邂逅(かいこう) 長い衣姿で、常に穏やかであった顔立ち。東トーバを訪れた異世界人を誰より歓迎した者。 東トーバ神官長であったラハは今、厳しい面持ちで、一団に向けて名乗りを上げた。 「わたくしは、東トーバ神官長ラハ! これより東トーバを脱出した者たちに帰還を命じます!」 ラハの脇を警護する修羅族や兵に囲まれたラハは続ける。 「東トーバは、亜由香様に降伏しました! そして亜由香様に逆らわなければ、その命が守られることを約束されているのです! そして逆らわなければ、異世界人の皆様の命も!」 そのラハに、アクアはゆったりと応える。 「え〜? 聞いていた話とは違います〜。いっそのこと此方と合流しませんか〜?」 口ではのんびりとラハを懐柔するような発言を繰り返すアクア。この間に、アクアは修羅族やムーア兵の動向配置を警戒しつつラハとの間合いを詰めていく。 やがて空に銀翼が輝くのを拓哉が見つけた時、この後の作戦が始動された。 ラハがアクアに接近するに従い、周囲に霧が立ち込めてゆく。そして機械音が地上近くで轟いた後、包囲するムーア兵の一角が崩れる。 「今だ!」 拓哉の指示で、崩れた一角から脱出組が走り出す。すべての荷はそのままに、弱い者は強い者が抱えて走り出す。 「この長く伸びる一団を前後左右から包囲するには、ムーア兵の層は薄い! 一気に走り抜けろ!」 拓哉の声に呼応して、神官長ラハに向かってアクアが動く。 「失礼します〜」 アクアの声が終わるより早く、気絶する神官長ラハ。その体を拓哉操作のエアカーに乗せて、脱出組みの最後尾にアクアと拓哉がつく。その後をリューナも続いていた。 神官たちの助力もあり、濃い霧が立ち込める荒野。 神官長ラハの動向を見守ったディックは、仲間の見事な連携プレイに感嘆していた。 「はは! こいつは凄いな!! こりゃ、俺の手助けはそんなに必要ないかな?」 馬を走らせるディックは、追っ手減らしに努めつつ、わずかな距離をおいて脱出する民を援護する。そのディックの視界に、この場に残ってはならない4人の子供たちの姿が飛び込んで来たのだった。 |
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