36発分の防御力)(第1回戦目終了まで) DP魔炎が破壊:7個 現在の合計:5個(デフォルト攻撃15発分の防御力) ★水精霊ウネ(水まき)と冬の精キチョウ(クーラー)が環境改善中。 現在のB2環境:気温は25℃、湿度は40%。 ●ディスクG:攻防戦 第3回戦目 G-1「第3回 攻城戦 電撃作戦」 ついに敵ボスの陣地付近までたどり着いた未来と魔炎。 第1回の攻城戦では、呉がパンツ騒動を起こしたので、戦闘を回避できた。 第2回の攻城戦では、アンナがDPたちの相手を引き受けてくれた。 つまり、ここに来てまで、未来と魔炎はほぼ全く消耗していない。 未来と魔炎が敵陣地へ入って行くその前で、とんでもないものを目撃してしまった。 敵陣地の中央にはドッペルゲンガー・ボムが偉そうに浮いている。 その付近で、ビリーとエリスが黒くなってぐったりしていた。 おそらく爆撃されたのだろう。 早いところ負傷した味方の回収をするべきだと、魔炎と未来は気持ちがはやる。 だが、そこに立ちはだかるは……。 DPアンナ、DP未来、DPビリー、DP魔炎がいた。 先ほどの戦闘では、DPアンナと未来が倒されたはずだ。 DPビリーと魔炎は攻城戦チーム(未来たちから見て)にはいなかったはずだ。 そう、再召喚されたのである。 「仕方ないなあ……。本当は無傷のままボスと勝負したかったけれど……。ここを突破すれば最後まで行けるわけだね? 魔炎、前衛を頼める?」 未来は、二丁拳銃をジャキリ、と構える。 「おう! 背中は任せた! 未来、俺の突撃について来い!!」 攻城戦で最後の戦闘が開始された! さすがの魔炎でもDP四人を一度に引き受けて戦うには大変なようだ。 DPアンナのモップ連撃、DP未来の魔石のナイフ攻撃、DP魔炎の大剣振り落としはなかなかの力強いコンボだ。 魔炎は「カウンター」で回避し、反撃し、何とか敵陣に攻撃を打ち込んで行く。 一方の後衛未来は、銃撃で魔炎を助ける。 魔炎の「カウンター」攻撃や防御の視覚になるところを銃撃でカバーする。 2対3のバトルは熾烈を極めた。 だが、基本的に同スペックの敵+αだ。 未来たちの方が押されていた。 あれ? DPビリーの姿が見えないが!? 未来たちが戦闘に入った直後、本物のアンナが走って来た。 アンナは血相を変えていた。 今先ほど、屠ったはずのDPアンナとDP未来が既に復活して戦っていたからだ。 これはまずいと直感し、アンナが加勢に入るが……。 「残念やでー! アンナさんはここでおしまいやでー!!」 透明に潜んでいた座敷童子のDPが突然現れた。 現れたと同時に、アンナの前で自爆し、大爆発を起こした。 「きゃあああああああああああ!!!!」 爆風に飲み込まれ、火炎に押され、アンナが吹き飛ぶ。 ぼろぼろになったアンナが未来たちの前に落ちて来た。 「ウソ!? アンナ!? 大丈夫!? 助けなきゃ!?」 血相を変えて走り出す未来に、敵勢は容赦がない。 「ははは、バーカ!! すきありー!!」 DP未来、DPアンナ、DP魔炎の三人が同時攻撃をしかけた! 未来が連撃に撃たれてしまう……!! カキィィィィン!! 魔炎が魔剣で受け止めた。 だが、三人分の猛攻撃を防げるわけがなく、魔炎が吹き飛ばされる。 「きゃあああ!! 魔炎まで!?」 未来はもう泣きそうだ。 今度は自分をかばって魔炎がふっ飛ばされたからだ。 既にHP消耗ぎりぎりでやられたはずのアンナが……立ち上がる。 モップを杖にして……。 「バカ……ですって!? 未来が……魔炎が……仲間を助けて……バカですって!? もういっぺん、言ってみなさいよ……。わたくしが……アンナ・ラクシミリアが許しませんわ!!」 アンナが最後の力を振り絞って、再び『乱れ零桜花』を解き放つ!! 霊界に咲く紫の桜が舞うと同時に、次の瞬間には霊体10倍攻撃で3体のDPたちが消滅していた。 だけれど、無理がたたったアンナは……。 「ぐはっ!!」 吐血して、その場で倒れ、ぐったりしてしまった……。 未来が急いで駆け寄った。 「ウソ!! アンナ、起きてよ! 目を覚ましてよ! 今のスキル、何!? すごいんですけれど!! お願い、アンナ、また見せてよ!! こんなところで倒れて死なないでよ!!」 未来は、アンナの躯(むくろ)を抱き上げ、涙で頬を濡らした。 涙がアンナに伝わった。 「だ、だいじょうぶ、ですわよ……未来……。なんとか、生きています、わ……。わたくしはねえ……仲間をバカだって見下す奴らが……許せなかったの、ですわ……」 魔炎も体力がだいぶ削られているが、魔剣を杖にして起き上がった。 「よっと。ふう、すげえな、DPどもを一撃で倒すなんてよ!? 未来、たぶんだけれど、アンナは大丈夫だ。それよりも奴らが復活する前にこのステージのケリを付けようぜ!!」 魔炎が未来を元気づけると、未来は正気に返った。 アンナをそっと地面に寝かせ、怒りと勇気に満ちて立ち上がった。 だけれど、それをあざ笑うかのように、ドッペルゲンガーたちは復活している。 DPアンナ、DP未来、DP魔炎、DPビリーの四人が一斉にかかって来た! 「そう来るか!! これでどうよ!!」 魔炎は、「ファイアウォール」を全力展開させる!! クロスファイアとなった二重のファイアウォールがDPの猛攻を焼き尽くし、ぶっ飛ばす!! 「魔炎のバーカ!! ここにもいるよー!!」 あらぬ方向から「マクスウェルの魔弾(水属性)」がかっ飛んで来た! DPシルフィーがどこかに潜んでいたのだろうか。 魔炎はクロスファイアを放った直後、魔弾に弾かれてクリティカルで消し飛んだ! 「すまねえ、未来!! だが、撃て!! 撃つんだ!! ここから撃つんだ!!」 魔炎の断末魔の叫びと共に、未来は既にチャージしていた。 「とあるイースタンの激・電磁砲」が凄まじいエネルギーと共に電流を帯びていた! 「いけえええええええええええええええええ、全力でえええええええ、敵将を、撃てえええええええええええええ!!」 未来は全てを賭けた。 持てる力の全てという意味と同時に、仲間たちの思いの全ても込めた。 アンナ、魔炎、呉、他の仲間たちの思い全てを背負い、最後の一撃を放った。 全力を超えた電撃砲撃は、壁すらも破壊して、対角線攻撃でドッペルゲンガー・ボムを狙撃する! 敵軍は既に未来を止めることができなかった。 DP未来、DPアンナ、DPビリー、DP魔炎は、魔炎のクロスファイアで遠くへふっ飛んでいた。 DPシルフィーは、強力魔弾を撃って1ターン行動停止だ。 他のDPたちは防衛戦をやっている味方の陣地(未来から見て)で戦っていて忙しい。 だが、一人だけ動けるDPがいた。 それは、DP呉だった。 「よっしゃあ! これで改造完了!! 発射、全力攻撃!!」 DP呉は、ドッペルゲンガー・ボムを改造していたのだ! ドッペルゲンガー・ボムには「レーザー発射装置」が装備されていた! 『ふはは! 未来とやら! では、思いの強さとやらをぶつけてみ給え!! そんなもの無意味だと私が教えてやろう!!』 ぎゅおおおおおおおおおおん、ぎゅるぎゅるぎゅる、ぎゅうううううううううううううううん!!!! 激・電磁砲が一直線に獲物を狩りに突進する!! びいいいいいいいいいいいいい、ずきゅうううううううううううううんんんんんん!!!! 改造・強化されたドッペルゲンガー・ボムのレーザー攻撃が狩人を迎え撃つ!! 二つの砲撃が稲妻の火花を散り巡らす!! 未来は押されていた。 敵は戦争のプロであり、科学兵器そのものだ。 兵器の扱い、ましてや電気系統の扱いはお手の物だ。 それに対して未来は……。 (お母さん……力を貸して!! みんな、わたしに力を!!) 未来は、超能力者としての素質を覚醒させ、電磁砲の威力を加算させた。 未来の母は超能力者だ。その素質が今、まさに解放される。 そして、仲間たちの思いだ。 特にアンナと魔炎。 彼らは何のためにやられてしまったのだろう? 未来は、それを思い返し、ぎゅっと唇をかんで、踏ん張った。 ぎゅうううううううううん、ぎゅるるるるる、ぎゅぃいいいいいいいいいいいいん!! どかあああああああああああああああああん!! どかどか、どかああああああああああああああああああんん!! G-2「第3回 防衛戦 特攻隊VS鳥羽伏見の戦い」 最後の防衛戦では、軍師DP萬智禽が突然、味方陣地の中に沸いて出た。 今までみたいに律儀に南と西の部屋から攻めてくることはなかった。 しかも、続くお供に、DPのジョンソンズ、ジュディ、エリス、マニフィカがいた。 今度は何の作戦で攻めてくるのだろうか、と萬智禽が敵の戦略を解析し始めると、DP萬智禽はニカっと笑った。 「最後の作戦に入る! 作戦コードは『特攻隊』!! 皆の者、もはや言葉はいらない。私たちの殉死により、これにて作戦完了を宣言する!! 科学勢力にジーク・ハイル!! ガイスト将軍にジーク・ハイル!! 私たちは、奇跡を起こす一陣の神風なのだあああああああああああああ!!!!」 現れたかと思ったと同時にDP萬智禽が演説を始めた。 本体萬智禽は演説の意味を即座に把握したので冷や汗が出た。 つまり、彼らが取る作戦の意味は……。 『まずいのだ!! ここで、全員で自爆されては、ミラージュ・ボムその他ライフラインがやられてしまう!! ええい、そっちが『特攻隊』ならば、こっちは『鳥羽伏見の戦い』なのだ!! 皆の者、武士の魂を守れ!! 侍として君主のために死んでくれ!! 私のために死んでくれとは言わない。我らのライフラインを守るために戦って死ぬのだ!! 武士道とは、死ぬことと見つけたり!!』 萬智禽が叫んだとき、仲間たちは既に理解していた。 敵軍が自爆攻撃で全てを終わらせることをわかっていた。 「ヘイ、ミラージュ・ボム!! ヘルプ!!」 ジュディは即座に動き、ミラージュ・ボムの盾になった。 「スキル・ブレイカー」は間に合うのだろうか!? 「ジョンソンズ先生、これを!!」 マニフィカは「ミガワリボサツ」をジョンソンズに手渡した。 そして、ジョンソンズの盾になる。 「すまねえ、マニフィカ!!」 ジョンソンズは詫びることしかできなかった。 マニフィカが代わってくれても、自分が代わりに死ぬことはできない。 ジョンソンズが死んだ時点で友軍は敗北だからだ。 「ホタルちゃ〜ん!! 良い子だから集まってぇ〜!!」 リュリュミアは、魔導ホタルの保護に出た。 バリケードを張り巡らせて、魔導ホタルたちを守った。 魔導ホタルの全滅も友軍の敗北を意味するからだ。 「間に合えー!!」 シルフィーは、萬智禽の叫びが完了すると同時にゴーレムを出していた。 ゴールデン・ゴーレムでどこまで防げるかわからない。 でも、軍師の盾になるべく動いた。 どかああああああああああああああああああんん!! どが、どが、どが、どかああああああああああああああああああんん!! 何しろ一部屋分を爆破できるほどの五人分の自爆だ。 つまり、この部屋が五回連続で大爆発を起こすことを意味する。 どかああああああああああああああああああんん!! どが、どが、どが、どかああああああああああああああああああんん!! 爆発は鳴りやまなかった。 爆撃は全てを破壊し、焼き尽くしてしまったんだろうか……!? ところで、DPリュリュミアは、(DPのNPCがいた部屋の)天井の特等席に植物の椅子を作ってどちらの部屋の大爆発も鑑賞していた。 爆発が起こるたびに、「たまやぁー!」と叫んでいた。 いったい、この女、どれだけ悪女だろうか……。 G-3「旗取りゲームの勝敗」 味方陣地の戦場は無惨だった。 まずシルフィーと萬智禽は、完全に戦闘不能になっていた。 ゴールデン・ゴーレムの防御力では到底、太刀打ちができなかったのだ。 リュリュミアも魔導ホタルを守ってずたぼろに倒れていた。 魔導ホタルの何匹かは無事だった。 マニフィカはジョンソンズの上に覆いかぶさってぐったりと倒れていた。 あの強い人魚姫すらも、こうもぼろぼろになって戦闘不能になっていた。 ジョンソンズは、マニフィカの盾と「ミガワリボサツ」もあり、なんとか生存していた。 ジュディの「スキル・ブレイカー」は、最初の二回だけ間に合った。 だが五回連続の爆発だ。 全ての回に「スキル・ブレイカー」が間に合うはずもなくジュディ本人が盾となった。 なお、敵軍に萬智禽の偽物ミラージュ・ボムがばれた時点でバリケードは本物へ移した。 それでもバリケードの威力は微々たるものだった。 だけれど、ジュディの完全な戦闘不能と引き換えに……ミラージュ・ボムは守れた。 なんとか、こちらの大爆発は防げたようだ。 *** ドッペルゲンガー・ボムがいた部屋と未来が砲撃した南の部屋は既に崩壊していた。 あれだけの大爆発があったせいで部屋が原形をとどめて居なかった。 がらがらがら……。 壁や地面や天井の破片を分けて、下から手が出て来た。 「よいっしょ、と……」 未来だ。 未来が出て来た。 彼女は何とか、生存していたのだ! 「ええと!? DPは!?」 未来は、きょろきょろと警戒した。 敵の残存勢力がまだいるかもしれないからだ。 だけれど、見回しても、周囲には誰もいなかった。 このエリアは、友軍も敵軍も未来以外は生存していなかったのだ! その証拠に、遥か前方で、かつてドッペルゲンガー・ボムだったらしい球体の機械が破片を散らして壊れていることが確認された。 「うふふ……。わたしたちの思いの勝利だね!!」 危険な爆発を伴う旗取りゲームは、PCチームの勝利にて幕を閉じたのであった。 G-4「第3回 その他NPCの生存確認」 ★魔導ホタル:52匹(第2回戦目終了まで) 爆発に巻き込まれて死亡:31匹 現在の合計:21匹 備考:照明にやや問題あり。 ★魔導ホタルのエサ:12個(第2回戦目終了まで) 戦闘巻き添えで負傷したホタルが飲食:4個消費 爆発に巻き込まれて損失:5個消費 現在の合計:3個 ★ミラージュ・ボムの耐久力:デフォルト攻撃1発まで耐久 ★とるいぬ特製バリアケースの購入 合計:5個(第2回戦目終了まで) 爆発で損失:5個 現在の合計:0個 ★水精霊ウネ(水まき)と冬の精キチョウ(クーラー)が爆発に巻き込まれ戦闘不能。 現在のB2環境:気温は30℃、湿度は60%。(デフォルトに戻る) ●ディスクH:戦後処理 H-1「解体作業」 『ふうむ。此度の戦いはちょいと厳しすぎたかもしれんのお。苦難を超えたPCたちをワシも少々労ってやらねばならんなあ……』 今回の戦いを宇宙の果てで見ていたレヴィゼル神は憂いていた。 現在、残っているのは未来とジョンソンズだけだ。 戦闘不能になった仲間全員の回復手段はない。 もはやPCたちはこれ以上、遺跡の探索を続けることができない。 そこで……。 『それ! 回復じゃ!! ワシからのサービスじゃよ、ほっほっほ!!』 レヴィゼル神の奇跡が起こり、仲間たちが全快で復活した!! (開発者コメント:難易度調整のことです。今回は、少し厳しすぎたと反省しています) *** 「よし。全員復活したみたいだね? じゃあ、今回もこの辺で野営しようか?」 シルフィー隊長が仕切ると、みんなの表情が、ぱあっと明るくなった。 毎度、お待ちかねの野営タイムである! 「そうですわね! しかし、すごい散らかりようですわ! 最初にお掃除しませんか?」 アンナはモップ以外にも、ほうき&ちりとり、ゴミ袋を取り出し掃除を始めた。 「よっしゃあ! 野営だぜ! うおおおおお!!」 魔炎も興奮しながら、その辺に転がる大きな破片を持ち上げてぶん投げて片した。 「ヘイ! ジュディも怪力なら負けませーん! 魔炎、勝負デース!!」 ジュディも続き、大きなガラクタなどを片す。パワフルコンビの活躍で、大きな破片やガラクタはすぐに片付いた。 「ウネお姉さまも復活したようですし、引き続き環境調整をしましょう!」 マニフィカは、ウネを行使して水まきをさせる。 ビリーのキチョウも一緒にクーラーを吹雪き、一気に涼しくなった。 「ほな皆さん、この辺で飲みますかー!? 熱中症対策やでー!!」 ビリーが小槌で飲み物をたくさん出してくれた。 缶ビールを「念力」で取った萬智禽は、ぐしゃり、と一撃で飲み干した ジョンソンズも負けまいと、缶ビールをごくり、と一気飲みをした。 *一気飲みは健康のためにいけません。良い大人は真似しないでください。 「がはは! いい飲みっぷりじゃねえか、萬智禽! それにしてもあんたの指揮、なかなかやるな!? 軍師ってのも男の夢だぜ、がはは!」 ジョンソンズは既に上機嫌だ。 「いやいや、ジョンソンズ殿の方こそ! 心霊科学のマップ兵器でゴースト共がどかああん、ってなかなかいいぞ、わはは! 冒険も男の夢なのだ!」 萬智禽もジョンソンズと意気投合して赤くなっている。 「いやー、私までビールを頂き、すんませんな! 熱い戦闘の後にはビールが格別ですな、うわはは!」 なぜか、とるいぬ(NPC)まで混ざっている。 ビリーがビールをあげたらしい。 「そうだ! これは私からのお礼ですな。熱い戦闘の鑑賞&美味しいビールのお礼として、魔導ホタル5匹を無料で贈呈しますぞ!」 「おおきに!」 ビリーが代表して魔導ホタルを受け取った。 下界が華やいでいるとき、天井の方ではリュリュミアが植物の巣を作って、マギボトルをびくびく飲んでいた。 「いえぇ〜!! 野営たぁーいむぅ!! わたしも今のうちにお昼寝しておこうぅ〜!!」 お姉さんはハンモックにゆられて心地よさそうだ。 そんな賑やかな飲み会モードとは真逆に、呉は片隅で何やら作業していた。 「エリスさん……。マイナスドライバー取って……。きゅきゅきゅ……。次、ミニハンマー! とんとんとん……。それから、スパナだな……。かちかちきゅ……」 呉はエリスを助手にして、ドッペルゲンガー・ボムの解体作業をしていた。 「金虫たち! そんな暗いところで何やってんの!? ほら、シルフィーが新しい魔導ホタルを買ってきてくれたよ! 使って!」 そこへ未来がやってきて、新しい魔導ホタル10匹を放った。 すると、仄暗かった呉の周辺が一気に明るさを増した。 「あ、すまん。どうもメカに夢中になると周囲が見えなくてな……。エリスさん、次はプラスドライバー取って……」 呉の作業をエリスと未来が見守る中、今度はビリーがやってくる。 「おお!? 解体ショーやんけ!? ささ、呉さんもエリスさんも飲み物受け取ってくれや! 熱中症で倒れたらあかんで!」 「かちゃ、かちゃ……。ん? ビリーさんか!? そうだな……。冷やし梅、頼む……。エリスさん、ペンチね……」 「はい、ペンチです……。そうですね。ロボット用の補給燃料もらえますか? ジュースでもいいのですが、補給燃料の方が、効率が良いので……」 ビリーは、冷やし梅と補給燃料を出してあげて手渡した。 なお、未来は既にビリーからスポーツドリンクをもらって飲んでいる。 やがて、一時間ほどで呉の作業が完了した。 「よし、できた!」 呉が額の汗をタオルで拭いて、にこやかに笑った。 「ん? なんやそれ!? 小型のゴルフボールかいな!?」 ビリーがその小さな球体を受け取ると、ボールは、「なんでやねん!?」と答えた。 そして、黒く反転したビリーが出て来て、ハリセンですぱこおおおん、と本物を叩いた。 「うお!? ボクが実体化しとりまんがな、これ!?」 焦るビリーに呉が解説を加える。 「さっきのドッペルゲンガー・ボムって奴さ、俺らのドッペルゲンガーを出してたよな? 未来さんがぶっ壊しちまったあいつの残骸を利用してさ、小型のドッペルゲンガー発生装置を造れねえかやってみたんだ。ま、ガイスト将軍との決戦に備えて、少しでも戦力強化しておいた方がいいと思ってよ……。ほら、人数分あるぜ! エリスさんも未来さんも受け取ってくれ。あ、そうだ、他の人たちも集めてくれるか? 今、全員に手渡すんで!」 呉が解体&改造してくれたお陰で、ドッペルゲンガーたちも仲間に引き入れることできた。 次回、「心霊科学の忘れ物」、いよいよ最終回。 はたして調査部隊は遺跡を封印できるのか!? ガイスト将軍との決戦も見逃せない!! お楽しみに!! *** B1の方で怪しい人影がこそこそしている。 「ボス!! いよいよ次回、我らの出番ですぜ!」 「うむ。科学的革命万歳!! いよいよ革命の時が来た!! うはは!!」 よろよろの白衣姿の怪しい老人たちが大声で笑っていた。 (第4回へ続く) |