『機械仕掛けの……』 第5回 最終回
ゲームマスター:
「心の回路」を持たないロボットを製造する企業の社長、ギールウィン・ビーズは、AI暴走事件の黒幕であった。ビーズは、「グレート・マザー」最上階にあるコントロールルームから、ウィルポリスの占拠を宣言する。 町中から、ビーズ社の非AIたちと、ビーズに操られたAIたちが、「グレート・マザー」に迫っていた。 また、「グレート・マザー」最上階からも、ドクター・ランドルゥやラーシィ・コパー、イオのいるコントロールルームへむかって、非AIたちが近づいてきている。 Scene.1 「ビーズのやつ、絶対に許せないよ!」 ウィルポリスの中央にある公園にそびえる漆黒の塔、「グレート・マザー」をみあげ、トリスティアはつぶやいた。 「僕とリュリュミアは内部でラーシィとイオを守るよ。グラントとアルフランツ、リータは外をまかせたよ」 幻想界出身の騎士の少女、フレア・マナの言葉に、幻想界と陰陽界の影響を受けた中華風世界出身の武術家、グラント・ウィンクラックが、力強くうなずく。 「ああ、俺たちにまかせて、早く行ってやれよ」 フレアと、一面花野原の世界からやってきた庭師のリュリュミアは、「グレート・マザー」内部にむかって、それぞれ「バーナーロケット」と「しゃぼんだま」を使って飛んでいった。 「オレたちも行こうぜ!」 「うん!」 赤い髪の少年探偵ジェークに、トリスティアはうなずき、幻想界出身のジャグラーらしい軽やかな動きで、「魔白翼」を広げると、飛びたっていった。 町中から、ビーズ社のロボットと、言葉をしゃべらなくなったAIたちが、続々と中央公園に集まってきていた。 「ここは危ないから、パワードスーツの中に入ろう」 幻想界出身の、黒いネコ耳としっぽがある種族の少年、アルフランツの指さしたミーティア型パワードスーツをみて、リータはため息をつく。 「ああ、やっぱりアレに乗らないといけないのね……」 母の姿そっくりのパワードスーツに、リータは眼鏡をかけなおし、めまいをこらえた。 ○ フレアは、「バーナーロケット」で「グレート・マザー」内部を急上昇すると、巨大な両手剣「炎帝剣・改」をふるい、漆黒の壁をぶちやぶった。 瓦礫のむこうに、驚いた顔のドクター・ランドルゥがいる。 フレアに続いて、「しゃぼんだま」に乗って上がってきたリュリュミアが、優雅に着地した。 「な、なんて乱暴な入り方をするのだ!」 「ドクターに乱暴とかいわれたくないよ。それより、ラーシィとイオの様子はどうなの?」 食ってかかるランドルゥを制して、フレアはコントロールルームの中央をのぞきこむ。 そこでは、それぞれ違う方向に、5本のアンテナが伸びたヘルメットをかぶったラーシィが、イオを抱いて椅子にすわっていた。 ラーシィのヘルメットは、濃い紫色に金色と銀色のラメが入っており、いくつもついているランプが、さまざまな色の光を放って明滅していた。 「うわあ、きれいで、面白いですねぇ〜」 リュリュミアが思わず拍手する。 「え、えっと、ラーシィ、大丈夫?」 冷や汗を流しつつ、フレアがラーシィにたずねる。 「はい、今のところは大丈夫です……」 ラーシィが、困惑した表情でこたえる。 =同調に必要な装置なんだってよ。でも、俺様のラーシィにこんなヘンな格好させやがって……= 腹立たしげにいう小さなライオン型AIのイオに、フレアは苦笑をうかべる。 「じゃあ、リュリュミアも、通路をかざりつけちゃいますねぇ〜」 リュリュミアは、コントロールルームの外の通路に、植物の蔦をはりめぐらせた。植物の蔦はちょうど人間の足元くらいの高さで、通路を横断している。 「これできっと、ロボットたちはすってんころりんと転んじゃいますよぉ」 リュリュミアは、にっこり笑っていった。 「来たな……」 「炎帝剣・改」をかまえて、フレアがつぶやく。 たくさんの足音が、コントロールルームにむかって響いてきていた。 Scene.2 「グレート・マザー」の外では、グラントと、ミーティア型パワードスーツに乗ったアルフランツとリータが、操られたAIたちと、ビーズ社の非AIたちをまちうけていた。 アルフランツは、ミーティア型パワードスーツを「グレート・マザー」の入り口前に立ちふさがらせる。 「グラント、攻撃はまかせたよ。オレたちは、万一に備えてここを守るからね」 アルフランツの言葉に、グラントは笑ってこたえる。 「ああ、今までのやつらに比べたら、どうってことないぜ。数ばっかり多いのがうんざりするけどな」 次々に突撃してくるAIと非AIたちを、「破軍刀」をふるい、グラントは次々にたおしていく。もちろん、AIの「心の回路」には傷をつけないよう、細心の注意を払っていた。 「意志の実」を使って、グラントはラーシィによびかける。 「いいか、ここは俺たちが蟻の子一匹通しゃしない! だからお前とイオはおかしくされたAIたちが……大事な友達が正気に戻ることだけ一心不乱に念じていろ!」 「はい! グラントさん……無事でいてください!」 ラーシィの言葉に、グラントは不敵な笑みをうかべてこたえる。 「あたりまえだろ!」 グラントは、上空から襲いかかってきていたトリ型AIたちにむかって、巨大な「破軍刀」をハンマー投げのようにふりまわし、敵にぶつける剛剣術「破軍流星」で、叩き落していった。 ○ ラーシィたちのいるコントロールルームの側では、リュリュミアのはりめぐらした蔦にからまってころんだ非AIたちに、フレアが一気にとどめをさしていた。「炎帝剣・改」が、鋼鉄のボディを断ち切り、金属のこすれあう音が通路に響く。 「第一波はこれで全部みたいだね……」 通路に転がる非AIたちをみまわし、フレアがつぶやく。 「炎の魔力よ……空間を切り裂け!」 フレアが「炎帝剣・改」を大きく横にふるうと、通路の空間が裂けて、「炎の壁」が出現した。燃え盛る炎は、非AIの装甲さえ溶かしてしまうだろう。 コントロールルームへむかう通路に、それぞれ「炎の壁」を築いたフレアが戻ってくると、ラーシィとイオが同調をはじめようとしていた。 =だけど、同調ってどんなことをすればいいんだ?= 「そうね、心を通わすっていっても……」 イオを強く抱きしめながら、ラーシィが首をかしげる。アンテナのついたヘルメットはかなり重量があるらしく、ラーシィは頭をぐらぐらとさせていた。 ヘルメットのランプが、ときおり、強い光をはなち、そして、また消える、というのを繰り返している。 「二人が集中できないのは、絶対、あのヘンな装置のせいだ……」 フレアは、ランドルゥにきこえないようにぼそりとつぶやくと、ラーシィとイオに話しかける。 「あまり、深刻にならずに、もっと気楽に考えたほうがいいよ。二人の共通の思い出話でもしていれば、自然とお互いの気持ちが同調していくんじゃないのかな」 「……そうですね。イオ、はじめて行ったピクニックのこと、覚えてる?」 =ああ、あの時は大変だったな! ラーシィが迷子になっちゃって、さがすのに苦労したぜ= 「ふふ、そうね。でも、お花畑がきれいだったんだから、しかたないじゃない」 ラーシィのヘルメットのランプが、赤や黄色、ピンクや緑の光をはなった。アンテナからも、火花が飛び散っている。 「お花畑ですかぁ。リュリュミアもみてみたいですねぇ」 そういうと、リュリュミアは「平和の歌」を歌いはじめた。聞くものの心を穏やかにし、争いごとをやめ、平和的解決を目指そうという気持ちにさせる歌である。 ラーシィのヘルメットだけでなく、イオのボディも、金色の光をはなちはじめた。 ラーシィも、リュリュミアと一緒に歌を口ずさみはじめ、イオもそれに続く。 「おお、すばらしい……」 機械を操作していたランドルゥが、思わずその光景に見入る。 フレアも、陽だまりのような、暖かな空気を感じていた 穏やかな光と、メロディが、コントロールルームをつつんでいく。 ○ 「この声は……」 AIや非AIたちと戦っていたグラントは、「グレート・マザー」から響いてくる歌声に気がついた。 ラーシィとイオが、リュリュミアとともに「平和の歌」を歌う声が、ウィルポリス中に流れていく。 AIたちの動きが止まり、「グレート・マザー」をみあげた。 しばらくそうするうちに、AIたちが、言葉を取り戻しはじめる。 =僕は、何をして……= =ここは、私は、どこにいるの……?= 「よし、元に戻ったんだな!」 グラントが喜び、AIたちに声をかける。 「さっそくで悪いが、ここは危険だ! はやく避難しろ!」 「破軍刀」を握りなおし、グラントはさけぶ。 「いいか、できりだけ遠くにはなれろ! 無理なら『心の回路』だけでも、胸の高さより下にしろ! 巻きこまれたら、どれだけ頑丈でも絶対助からないからな!」 グラントの気迫に、AIたちは混乱しながらも、中央公園をはなれていく。 その直後、地響きとともに、非AIの集団が、公園におとずれる。先ほどまでグラントと戦っていたAIと非AIを足した数よりも多かった。 公園をうめつくすビーズ社の非AIたちに、グラントは「破軍刀」を胸の高さでかまえる。 「空を震わす大いなる刃……喰らえ!! 剛剣術・対軍剣技秘奥義!! 『大振空刃』!」 横一文字に振るわれた「破軍刀」の、常人では持つこともできぬ超重量と、神速の振りで空間そのものに断層が作られる。空間の断層は公園の外にむかって飛ばされ、立ちふさがる非AI、街路樹、街灯などをなぎたおしてゆき、公園の出口で止まった。 「何が起こったんだ……?」 アルフランツが呆然としてつぶやく。 空間が切り裂かれた公園に、立っているのはグラントと、その背後にいるミーティア型パワードスーツだけだった。 瓦礫のくずれる乾いた音が、公園に響く。 Scene.3 トリスティアは、ジェークとともに、「グレート・マザー」最上階のコントロールルームをめざしていた。 ビーズ社の非AIと「グレート・マザー」のセキュリティを、トリスティアは「魔白翼」の機動力で、ジェークは「俊足ブーツ」のスピードで、なんとか、かわしていく。 かなり上の階までやってきたとき、トリスティアとジェークを捕らえようと伸びていた金属のアームが、突然、停止した。 「ラーシィとイオ、やったんだね!」 トリスティアの言葉に、ジェークも笑顔でうなずく。 「ああ、あとは、一気にビーズのところへ行くだけだ!」 立ちはだかる非AIたちをトリスティアが「流星キック」で蹴散らし、最上階にたどりつくと、コントロールルームの分厚い扉があった。 「ギールウィン・ビーズ!」 トリスティアとジェークが同時にさけぶ。 「流星キック」で、扉が蹴破られる。セキュリティなしでは、普通の扉にすぎなかった。 コントロールルーム内部は、機械で覆われており、椅子に座ったギールウィン・ビーズが、神経質にコンピューターを操作していた。 ビーズが立ちあがろうとしたとき、トリスティアの投げナイフが命中し、ビーズの手にあったスタンガンが床に落ちる。 「ほう。……!」 余裕の笑みをうかべるビーズに、トリスティアは「とりもちランチャー」をおみまいした。 とりもちにまみれたビーズは、床に崩れ落ちる。 「さあ、今までの悪事を全部話してもらうよ!」 釘バットをつきつけて、トリスティアがビーズをにらみつける。 「おいたが過ぎるようだよ、子鼠ちゃんたち。こんなことで、この私に勝てるとでも思っているのかな」 「ふざけないでよ! ドクター・ランドルゥを陥れて、町の外に追放するなんて! そのせいで、ジェークとリータはずっとお父さんに会えなかったじゃないか!」 トリスティアの怒りと、釘バットにひきつりつつも、ビーズは余裕をみせつづける。 「ああ、たしかにランドルゥを追放したのは私だ。AIなどという、くだらないものを世に広めようとしていたのだからな。この世界は、力あるものこそが正しく、実利のみがすべてだ。それに逆らうものを抹殺しただけだ」 「そんなこといってるから、ミーティアさんにフラれちゃうんだよ。力づくでなんか、誰もいうこときかないんだから」 トリスティアの言葉に、ビーズはととのった顔をゆがめた。 「いや、どうあがこうとも私の勝ちだ。ウィルポリスを占拠する計画は、何年もかけてつくられた緻密なものだからな。ドクター・ディバーをやとったのもそのためだ。多少、想定外のことは起こったが、『心の回路』などという不確かなものに、私が負けるわけがない」 「ちがうよ。ラーシィとイオの、人間とAIの友情は不確かなんかじゃない。その証拠に、今、ウィルポリスの平和を取り戻してるんだ!」 「はははは! このコントロールルームから送られる、AI洗脳プログラムを打ち破れるとでも? AIなど、金属の塊りにすぎないだろう!」 「はい、そこまで」 ビーズが大きな声で笑ったとき、少し前まで、はなれた場所で機械を操作していたジェークがいった。 「ばっちり、作戦通りだぜ」 「やったね!」 ジェークにむかって、トリスティアが親指を立ててみせる。 ウィルポリス占拠を宣言したときの、マイクをオンになっていたことを、ビーズはようやく理解した。 ビーズは、町中に、自分の悪事の内容を話していたのである。 「これで、あとは法の裁きをうけてもらうよ」 トリスティアの言葉に、ビーズは歯軋りしてうなだれた。 Scene.4 グラントにより、瓦礫の山になってしまった公園で、ラーシィやリュリュミアたちは無事と勝利を祝っていた。 「こうして、ラーシィが無事に戻って、ウィルポリスが救われたのも、君たちのおかげだ。本当にありがとう……」 ラーシィの父、AI関連企業社長のブレッド・コパーは、感激のあまり涙を流していた。 「ブレッドさん、お願いがあるんですけどぉ」 リュリュミアに話しかけられ、ハンカチで鼻をかんでいたブレッドが、笑顔でふりかえる。 「なにかな。私にできることならなんだってするよ」 「ありがとう。リュリュミアは、ランドルゥと一緒に、飛んでいっちゃったディバーにも町の修理を手伝ってもらったらいいんじゃないかな、と思うんですよぉ」 「え、ドクター・ディバーにかい?」 ブレッドは、渋い顔をした。 「ディバーは町を破壊したりしてましたけどぉ、すごいメカを作る才能があるんですからぁ、壊れた町を修理するメカを作る仕事とか頼んだらどうですかぁ。きっと、素晴らしいデザインの建物とか作ってくれますよぉ。仕事があれば、悪いことしないと思いますしぃ」 「うーん、たしかに、彼の才能を埋もれさせるのは惜しいかもしれないが……」 ブレッドは腕を組んで考えこむ。 リュリュミアは、さらにランドルゥにもいう。 「ランドルゥも、お手伝いしてくれる人がいたほうがいいですよねぇ」 「我輩は、あんなやつの手など借りなくても平気だが、どうしてもというなら、手伝わせてやらなくもないぞ。しかし、あのディバーという男、我輩とどこか似た部分があるような気がして、そこが気にくわないのだが……」 ランドルゥは、顎ヒゲをなでながら、複雑な表情でこたえる。 「つまり、同族嫌悪ってことかな?」 アルフランツがぼそりとつぶやく。 隣にいたリータが、肩をすくめた。 「そうだね、優秀な科学者なら、我が社で働いてもらうよ。……だいぶ、町の景観も変わりそうだけどね」 「素敵な町になるといいですねぇ〜」 少し苦笑いしているブレッドの言葉に、リュリュミアはにっこり笑ってうなずいた。 そのとき、どこか遠くで、聞きなれた高笑いが響いたように思い、リュリュミアは空をみあげた。太陽の光が、リュリュミアのきれいなダークグリーンの髪に反射した。 ○ 「イオ、今回もよくがんばったな」 フレアにほめられ、イオは小さな胸をはってみせる。 =おう、やっぱり俺様はすごいってことが、ウィルポリス中に証明されたぜ!= 「これからも、ラーシィと仲良くな。がんばれよ」 しゃがんで、イオと目線をあわせたフレアが、笑顔でいう。 =フレアも、俺様に負けない、強い騎士になれよ!= フレアは、イオのたてがみの生えた頭を、わしわしとなでた。 ○ みんなと少しはなれた場所で、グラントは、ラーシィにお別れの挨拶をしていた。 「平和な場所じゃ修行にならないし、むしろ俺の存在は騒動の種になるからな……。でも、もし、俺の力が必要になったらどっからでもかけつけるぜ! これが、その約束の証だ」 グラントは、自分の服の、上から二番目のボタンを引きちぎって、ラーシィの手に握らせる。 そのボタンは、グラントの手製の木彫りで、家紋である「違い鷹の羽に剣」が彫られていた。 ラーシィは、しばらくボタンをみつめた後、突然、グラントに抱きついた。 「お、おい?」 まったく予想していなかった行動に、グラントはあわててラーシィの顔をみる。 ラーシィは、濃い茶色の瞳いっぱいに、涙をたたえていた。 その顔を隠すように、ラーシィはグラントの胸に顔を深くうずめ、声をあげて泣きはじめる。 「いっただろ? アンタが俺の力を必要としたら、どっからでもかけつけるって。だから、泣くな」 ラーシィは、とまどうグラントの顔をみあげた。 「約束ですよ」 そして、グラントの頬に、ラーシィの柔らかな唇がふれる。 グラントは、幼く、女性的にみえる顔を赤くして、大きく黒の瞳を見開き、ラーシィをみつめた。 「これが、わたしからの、お別れのしるしです」 グラントに手渡されたボタンをみせながら、ラーシィはほほえんだ。 ○ 「ドクター・ランドルゥ。大事な話があるんだけど」 アルフランツが、リータとともに、ランドルゥに話しかける。 「大事な話?」 首をかしげるランドルゥに、アルフランツがうなずく。 「うん。ジェークとリータがランドルゥとミーティアさんの子どもであるということを証明するよ」 「我輩には子どもはおらん、といっただろう。第一、知らない間に……」 「某月某日。ミーティアは今日も美しい。彼女と恋人でいられる我輩は、なんと果報者であろう。どんな自然の風景も、芸術も、ミーティアの前では落書きに等しい」 ランドルゥをさえぎり、アルフランツは、ランドルゥの日記兼開発記録を読みはじめた。 「な、なぜそれを!」 おどろくランドルゥに、アルフランツがこたえる。 「リータがさがしだしたんだよ。これを持ってることが親子の証拠だと思わない? リータ、眼鏡をはずしてみなよ」 リータは、眼鏡をはずし、ミーティアの写真を自分の顔とならべてみせた。 勝気でしっかりした性格と、温和でやわらかい性格が、それぞれ表情にあらわれているものの、たしかに面影が似ている。 「アルフランツにいわれて気づいたんだけど、私と母さんは似てるみたいなのよ。兄貴と父さんはそっくりだしね」 眼鏡をかけなおしながら、リータがいった。 「し、しかし、だからといって……」 あたふたとするランドルゥに、アルフランツがたたみかける。 「某月某日。今日こそミーティアにプロポーズしよう。天才である我輩ですら、このような状況では狼狽してしまうのか」 「う、うわあああああ」 ランドルゥは、真っ赤になって、顎とひざをかくんと落とした。 アルフランツは、さらに、ランドルゥとミーティアのなれそめから、結婚にいたるまでを、朗読しつづけた。 ジェークとリータが子どもであることを認めてもらうため、アルフランツは大真面目だったが、ランドルゥはゆでだこを通り越して蒸発しそうになっており、リータは必死に頭痛をこらえている。 「や、やめ、やめ、やめろ……」 「あ、頭が痛い……」 マイペースなアルフランツは、熟読していた日記を、よどみなく、すべて読みあげた。
「……というわけで、子どもだって認めてもらえるかな?」 アルフランツがたずねるが、放心状態のランドルゥはこたえることができない。 そこに、トリスティアが、ジェークとともにやってきた。 「ほら、この『俊足ブーツ』をみてよ! ジェークのお母さんの形見だってこと、ドクター・ランドルゥならわかるよね?」 トリスティアが、ジェークのはいている『俊足ブーツ』を指し示す。 「た、たしかに、これは、ミーティアの作ったものだ……」 ランドルゥが、なんとか言葉をつむぎだす。 =それなら、俺様はジェークとリータの兄ということになるな= 「話がややこしくなるから、黙ってようね」 少しはなれたところで、イオを抱きあげながら、フレアがいう。 「ボク、『グレート・マザー』から、ID情報を手に入れてきたんだ。ほら、これで信じてくれるよね!」 トリスティアが、ダメ押しとばかりに、黒い情報端末装置のスイッチを入れると、『グレート・マザー』のID情報が表示された。ミーティアの子どもとして、ジェークとリータは登録されている。 「そうか、そうだったのか……今まで、苦労をかけたな……」 「父さん……」 ランドルゥは立ちあがり、ジェークとリータに近づく。ジェークとリータが、同時に父の名を呼ぶ。 「……え、ちょっと、何アレ!?」 ふと上をみあげたリータが指さした先は、「グレート・マザー」の外部のスクリーンだった。そこに、ランドルゥ、ミーティア、ジェーク、リータの、ID情報が表示されているのである。 生年月日、血液型などはもちろん、身長、体重、スリーサイズにいたるまで。 「ジェーク! リータ!」 「父さん!」 「町中に私の情報がーっ!!」 ジェークとリータにかけよるランドルゥだったが、抱きしめようとした瞬間、リータの鉄拳により、吹っ飛ばされた。続いて、ジェークも顔面に右ストレートをくらう。 ランドルゥとジェークは、鼻血をふいて、同時に地面にたおれた。 「親父のバカーッッッ!!」 リータは絶叫する。 「ジェーク! し、しっかりして!」 「なんで、オレが……」 トリスティアが、あわててジェークにかけよる。 アルフランツは、ドームに覆われたウィルポリスの空をみあげる。 ウィルポリスの中央公園は、街路樹がなくなり、すっきりしてしまったが、かえって、太陽光線のみずみずしさを際立たせていた。 晴れわたった空の青さと、雲の白さ、鼻血の赤がまぶしい。 |
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