「誰がための物語」

ゲームマスター:秋月雅哉

【シナリオ参加募集案内】(第4回/全5回)


●話し合い前日、王城

 カインとランス、セレンは内乱の終結を目指し、落ち人とレジスタンスと話し合いを重ねた。
 国王と落ち人、レジスタンスのメンバーによる対面を明日に控えた夜、カインはランスを謁見の間に呼び出す。
「……感謝する、といっておこうか。思ったより反発が少なかった」
「暴君やってた自覚があるならなにより。そして内乱を綱渡りし抜いた俺の功績をもっと褒めてくれていいんだぜ」
 君はそうやってすぐに茶化す、とカインはわずかに口元に苦笑に似た笑みを浮かべた。
 従兄は、いつもそうやって自分と弟を護ってくれた。自分の心から弟を、父とのいさかいから自分を。陰に日向に、いつもそばにいた。
 フィリエルが片翼なら、ランスはカインにとってもう一枚の翼だった。
 双翼が一枚かけて久しいのに、痛みはいまだ生々しい。忘れられる、わけがない。
「……機が熟すのを、待ってたんじゃねぇかっていう落ち人がいた。鋭いもんだよな」
「そうかな?」
 ラピスラズリとアクアマリンがぶつかり合う。濃度の違う、二つの青。
「……予言に縛られた世界をぶっ壊して、ついでに国をかき乱して。フィリエルが『出てこれるなら出てこざるを得ない状況』に持ち込んだ。……違うとは言わせねぇぞ」
「……頭のいい男は嫌いだよ。頭の悪い男も嫌いだけど」
 お前はフィリエル以外は大体嫌いだろ、という軽口に違いない、と軽口がかえる。
「あの子はこれで動かざるを得なくなったはずだ。今も、塔で見ているだろうからね。僕が向こうに行くか、あの子がこちらに来るか。ふたを開けてみなければわからないけれど、神龍のアミュレットと、国を思う民の気持ちが、門を開くだろう」
「結局全部お前の筋書き通りかよ。近年稀に見るあほうだ」
 そうまでしてでも、諦めることだけはできなかったのだ。
「国王側の要求は落ち人と民に、門を開く協力を求めること。対価は必要なら玉座を退くこと。……そうなるとして、代わりは誰が?」
「龍人の力だけでいうなら、セレンだろう?君はどう思うか知らないけどね。宰相が、今はいないからね。どうしようか。信の置ける官僚で民主政治かな」
「……まだまだ難問が残ってるな」
「それでも、君はついてきてくれるんだろう?」
「ま、それが伯母上との約束だしな」

『貴方が貴方の心に沿う主を見つけるまででいい。カインと、生まれてくる子供を支えてあげて』
 そう願った女性がいた。その願いは、騎士を目指す少年にとって、最初で最後の、騎士としての誓約になった。
『国王だからカインに仕えるのではなく、貴方との約束を、騎士として守るために、俺はあいつの傍にいます。俺が俺でいる限り』
 それはもう、誰も知らない約束だった。
『国はあの子を疎んじるでしょう。だからあなたはあの子を愛してあげて。私の分まで守ってあげて。私の愛する世界を、あの子を。どうか、護って』
 彼女はそれが叶わぬ願いだと知っていた。夫は自分を愛しすぎていたから。きっと自分の命と引き換えに生まれてくる子供に冷たく当たるだろう。
 世界は子供を奇異の目で見つめ、ぬくもりを与えないだろう。
 それでも、どうか。
 愛しい子が、いつか世界に愛されますように。
 それは凍えた世界にともる、たった一つのあどなき祈りだった。


【アクション案内】

m1.王の真意を確認する
m2.王に意見を提案する
m3.その他

【アクション選択解説】


m1を選んだ場合、カインから直接真意や次の統治者を誰にするのかも話し合うことができます。ただし、カインに自分を信じてもらえるかどうかも重要になります。

m2を選んだ場合は、フィリエルがこの世界に戻りやすい状況を整える提案ができます。その場合、フィリエルの存在をレジスタンスや国民に認めさせることが話し合いの主題になります。どんな主張を提案するのも自由ですが、確固とした理由が大きく参加者の心を動かします。

m3のその他は、他のことに神龍のアミュレットを使ったり、要請を断る場合はこちらを選択ください。

【マスターより】


当初の予定とは第四回は全く違うものになっています。
意外とカインの身の上を案じられる方が多くて、フィリエルがいる時のカインを見たらびっくりされるのかな、と思ったり、そもそもフィリエルを見たらびっくりする人が多いのかな、と思ったり。
バウムサイト様での初めての執筆活動ですが、PL様のコメントにいつも励まされております。
もとになっている、フィリエルたちの話は「小説家になろう」で「秋月雅哉」で検索をかけると見つかるはずですのでよければ違いを目にしてみてください。
世界シリーズと死なず人になります。
皆様の紡ぐ物語は、誰のための物語でしょうか。
物語も終幕に近づいてきました。見届けていただければ幸いです。